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黒笑小説:“○笑小説”シリーズを読了しましたが…

寒波襲来

 寒波襲来。筑波嶺は「さみーな、チクショーメ!!」程度で済んでますが、雪の地域はさぞや大変なことでしょう。身に覚えがあるので、心からお見舞い申し上げます。またセンター試験ということで、受験生も大迷惑を被ってたりするんでしょうが、受験といえば寒波が来るのではなく、寒波が来る時期に入試をやっているんじゃないかという。欧米のように9月新学期というのもありなんじゃないですかね。

 本日は東野圭吾の「黒笑小説」を紹介しましょう。東野圭吾のブラックさを多分に含んだユーモア短編集“○笑小説”シリーズの第三弾で、これで全四冊をコンプリートしたことになります。例によって順番はバラバラに読んでますが。

黒笑小説

 「黒笑小説」は2005年4月26日に集英社より単行本が発行され、2008年に集英社文庫版が発行されました。文庫版では単行本とは収録順序が変わっていますが、これは次作「歪笑小説」が小説家とか出版業界の内幕を暴露する連作短編集になっていることと関連していると思われます。

 つまり、「黒笑小説」に既に先駆けとなる小説家をテーマとした短編が収録されており、文庫版ではそれをひとまとめにして前半に置いているのです。登場人物も共通なので、集中させた方がわかりやすいだろうという配慮でしょう。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

単行本黒笑小説 

 作家の寒川は、文学賞の選考結果を編集者と待っていた。「賞をもらうために小説を書いているわけじゃない」と格好をつけながら、内心は賞が欲しくて欲しくてたまらない。一方、編集者は「受賞を信じている」と熱弁しながら、心の中で無理だなとつぶやく。そして遂に電話が鳴って―。文学賞をめぐる人間模様を皮肉たっぷりに描いた「もうひとつの助走」をはじめ、黒い笑いに満ちた傑作が満載の短編集。 

 正直、いつもなら連作ものを順番に読まなくても「図書館になかったんだよわっはっは」で済ませるのですが、本作と「歪笑小説」だけは順序よく読みたかったです。その方が絶対面白いので、これから読まれる方は、第一作「怪笑小説」、第二作「毒笑小説」はともかく、第三作「黒笑小説」→第四作「歪笑小説」だけはぜひ順番どおりに読みましょう。

 もうひとつの助走

大いなる助走 

 明らかに筒井康隆が文壇を風刺した記念碑的作品「大いなる助走」を意識したタイトルですね。直木賞とおぼしき文学賞に五度目のノミネートとなった小説家寒川心五郎の受賞を待つべく、レストランに集まった各出版社の編集者達。寒川はどうせダメだ的なことを言いつつも本心では賞が欲しくてたまりませんが、受賞を信じていると言う編集者達は内心「無理だな」とつぶやいています。そんな時に主催者の編集者宛に電話が掛かってきますが…。「歪笑小説」の「引退発表」に登場する寒川先生の初登場作ですが、いきなり風向きが良くありません。寒川先生の姿は、長い間売れなかった東野圭吾の不遇時代の投影でしょうか。

 線香花火

線香花火 

 灸英社(名前のモデルは明らかに集英社)の小説灸英新人賞に応募した「撃鉄のポエム」が、見事受賞した新人作家の熱海圭介。受賞したことで有頂天になった熱海は、友人や親戚縁者にちやほやされて有頂天になりましたが、仕事では上司の反応は相変わらずで、取引先からも馬鹿にされてばかり。キレた熱海は…。「歪笑小説」で「夢の映像化」「罪な女」「ミステリ特集」「戦略」と、何と四編で主役を張る俗物にしてダメ作家の熱海圭介初登場作品です。最初から笑えるなあこの人は。しかし新人賞を与えておいてやたらぞんざいな扱いをする灸英社の編集者も結構ムゴい。

 過去の人

過去の人Tシャツ 

 新人賞を受賞して一年後、作家達が集まる受賞記念パーティに招待された我らが熱海圭介。小説灸英新人賞は灸英新人賞に一新され、虎馬文学賞、灸英功労賞と合わせて灸英三賞と呼ばれるようになっています。一年遅ければ盛大なパーティーで祝福されたのにと思う熱海ですが、それでも受賞に誇りを持ち、目立とうと頑張ります。「作家 熱海圭介」の名刺には笑いました。裏面がまた大笑い。見たことないわそんな名刺。なお、今回の新人賞受賞者は、「歪笑小説」の「序ノ口」「天敵」「職業、小説家」で主役を張るもう一人の若手作家唐傘ザンゲです。ペンネームは突拍子もないですが、編集者達の評価は熱海圭介と大違いで非常に高いのです。新人賞を受賞した後はもう「過去の人」という編集者のセリフがキツいです。

 選考会

芥川賞選考会 

 新設された「第1回灸英社推理小説新人賞」の選考委員になった寒川心五郎先生。とうとう賞とは無縁でしたが、選ぶ側になったことに大喜びです。同様に選ばれた作家の友引三郎と轟木花子とともに選考を始めますが、それぞれの意見は全く異なり大激論に。しかし、これは架空の賞であり、出版社には別の恐るべき目論見があったのでした…。三人の作家はそれぞれが推す作品が異なって激論(かなり低レベル)を行いますが、揃って「ダメ」としたのが唐傘ザンゲの「虚無僧探偵ゾフィー」。しかしこれこそは灸英社の編集者達がイチオシとする傑作だったのです。ここまでの四編が「歪笑小説」に直結していきます。

