彼女はいいなり(その1):「私の奴隷になりなさい」シリーズ第6弾

はい、こんばんは。本来は今日が体育の日でしたね。そう思うと、月曜日しっかり休んでおきながら、休みなのに出勤させられているような気がしてくるから不思議ですね。怠け心には際限がないのか。足るを知らざるなりか。
今日は謎の覆面作家・サタミシュウの「私の奴隷になりなさい」シリーズ第6弾「彼女はいいなり」を読了したのでご紹介したいと思います。
「私の奴隷になりなさい」については当ブログ6月29日の記事で取り上げていますので、よろしかったらご参照下さい。
http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-50.html
実は「奴隷」と「いいなり」の間には第2弾「ご主人様と呼ばせてください」、第3弾「おまえ次第」、第4弾「はやくいって」、第5弾「恋するおもちゃ」があるのですが、全部未読で、今後も読む予定はありません。ではなぜいきなり第6弾なのかといえば、解説(正確には「解説に代えて」)を壇蜜さんが書いていることと

この本のコシマキ(帯ともいいますね。カバーの上にある「今月の新刊」とか書かれたあれです)が「私の奴隷になりなさい」の映画化を記載したものであり、このコシマキを外して裏を開くと“出版業界初にして前代未聞、世界初!?の“二つ折グラビア帯”が初回限定で付いてきます!!”ということだからです。これはもう買うしかなかろうと。

で、汗水垂らして働いて得たなけなしの金を出して買って読んだ以上、その感想を率直に綴る権利もあろうというもの!図書館で借りた本は無料で読んでいるという引け目(本当は市民税とか払っているのだからもっと堂々としてもいいのでしょうが)があるので面白かった本だけ紹介するのですが、買った本については罵倒もありという方針でおります。
内容については、Amazonでの紹介は
童貞高校生・美樹は恋人・苑子との初体験への期待とともに夏を迎えた。だがある夜、苑子が後輩にフェラチオしているのを目の当たりにしてしまう。傷つく美樹の前に現れたのが美術の志保先生。先生は美樹にすべてを告白させると、ついには美樹を犯してくれる。その後は先生のいいなりに、あらゆるセックスを体験する美樹。しかしやがて美樹の頭の中に、ある疑問が大きく広がっていく…。大人気シリーズの第6弾。
ということになっています。この本を読了した私の最初の感想は、どういう訳か

でした。どうしてなのかは追々語ります。さらにその後に思ったのは、「節子それSM青春小説とちがう、官能小説や!」ということです。最近読んだ本で言えば「ゲルマニウムの夜」(花村萬月)とか「ホテル・アイリス」(小川洋子)は官能描写もあるものの、純文学の領域にあるといえますが、「彼女はいいなり」は「私の奴隷になりなさい」以上の官能描写で、もはや「フランス書院」とか「マドンナメイト」から刊行されていても全然おかしくないというか、なぜそっちから刊行されていないのかというレベルになっています。
まずがっかりしたのは、主人公の美樹を女の子だと勘違いしていたこと。てっきり青春百合SM小説が読めるものだと思ってわくわくしてしまいましたよ。先の内容紹介を読めば「童貞高校生」と書いてあるのだから男だと判っていなければいけませんでしたね。でもさあ、大辞泉によれば
1 まだ異性と肉体関係をもったことがないこと。また、その人。ふつう男性にいう。
2 カトリック教の尼僧。
とあるので、女性と勘違いしたとしても絶対おかしいという訳ではないですよね。ぐちぐち…
彼女の苑子は小学校からの知り合いで、いわゆる幼馴染み的存在です。ようやく高校2年の春に告白して交際し始めたのですが、キスもできずにいたところでいきなり苑子の部活(演劇部)の後輩に寝取られるというNTR展開。悔しいのう、悔しいのう(笑)。本来NTR展開は、寝取られる主人公と読んでいる自分がシンクロしているべきなのですが、NTR展開が早すぎるのと本当に何にもしていないので寝取られ感があまり伝わってきません。まあ当たり前ながら美樹はショックを受けているのですが。
しかし、そこへ青春筆下ろし系では良く登場する「優しく癒やしてくれる女教師」登場!ほら漫画だったら「俺の空」、小説だったら「女薫の旅」シリーズ、ゲームだったら「同級生」「下級生」「キミにステディ」他もろもろありすぎで、宇宙人でいえばグレイタイプあたりというほどポピュラーな存在のあれですよ。

