ショコラティエの勲章:お菓子をめぐる「日常の謎」解き

ハナミズキが咲いている

 ハナミズキが咲いている関東地方。ツツジも咲き出していますが、ハナミズキを取り上げたのは、鬼の哭く街・A立区にあった私の中学校の校花がハナミズキだったからです。

ハナミズキの紅葉 

 春に花が咲いて秋には紅葉してと、サクラ同様一粒で二度美味しい樹木ですが、カエデなんかに比べるとどうにもくすんだ赤で、秋の引き立て役という感じですが、実もなるのでヒヨドリなどの鳥類にとってはありがたい樹でしょう。

ショコラティエの勲章 

 本日は上田早夕里の「ショコラティエの勲章」を紹介しましょう。上田早夕里の本は2013年3月26日に記事にした「リリエンタールの末裔」(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-320.html)以来2冊目です。SF作家と思いきや、SF以外の幅広いジャンルで活動を行っているのですね。

東京創元社版ショコラティエの勲章 

 「ショコラティエの勲章」は《洋菓子》シリーズといわれる作品群の一作で、「ラ・パティスリー」に続く第二弾です。2006年3月に東京創元社から出版され、2011年3月にハルキ文庫から文庫版が出版されています。例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。
 
 絢部あかりが売り子をしている老舗の和菓子店〈福桜堂〉神戸支店。その二軒隣りの人気ショコラトリー〈ショコラ・ド・ルイ〉で、あかりは不思議な万引き事件に遭遇した。それがきっかけで、ルイのシェフ長峰和輝と親しくなったあかりだが――。ボンボン・ショコラ、ガレット・デ・ロワ、クリスマスケーキ、アイスクリーム・・・・・・さまざまなお菓子に隠された、人々の幸福な思い出や切なる願いを、繊細にミステリアスに描く“美味しい”物語、待望の文庫化。 

ラ・パティスリー 

 主人公は絢部あかり。パパンは福桜堂の工場長ですら、父の後を追って和菓子の世界へ…という訳ではなく、短大卒業後に務めていた会社が倒産してしまったので、無職もなんだからと福桜堂の売り子になったのでした。制服ははんなりした和風の装いだし、あかりはお菓子大好きな人なので悪い選択ではなかったと思います。

絢部あかりのイメージ 

 とりあえず年齢的には20代後半~アラサーといった微妙な年齢ですね。字は「明里」ではないですが、年齢的に見ても私のイメージはもうこれです。これしかねぇ。

ショコラティエ 

 和菓子も好きだけど、やはり若い女性を惹きつけるのは洋菓子。すぐそばにショコラトリー(チョコレート専門店)があるのではたまりませんね。もっともショコラ・ド・ルイはチョコレート以外の洋菓子も販売しているようですが。

万引き防止ポスター 

 第一話「鏡の声」はあかりとショコラ・ド・ルイの雇われシェフ長でショコラティエ(チョコレート専門の菓子職人)の長峰和輝との邂逅が描かれています。それはなんと万引きが切っ掛けでした。名門お嬢様学校の女子中学生達がスリルとゲーム感覚でしでかした万引き。しかし盗んだ洋菓子の箱が出てきません。ショコラ・ド・ルイの箱が福桜堂と同じ業者の箱を使っていたことからその謎を解いたあかりが、それをきっかけに長峰やその同僚の沖本と知り合いになります。女性作家が女性を描くとなかなかにシビアになりがちなんですが、登場する万引きJCにもそれは言えますね。男の幻想を粉々に砕くというか。

ガレット・デ・ロア 

 第二話「七番目のフェーブ」は、あかりが属するグループの友人が結婚するというので、お祝いの品とともに特製のガレット・デ・ロワを贈ろうという話です。ガレット・デ・ロワ(galette des rois)は公現祭(イエス・キリストの顕現を記念する祝日)に食べるフランスの菓子です。公現祭は東方からイエスを礼拝するためにベツレヘムを訪れた三博士へのイエスの「顕現」を祝う日で、1月6日または1月2日から8日の間の日曜日が該当します。クリスマスに比べると日本ではマイナーですね。

東方三博士の礼拝 

 東方の三博士の名はメルキオール、バルタザール、カスパール。博士は賢者とも訳されますが、ギリシャ語でマギ。「ヱヴァンゲリオンやんけ!」と思った方、 正解!NERV本部のメインコンピュータ「MAGI」シ
ステムの、3つの独立したサブシステムであるメルキオール、バルタザール、カスパーはここから取られているのです。

マギシステム 

 話がそれましたが、ガレット・デ・ロワはパイ菓子で、中にフェーブ(fève、ソラマメの意)と呼ばれる陶製の小さな人形が一つ入っています。公現節に家族で切り分けて食べ、フェーヴが入っていた人は紙の王冠を被り、祝福を受け、幸運が1週間継続するといわれています。通常はフェーブは一個しか入れないのですが、今回は6人の仲間からのお祝いなので、6個のフェーブを入れて貰いました。しかし、なぜか届いたガレット・デ・ロワには7つのフェーブが入っていました。これは一体…?というお話です。

