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飛躍:「交代寄合伊那衆異聞」シリーズ読了しました

小春日和

 小春日和の穏やかな良い天気でした。だから11月はすきさ。小春日和って晩秋から初冬にかけて使いますが、昔は旧暦10月を小春と呼んだらしいです。といって春に小秋と呼ばない不思議。

北米のインディアン・サマー 

 英語では同様の気候をインディアン・サマーと言いますが、なんでインディアンの夏なんでしょう。諸説あるそうですが、ちょっと暖かくてもいずれは冬に向かう“偽物の夏”というニュアンスで、先住民への偏見を込めているという説がリアリティありそうとか思ってしまいます。インディアンの伝説では、冬眠前の神様が吸ったタバコの煙で暖かい日が来るのだとか。

飛躍 

 本日は佐伯泰英の「交代寄合伊那衆異聞」シリーズ第23弾「飛躍」を紹介しましょう。「交代寄合伊那衆異聞」シリーズについては、これまで当ブログでも2012年12月21日の記事(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-225.html)と2014年1月22日の記事(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-623.html)で取り上げており、今回が三回目ということになりますが、最後でもあります。そう、完結してしまったのです。

茶葉 

 前回が第18弾「再会」まででしたので、以後の巻のあらすじをかいつまんで紹介しておきましょう。まず第19弾「茶葉」。「再会」で宿敵でもあった黒蛇頭(要するに中国マフィア)の内紛に巻き込まれ、囚われの身になった主人公座光寺藤之助ですが、わりとあっさりと脱出。ついでに大陸を見ておこうと、長江を遡っていきます

中国の茶畑 

 中国の茶葉を巡っては、紅茶に目のないイギリスと清国の対立が激しく、茶葉の秘伝を盗もうとする茶葉密偵(プラント・ハンター)が暗躍する中、交易品として日本の茶葉も使えないかと模索します。一方、東南アジアでの初貿易を終えた妻玲奈と本隊は、交易品を満載してバタビアを出港、帰途に就きます。

開港 

 第20弾「開港」。帆船の船倉を一杯にして初交易から戻ってきた玲奈達本隊と合流した藤之助。長崎では洋上披露宴としゃれ込みます。との二人の洋上披露宴に、長崎は沸く。一方、権力を握った幕府の大老井伊直弼は、藤之助と東方交易の力・権益を一手に握るべく、新たな謀略を巡らせます。日本は下田と函館の他、横浜が開港され、これまでの東方交易の本拠地であった長崎の貿易港としての地位が揺らいでいきます。

暗殺 

 第21弾「暗殺」。安政7年(1860年)3月の雪の桜田門外。藤之助と東方交易を引き込もうとし続けていた大老井伊直弼の駕篭が浪士団に急襲されます。これで大老からは逃れたものの、日本の行く末は一層混沌としていきます。しかし我が道をいく藤之助は、インド洋で英国も手を焼く海賊団と一戦を交えて壊滅させたほか、海賊団の襲撃で中破した英貿易船ベンガル号を積み荷ごと購入します。修理は必要ですが、これで東方交易の船団は三隻体制に。

血脈 

 第22弾「血脈」。宿敵だった黒蛇頭の大親分老陳は、死の床に藤之助を呼び、長崎に孫娘がいることを明かし、庇護を頼んで逝きます。長崎で発見したのは、しかし双子の兄妹でした。これを保護して、老陳の遺産ともいえる巨大な宝石ごと玲奈の実家である高島家に預けた藤之助は、今度は台風で消息を絶ち、日本の悪商人に拿捕された東方交易船団の一隻・ストリーム号の捜索に向かいます。今巻末尾で作者は次巻で完結とアナウンスしました。

安政の大地震 

 第23弾「飛躍」。安政2年(1855年)の安政江戸地震からスタートした本シリーズもかれこれ6年が経過して今や文久元年(1861年)。公武合体やら尊皇攘夷やらと世間はますます騒がしくなる中、14代将軍家茂への皇女和宮の降嫁が計画され、またもや幕府は藤之助達に和宮一行を海路運ばせようとしてあれこれ蠢動します。

