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砂漠の惑星:宇宙には、人間が触れてはならない領域がある

コキアが美しい季節です

 ひたちなか海浜公園のコキア(ホウキグサ)が見頃になっています。ガルパンの聖地巡礼で大洗に行く方は、ついでにこちらにも寄ってはいかかでしょうか。もちろんコキアを見にひたちなかに向かった人が大洗に寄ってもいいんですがNE!しかしこんなに秋が深まったというのに、最近微妙に「アツゥイ!」なんですよね。もういい加減にして欲しいですね。

砂漠の惑星 

 本日はスタニスワフ・レムの「砂漠の惑星」を紹介しましょう。スタニスワフ・レムの作品は初めて読みました。

スタニスワフ・レム 

 スタニスワフ・レム(1921-2006)はポーランドのSF作家で、以前は日本で「スタニスラフ・レム」と紹介されることが多かった人ですが、これは初期はロシア語版から重訳したケースが多く、ロシア語読みになってしまっていたせいだそうです。いや、実は私もロシアの作家だと思っていました。

金星応答なし 

 少年時代には知能指数が180もあったそうです。第二次大戦後に雑誌に詩や短編小説を発表し、1951年に「金星応答なし」で本格的にSF作家としてデビューしました。初期の作品は社会主義リアリズム(社会主義を称賛し、革命国家が勝利に向かって進んでいる現状を描き、人民を思想的に固め革命意識を持たせるべく教育する目的を持った芸術の表現方法)の影響下にあり、レム自身はその価値を否定しています。

エデン 

 1959年から1964年に書かれた「エデン」「ソラリスの陽のもとに」、そして「砂漠の惑星」は、後にファーストコンタクト三部作と呼ばれ、異星人とのディスコミュニケーションがテーマとなっています。三部作の中では特に「ソラリスの陽のもとに」が有名で、「惑星ソラリス」(1972年、監督アンドレイ・タルコフスキー)および「ソラリス」(2003年、監督スティーブン・ソダーバーグ)として2度映画化されています。

ソラリスの陽のもとに 

 「砂漠の惑星」は1964年に出版されたファーストコンタクトシリーズの第三弾で、原題は「Niezwyciężony (無敵)」です。タイトルだけ見ると、フランク・ハーバートの「デューン/砂の惑星」に似ていますが、内容は全然異なっています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 砂の惑星

 6年前に消息をたった宇宙巡洋艦コンドル号捜索のため“砂漠の惑星”に降り立った無敵号が発見したのは、無残に傾きそそりたつ変わり果てた船体だった。生存者なし。攻撃を受けた形跡はなく、防御機能もそのまま残され、ただ船内だけが驚くべき混乱状態にあった。果てなく続く風紋、死と荒廃の風の吹き抜ける奇怪な“都市”、偵察機を襲う“黒雲”、そして金属の“植物”…探検隊はこの謎に満ちた異星の探査を続けるが!? 

旧文庫版砂漠の惑星

 「無敵」というのは琴座星系の宇宙本部基地に所属する二等巡洋艦の名前ですが、“砂漠の惑星”レギスⅢの真の支配者を指す言葉でもあります。同型艦のコンドル号捜索のためにやってきたのですが、そもそも6年も経過してからノコノコやってくるなんて…と思ってしまいます。

旧版砂漠の惑星 

 当初はミステリー仕立てで、コンドル号遭難事件は概況が判明するほどに謎が深まっていきます。生存者はないのですが、石鹸に歯形がついていたり書物が引き裂かれていたりと、船内は尋常ではありませんでした。船体は傷ついていましたが、動力や備品類は無事で、食料も十分残されていました。一体乗組員はどうして死んだのか?

