人類は衰退しました 3:原作はサバイバル色が強烈でした

サミット終わりましたね。政治的な話は極力しないのが当ブログのお約束なんですが、とりあえず溢れかえっていた警察官がいなくなるのは結構なことです。みんなしっかり休んで次の勤務に備えて下さい。

本日は田中ロミオの「人類は衰退しました 3」です。1巻2巻は二話構成だったのですが、今巻は「妖精さんの、おさとがえり」一話です。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は“妖精さん”のものだったりします。そんな妖精さんと人間との間を取り持つのが、国際公務員の“調停官”のお仕事。……閑職ですが。そんな絶賛衰退中の人類のすべての記録を目指した、ヒト・モニュメント計画の影響で通電することとなったクスノキの里では、“夏の電気まつり”が開催されることに。一方、妖精さんは里帰り。……!? 妖精さんがいなくなる!? 微妙なお別れののち、わたしたちは都市遺跡の調査に向かったのですが……。エネルギーの補給は計画的に!

アニメでは5~6話でした。タイトルは同じく「妖精さんの、おさとがえり」。2巻に収録されていた「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」はアニメの7~8話でしたが、半巻分のボリュームで2話使用してたのに対し、まるまる1巻分を2話でやったんですね。本当は3話くらい必要だったんじゃないでしょうか。

ユネスコの文化局長がクスノキの里にやってきます。人類のすべての記録を目指した「ヒト・モニュメント計画」の一環として、クスノキの里に近い巨大都市の遺跡を調査するのだそうです。そためにまだ機能している人工衛星から電力の供給を受けることとなり、一時的に電気に溢れたクスノキの里はお祭り騒ぎに。

そんな中、妖精さんはマイちゃんに暇乞いに来ます。電磁波が嫌いなんで避難するのだそうです。衛星からの電力は電磁波として送られてくるので、クスノキの里周辺にはいられないということでしょう。妖精さんがいなくなれば奇妙な事件が起こらなくていいんじゃないかと思いきや、大意「怪我・病気・事故・身投げなどに注意しろ」という妖精さん。豆本のマニュアルと「お守り」(紙縒りのペンダント)を残して去ってきます。

そのマニュアルの内容は驚愕するものでした。一日に妖精に何人で逢うかで奇跡の発現率が異なるのだと。単位は「f」。妖精さんだけにフェアリーということなんでしょう。つまり妖精さんに一日に一人であえば1fということに。

15fはもはや厳密な測定は無意味なんだそうで、「F」となります。極めて危険な反面極めて安全で、どんなに酷い目に遭ってもまず死ぬことはないそうです。全てがFになる?

その凡例がこれ。ラストが切れていますが、ライバルとの最終決戦では秘めたる力に覚醒して勝利するんだそうです。

10fだとこれ。トラブルの発生率はやや抑制される分、安全性も万全ではなくなるので、ある程度のフラグ立ての準備が必要になります。

5fだと、かなり現実味のある状況に置かれ、場合によっては命を落とす可能性もありますが、生存確率は大幅に高められているので、冷静に行動すれば危機を乗り越えることができます。

妖精の全く居ない状態、つまり0fでは、起こるべき事が起こるべくして起きる現実世界そのものと向き合うことになります。


都市遺跡調査の前夜。電力が豊富に供給されたクスノキの村ではお祭り騒ぎです。そこで不思議なネコミミ少女と出会ったマイちゃん。これが伏線と言う奴ですな。

祖父や助手君と共に都市遺跡調査団に加わったマイちゃん。ツインテールが可愛いぞ。マイちゃんは助手君とともに最も当たり障りのない地域(公衆トイレ遺跡など)担当となりましたが、助手君の静かなる暴走により、上下左右に移動するエレベーターで一気に都市中心部で迷子に。

都市遺跡の中を宛てでもなく彷徨いながらのサバイバル生活が始まります。アニメではこのあたり、非常に軽く流していましたが、原作ではマイちゃんも助手君も脱水症で死にかけます。

0f、つまり妖精さんがいない状況下ということで、水や食料などを大量に用意したマイちゃんですが、現実の過酷さはその斜め上を行っていました。そんな中での助手君の突飛な行動は、妖精とは関わりなかったということなんですね。

しかし、最後の水で作った紅茶にお守りのペンダントが落ちたら、あら不思議。紙縒りはツイストしまくって仮死状態だった妖精さんだったのです。そうか、これがお守りだったんですね。これで0fは1fに。

