「ネクロノミコン」の一節を訳してみよう!

久々に本格的な雨を見ました。しかしまた照ったり曇ったりと相変わらずのお忙しぶりな天気です。話題にするにもマネージャー通さないといかんのではないでしょうか。明日が最後の峠…本当に…本当に信じていいの?(ドラクエVのフローラ風)
さて、たまには英語の話題でもしてみましょうか。と言っても、私は英語が大嫌いなのですが。英語が不得手なのに外国で暮らすっていうのは本当に大変でして、まあ私が滞在していた国は英語圏ではなかったのですが、現地語は余計にわからないから、英語を使える人でないとコミュニケーションが取れないということに。
まあ現地の言葉に精通していればそれが一番ですが、そうでない場合、日本語よりはまだ英語のほうが通じる可能性があるというものです。我々日本人も外人が英語で話しかけてくると逃げ腰になってしまいますが、彼らの母国語だと全く通じない可能性があるので、何とか聞き取ってやって知っていることは伝えてあげたいものです。
そういえば、米英人は言葉として英語を使ってきますが、非英語圏の人の英語はコミュニケーションの手段として英語を使うので、前提条件として「相手に意志を伝える」という目的があるので、比較的聞きやすいし、こちらのつたない英語も聞き取ろうと努力してくれます。アメリカ人なんかは当たり前のように早口で英語をしゃべって、こちらも流暢に返事することが当たり前だと思っている節があるので参っちゃいますね。

さて、肝心の英語の話題ですが、小難しい文化論とかを展開するつもりはなく。私の好きなクトゥルー神話の話です。
(_゚∀゚)o彡°ケイオス!ケイオス!アイワナケイオス!
That is not dead which can eternal lie,
And with strange aeons even death may die.
これはラヴクラフトの作品「無名都市」(The Nameless City)に登場する二行連句です。後に「クトゥルーの呼び声」という作品(一連の小説を「クトゥルー神話」と呼称するに至った記念碑的作品。)で、「ネクロノミコン」という書物の一節であるとう設定がなされました。

「ネクロノミコン」は、ラヴクラフトの一連の作品に登場する架空の書物で、世界的にも最も有名な架空の書物といえるでしょう。クトゥルー神話の中ではしばしば重要アイテムとして登場しており、クトゥルー神話を書き継いだ他の作家たちも自作の中に登場させています。
「クトゥルー神話」での設定としては、アラブの狂える詩人アブドル・アルハズラットが西暦730年にダマスカスにおいて書いた「アル・アジフ(Al Azif)」が原典であるとされています。「ネクロノミコン」というタイトルは、ギリシャ語へ翻訳された際に付けられたものとされ、「死者の掟の表象」といった意味だそうです。作者のアルハズラットは執筆後、白昼のダマスカスの路上で、目に見えない怪物に生きたままむさぼり食われるという非業の死を遂げたことになっています。
現存する「ネクロノミコン」の多くは17世紀版で、ハーバード大学のワイドナー図書館、パリ国立図書館、ミスカトニック大学付属図書館、ブエノスアイレス大学図書館などに所蔵が確認されていますが、完全なものは世界に5部しか現存していないと設定されています。

もちろん「ネクロノミコン」は実在しない書物ですが、熱心なラヴクラフトのファン達によってその再現が試みられています。1978年に出版された「魔道書ネクロノミコン」は、「実在したジョン・ディーの暗号文書」(ジョン・ディーは16~17世紀の実在の人物ですが、ネクロノミコンを英訳したというのはもちろんフィクションです)をコンピュータ解析によって解読したという触れ込みで、この「解読結果」が、作者や関係者のネクロノミコンに対する所見や「解読」に至るまでの経緯などと共に収められています。日本では1994年に学研から出版されてます。

「科学と学習」とか「中○コース」「高○コース」といった教育雑誌のイメージが強い学研ですが、オカルト雑誌「ムー」も出版しているんですね。そういえば教育雑誌は軒並み廃刊とか休刊に……。これはもしやあれですか、「ネクロノミコン」の祟り…
あわわ。
まあ「そんなオカルト信じません!」ということで、話を戻しますが、先ほどの英語
That is not dead which can eternal lie,
And with strange aeons even death may die.
これをどう和訳しますかというのが本日の主旨です。単語はさほど難しいものは使われていませんが、“aeons”はあまり馴染みがないですね。あと“That”とか“which”とか関係代名詞が使われているあたりが日本語的には訳しづらいところでしょうか。
まずは先哲の模範を見てみましょう。
最初に、ラヴクラフト、クトゥルフ神話、フィリップ・K・ディック、コリン・ウィルスン、神秘学関連などを多数翻訳している大瀧啓裕さんの訳例です。
That is not dead which can eternal lie,
And with strange aeons even death may die.
其は永久に横たわる死者にあらねど、
測り知れざる永劫のもとに死を超ゆるもの
次に、「無名都市」を「廃都」というタイトルで翻訳した波津博明さんの訳例です。
That is not dead which can eternal lie,
And with strange aeons even death may die.
久遠に臥したるもの死することなく
怪異なる永劫の内には死すら終焉を迎えん
大瀧訳は格調高いですね。しかし意訳が多いような。「あらねど」を使っていますが、前後の文章は“And”でつながれていて反語的な表現ではないようですし、“death may die”は直訳すれば「死も死ぬかもしれない」「死も死ぬことがある」となると思います。しかし「死を超ゆるもの」は格好いいなあ。
波津訳は比較的素直に訳していますね。“strange”を「怪異なる」と訳すのは大瀧訳の「測り知れざる」よりは素人にもわかりやすいし、“death may die”の“die”を消滅するとか終わるという意味で捉えています。
続いて、Wikipediaのラヴクラフトの記事にある訳例を。ただし「独自研究?」のタグが貼られてますけど。
That is not dead which can eternal lie,
And with strange aeons even death may die.
永遠に横たわること能うものは死するに非ず
そして奇怪なる永劫のうちには死すらも死なん
では、これら先達を参考にしたユースフ訳(パクリとも言いますが)をば。
That is not dead which can eternal lie,
And with strange aeons even death may die.
永久に横たわり得るものは死者にはあらず
それは、数奇なる永劫の果て、死すらも超えゆく者

ちなみに「怪物王女」というアニメのOPの冒頭で、この英文が右から左に流れていきますね。
http://www.youtube.com/watch?v=PVLhCj_m8-I

怪物王女とその一党は人狼、吸血鬼、土地神などですが、彼らの生命力が人知を超えるものであることは疑いありませんが、「死を超越する」までか、といえばどうでしょうかね。王位継承争いがあるということは代替わりがあるということで、それはつまりどんなに長くとも、寿命があるということに他ならないのでは……
あ、「怪物王女」では吸血鬼の嘉村令裡が好きです。だってCVが能登麻美子だから(笑)。

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