インド旅行記1 北インド編:女優・中谷美紀のインド紀行


久しぶりにリアル明里パパンから明里ちゃん画像が来ました。4歳になってお洒落に目覚めた明里ちゃん。すっかり小さなレディですね。9年後には岩船に行くことになとも知らずに……(行きません)

本日は中谷美紀の「インド旅行記1 北インド編」を紹介しましょう。著者は女優さんと同姓同名の人ではなく、かの女優その人です。有名人ですが、中谷美紀の本は初めて読んだので一応著者紹介を。

中谷美紀は1976年1月12日生まれで東京都出身。女優デビューは1993年に「ひとつ屋根の下」でですが、それ以前にテレビ朝日系のバラエティ番組「桜っ子クラブ」のアイドルグループ「桜っ子クラブさくら組」の一員として歌手活動をしていました。

余談ですがこの「桜っ子クラブさくら組」、当時は「おニャン子クラブ」のエピゴーネンかよなんてと思っていましたが、よく考えれば「おニャン子クラブ」より全体的なルックスはかなり高かったような気がします。強いて例えるならば「おニャン子クラブ」がAKB48だとすると、「桜っ子クラブさくら組」は「乃木坂46」あたりでしょうか。

なにしろメンバーには井上晴美、加藤紀子、菅野美穂、持田真樹と錚々たる面子が揃ってましたからね。その中の一人が中谷美紀で、東恵子と「KEY WEST CLUB」という内部ユニットを結成していました。というか、当時は彼女が女優としてこれほど名を馳せるとは思っていなかったという。なにしろ目がリハクなもので。

アイドル活動は黒歴史かも知れませんが、駆け出しの頃は皆いろいろやっているものなので恥じることはないと思います。女優としては数々の受賞歴を誇り、「壬生義士伝」「ゼロの焦点」「利休にたずねよ」で日本アカデミー大賞優秀助演女優賞を、「「自虐の詩」「阪急電車~片道15分の奇跡~」で同優秀主演女優賞を、そして「嫌われ松子の一生」で最優秀主演女優賞を受賞しています。

で、最も高い評価を受けた「嫌われ松子の一生」を取り終えた直後の2005年8月、精根尽き果てた中谷美紀は、本場でヨガを体験したというただそれだけを望んでインドに向かい、北インドで40日弱を過ごしました。当時29歳。27歳の頃からヨガを始めたのだそうです。

本書は「嫌われ松子の一生」公開後の2006年8月5日に書き下ろしで幻冬舎文庫から刊行されました。彼女はすっかりインドにはまったらしく、2006年1月までの5か月の間に4回もインドを旅しています。本書はその第一回目にして最長だった旅の日記となっています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

チューブわさびで体内消毒に励み、持参したウエットティッシュは数知れず。そんな努力の甲斐もむなしく、腹痛に見舞われ、暑いホテルで一人淋しく回復を待つ。町に出れば、パスポートを盗まれ、警察署長に懇願書を書くはめに……。単身インドに乗り込んだ、女優・中谷美紀に襲い掛かる困難の数々。泣いて、笑った38日間の一人旅の記録。第1弾!

椎名誠曰く「インドはああいう国なので、なんとなく行けば誰でもなにがしかのことは書ける。」ということで、インド関係の本は玉石混淆でゴマンとあるようです。中谷美紀もインドに向かう飛行機の中で遠藤周作の「深い河」や妹尾河童の「河童が覗いたインド」を読んだそうです。「深い河」は小説ですが、「河童が覗いたインド」の方は地を這うようにして描かれた旅行記&スケッチで、椎名誠も絶賛していますがインド本ナンバー1の誉れも高い名著です。

私が読んだインド本といえば「河童が覗いたインド」と宮脇俊三の「インド鉄道紀行」でしょうか。どちらも面白いですが、両作品を読んで思うのは、バイタリティーがないとインドは無理だなあということです。疲弊した状態で女一人旅なんて、大丈夫なのかと思ってしまいますが、案外女性の方がバイタリティーがあるのかも。

滅菌ウエットティッシュや消毒スプレーなどを携え、裸足になった後は足もサンダルも消毒し、食事の後はワサビで体内消毒と、潔癖症かよいかにも女性らしいなと思う行動を取る著者ですが、それでもやってくる腹痛。インドではこれは通過儀礼らしく、妹尾河童も宮脇俊三も旅の途中でやられています。河童は好奇心のままに何でも飲み食いするのでなるべくしてなったとも言えますが、無茶をしない宮脇俊三や潔癖症気味の中谷美紀ですら腹痛は襲うので、インドに行ったら腹痛になると思った方がいいのでしょう。