で、この先生に色々と手ほどきを受けるという展開は腐るほどあるのですが、「彼女はいいなり」では普通以上の官能描写でSM的展開をするセックスが描かれていきます。で、この先生(志保)、彼氏がいることを美樹にはっきり告げており、変態的といってもいいほどのプレイの数々がその彼氏に仕込まれたものであることを示唆します。
このあたりで、あ、その彼氏は「私の奴隷になりなさい」の「ご主人様」的存在なのだなということが判るのですが志保先生が「私の奴隷になりなさい」の香奈と違うのは、香奈が「僕」といろいろするのは全て「ご主人様」の指示によっているのに対し、志保は「ご主人様」に隠れて美樹とつきあっているというところです。
「私の奴隷になりなさい」シリーズは、てっきり
①ご主人様の奴隷になって調教を受ける
②新たな奴隷候補が登場
③見極めを付けた上でご主人様が奴隷の下を去り、旧奴隷はご主人様となり、新たな奴隷を調教していく
というルーチンの繰り返しなのだと思っていました。まあ同じ人がやっている訳ではない以上、個性的な展開があっても不思議ではないのですが、「ご主人様」と「奴隷」の関係に浮気が挟まるとは思いませんでしたね。これについては驚くというより、「奴隷」道を逸脱している志保にあきれるというか…
また、志保は美樹に対して「ご主人様」として君臨するのかといえばそういう訳ではなく、あくまでドMの「奴隷」側に属しているので、首枷を付けれもらったり緊縛されたりと、「ご主人様」以外の人の「奴隷」になってしまうのです。もっとも主導権は志保が握っているので美樹はその言いなりになって「ご主人様」的アクションを取っているので、自覚はないでしょうけど。「奴隷」は次に「ご主人様」になっていかないと、このシリーズのリングは繋がっていかないと思うのですが、志保はなぜ「奴隷」のままなのでしょうか。「ご主人様」はまだ去りそうもないので、嬉々として「奴隷」を続けていればいいのにのと思うのですが。自分が「奴隷」を卒業する前に「奴隷」候補に出会ってしまったということなのでしょうかね?
「私の奴隷になりなさい」の「ご主人様」によれば、このシリーズにおいての「ご主人様」は、このSM関係が破綻しないようにコントロールしつつ、「奴隷」が人間的にレベルアップしていく方向に導いていくべきなのだ言っています。志保は一見恋人を寝取られた美樹に同情して体で癒やしてくれるかのようですが、実際には美樹のシチュエーションに興奮して、つい愛欲に溺れていったというのが本当のところではないでしょうか。一応志保も関係がばれないように念を押していますし、成績も落とさないよう、親に不審をもたれないよう様々な注意を行っています。しかし、所詮相手は未成年の高校生です。その程度では十分とはいえないでしょう。そもそも教師として(どうも普通の教諭ではなく、講師のようでもありますが)教え子とそういう関係になるのってどうよ?いや、そういうことは良くあることなのかも知れませんが、「私の奴隷になりなさい」の「ご主人様」が偉そうにのたまったところの「ご主人様」道からすると、そもそも対象として選んではいけないのではないでしょうか。
実は「彼女はいいなり」、時間軸的にはPHSが高校生にもあまり普及していない時期であり、1990年代中葉頃なのかと思われるので、「私の奴隷になりなさい」より昔の話ということになります。「ビデオで録画」のお約束は既にあるようですが、まだ「ご主人様」道が確立しきっていなかったのかも知れません。そして美樹のモノローグによると、志保によって自らの性癖を自覚したものの、その後はノーマルな性生活を続けますが、10年後に志保タイプに遭遇したことで再び燃え上がったということなので、もしや美樹が「私の奴隷になりなさい」の「ご主人様」なのか?とも思いましたが、年齢とか容姿的にはそぐわないような気がします。もしかすると第2弾から第5弾には続きそうな話があるのかも知れませんが。或いは第7弾とかで描かれるのか。

そしてこの美樹、性癖を自覚する以前に異常だなと思うのは、その精力絶倫ぶりです。だいたい高校生の頃というのは、野郎のそっち方面のエネルギーが一番膨大な時期ではありますが、この人位凄いのは流石になかなかいないでしょう。しかもちょっとしたことで「暴発」や「発射」を行ってしまっています。お前は「ワンショットライター」と呼ばれた一式陸攻か(これについては異論もあるそうですが)。あるいは機関銃か。それともMLRSか、面制圧兵器なのかと小一時間(ry。

そもそも苑子のNTRを想像して自家発電しまくってますからね。やはり性癖的には只者ではない(笑)。で、どうして私が「SLAM DUNK」の安西先生的感慨を持ったかということですが、官能描写ばかり増えて驚きがなかったという点ででしょうか。「私の奴隷になりなさい」は、香奈の奇怪な行動がすべて指示されたものであったことや、ビデオテープに映される「香奈の本当の姿」が「僕」を打ちのめすあたりに新鮮な感覚を覚えたのですが、「彼女はいいなり」にはそういう新鮮さが感じられませんでした。終盤、志保の「ご主人様」である彼氏が登場してきますが、美樹にはさほどの動揺もなく、むしろ別れる前の最後の願いとして、志保が「ご主人様」に調教を受ける様を覗き見させてもらっています。やはりたいしたタマだ君は。まさに「自分から桂言葉」!

これ、綺麗な女教師が男子高校生を…というシチュエーションなので、読者は若き日の夢(ほとんど実現可能性がないという意味では妄想と呼ぶべきか)を思い出して「お、いいな」なんて思えるのですが、男教師が可憐な女子高生をあれよあれよという間に誘惑して訳もわからぬうちに調教スタートとかだと非常に腹の立つ展開でしょうし、なによりも許されないなあという気持ちが先立つのではないかと思います。志保が許されるのはあくまで女教師だからのような気がします。

ところで志保、海外留学中の弟と一緒に住んでいるということではありますが、臨時講師風情(失礼)にしてはソアラに乗ったり、高級そうなマンションに住んだりとやたら優雅な暮らしをしています。留学中の「ご主人様」のご威光ではなさそうなので実家が金持ちなのでしょう。社会的地位と相当な金がありそうな「私の奴隷になりなさい」の「ご主人様」といい、この世界のSM関係はある程度裕福でないと成立しないような気がします。衣食足りて礼節を知ると言いますが、衣食足りてSMを知るということか。
まあ食うことでかつかつな原始時代とかに悠長にSMなんてやってられないでしょうから、「不倫は文化だ」と言ってた馬鹿もいたことですし、きっと「SMも文化だ」という人もいることでしょう。

節子それ文化と違う、性癖や!
なお、壇蜜さんの「解説に代えて」については、別途感想を書きたいと思いますのでまた後日……

あ、待ってますか(笑)。
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