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ヒトイチ 警視庁人事一課監察係:「警察の警察」の物語

オリンピック新エンブレム

 東京オリンピックのエンブレム、すったもんだの挙げ句に遂に決定されましたね。選考委員の過半数の票を一発で集めて決定したそうです。市松模様で藍色一色は一見地味な感じもしますが、そのうち慣れるんでしょう。

オリンピックのエンブレム候補 

 ちなみに最終候補4作の中で私が好きだったのは右上のB案。選考委員からは不人気だったらしく、たった1票しか入りませんでした。残念ながら我がセンスはやはりマイナーなんですね。

招致ロゴ 
 実はオリンピック招致活動で使用していた桜のエンブレムが一番好きなんですが、継続使用はできないというルールになっているとか。IOCって、たかがNGOの癖にずいぶんエラそうですよね。王族貴族富豪といった権力者が集中的に委員をやっているせいですかね。

ヒトイチ 

 さて話は変わって本日は濱嘉之の「ヒトイチ 警視庁人事一課監察係」を紹介しましょう。濱嘉之のプロフィールについては2013年10月16日の当ブログ記事「完全黙秘 警視庁公安部・青山望」で触れております(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-523.html)が、巡査から警視まで務めた経歴を持つ元警察官です。

濱嘉之20160426 

 警察小説はジャンルの一つとして確立している感がありますが、そのリアリティは作者によって千差万別です。中には素人目にも「おいおい」と突っ込みたくなるひどいのもあります。取材はそれなりにしているにしても、結局は門外漢が書いているので、リアリティのある小説にしても「上手に嘘をついている」ということになるのでしょうが、濱嘉之は本物です。執筆に当たっては、元警察官として「嘘のないこと」を心がけているということえで、臨場感のある作風が評価されています。

完全黙秘20160426 

 だいたい警察ものでは主人公は刑事部に所属しており、公安部なんてのは同じ警察官でも正体不明な不気味な存在という扱いをしていることが多いのですが、濱嘉之は公安畑で長く務めていた経歴があるだけに。彼が「警視庁公安部・青山望」シリーズで描く公安部の警察官達のリアリティは、やったものでないと描けないレベルだと思います。

 「ヒトイチ 警視庁人事一課監察係」は2015年5月15日出版。筑波嶺の図書館にしては頑張って近刊を入れたものです。シリーズ化しており、同年11月13日には第二弾「ヒトイチ 画像解析 警視庁人事一課監察係」が出版されています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 警視庁人事一課、通称ヒトイチの若手監察係長・榎本博史は、警視庁内部の不正に昼夜目を光らせていた。大組織の片隅で囁かれる噂や、匿名の内部告発を洗っていくと、思わぬ人物に疑惑がおよぶ。監察に追われたら最後、仲間の警官といえども丸裸にされる―。緊迫の身内捜査シリーズ第1弾! 

 監察係は人事課の中にあっても特殊な位置にあり、警察の内部不正・腐敗を摘発するという「警察の警察」という役割を担っています。軍隊でいれば憲兵みたいなものでしょうか。それだけに警察官からは煙たがられ、怖れられ、嫌われていますが、一般市民はほとんどその存在も知らないという存在です。

陰の季節 

 実は監察を描いた作品は他にもあり、私は確か横山秀夫の短編集「影の季節」で読んだ覚えがあります。こちらは純粋に警察内部の不正摘発だったと思いますが、ヒトイチの不正は規模が大きいのが特徴です。

歌舞伎町 

 「第一章 新宿の舎兄」:歌舞伎町で睨みをきかせる新宿署の組織暴力対策課の課長代理三田村警部。事件はたちどころに解決し、部下の刑事達には自腹で豪勢にねぎらうという、上司にしたい人ナンバーワン的な存在です。が、実は暴力団と癒着しており、そればかりか中国マフィアや宗教団体、果ては国会議員にまでつながりが。暴力団や中国マフィアとの癒着といえば「八神瑛子」シリーズの八神瑛子も同様ですが、三田村は私利私欲に走っていて、よろしく蓄財をしていました。ヒトイチの摘発により国会議員は逮捕され、三田村も懲役数年は喰らうことになりましたが、宗教団体が蓄財の追求を放棄したので、「お勤め」の後は悠々自適で暮らせそうです。

新宿署 

 「第二章 復讐のポルノグラフィー」:話題の「リベンジポルノ」のお話です。内定を進めていた組織犯罪対策部の危険ドラッグ摘発が空振りに終わります。一度ならず四度五度と繰り返される失態に、これは内部情報の流出が疑われました。ヒトイチが組織犯罪対策部の職員を丸裸(情報的に)にして徹底的に調べますが、犯人は不明。実は誰もがまさかと思う美人警部が犯人でした。「天は二物も三物も与える」と称されたエリート女性警部はなぜ堕ちたのか。背景にはまた暴力団がありますが、そこに絡む元巡査部長の存在が。彼は不倫騒動で警察を追われたのですが、美人警部と何があったのか…というお話です。「女はわからん」が結構ベタな結論になってますが、男性が女性に神秘性とかミステリアスな雰囲気を全く感じなくなったら、人類は滅ぶのかもしれませんね。

警視庁 

 「第三章 灰色の筆致」:またも組織犯罪対策部から情報漏洩し、公安部や刑事部が内偵を進めていた事件が闇に葬られてしまいます。警視庁幹部らにボコボコにされた組織犯罪対策部、必死に内部調査をしますが情報漏洩ルートがわかりません。そこでまたもやヒトイチの出番。思いがけない漏洩ルートの発覚から、思いがけない幹部の摘発と、事態はまたも政界を巻き込む大がかりにものになっていきます。

組織犯罪対策部 

 相変わらず警察の内部機構や役職・階級がリアルです。ミステリーとして見た場合は謎解きが早かったりトリックらしいトリックがないのでやや物足りないかも知れませんが、多分これはミステリーではないのです。「権力は腐敗する、絶対的権力は徹底的に腐敗する」(ジョン・アクトン)という格言がありますが、警察も権力機関なので、誘惑はたくさんありそうですね。

ジョン・アクトン 

 ニーチェの「怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」(「善悪の彼岸」より)という格言もあてはまりそうです。

善悪の彼岸 
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