記憶に残る一言(その66):白鵬堂百美のセリフ(翔んで埼玉)

ニュースで大々的に報道された話だし、裁判でもあるので伏せ字にしませんが、覚醒剤取締法違反に問われた清原和博に、本日懲役2年6か月、執行猶予4年の有罪判決(求刑懲役2年6か月)が出ました。この種の裁判では初犯の場合は執行猶予が付くのが“お約束”らしいですが、執行猶予期間が結構長めですね。田○ま○しとか清○健○郎など、クスリの誘惑に勝てなかった例もあるなか、ぜひこの期間を何事もなく全うして欲しいものです。無論執行猶予期間経過後もやってはいかんですよ。

本日は記憶に残る一言です。今話題の魔夜峰央の「翔んで埼玉」からのセリフを紹介しましょう。

魔夜峰央は1953年3月4日生まれで新潟市出身。高校2年の夏休みから漫画を描き始め、大阪芸術大学に入学したものの2年で中退してしまいました。1973年、「見知らぬ訪問者」でデビュー。当初は本名の山田峰央で作品を発表していました。

デビュー以来オカルト・ホラーもしくはミステリー調のシリアス路線でしたが、ギャグ路線に変更した1978年に開始した「パタリロ!」でブレイクします。敷居の高い少女漫画ですがさすがにこれくらい有名だと知っています。なんと今なお連載中なんですね。少女漫画界の「こち亀」か。

そんな魔夜峰央が「花とゆめ」(白泉社)に1982年から1983年にかけて連載した、花も夢もないぶっとび作品が「翔んで埼玉」です。当時魔夜峰央は「花とゆめ」編集長の勧めで埼玉県所沢市に転居しましたが、なんと近所にその編集長が居住しており、そのプレッシャーをばねにして執筆したのだそうです。

徹底して埼玉をディスった本作ですが、魔夜峰央が自分が住んでいる土地をおちょくる自虐的な面白さを狙ったものでした。しかし、第3話まで執筆した後、なんと横浜市に転居してしまったのです。それではただの差別になってしまうということで連載は中断され、未完で終わりました。

1986年に白泉社より短編集「やおい君の日常的でない生活」に収録されて刊行されましたが、このときは特に話題になりませんでした。しかし、2015年にSNSなどインターネット上で話題になったことでテレビ番組で紹介され、宝島社より復刊されることになり、予想以上の重版出来で発行部数55万部を突破する大ヒットとなっています。

東京の名門、白鵬堂学院に麻実麗という美少年が転入してきます。文武両道、容姿端麗な麗は、たちまち学生たちを魅了し、学院理事長の孫で自治会長(=生徒会長)の白鵬堂百美もやがて麗を慕うようになります。しかし、麗の正体は埼玉県の大地主・西園寺家の子息で、西薗寺家ではゆくゆくは麗を政治家にして、埼玉県民に対する差別政策を撤廃させようと目論んでいたのでした。
こんな風にいうと西薗寺家が陰謀を企んでいるみたいですが、そうしたくなるくらい埼玉県民は東京都民に差別されまくっているのです。

なにしろ埼玉の生活はこれですってよ、奥様!江戸時代が継続しているかのような。

しかも憧れの東京には通行手形(だから江戸時代か)が必要で、一生に一度は行きたいと願いつつ果たせず亡くなる埼玉県民も多いようです。

そしてなんとか東京に行っても、待っているのは厳しい差別。

下手な真似をすると「埼玉狩り」が始まってしまうのです。なんだこれは…たまげたなぁ。
ちなみに白鵬堂学院、クラスがA組からZ組まであるのですが、クラスは居住地で決まっており、A組はオシャンテイな青山とか赤坂あたりに住んでいる生徒のクラスです。鬼の哭く街・A立区はさしずめ「ゼットォ~!禁じられたゼ、ゼットォ~!」ということでZ組かと思いきや、Z組はパパンの仕事の関係などで東京に住んでいる埼玉県民のクラスなんだそうです。良かった!、A立区はY組なんだね!!

じゃあ今は東京都民じゃないかという麗に対し、女の子のセリフがまた凄い。口が埼玉になるってなんなんでしょう(笑)。

そして一番の名セリフ。復刻版の表紙を飾る白鵬堂百美がZ組の女子に言い放ったセリフです。

腹痛を起こしたZ組の女の子。しかし白鵬堂学院の医務室は東京都民の生徒しか使用できないという無茶仕様。「お医者様に見せるだけでも…!」との懇願するZ組の生徒に対し

ひ、ひでえぞ百美!差別ここに極まれり。アパルトヘイト全盛期の南アフリカだってこれほどではなかったでしょう。

その後、麗は「踏み絵」で埼玉県出身であることが露見してしまいます。そのくだりがこれ。

アホかと呆れる百美ですが、なんと埼玉県民には「こうかはばつぐんだ!」

こうして麗は百美に別れを告げて、所沢へと戻り、埼玉県民解放のための抵抗運動を始めます。麗が埼玉県民と知ってもついていこうとした百美ですが、さすがに所沢ではどうにもならなかっという。

その他、埼玉特有の熱病「サイタマラリア」とか抱腹絶倒です。「全埼玉が泣いた!」なんて言われていますが、実は埼玉で大受けしており、埼玉の書店からの注文がすごいそうです。魔夜峰央もインタビューで「埼玉県民って鷹揚で、しかもなんとなく自虐的なところがあるよね」と言っていますが、埼玉県民のおおらかさと、懐の深さを感じますね。器が大きいのでしょう。

なお、本作においては、我が筑波嶺を擁する茨城県について、埼玉県以上の魔境という扱いをしています。これは魔夜峰央の奥さんが茨城県出身で、身内の地元ならば少しぐらいおちょくってもいいと考えたためだそうです。

なるほど、それで茨城か。チバラキ、グンタマなんて言い方もあって、茨城は千葉とセットで扱われることが多く、埼玉の相方は群馬かと、なんとなく思っていました。栃木がハブられてしまうけど。ちなみに埼玉は茨城栃木群馬の北関東三県のほか、東京山梨長野となんと一都五県と境を接していますが、千葉は北関東とは茨城とだけ、その他東京埼玉で一都二県としか接していません。だからナンダという話ですが、いろんな人が行き交う場所だからおおらかになったのかな、なーんて。

実は奥さんは茨城の親戚から文句を言われまくったらしいです。魔夜峰央も「その辺が埼玉と茨城の県民性の違いなんでしょうね」と言っていますが、器小さいなあ、茨城県民。

なお麗と百美の悲恋のように見える本作ですが、実は麗はもちろん百美も♂なのです。ウホッ!いい埼玉県民…。魔夜峰央、同性愛を題材にする作品を多く手がけており、同性愛者からは作者自身が同性愛者と思われる事が多いそうですが、実際は妻も子もいるノンケのようです。

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