かばん屋の相続:銀行を舞台とした池井戸潤の短編集

今日は猫の日ですね。だからという訳ではないですが…やあ!キミはどんなフレンズなの!?僕はねえ…猫好きなフレンズなんだよ!すっごーい!わーい!たーのしー!!

……え~、ということで、杉田智和の「アニゲラ!ディドゥーン!!!」でめっちゃ推していたので「けものフレンズ」を見たら…すっかりハマってIQが10くらい減少しました。ネットではとっくに大人気だったらしいですが、なにしろ情弱なもので。

誰でも楽しめる…というタイプの作品ではないと思いますし、私自身1話だけだと「おいおい」的感想になってしまっていましたが。とりあえず3話まで見ましょう。3話で登場するトキとアルパカはインパクト大です。アルパカはバリバリの栃木弁だし、トキは金朋地獄ですよ。

ト…トキ……病んでさえいなければ…(笑)。それでダメなら打ち切りましょう。


フレンズが女の子だけなのはなぜ?正体不明の敵・セルリアンって何者?食物連鎖が消えて代わりにどこからともなく出てくる共通食料「ジャパリまん」は何の味?EDの廃墟の遊園地は何を意味しているの?など謎もたくさん。

さて本題ですが、本日は池井戸潤の「かばん屋の相続」を紹介しましょう。2011年4月10日に文庫オリジナルとして文春文庫から刊行されました。2005年から2008年にかけて文藝春秋社の「オール讀物」で掲載された短編6編が収録されています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。
池上信用金庫に勤める小倉太郎。その取引先「松田かばん」の社長が急逝した。残された二人の兄弟。会社を手伝っていた次男に生前、「相続を放棄しろ」と語り、遺言には会社の株全てを大手銀行に勤めていた長男に譲ると書かれていた。乗り込んできた長男と対峙する小倉太郎。父の想いはどこに?表題作他五編収録。

いずれも元銀行員だった池井戸潤が得意な銀行ものですが、大銀行ではなく地方銀行や信用金庫など、中小企業を相手にする地元密着型の金融機関を舞台にしたものが中心となっています。完全無欠なハッピーエンドという作品はなくて、ほろ苦い終わり方をするものが多いです。
「十年目のクリスマス」。10年前に火災事故で倒産した中小企業の経営者を見掛けた銀行員。当時融資を求められたのに応えられず、見殺しにせざるを得ない状況の中、必死に金策をしていたはずなのに、今はすっかり裕福そうです。この10年の間に一体何があったのか?

「セールストーク」。零細印刷会社の融資申し込みを断る銀行。担当者は何とかしてやりたいと思っていましたが、支店長が頑として首を振りませんでした。それを聞いた印刷会社社長は激怒。何やら社長と支店長の間には秘密がある様子です。窮鼠猫を噛むで、社長が取った手段は…。本作で唯一スカッとする話ですが、そのために支店長を悪人にしすぎたきらいもあります。

「手形のゆくえ」。ちょいワルを気取ってロックな生き方をしながらもそれなりに成果も挙げてきた若手銀行員が、受け取った1000万円の手形を紛失してしまいました。銀行内をくまなく探しても出てこない手形。手形の振り出し先や受け取り先を駆け回りますが、「銀行が悪い」でけんもほろろ。日頃いかに銀行が恨みを買っているかが判ります。そして遂に判明した手形の在処は…。内部処分待ったなしですが、恋は身を滅ぼしてしまうものなのか。身を滅ぼしても惜しくないだけの恋愛をしたい、なんてことも思ったりもしますが、その後がねえ…
「芥のごとく」。女手一つで20年間鉄商会社を続けてきた大阪のパワフルおばちゃん。経営は火の車ですが、その生き様に感銘を受けて、共に頑張りたいと思う新人銀行員。毎月25日は金策に駆け回ってギリギリ入金ということを繰り返えすおばちゃん社長を支えるべく、熱い稟議書を書いて応える銀行員。綱渡りながら、いい関係が築けるかと思った矢先、おばちゃん社長痛恨のミス。なんとかするべく取った手は、破滅への第一歩…。悪人が出てこないだけに、一番悲しくやりきれない話です。

「妻の元カレ」。学生時代は地味だったけど、就職氷河期の中、銀行に就職を決めて一気に「勝ち組」となった夫。妻は大学のテニスサークルの花で、イケメンと付き合っていましたが、なぜか別れて自分と一緒になってくれました。そのイケメン、就職活動に失敗してフリーター生活を送っていたということで、いわば「負け組」。ところが「負け組」イケメン、一転攻勢で会社を立ち上げて社長となりました。そして密かにイケメンと逢瀬を重ねる妻。「勝ち組」だった夫はあまりうだつが上がらない課長補佐で支店を転々。子供のいない夫婦の間に秋風が吹き始めて…。NTRか?NTRなのか!?と興奮したいところですが、そういう話ではありません。はっきり描かれていない妻の心理に視点を合わせるとまた興味深いストーリーになりそうです、長編にリメイクしても面白いのではないかな。
表題作「かばん屋の相続」。これは現実にモデルとなった事件があって、21世紀早々に京都にある布製かばんのメーカーである「一澤帆布工業」で起きた相続トラブルだ下敷きとなっています。こちらは「第2の遺言書」の登場とか長男と三男の訴訟合戦など、様々な話題を呼びました。

「かばん屋の相続」はもう少しシンプルで、親の遺言で銀行員だった長男がかばん屋を継承することになり、それまで専務としてかばん屋を実質的に経営していた次男は新会社を興します。すると職人全員が次男について退職することに。退職金を支払うために取引先だった信用金庫に融資を求める長男ですが、先行き不安ということで信用金庫はいい顔をしません。大銀行に勤めていた長男は居丈高な態度をとり続けますが、やがてなぜ次男に「相続を放棄しろ」と言っていたのかが判明する日が来ます。問題解決に10年もかかった一澤帆布工業に比べると短期で、しかもスッキリと解決しています。

しがないリーマンである私にとっては銀行というのは乏しい月給の預け先程度の認識しかないのですが、日々の生き残りに必死な中小企業にとっては喜怒哀楽の舞台なんですね。社長なんてカッケーっと思っていましたが、なればなったで苦労が絶えないようです。
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