 そしてレギスⅢも調査するほどに謎が深まります。海には魚類や軟体動物が棲息しているのに、陸地には植物も含め一切の生命が存在しません。そんな中に奇怪な廃墟が発見されますが、とても知的生命体が居住できるようなものではありませんでした。調査を続ける無敵号乗組員達ですが、今度は彼らが奇妙な攻撃にさらされることになります。

惑星タトゥーイン 

 本書は、まず50年以上前の作品ということをさっ引いても、非常に古めかしく感じます。無敵号は光子ロケットで、冷凍睡眠装置を有するのですが、コンピューターは磁気テープを使っていたり、ランプが明滅したりと、非常に古典的描写がされています。正直光子ロケットも冷凍睡眠装置も未開発である原題のコンピューターの方がかなり進んでいるような。テクノロジー関係は概ね古典的描写が多いです。バリアーを張るエネルギーボート、人やロボットが乗り込む万能車とか水陸両用車(その差はなんなんでしょう)は陸上を走るだけで飛行機能はなく、円盤飛行機やスーパーコプターといった飛行機械はありますが、その傍らで観測気球を使っていたり。

 無敵号を襲撃してくる黒雲は無線を妨害し、電子機器や人間の脳を強力な磁力で“初期化”してしまうことが判明します。つまりコンドル号の乗組員はほぼ全員が白痴化してしまったようです。そして黒雲の正体について、乗組員の一人が仮説を提唱します。

他の映画のイメージショットその1 

 琴座星系には高度の文明を持つ惑星がありましたが、太陽の新星化で滅亡したことが知られていました。しかし、宇宙進出を可能にしていあ彼らは滅亡前に脱出を試みたと見られ、レギスⅢにも宇宙船で訪れた模様です。しかし事故などにより乗員は死亡し、自動機械だけが残されたと。

 当時のレギスⅢは陸上にも生物がおり、主を失った自動機械達は自分達の存続だけのために、生物や他の自動機械達と「生存競争」を開始することになりました。都市のような廃墟も、自動機械の一種で、生存競争に敗れて滅んだ残骸だったようです。

砂漠のイメージショット 

 最終的に生き残ったのは、ごく小さなパーツのような自動機械で、単体では虫のように無力な存在ですが、他のパーツと合体することで集団的な知能を見せるようになり、圧倒的な数と、これまで他の生物・自動機械を滅ぼしてきたノウハウを生かして攻撃してくるようになります。

 無機物でありながら自己変革と自己増殖を実現した自動機械はほぼ生物と変わりありませんが、理性を持たず、他者を絶滅させることのみに特化してしまっていましたそんな自動機械に、人類はどう対処するべきか?

砂漠のイメージショットその2 

 切り札であるキュクロペスという反物質砲を備えた80トンの戦車すら狂わせてしまった黒雲ですが、絶滅の効率性を突き詰めたが故に、直接殺すのではなく、白痴化させて自滅するに任せるという方法を採るようになっているので、すでに白痴化したように思わせる脳波に似せた偽装電流を流すことで、それ以上攻撃されないことが判明しましたが、コンタクトも絶滅も不可能な自動機械に対しては、ただ撤退することしかできませんでした。

 主である知的生命体が滅亡した後も生き残って活動を続ける機械知性という話はよくSFで見掛けますが、知性も理性も持たず(ただし群体となる蟻とか蜂のような集合知のようなものは持つ)、ひたすら自分達以外の他者を滅亡させることのみに特化してしまった自動機械というのは非常に興味深いです。全部科学者の仮説なんですが、描写をみるとほぼ間違いはないところでしょう。

砂漠のイメージショットその3 

 主を失って存在する目的もないはずなのに自己変革と自己増殖を続ける自動機械…その意味のなさには唖然としますが、考えてみれば我々有機体生物だって、他者から見た時に生きる目的というのは何かあるんでしょうかね。

 例えば、我々地球の生命も、実在した「神」なるものに仕えるために生み出されたものの、なんらかの理由で「神」は去ってしまい、既に本来の目的は失ったにも関わらず、自律的に進化を続け、しまいには「神」はいつか戻るとか、「神」は自らの中に存在するとか言い訳を並べ、自らを欺瞞して生き続ける「人間」という生物を生み出した……な-んて。その場合、他の知性体が地球を訪れたら、我々を本書の自動機械と同じように無目的のまま増殖を続ける存在だと見なすのかも知れませんね。そんな考えこそがセンス・オブ・ワンダー!

デスバレー 

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