フェーブの一例 

 あかりから話を聞いた長峰はすぐに真相に気付いたようですが、真相を知ればいいというものではないという態度でした。でも怯える友だちを捨て置けないと、あかりは真相を解明しますが……まあなんというか、「男女7人夏物語」風のグループではいろいろドロドロするんだねという話です。まああかりは無関係で良かったですよ。

星の林に月の舟 

 第三話「月人壮士」(つきひとおとこ)は万葉集にある柿本人麻呂の歌「大船に 真楫しじ貫き 海原を 漕ぎ出て渡る 月人壮士」に由来しています。この歌は月を船、夜空を海にみたてた雄大な歌で。柿本人麻呂は月を舟に見立てるのが好きだったらしく、有名な「天の海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ」という歌もあります。「ウルトラマン」を製作した映画監督実相寺昭雄の自伝「星の林に月の舟」もこの歌に由来しています。

佐○研○郎さん 

 福桜堂で新作和菓子のコンペがあり、あかりの同僚である美奈の彼氏である若手職人三好が「月人壮士」という新作和菓子を製作します。彼は洋菓子にも興味があり、あかりを通じて長峰に批評してもらおうとします。条件をつけてそれを承諾した長峰ですが、なんと同じコンセプトの新作アイスがショコラ・ド・ルイで発売されます。パクリか長峰……!?というお話。某五輪エンブレム問題を先取りしたかのような内容ですが、佐○研○郎じゃないですから。

ピエール・エルメのケーキ 

 第四話「約束」は長峰や沖本の昔の話。二人の東京のパティスリー(ケーキ・洋菓子専門店)での出会いが描かれていますが、話題の中心は梅崎という沖本と同時期に入店した職人です。この話には「日常の謎」はありませんが、長峰や沖本の若い頃のエピソードが興味深いです。あかりも楽しく聴いたことでしょう。

ピエール・マルコリーニのチョコレート 

 第五話「夢のチョコレートハウス」は、糖尿病なのに退職後はチョコレート・ハウスを開きたいと夢見るサラリーマン・田山さんのお話。チョコレートハウスというのはピエール・マルコリーニやピエール・エルメなどのショコラティエとは異なり、いろんな店から仕入れたチョコレートを一斉に棚に並べて売る方式だそうです。有名ブランドのは無理でしょうが、いろんな店のチョコレートを一度に選べるのは楽しそうです。

糖尿病のコントロール 

 そんな田山さん、糖尿病患者でも楽しめる低カロリー・低油脂のチョコレートの製作を長峰に依頼。完成したチョコレートを受け取った田山さんは、なぜか救急車で病院に搬送されることになってしまいます。一体何が起きたのか?夫の身体を気遣うあまりに過激な行動に出る田山夫人がおっかないですが、これも愛故に、なんでしょう。私も甘い物は好きですが、それより酒が好きなので、糖尿病にならないように気をつけよっと。

レジオン・ド・ヌール勲章 

 第六話「ショコラティエの勲章」は、「美味しんぼ」の美食倶楽部のような関西ショコラ倶楽部のお話。ここは関西のチョコレート愛好家が集う会員制クラブで、月例会を開催してシェフを招いて渾身の作品を堪能するという金持ち&グルメ(ただしチョコレートの)の巣窟です。第五話の田山さんもチョコレートハウスを作るための勉強として加入しています。自分では食べられないのに(笑)。

美食倶楽部 

 ここで今回は長峰がチョコレートを作るというので、田山があかりを招待します。しかし、会員全員を唸らせるはずのチョコレートでしたが、ゲストというか会員の代理でやってきたあかりと同世代の天野花梨がけちょんけちょんに酷評します。汚名返上(というかいちゃもんに近いですが)の機会に長峰が作ったのは…という話です。

枝垂ほたる20160422 

 天野花梨は長峰も務めていたことがある老舗ショコラトリー「ショコラティエ・アマノ」のシェフの娘で、お菓子のブログをやってもいますが、駄菓子とかメーカー品を取り上げています。彼女のイメージは個人的に「だがしかし」の枝垂ほたるなんですが、目付きはそれほど悪くはないかと。

駄菓子の群 

 花梨はなぜ今風のスカしたケーキやチョコレートを嫌うのか、その理由が判明するとむしろ彼女に好感が持てます。というか、関西ショコラ倶楽部は全体的にいけすかん。私の貧乏人のひがみ根性をバチバチ刺激してきます。私もコンビニ菓子あたりがお似合いの口なもんで、花梨のブログ「かりん横丁」の読者になりたいです。

ゴディバのチョコ 

 という訳で、必ずしも「日常の謎」のミステリーではないのですが、なにしろ登場するお菓子が美味しそうでいかんですね。空腹の時に読むのは自殺行為かも。あかりと長峰のラブロマンスは…残念ながら全くなしです。年齢的にはあかり×沖本の方が相応しい気もしますが、こっちも進展なし。まあ明里ファンとしては「祐一さん」が登場しない方が心穏やかでいられるのかも知れません。

明里と祐一さん 
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