ちなみに1fは、極めて現実的で容易に死の影がちらつくそうですが、希望を捨てず、悲劇ではなく喜劇的な方向を目指すことで、事象をプラスに転じさせることもあるのだとか。妖精さんは楽しいことが大好きなので、楽しそうにしていれば増えたりしますしね。

0fと1fは似ているようで大違いということで、一気に生存の確率が上がったマイちゃんですが、謎のスライムに襲われたり、野良フレンダーに襲撃されたりと危機一髪状況が続きます。

マイちゃん危機一髪。そこを助けに入ったのは、前夜祭で出会って猫耳娘でした。その名はピオン。DQNネームだとしてP子と呼ぶマイちゃんですが、それだってDQNネームじゃ。Q太郎の妹か。

パワフリャーなピオンが加わって、探索行は楽になりました。


ちなみにピオンには妖精が覚知できないそうですが、面白そうな状況になったせいか、妖精さんは増殖。いいですな、増えれば増えるほど生命の危機が遠のきます。アニメではそれほど生命の危機が強調されていなかったけど、原作ではかなりヤバかったのです。

そしてピオンが探していた相手と遭遇。その名はオヤジ。オヤジ…?ピオンはPION、オヤジはOYAGE。これが伏線と言う奴ですね。お互い記憶障害を起こしながら、使命に戻れ、嫌だと言い合う二人。オヤジもなんだからとO太郎と付けるマイちゃんですが、オバQ的にはO次郎だろうとかツッコミたくなりますね。

ネコ対オウムガイなどといった奇想天外な戦いの末、ピオンがオヤジを撃破。マイちゃん達はなんとか祖父達調査隊に合流することができました。そして判明した二人の正体は。

宇宙探査機ボイジャーがオヤジ。パイオニアがピオンだったのでした。そんな遥か昔の原始的な宇宙探査機がどうして人間の姿を取っているのかといえば、その後のデータ回収や補給・改良を行う高度な工作機械であるキャッチアップ衛星に何度も接触したのだそうです。

後から追っかけて追いつける位のキャッチアップ衛星なら、そいつが宇宙探査した方がいいような気もしますが、そういう訳で高度な知性体となったヴォイジャーとパイオニアですが、機械そのものだった頃から、何もない空漠たる深宇宙に「行きたくない」という気持ちを持っていたとか。

パイオニア10号が天王星の軌道を越えたあたりで、謎の減速を起こすという不可解な現象は、「パイオニア・アノマリー」と呼ばれています。この減速はパイオニアのみならず、太陽系の外縁部に向かった全ての探査機に見られるもので、原因については種々の説がありますが、「機械が行きたくないと思ったから」というメルヘンな解答は空前絶後でしょう。

帰りたいと思ったヴォイジャーと、そう思いながらも与えられたミッションの継続を主張するパイオニア。彼らに宇宙探査を命じたNASAはもうないんですが…悲しいなあ。

電力がある限りミッションは絶対だということなので、じゃあ電力が供給されなければ地球に留まってもいいんじゃないかと考えたマイちゃん。送電衛星からのマイクロウェーブ受信施設を破壊してしまいます。電磁波を嫌う妖精さんも戻ってくるし、一石二鳥の作戦なんですが。

なんの相談もなく独断専行で行ったことなので、調査団の糾弾はやむを得ませんな。減給6か月、社会奉仕活動2か月、3か月以内の再研修1週間、内職1か月、始末書17枚のフルコースに加え、「身体的虐待」を加えられることになりました。


「身体的虐待」って、なんかエロいことを妄想しちゃいますが、断髪です。ナンダ、痛くもかゆくもないじゃんかと思いますか?髪は女の命ですよ。祖父の口添えでなんとかマルガリータは免れましたが。

そしてアニメ第一話はこの事件の後の4巻のエピソードなのです。だからマイちゃんは冒頭断髪状態だったわけですね。でもまあ、妖精さんが戻ってくれば大丈夫でしょう。

パイオニアとボイジャーはモノリス版となってしまいましたが、電力の供給が断たれたことでミッション継続が不可能となり、地球に残ることができました。ハンドルを1時間回すと1分間活動できるようですが。

うーむ、なまじアニメがあるとアニメ紹介みたいになっちゃいますね。ちなみにパイオニアは10号と11号、ヴォイジャーには1号と2号あったのですが、なぜ二人しか出てこないのか。
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