レイクサイド:「お受験」をテーマにした殺人ミステリー

今朝の福島県沖地震には驚きましたね。マグニチュードは7.4ということで、あの阪神淡路大震災(M7.2)をも上回る規模でしたが、幸い最大震度は5弱で死者は出ませんでしたが、津波警報にはあの悪夢が甦りました。

私も電車が遅れてちょっとは影響を受けましたが、東日本大震災を思えばこれしき何てことありませんね。しかし、これも東日本大震災の余震なんだとか。M8.4の超巨大地震だっとはいえ、どれだけ引っ張るんだ。津波が川に入り込んでポロロッカみたいになってましたよ。

地震と津波はおっかないので気分を変えて本題に。本日は東野圭吾の「レイクサイド」を紹介しましょう。週刊小説1997年2月7日号から9月5日号まで連載された「もう殺人の森には行かない」を下敷きに描き下ろされた作品で、2002年3月に単行本が、2006年2月に文庫本が刊行されています。例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。
妻は言った。「あたしが殺したのよ」―湖畔の別荘には、夫の愛人の死体が横たわっていた。四組の親子が参加する中学受験の勉強合宿で起きた事件。親たちは子供を守るため自らの手で犯行を隠蔽しようとする。が、事件の周囲には不自然な影が。真相はどこに?そして事件は思わぬ方向に動き出す。傑作ミステリー。

修文館という私立中学校の受験合格を目指す4組の夫婦が、おそらく長野県あたりにあるらしい架空の湖・姫神湖の湖畔の避暑地で受験合宿を行います。まあ合宿状態なのは子供達で、親は料理を作ったり当番で子供達の様子を見たりしつつ、テニスをして遊んだりしています。
主人公の並木俊介はアートディレクター(どういう仕事?ハイパーメディアクリエイターの類い?)で、一人だけ遅れて姫神湖にやって来ます。彼にも息子がいますが、妻である美菜子の連れ子なので本当の親子ではありません。なので合宿までして中学受験をすることにもやや冷ややかな態度です。

それよりもなによりも、妻の美菜子とは完全に冷え切った関係で、俊介には会社の部下である高階英里子という秘書兼愛人がいたりします。美菜子とは別れて英里子との結婚を匂わせている俊介は、一方で美菜子が浮気しているのではないかと疑っており、証拠を掴んで慰謝料など払わずに離婚しようと考えており、英里子に証拠収集を依頼したりしています。
そして姫神湖の別荘にこれみよがしにやって来た英里子。レイクサイドのホテルに部屋をとって、夜に俊介と会合を持つことを約束します。美菜子の浮気の証拠を掴んだのか?しかし俊介は英里子の話を聞くことは出来ませんでした。落ち合う約束のラウンジに英里子は現れず、別荘に戻った俊介は自分達の部屋に倒れた英里子に出くわすことになります。そして美菜子は「私が殺した」と。

合宿の夫婦達は、発覚したら子供達の受験に差し障りがあるとして、事件の発覚を阻止し、証拠を隠滅するために協力すると申し出てきます。自分達も罪に問われかねないというのに、強固な団結を見せてくる夫婦達に違和感を感じつつも、なにしろ自分の妻の犯行ということで積極的に死体の隠蔽や証拠隠滅に関わる俊介。
とりあえず遺体の顔を岩で潰して(!)身元がわからないようにして姫神湖に沈め、美菜子を英里子の代役に立ててホテルのチェックアウトをさせ、生きて避暑地から出ていったように装わせ、さらには英里子のマンションに赴いて荷物を置き、自分達と関係ないところで失踪したように偽装します。不倫関係とはいえ愛していた女によくそんなことできるな俊介。

一連の作業をこなして、後は合宿が終わるのを待つばかり。それにしてもこの夫婦達の結束はどういうことだと疑問を持ち続ける俊介。そして遂に辿り着いた真相は…
本作は一見俊介視点のように見えるのですが、視点はほぼ俊介について回るものの、俊介が何を考えているのかはセリフ以外からは窺い知れないようになっています。なので俊介が何に気づいたのかとか、何を疑問に思ったのかなどはその時点ではよく分かりません。推理力がある人なら分かるのかも知れませんが。

それにしても、子供のお受験というものに、親はここまで一所懸命になるのかという。いい中学校に入れればそりゃあそれにこしたことはないでしょうが、名門中学校はゴールじゃないしなあ。その後もいい高校、いい大学(ここまではエスカレーターで、というケースもありですが)、いい就職先、いい嫁さんと続いて行く訳でしょう。まあ大学以降はもう親の出る幕ではないかも知れませんが、そこまでレールを敷いてやらなければならないものか、またそのレールを走らねばならないものか。

2005年1月に「レイクサイド マーダーケース」というタイトルで映画化されています。並木夫妻は俊介が役所広司、美菜子が薬師丸ひろ子というなかなかなキャスティング。ただし4組の夫婦は3組に減り、並木夫妻の子供は男の子から女の子に変わったりしています。

実は合宿までさせて子供の尻を叩いて勉強させる傍ら、親は親で学校側に接触して便宜を図って貰おうとするという。それが「親の愛」なのだそうですが、金だけではなく、お受験ママの身体まで要求されるという、どこのAVの設定だと言いたくなるような「枕営業」を強いられるようです。そりゃあ薬師丸ひろ子みたいなママなら学校側のおっさんも大喜びかも知れないけどさあ、二次元の世界はいざ知らず、三次元においては美人でスタイルのいいお母さんばっかではなかろうに。むしろ頼むから勘弁してくれというお母さんが来ても抱くのでしょうか、学校の人?NTR属性ならそれでもいけるんですかね…

日下部拓海の作画でコミック化もされています。表紙の眠ったような表情の女性が英里子、手前の女性が美菜子のようですが、こんな美人と結婚しながら改めて離婚しようという俊介の気持ちがよく分かりませんな。ゲージツカだから?(意味不明)

スポンサーサイト