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ようこそ、わが家へ:「二正面作戦」を強いられるお父さんの苦労譚

猛暑で死む

 今日は台風5号の影響によるフェーン現象が発生し、関東では最高気温は軒並み37~38度に。湿度は控えめとはいえ、体温以上の猛暑というのは勘弁です。こりゃあ熱帯不可避ですな。

ようこそ、わが家へ 

 本日は池井戸潤の「ようこそ、わが家へ」を紹介します。池井戸潤といえばすっかり売れっ子で、2010年に「鉄の骨」で第31回吉川英治文学新人賞を、2011年に「下町ロケット」で第145回直木賞を受賞して以降は、作品が次々とテレビドラマ化されています。

不倫じゃないよ 

 「ようこそ、わが家へ」は、文芸誌「文芸ポスト」に2005年秋号から2007年冬号まで掲載された後、ずいぶん後になって加筆修正の上2013年7月5日に小学館文庫から刊行されました。なんとなく、ブレイクしたので慌てて出版出来る作品が残ってないかと探したかのような気配がありますね。東野圭吾の売れなかった頃の作品にもそういう傾向があるような。ま、売れてない=面白くない、ではないので、いいんですけどね。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

ネコのガス 

 真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに、車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。直木賞作家が“身近に潜む恐怖”を描く文庫オリジナル長編。 

登場人物

 主人公の倉田太一は中小企業ナカノ電子部品の総務部長ですが、実は本籍は取引先である青葉銀行にあります。銀行では既に出世コースから外れている倉田ですが、銀行とのコネクションを強化したい中小企業に出向という形で出向いている訳ですね。
 争いが嫌いで口べたな倉田は、四人家族で平凡ながら穏やかに暮らしていましたが、内容紹介にあるように、ふとしたことからストーカー被害に遭うようになります。被害は次第にエスカレートしていき、遂には家に侵入されてお金まで盗まれてしまいます。

防犯カメラ設置 

 もちろん警察には届け出ていますが、なにしろ動きがにぶいことから、倉田家は独自にストーカーに対抗することになります。大枚をはたいて監視カメラや盗聴器発見機を購入したところ、何と盗聴器を三つも見つけてしまったりして。そのうち一つは全く別口で、奥さんの通っているレザークラフトのサークル関係者の犯行のようでした。浮気か?NTRか?と色めき立ちたいところですが、池井戸作品にその手の濡れ場を期待してはいけません。

営業部長対総務部長 

 一方、倉田の務めるナカノ電子部品では、やり手の営業部長に不正疑惑が生じています。出張旅費を取引先にも出させて二重取りしたり、カラ売りをしてたりという疑惑ですが、実績があって社長の信任が厚い営業部長に対し、倉田は総務部長とはいえ銀行からの出向者でありいわば外様。口八丁手八丁の営業部長にはしばしばやりこめられてしまいます。部下である経理担当の茶髪シングルマザーの西沢摂子には突き上げられるし、社長には銀行への出戻りを画策されるし、窮地に追い込まれていく倉田。

盗聴器発見

 公私に亘って難問を抱える倉田ですが、愚直かつ真摯にやるだけだと開き直り、対ストーカーでは息子で大学生の健太の意見を採用し、対営業部長では優秀な西沢さんと信頼関係を築いていきます。盗聴器を逆用し、ストーカーを自宅におびき寄せる策に出た倉田親子ですが、捕まえようとした健太が犯人に刺されてしまうという大事件に。そしてナカノ電子では取引先の2400万円の手形が不渡りになるという事態に。さあどうする倉田部長!

ストーカーの恐怖 

 実はストーカー事件の方は犯人は二人(シャーロック・ホームズ・シリーズのタイトルみたい)いたのでした。さすがに傷害ないし殺人未遂となると警察も本腰を入れて捜査し、まもなく犯人を逮捕するのですが、それは倉田が見たこともない人物でした。ではもう一人は?

ストーカーの正体は 

 そしてナカノ電子でもなんとか少しでも債権を回収しようと手を尽くす中、営業部長の壮大な謀略の全貌が明らかになっていきます。結局のところ事件はどちらも解決となりますが、営業部長は告発には至らず、倉田は予定通り銀行に戻ることになります。ストーカーについても、映像に映ったブランドもののバッグが決め手となってついに御用となります。軽井沢旅行がフイになったりと多大な犠牲を払いましたが、一応小市民としては大団円だといえるでしょう。

なくせストーカー 

 とりあえず他のことはともかく、瀕死の子猫をポストに投げ込んだ犯人だけは許せん。幸い助かって倉田家の一員となるのですが、猫好きな私としてはエジプトの猫の女神バステトの祟りをうけるがいい。

 バステト様

 2015年4月13日から6月15日まで、フジテレビ系「月9」枠でテレビドラマ化されました。「月9」初のサスペンスタッチのホームドラマとなり、寺尾聰演じる倉田太一に代わって、相葉雅紀演じる長男・倉田健太が主人公になっている他、原作よりも全員年がいっています。太一は6歳、健太は9歳も老けています。JKの娘七菜も21歳の大学生になってたりして。
テレビドラマ化されたようこそ、わが家へ

 原作ではストーカーに目をつけられるのはパパンの太一なのですが、テレビドラマでは健太に変更され、妹の七菜は原作では直接的な被害は受けていませんが、ドラマではリベンジポルノの被害に遭って就職をふいにしたりと、さんざんな目に遭っています。要するにナカノ電子での不正疑惑問題は太一に、ストーカー問題は健太に分担し、ママンの珪子や娘の七菜もそれぞれ“敵”抱えていたという設定に変更されているのですね。ママンの関係は原作でもちらりと出てきますが、テレビドラマではもっと大々的になっているようです。しかし家族全員が“敵”を持っているとなると、とても普通の家族じゃないZE!!
 
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