2017年夏季アニメの感想(その1):異世界食堂/アホガール/捏造トラップ/サクラクエスト

朝の連続ドラマ「ひよっこ」終わっちゃいましたね。立志伝的な女性の半生記が多い中、「ひよっこ」はごくごく普通の女の子の4年間の青春を描くという作品で、そういうのは「まれ」以来かなと思いますが、「まれ」でも子供時代から子供を産んで以降まで描いていたので、半年かけて4年間だけを描くというのはかなり従来と毛色が違う作品だった気がします。個人的には非常に面白く、珍しくほとんど視聴していました。奇人変人はたくさんいても悪人はいないという「カードキャプターさくら」的な世界でした。「ひよっこ」ロスになっちゃうかも。

話は変わって2017年夏季アニメの感想です。今回はちゃっちゃとやります。まずは飯テロアニメ「異世界食堂」。毎週土曜日だけ異世界につながる不思議な洋食屋「ねこや」と、訪れる異世界の客達の物語でした。

異世界からは人間、亜人、魔族、妖精、ドラゴンと様々な種族がやってきますが、いろんな世界というわけではなくそれら全てを包括する一つの異世界からやってきているようです。異世界はいわゆる「剣と魔法」のファンタジー色の強い世界ですが、食文化は実に貧弱貧弱ゥで、誰もが「ねこや」の提供する各種料理や酒にうなり、再現を試みるもなかなかうまくいっていないようです。


毎回繰り出されるビーフシチューやらメンチカツやらの美味そうな料理を見て、それを食べて感激する異世界の住人の感想を聞いているしかないという(笑)。異世界の客はそれぞれにこだわりの一品があって、ほぼそれだけを食べているようですが、支払いに使っている異世界の金貨や銀貨を店がどうやって日本のお金に換金しているのかは謎。

どうして異世界に扉が開くのかについては、実は異世界の英雄がこちらの世界に流され、剣も魔法も不要な世界で料理を覚えて「ねこや」の扉と元いた異世界をつながる魔法をかけたようです。「赤の女王」と呼ばれる強力な炎の竜の庇護を受けているほか、「黒」と呼ばれるやはり強力な闇の竜がウェイトレスをしているので、強力な戦士や魔法使いがどれだけ集まってきても絶対に騒ぎは起こせないという。

料理とそれを愛する異世界の客の人となりを紹介するだけ終わってしまった感もあるので、異世界における各キャラクターの絡みとか、異世界そのものの様子とかがもっと知りたいと思いましたが、それをやっちゃうと「ねこや」の出番がなくなってしまうし難しいところですね。

続いて「アホガール」。15分尺のギャグアニメで、最初は短いんじゃないかと思いましたが、すぐに適正な時間だと思い直しました。30分尺だともたれるし、花畑よしこ役の悠木碧の頭の血管が切れてしまうんじゃないかと心配になります。

とてつもないアホの子花畑よしこと優等生だけどコミュ障気味の阿久津明(あっくん)の恋模様(ただしよしこ→明の一方通行)で、よしこが周囲の人物をトラブルに巻き込んではあっくんからちょっと女の子にやるには酷すぎないかと思うほどの厳しい制裁を下される物語です。最終回で明らかになった幼年期の出会いの頃は、明はよしこの異様な身体能力にまったく対抗できないでいましたが、その後相当に巧夫を積んだのでしょう。今では的確によしこを捉えて「リングにかけろ!」並みのスーパーブローやスープレックスをかませるようになっています。


よしこの悪影響で容姿端麗で巨乳の風紀委員長(氏名不詳)はあっくんのストーカーと化し、担任の先生はよしこに洗脳され、よしこが化けたよしおに恋をするという「ごらんの有様だよ」的展開。よしこをバカにしまくっていたギャル三人組もいつの間にか感化されたりして。