デリーをはじめ町はやたら汚く、物乞いは殺到し、ガイドは土産物店と結託し、タクシーやオートリキシャは隙あらばボろうとする中、女の細腕一本で泳いでいくのはさぞや大変だろうと思いますが、自己主張の強い韓国人のふりをしたり英語がわからないふりをしたりと、女優らしいテクを発揮しているのが面白いですね。

あと食べ物についての記述がかなり詳細で、旨い不味いもしっかり書いています。各種カレーはそこそこおいしいようですが、毎日カレーだとさすがに飽きるらしく、中華料理店があるとすかさず入る中谷美紀ですが、その度にインド人の作る中華はダメだと思い知らされるという。自分でも言っていますが、一回で学習しろよと思います(笑)。

かつてエストニアを旅した際、中華料理店があったので入ったら、何とインド人がやっていました。バリバリインド人スタイルだったのですが、エストニア人にはばれないのでしょうか?私がはいったら中国人と間違えたらしく、「やっべッ!本物が来ちゃったよオイ!」という激しい動揺を見せていたのが笑えましたが。私が欧州滞在で学んだのは、「中華料理屋はどんな国にでもあるが、豊かな国ほどおいしい」ということです。

中谷美紀のインド旅行の主目的がヨガなので、ヒマラヤ山麓のリシケシュでヨガ修行に励んだりするのですが、まあ修行といってもそれほど辛いものではなく、エステシャンによるマッサージも楽しんだりしています。ヨガはともかくマッサージは私もやってもらいたいですね。

私のヨガの印象というと、ストリートファイターⅡのヨガマスター・ダルシムなんですが、両肘や両膝の関節を自由に外して手足を伸ばしたり、空中浮遊したりテレポーテーションしたり火を吹いたりして、流石の私でも節子これヨガとちがうと思ったものでした。相手をヘッドロックしながら殴りつつ「ヨガ!ヨガ!」と叫ぶあたり、インド政府から公式に抗議が来なかったのかと思ってしまいますが。

ヨガは日本ではもっぱらハタ・ヨーガ(ヨーガ体操)が主流となっていて、運動とか健康法として捉えられていますが、本来は心身を鍛錬によって制御し、精神を統一して輪廻転生から解脱しようとするもので、多分に宗教的なのです。なので興味がないこちらとしては「アーハーン?」的な読み飛ばしをするしかないのですが、中谷美紀はインドに来てベジタリアンになり、さらには酒まで飲まなくなっていきます。いや、酒は飲みたいけどないから仕方が無いというケースもありますが、ベジタリアンは本格化し、肉が入った料理を受け付けなくなるほどです。

ベジタリアンとか、さらに厳格な(卵や乳製品もダメという)ヴィーガンとか、まあ人の食習慣は人それぞれなので他人に強要しない限りは好きにすればいいのですが、中谷美紀はインド旅行を契機に6年間ベジタリアン生活を実践していたそうです。ただしその間にはめまいや突発性難聴が起こり、精神的にも機嫌が悪かったり人と口を利きたくなかったりしたそうです。結局体力が尽き果ててベジタリアン生活からは足を洗ったそうです。私もまあ2、3日なら精進料理一色でも耐えられるでしょうし、そもそも普段そんなに肉は食べていないのですが、雑食が人間の本性だと思っているのでベジタリアンになろうとは思いませんな。

好んでいったインドにも関わらず、結構インド人の押しの強さや理屈っぽさ、何かと言えば金を取ろうとするところに辟易していく中谷美紀。盗難にあってパスポートを無くしたり、被害届を貰いに警察に行っても嫌な目にあったりと同情します。そんな彼女のごく自然な反応を、上から目線だとか批判するレビューもありますが、私は素直な感想を綴っていて好感を持ちました。女優も一般人とあんまり変わらないんだなあと。そして思います、私はインドは止めておこうと。やっぱりヨーロッパが向いているんだ私には(笑)。

食事や衣類には関心が高い反面、寺院とか城とか遺跡関係にはあまり強い関心を示さない中谷美紀。そうはいってもタージ・マハールとか押さえるべきところは押さえていますけどね。ヨガは好きだけど特に宗教的な入れ込みはしていないようで、わりと日本人としては普通の感性ではないかと思われます。インドマニアにはとにかく貧乏旅行を推奨する向きもあるようですが、私もなるべく彼女のように高くても清潔なホテルに泊まりたい派です。それでもお腹を壊すのだからインド恐るべし。実は図書館には「インド旅行記2 南インド編」もあったので、次回借りてきましょう。
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