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S先生の言葉:大脚本家・山田太一のエッセイ・コレクション

正男さん

 有望若手女優は出家するは、半島一家の正男さんは毒殺されるはで世間はたいそう騒がしいですね。いやあ、暗殺ってまだまだ過去の遺物じゃないんですね。ゴルゴ13の連載が続く訳です。

某若手女優 

 女優の出家の方はそれに比べればまだしも平和ですが…やはりいきなりだと各方面に大きな影響を及ぼすでしょうね。とりあえずあそこの教祖様は近日中に「正男です。」的な霊界からのメッセージ本を出版しそうな気がします。

S先生の言葉 

 で話はがらりと変わって、本日は山田太一の「S先生の言葉」を紹介しましょう。脚本家として有名な人ですが、山田太一の本を読んだのは初めてです。

山田太一 

 山田太一は1934年6月6日生まれで東京都台東区浅草出身。小学3年生の時に戦争による強制疎開で神奈川県湯河原町に家族で転居しました。神奈川県立小田原高等学校を経て、1958年に早稲田大学教育学部国文学科を卒業しました。

木下恵介 

 在学中から小説を書いていましたが、当初は教師になって休みの間に小説を書きたいと思っていたようです。しかし就職難で教師の口がなかったため、松竹に入社し、助監督として木下惠介監督に師事しました。木下恵介といえば黒澤明と並ぶ巨匠で、「二十四の瞳」とか「喜びも悲しみも幾歳月」「楢山節考」などの代表作があります。

岸辺のアルバム 

 1965年に松竹を退社して、フリーの脚本家となり、主としてテレビドラマの脚本を手掛けました。代表作は「岸辺のアルバム」「早春スケッチブック」をはじめ、「男たちの旅路」「ふぞろいの林檎たち」などなど。倉本聰、向田邦子と並んで「シナリオライター御三家」と呼ばれました。

異人たちとの夏 

 脚本:シナリオだけでなく、小説やエッセイも多数手掛けており、小説「異人たちとの夏」では山本周五郎賞と日本文芸大賞、エッセイ「月日の残像」では小林秀雄賞を受賞しています。「S先生の言葉」は、多数執筆されたエッセイの傑作編の第一弾として2015年10月10日に河出文庫から刊行されました。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

早春スケッチブック 

 「岸辺のアルバム」「早春スケッチブック」「ふぞろいの林檎たち」…名作テレビドラマの数々を送り続けた脚本家は、折にふれ、思いや記憶を書き留めてきた。忘れえぬ人、心に残る言葉、家族、戦後日本。頁をめくれば哀愁を帯び色気を放ち、大切な何かがよみがえる。山田太一エッセイ・コレクション第1弾。

月日の残像 

 本書には70年代中盤頃から2000年代初頭のエッセイが収録されています。身辺雑記から青春時代の回想、松竹の助監督時代の思い出、他著の解説など雑多に亘っていますが、特に面白いと思ったのは青春時代の回想でしょうかね。

ヒロポンを扱った漫画 

 表題作の「S先生の言葉」は中学校で出会ったヒロポン中毒のS先生を描いた作品です。ヒロポンとは要するに覚醒剤のことで、現代だったら問答無用で逮捕なんですが、戦後の一時期までは合法だったようで、「サザエさん」で有名な長谷川町子のマンガにも原作にもヒロポンを扱った作品があります。

ヒロポン 

 ちなみに使用すると、頭にあったモヤモヤが一気に消え去り、爽快な気分になって、体に力がみなぎるような錯覚をして、途轍もない集中力を発揮するそうです。代わりに効果が切れるとこの世の終わりと思わんばかりの苦痛が待っているそうなので、君子危うきに近寄らずがよろしいようで…

パスカルのパンセ 

 その戦争体験故の悪癖を持ったS先生ですが、授業は実に真面目だったようで、パスカルの「パンセ」の一節を引用して「宇宙は、なにも知らない。だから、人間の尊厳の全ては、考えることのなかにある」の「だから」の部分を「そうだとすれば」に変えたときの相違を縷々述べたのだそうです。「宇宙はなにも知らない」と断定できるのであれば「だから」でもいいのですが、できないのであれば(普通できませんね)「そうだとすれば」と言う方が適切であると。そして山田太一は自分には「そうだとすれば」という姿勢が足りないのであとつくづく思い知らされたのだそうです。

ふぞろいの林檎たち 

 青春時代は多感ですから、色んな人のセリフや書物の一節が大きな影響力を与えますが、S先生に傾倒するあまり、中学教師こそが教職のなかで一番重職だという思いが今でもあるとか。私も先生というものに尊敬の念を持てたのは中学生まででしたね。高校教師というのものにはどうしても批判的な見方をしてしまったような。それだけ精神的に成長して、盲信とかいうものから脱却して批判精神が涵養されたともいえるのでしょうけど。

マリリン・モンロー 

 「モンローの魅力がわからなかったころ」では、高校時代は奥手な友人の恋路を応援するために色々とバカやっています。エッセイなどで青春時代を取り上げたものは大抵バカをやっているのですが、山田太一も例外ではなかったということですね。もっとも真面目一筋で勉強ばかりしていたというのではエッセイの題材になりませんが。男子高校生なんてものは多かれ少なかれ昔も今もバカやったり余計なことやったりしているものなんですね。男の“性”なんでしょうか……

ポケットジョーク ブラックユーモア 

 「抜き書きのすすめ」では、学生時代から読んだ本の抜き書きを行っていたという話で、読み返すと当時何に感銘を受けたのかがわかって日記のような効果があるとか。また今読んでも感銘を受けたり、逆にさほど感銘しなかったりするのが、年齢を重ねても変わらない感性とか変わってしまった感性を象徴するのかもしれません。私は抜き書きはしないのですが、角川文庫の「ポケットジョーク⑤ブラックユーモア」では面白かったものに赤線が引いてあって、これを読むと感性の変化がわかって結構面白いです。一部は2012年5月20日付のブログ記事に掲載しております(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-10.html)。

性悪猫 

 やまだ紫の「しんきらり」と河合隼雄の「とりかえばや、男と女」の解説文も収録されていますが、残念ながらどっちも読んでいませんでした。やまだ紫といえば「性悪猫」ならずんぶん昔に読んで大いに感銘を受けましたね。  
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