しかし、一番の問題人物は、よしこのママン、よしえだと思います。よしこのアホぶりに辟易している悩み多き母かと思いきや、よしこはあんたの娘だからあんななんだよとツッコミたくなる変態ぶりを見せてきます。CV日笠陽子の面目躍如だ。


よしこの子分志願のヤンキーを「こわっぱが!」と一蹴し、風紀委員長(CV上坂すみれ)をよしこの強敵とみなして妙な死闘を展開したりしますが、ひよっちVSすみぺは作品の白眉で、よしこの存在が霞むほど面白かったです。続編に期待したいですね。

「捏造トラップ-NTR-」。NTRだとッ!!と勝手に色めき立ちましたが、捏造トラップの略のようですね。これも10分尺の短いアニメでしたが、密度は高かったかと。原作が「コミック百合姫」連載だけあって、見事な百合展開でした。彼女を女性に奪われる武田の不幸っぷりには全米が泣きましたが、いいやつなのでそのうちきっといいことあるさ。

主人公由真が幼馴染みの蛍に翻弄され、セクハラされまくる中で自分の本当の気持ちや蛍の気持ちに気付いていくというストーリーですが、由真役の加隈亜衣のエロい声の演技が実に素晴らしかったです。この人の声質は丹下桜に近くてとてもいいですね。


百合ものなので、由真×蛍という落着はハッピーエンドなんでしょうね。蛍が男性遍歴を重ねていたのは由真への“叶わぬ思い”を振り切るためだったようですが、百合カップル的には相方の男性経験はあまり気にならないのでしょうか。

最後に「サクラクエスト」。春季から2クール続いたP.A.WORKSの「お仕事シリーズ」第3弾です。アニメ制作会社で奮闘する女の子達を描いた「SHIROBAKO」同様、5人の女性が富山県の架空の町・間野山の町おこしのために奮闘しました。

アニメファンも非常に興味のあるアニメ制作をめぐるあれこれを描いた「SHIROBAKO」と違って、必ずしも興味を持っていないであろう地方の町おこしを題材にしていたので、盛り上がるかなあという心配はあったのですが、タイトルのとおり毎回RPG風のサブタイトルを付けており、女の子達の冒険と成長の物語として描いていました。

試行錯誤を繰り返し、失敗したり町の人とぶつかったりする中で、本当に町の人々のためになる町おこしとは何かを解き明かしていきつつ、自分自身は今後どうなりたいのかという将来も見据えていくという展開は、確かにRPG的ではありましたね。自分達も変わりながら、その奮闘ぶりを見る周囲の人々の心も次第に変わっていく。それはほんの些細な変化だったかも知れないけど確実に残り続けるものだったという、そこが大事なのかと。


脇役も面白くて、私は浮き世離れした占いおばさんアンジェリカさんとか珍妙な発明が得意な「毒島製作所」主人のドクが好きでしたね。5人娘の中では断然四ノ宮しおり。ダイナマイトバディ…はさておき、優しくおっとりした性格でありながら、やるときはやる芯の強さを持っていました。

家族仲が非常に良く、公務員みたいな堅い職業で、休日は家業であるの農業を手伝ってくれる人がタイプだそうです。目標が低いようでいて案外高いような。姉のさゆりは看護師で、しかもCV能登麻美子。これはスゴイ裏ドラではないでしょうか(もう彼氏いるけどね)。CV上田麗奈の声の愛らしさが非常に良いです。この人は「好きなアニメキャラ」で紹介したいのですが、「好きな声優さん」で上田麗奈を紹介したいという思いもあってどっちにするか迷っています。絵に描いたような清純派声優なのに、この人のエピソードは面白すぎるので。

個人的には充分面白かったのですが、「SHIROBAKO」に比べると円盤(DVD)はどうかなあ…。アニメファンの琴線に触れるかどうかという点において町おこしは弱かったかなあと思います。作品の評価は円盤の売れ行きとは関係ないッ!!まさにそのとおりなんですが、営業サイドからすれば売り上げが評価の全てでしょうしね。何か外部から賞でも貰えればいいのですが。

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