機密漏洩:警視庁公安部・青山望シリーズ第4弾

「魔法少女育成計画」、秋季アニメの白眉ではないでしょうか。どんどん凄惨な展開になってきていますが、魔法少女を半減させるという当初の方針を超えて死者がでそうです。「魔法少女まどか☆マギカ」と違うのは、特に魔法少女に興味・関心がなくても、ゲームアプリをやっていたら勝手になってしまったという人がいることや、見かけは全員魔法少女でも「中の人」は少女とは限らないというところでしょう。男だろうとBBAだろうと魔法少女になってしまうという。

あと固有の能力が極端に異なるので、戦闘向きの魔法少女とそうでない魔法少女の差がありすぎます。本来は人助けをして報酬としてマジカルキャンディーを集めるという設定でしたが、マジカルキャンディーの獲得が最も少ない魔法少女が“脱落(=死亡)”するだけに留まらず、死亡した魔法少女が出ればその月の脱落者はゼロになるという設定になったので、マジカルキャンディー集めよりも魔法少女同士の戦闘が主体になってしまいました。

主人公のスノーホワイト(姫河小雪)は困った人を助けること(=マジカルキャンディーを集めること)に特化した魔法少女なので、戦闘はからっきし。そもそも魔法少女同士で戦うなんてことを考えもしなかった子なので、今の展開は「もうやめて!スノーホワイトのライフはとっくにゼロよ!」状態です。

SAN値ピンチなシーンが多くて、いつレイプ目になっても闇堕ちしてもおかしくありませんが、清純そのもののの美少女が脅えまくる様はたまりませんね。「その美しい顔が歪むのを見るのはなんとも快感じゃて~」(by独眼鉄先輩)「これでスノーホワイトがブラッドクリムゾンになっちまったな」(by宋嶺厳)

それはさておき(笑)、本題です。本日は濱嘉之の警視庁公安部・青山望シリーズの第4弾「機密漏洩」を紹介しましょう。実は同シリーズ第5弾「濁流資金」の方を先に読んでしまって(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-1383.html)、とんだ順逆自在の術なんですが、まあそれがいつものユースフクオリティー。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

長崎・平戸に中国人5人の射殺死体が難破船に乗って漂着した。船内には元自衛官の指紋が――。麻布署警備課長の青山望は、同期たちと情報を共有し、日本の原発技術から永田町までをも巻き込んだ中国国内の大きな権力闘争に気づく。そして、浮上する意外な共犯者、流出する機密……。どこまでもリアルな書き下ろし警察小説シリーズ第4弾。

警視庁の係長から所轄署の課長になった青山達“例のカルテット”は警部から警視に昇任。私は署の課長(例えば捜査第一課長とか)は皆警部なのかと思っていましたし、大抵の警察小説では捜査の指揮を執るのは鬼警部ということになっていましたが、濱嘉之によると警部は一般と管理職に分かれ、一般は警視庁係長や署の課長代理、管理職は署の課長となるのだそうです。つまり青山達は当初警視庁で係長をしていたので警部の一般だったのが、警部の管理職になって所轄署に出て課長となり、さらに警視に昇任した訳ですね。

警視も管理監級と所属長級に分かれ、管理官級は副署長、警視庁管理官、署の課長、所属長級は警視庁課長・理事官、署長となるそうです。本作では警視に昇任したてなので管理官級の警視で、次作「濁流資金」では本庁に戻って管理官になっています。署長とかになるにはさらに所属長級の警視にならないといけないのですね。こういう警部や警視にも内部に段階があるという話はさすが元警視庁警部ならではだなと思います。普通の小説家では知りもしないことでしょう。

今回は香港と東北という中国マフィアの対立を軸に、半グレ団体や暴力団を絡めて日本の政財官を巻き込んだ一大疑獄事件を一網打尽にする話で、第3弾「報復連鎖」から続く展開となっています。というか暴力団岡広組や半グレ団体東京狂騒会、そして中国マフィアはシリーズに一貫して登場してくる敵ですね。

今回は警察内部での腐敗、特に警察キャリア官僚の腐敗が描かれていて、現職でおかしくなる奴や幹部を務めた後でおかしくなる奴など、いろいろいます。また、公安課が刑事課や生活安全課からあまり良く思われていないなど、普通の警察小説でも良くある展開が出てきますが、やはり濱嘉之の場合はその切り口が極めてインサイダー的で、通り一辺倒ではないのがいいですね。

興味深いのは警察にもパワハラ・セクハラ防止の波が来ていることです。いや、もう全日本的な風潮なんで警察だろうが自衛隊だろうが逃れられないのでしょうが、パワハラ事案を起こした過去のある職員は管理職として出世させないというルールが確立しているのが興味深いです。もちろんずっとパワハラが表面化せず、管理職になってから地位に目が眩んで(?)堂々パワハラデビューという人もいるんでしょうけど、やはりパワハラをする人はそれ以前から兆候があるのが普通のようです。パワハラをしても真摯に反省して再発させないなら、再びチャンスを与えてもいいとは思いますが、パワハラをする奴に限って反省が見られないことが多いのですよね。……だんだん私自身の経験に突入しそうなのでこの辺りで止めときますが。

中国に関しては、マフィアのみならず中国共産党とか中国政府といった中国の国全体について言及しているんですが、結構ラディカルな主張になっています。このあたり、中国の消息筋が読んだらどういう感想を持つのかちょっと知りたい気がしますが…やはり一笑に付すのかなあ。でも権威筋が言っていることが必ずしも正しいかと言えば…。

警察小説を書く小説家はあまたあれど、刑事警察の敵役とか悪役として描いた作品はありますが、公安警察そのものを描いた作品は非常に少ないですね。そして今後、濱嘉之の向こうを張って本格邸に公安警察ものを書こうという人は日本にはいないんじゃないかと思います。

スポンサーサイト