 巨乳妄想症候群

巨乳の人 

 肉マンやはげ頭など、巨乳に近い形のものがなんでも巨乳に見えてしまうという巨乳妄想症候群に陥ってしまった私。友人の精神科医タムラに見て貰い、投薬治療を行うが、今度は症状は別の方向に出てしまいます。なんと女性が全員巨乳に見えてしまうという。でも見えるだけで、触ってみれば貧乳はやはり貧乳なんですが。見てるだけでいいやとウハウハに喜んでいた私ですが、そこに素敵な巨乳の彼女が出来ます。でも本当に巨乳なのかが…

 インポグラ

これはバイアグラ 

 飲むとインポテツになる薬「インポグラ」が発明された。そんものいるかという男達の声の中、夫の浮気対策として女性陣には大好評で、売れ行きは順調に伸びていきますが、なぜかある時から全く売れなくなってしまいます。その理由は…。結論だけ言うと女ってコワイ。そして男ってバカだ。

 みえすぎ

恐怖のスギ花粉 

 突然、空気中のチリやホコリなどの微粒子がはっきり見えるようになってしまった俺。当初は驚いていたが、慣れると案外面白くなくなってきました。しかしその能力が次第に強まっていき、ありとあらゆる微粒子が見えるようになってしまいます。度なし眼鏡で対応できるのですが、ある日壊してしまったら…

 モテモテ・スプレー

フェロモン香水 

 性格もルックスもそこそこなのに、女性には「お友達のままで」と言われ続けるタカシ。なんとかもてたいと怪しげな研究所を訪ね、もてる薬を手に入れます。しかし、タカシの「もてない度」はただ事ではありませんでした。MHC(主要組織適合遺伝子複合体)という、理系の東野圭吾ならではの単語が登場してきます。ガリレオシリーズで扱ってもいけそうな話ですが、MHCは免疫反応に必要な多くのタンパクの遺伝子情報を含む大きな遺伝子領域で、これが自分と形が異なる異性が“モテる”のだそうです。生まれてくる子供が両親のMHCからいいとこ取りできうるという。しかしタカシは、MHCがほぼフラット、つまりメリットが何一つないのでモテないのだという

 シンデレラ白夜行

堀北真希の雪穂 

 継母や義姉達にいじめられまくるシンデレラ。ですが、シンデレラが「白夜行」のヒロイン雪穂だったとしたら、という異色作。セルフパロディなのでどこからも苦情は出ませんね。雪穂は美貌と頭の良さを兼ね備えている人でしたが、それがシンデレラならなんとも凄い展開になります。いや、展開はほぼシンデレラなんですが、何もかも計算尽くかだったのかという女の怖さを感じます。12時に魔法がとけてもなぜガラスの靴は残ったのかという長年のツッコミへの回答とも言えますな。

綾瀬はるかの雪穂 

 ちなみに雪穂役は、映画版では堀北真希が、テレビドラマ版では綾瀬はるかが演じていますが、なかなかにナイスなキャスティングですな。ガッキーもいいかも知れない。“純白の闇”という雰囲気が雪穂にはよく似合います

 ストーカー入門

ストーカー 

 唐突に華子にふられた僕。理由もわからないのでしばらく冷却期間を置こうと思っていたら、華子から苦情の電話が。好きならストーカーになるものじゃないのかと。仕方なくストーカーのまねごとを始めますが、華子からはダメ出しばかり。ですがお仲間のストーカーは他にもいて…。これからはストーカーの一人もいないといい女扱いされない時代が来るのか?私は根性がないからストーカーは無理ですね。

 臨界家族

魔法少女グッズ 

 魔法少女のアニメにはまりまくった娘に、グッズをせがまれる川島哲也。甘やかさないぞ、絶対買わんぞという姿勢を見せますが、結局は娘の無視に負けて買わされるハメに。しかし、川島の知らないところで、彼の一家は玩具メーカーに目を付けられていたのでした。プ○キュアとかにハマる娘さん達をもったパパは人ごとではない話ですな。

 笑わない男

ホテルのベルボーイ 

 まったく笑いを取れなかった出張先で、先方の手違いで豪華ホテルに泊まることになったお笑いコンビの拓也と慎吾。最初は喜んでいましたが、明日も受けなければクビということに。とりあえず全く笑わないホテルのボーイを笑わせようと悪戦苦闘しますが…。オチがブラックすぎます。もうホストにでもなれや二人とも。

 奇跡の一枚

ココア奇跡の一枚 

 父親似で美貌に不自由する女子大生遥香は、ゼミ合宿の際の写真に、自分でも自分とは思えないほど綺麗に移った写真を見つけます。写真をせがまれていたメル友の男性につい送ってしまったところ、男性は大興奮。是非会いたいと言われますが…。オチはともかく、息子は母親似、娘は父親似なんて言いますが、本当なんでしょうかね?
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