累計350万部 

 一方、将来の貿易の中心地は横浜と考えて東方交易横浜支店を立ち上げた藤之助ですが、攘夷浪士の襲撃を受けて支店は焼き討ちされ、長崎の中国人商人のリーダーで、東方交易の共同出資者であり藤之助と玲奈の後見人的立場にあった黄武尊(黄大人)が殺害されてしまいます。

23巻完結セット 

 恩人の仇討ちを決意した藤之助は、またも交易を玲奈に委ね、横浜に向かいます。そして調査の結果、攘夷浪士を装った老中安藤信正の用人棚倉茂兵衛の凶行であったことを知ります。情勢の悪化により横浜を一旦撤退することを決めた藤之助は、仇討ちを棚倉一行に留めるか、その主人である安藤信正まで標的にするか、決断を迫られます。

桜田門外の変 

 「血脈」で完結を決意した理由として、幕末に突入して様々な著名人が活躍する時代になると、あくまでフィクションである座光寺藤之助とその一党を活躍させにくくなったからだそうです。そんなの最初から判ってたんじゃないのかと思えますが、作者自身も甘く考えていたのかも知れません。

ベンガル号のイメージ 

 SFならそこからIFの世界に突入させて、藤之助達の大活躍で全く異なる明治維新を迎えるという展開もありなんですが、時代小説の他に冒険小説やミステリー小説なども書いていた佐伯泰英も、SFの造詣は深くないようで、そこまで踏み出せなかったようですね。ケイオスケイオスの日本を尻目に再び貿易の旅に向かう藤之助。再び日本に戻ってくるとは言っていますが、それを書かれることはないのでしょう。

コルト・ウォーカー 44口径 

 シリーズを回想すると、藤之助をあまりにもスーパーマンにし過ぎたかな、という印象があります。どんなピンチに陥っても「どうせなんとかなるんだろ」と思わせる、まさに和製ジェームス・ボンド。剣は達人、銃も名手で、外国語は苦手ですがそこは達者な妻玲奈がいるという。呼んでいて爽快ですが、これほどの逸材が幕末の日本にいたらそりゃあ歴史が変わるわ(笑)。

剣豪達 

 ラスト、突如阿部鉄扇兼次という剣豪が現れ、「その名が煩わしい」と言って勝負を挑んできます。あちこちで藤之助の姿を観察していて手の内を知っており、冨田天真正流という剣術の達人でもあり、珍しく藤之助を圧倒しますが、捨て身の攻撃でやはり敗れてしまいます。この人、もっと前から登場させて伏線を敷いておけば最後の敵としてもっと存在感があったと思うのですが、今回いきなり登場して、なぜか極秘行動している藤之助の行く先々に登場するというのはいささかチートに見えました。

ショート・ラウンド 

 あと後半にも味のあるキャラが登場してきたのですが、あまり活躍できないままに物語が終わってしまったのがちょっと残念です。上海の中国人少年李頓子はお気に入りだったらしくて長く活躍しましたが。

藤源次助真 

 あと座光寺家には将軍家と「首切安堵」という密約があり、将軍が戦いに敗れて死ぬ際にはその首を伐って敵に奪われぬようにするのが任務でした。そのためだけに旗本(交代寄合)を務めていたといっても過言ではなく、藤之助もしばしば「首切安堵」をどうするべきかと思案に暮れていたのですが、最後はあっさり「幕府では誰も覚えてないからいいや」的な放り投げをしてしまいました。それなら旗本を改易された際に、「首切安堵」の密約を幕閣の誰も知らなかったことが明らかだった訳で、その時点で放り投げて良かったじゃないかしらん。

スペンサー銃 

 何はともあれ、2005年から10年かけて完結した一大シリーズ、楽しませて貰いました。お疲れ様でした。
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