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桜ほうさら:青侍が第二の人生を選ぶまで

押すだけノーマット

 アルミサッシの網戸にがたが来たせいか、このところ毎晩1~2匹蚊が侵入してきます。電気蚊取り器があったはずなのですが、いつの間にやらなくなっていたので、電気も火もいらない「おすだけノーマット」という奴を買ってみました。シュッと一吹きが実にちょっぴりな感じがして、大丈夫かいなと思えるのですが、何事も経験ですね。

単行本桜ほうさら 

 本日は宮部みゆきの「桜ほうさら」です。上下巻の長編なので、一回で紹介するのはもったいない気もしないではないですが。

 「桜ほうさら」は2013年2月25日に単行本が刊行され、2015年12月17日に文庫版がPHP文芸文庫から刊行されました。山梨県で使われる「いろいろあって大変」という意味の「ささらほうさら」に、物語の中で象徴的に使われる「桜」を絡めた地口がタイトルとなっています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

桜ほうさら上巻 

 (上巻)父の汚名をすすごうと上総国から江戸へ出てきた古橋笙之介は、深川の富勘長屋に住むことに。母に疎まれるほど頼りなく、世間知らずの若侍に対し、写本の仕事を世話する貸本屋の治兵衛や、おせっかいだが優しい長屋の人々は、何かと手を差し伸べてくれる。家族と心が通い合わないもどかしさを感じるなか、笙之介は「桜の精」のような少女・和香と出逢い…。しみじみとした人情が心に沁みる、宮部時代小説の真骨頂。 

桜ほうさらのカット 

 (下巻)江戸で父の死の真相を探り続ける古橋笙之介は、三河屋での奇妙な拐かし事件に巻き込まれる。「桜の精」のような少女・和香の協力もあり、事件を解決するのだが…。ついに父を陥れた偽文書作りの犯人にたどり着いた笙之介。絡み合った糸をほぐして明らかになったのは、上総国搗根藩に渦巻く巨大な陰謀だった。「真実」を突き付けられた笙之介が選んだ道とは…。切なくも温かい、宮部みゆき時代ミステリーの新境地! 

桜ほうさら下巻 

 上総国の1万5千石という小藩の搗根(とうがね)藩という架空の藩の小禄の小納戸役の次男坊である古橋笙之介が主人公です。学問はそこそこできますが、剣術などはからっきしという青二才です。平和に暮らしていたある日、父が出入り商人から収賄を受けていたという告発が。証拠とされる文書は、父が書いた覚えのないものでしたが、本人にも自分の筆跡だと認めざるを得ないものでした。

 否認していた父ですが、母が実家に頼んで長男の勝之介の猟官運動を行っていたことが発覚し、波及を怖れて自害してしまいます。搗根藩江戸藩邸の留守居役坂崎の指示で江戸に上がった笙之介は、貧乏長屋を根城に写本で生計を立てながら事件の真相を探ろうとします。

桜ほうさらPOP 

 “踊っているのでないのなら、踊らされているのだろうさ”(神林長平「狐と踊れ」より)という名言のとおり、踊らされまくる笙之介。ただしそれが明らかになるのは下巻の後半以降で、それまでは父の事件の真相探しというよりは、長屋暮らしや、東北の大殿の書く暗号解きや、大店の誘拐事件の解決など、ほぼ無関係に見えるようなことばかりしています。笙之介自身も「これでいいのか」と思ってたりするのですが、未経験な若造にとってはいい勉強になったことでしょう。

 たった1万5千石では大名と言っても大身旗本に毛が生えたようなもので、1万石につき家臣の数は200人くらいなので、搗根藩の藩士はせいぜい足軽も含めて300人程度でしょう。それなのに家老が4人もいて、目付がいてとやけに仰々しいのですが、はっきり書かれていませんが、譜代大名ででもあるんでしょうか。家老といっても、大藩なら数千石ということもあるでしょうが、1万5千石では1000石に満たないことでしょう。そんなコップの中にも嵐があって、二派に別れてお家騒動の機運が高まっていたりします。

桜ほうさらPOP 

 笙之介や父はそんな藩内の情勢にまったく無知なまま、暮らしていましたが、そういう状況下でどちらに付くか旗幟を鮮明にするかはともかく、無知でいるというのはヤバいですね。知っているのに知らんぷりならともかく。無知は罪です。

 とはいえ、江戸に出てくれば搗根藩とは全く違う都会の生活があり、正直小藩にしがみついていないで、いっそ浪人になって代書屋で暮らせばいいのではないかとも思ってしまいます。深川の貧乏長屋がこれで結構楽しそうです。

桜ほうさら人物相関図 

 東谷様こと江戸留守居役の坂崎がやたら切れ者です。こんな小藩にはもったいない位ですが、彼をして、情に流されて落手があるというところが人間らしくていいですね。そのせいで笙之介は死にかけるのですが、まあ助かった後は第二の人生を進むことになるので結果オーライなんですが、それはまさにたまたまそうなっただけで…。絶望先生じゃないけど

死んだらどーする 

 ヒロインは“桜の精”和香ということになるんでしょうが、私はこの人はあんまり好きじゃないです。私にとってのメインヒロインは船宿川扇の梨枝です。笙之介の母と同じ年代ということで、40過ぎくらいだと思われますが、実にいい感じです。熟女の色気と大人の風格と、少女のような可愛いらしさを併せ持っています。東谷の愛人…の気配もありますが、小藩の留守居役程度の収入で囲えるかなあ。相思相愛ということならあり、と思いますが。

桜ほうさら新聞広告 

 内容紹介では衝撃の真相という展開になっていますが、予想したほどの衝撃ではありませんでした。むしろその程度はあるんじゃないか思ったくらいで。東谷と梨枝が実は極悪人だったなんて展開だったらぶっ飛んだんですが。

ドラマ版桜ほうさら 

 本作は2014年1月1日にNHK正月時代劇でテレビドラマ化されています。笙之介役は玉木宏。ちょっと老けすぎじゃないでしょうか。東谷こと坂崎 は北大路欣也でやけに重厚。梨枝は高島礼子でした。今となっては高知東生の一件のせいで「ええ…」とか思ってしまいますが、まあそんなとこかなと思います。私なら石田ゆり子をキャスティングしますけどね。
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