戦闘妖精・雪風(その2)

昨日に続いて戦闘妖精・雪風の続きです。こちらは「戦闘妖精・雪風〈改〉」の表紙です。「グッドラック、戦闘妖精雪風」とマッチした表紙になった他、内容も若干変わっているようですが、私は旧作一筋です。
本書を読むと痛感するのが、戦闘機の機動や操縦に関する「専門用語」の多さです。アメリカ軍のジェット戦闘爆撃機のフライト・マニュアルを参考にしただろうと解説に書かれていますが、ここは「なんかすごい操縦をしている」「攻撃や回避のための手を尽くしている」と考えて読み飛ばしていくのも正解の一つでしょう。また、最近はPCさえインターネットに接続していれば、様々な形で検索・調査が可能ですから、これを機会にミリタリーという深淵に進むことも生涯の楽しみを増やすことになるかも知れません。或いはフライト・シミュレーターや、エースコンバットシリーズのような良質のフライト・シューティングゲームにはまるのもよいでしょう。
さて、本書に出てくる航空機を紹介しましょう。画像はやむなく(笑)OVAのものを使わせていただきます。
まずは主人公機・雪風。

いかにも高そうな機体です。一体いくらぐらいするんでしょうか。機種はスーパーシルフです。スーパーシルフは大型戦術戦闘機シルフィードを戦術偵察用に改造したものとされていますが、後述のシルフィードを見てもらえばわかるように、全くの別人28号です。実際、設計も性能も別個の機体で、改造型というのは予算獲得のための方便とかなんとか。強力なエンジンと、情報収集のために高度な電子頭脳を搭載しており、さらに空力設計を改善し、高速時の抵抗軽減と操縦性の改良が図られているそうです。これだけの機体で決戦兵器でないなんて。
雪風は本書終盤で破壊されますが、雪風の正体ともいうべきコンピューターは、そのデータをすべて新型機メイヴに移しており、実際には機体を更新した形で生き延びています。

これがメイブです。もはや現行機の片りんもうかがえない未来マシンとなりました。メイヴはスーパーシルフに代わる戦術偵察機として開発されたレイフ無人偵察機を再び有人化した機体で、操作システムやミッション・システムも高度に自動化されており、完全自立的飛行とオペレーションが可能となっています。
次に原型機とされるシルフィード。

“風の妖精”の名を持つ、双発の大型戦術戦闘機です。スーパーシルフと区別するために、FAF内では俗にノーマルシルフと呼ばれているそうです。現在のFAFの主力制空戦闘機ですが、高価なため数を揃えられないらしく、旧式となったファーンも使用しています。こんなところでもハイローミックス戦略。やはり雪風とは似ていないですね。
ハイローのハイがシルフィードなら、ローの方がこのファーンです。

フェアリイ空軍の主力を担う、単座格闘戦闘機です。現行機でいえばF16相当でしょうか。対地戦闘攻撃システムを備え、地上にあるジャムの補給基地を自動的に捕捉して攻撃するそうですが、もはや制空戦闘には向いていません。
新型機ファーンⅡです。

フェアリィ空軍の新型戦術戦闘機で、従来の主力ファーンがジャム戦闘機の性能向上により優位を失ったため、その後継としてフェアリィ空軍に配備されました。テスト飛行と雪風との模擬空戦の様子、意表を突くラストは六話のハイライトです。元来、無地実験機構想から設計された機体であり、非常に斬新な設計が採用され、後退翼と前進翼を組み合わせた一種のW型翼を持つ-ということですが、なんじゃこりゃな機体ですね。
次にジャムの戦闘機です。まずはタイプⅠ.

ジャムの航空機の中で一般的に遭遇するタイプで、FAFの戦術戦闘機、制空戦闘機に相当すると考えられています。無尾翼機で、中央下に大きな垂直翼を持っています。エンジン形式等、不明な点が多い-というより、わからないことだらけという感じですね。
これはタイプⅡです。

ジャムの高速戦闘機で、地球側がフェアリィ星に侵攻してから当面は、ファーン戦闘機らが互角以上の性能を示していたところ、本機の出現によってその優位は失われることになったそうです。
なお、続編「グッドラック、戦闘妖精雪風」も面白いのですが、純然たる航空戦闘SF小説の趣きがあった本書に比べると、ジャムとの接触や情報戦といった感じになっていて方向性がだいぶ変わってしまっています。それはそれでいいのですが、私は本書の方が好きです。ジャムは全く訳がわからない謎の存在であるが、
フェアリィ空軍の戦術思想は、勝つのは二の次、まず第一に絶対負けるなというものだった。ジャムは依然として正体不明で、FAFはジャムの息の根を止める鍵をつかんではいなかった。勝利をかちとる戦略はなく、ジャムが仕掛けてくる執拗な攻撃から地球を守るのがFAFに与えられた任務だった。それは戦術面にも影響を及ぼした。一つの戦術的勝利は、勝利と言うよりも、ただ負けなかった、というのに過ぎない。絶望的な戦いだった。が、負けるわけにはいなかなった。(第六話より)
という悲壮感を実感できると思います。
なお、登場人物は主人公深井零(少尉→中尉)のほか、唯一の友人で上司のブッカー少佐、特殊戦の親分クーリィー准将、フライトオフィサーのバーガディシュ少尉らがレギュラーで、後は単発ゲストという扱いです。どうも私のイメージと違うのでOVAの顔は載せないでおきます(笑)。ゲストの中で、私は第五話に出てくるフェアリィ基地整備軍団・第110除雪師団・第三機械除雪隊の天田少尉が印象に残ります。コンピューターに嵌められた不幸な「英雄」…。ロボット三原則はコンピューターには当てはまらないのでしょうか?
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