アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅱ:暴走女刑事・八神瑛子シリーズの第二弾

収束の目処が立たないという熊本地震、相次ぐ揺れに熊本城の被害も半端ないようですね。再建には10年、100億円なんて報道もなされています。加藤清正築城の日本三大名城の一つで、西南戦争の際には西郷軍の攻撃にも耐え抜いて落城しなかった天下の熊本城も、地震が相手では分が悪かったということでしょうか。

天守閣は西南戦争時に原因不明の出火で焼失しましたが、なお熊本鎮台として機能し、4000人の籠城で、西郷軍14000人の攻撃に耐え、ついに撃退に成功しました。武者返しと呼ばれる石垣が大いに役立ち、西郷軍は、誰一人として城内に侵入することができなかったといいますが…。天守閣など再建されたものはとも
かく、築城当時の遺構で、重要文化財に指定されている櫓など13件の大半が被害を被ったのは残念千万です。

さて、本日は深町秋生の「アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅱ」を紹介しましょう。本作は八神瑛子シリーズの第二弾ですが、第一弾の「アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子」は2013年6月17日の当ブログ記事で紹介しておりますhttp://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-404.html

あれからほぼ3年か…。「アウトクラッシュ」の出版は2012年7月4日なので、当時は既に発売されていたのですが、筑波嶺の図書館はなかなか新刊を入れてくれなくて。2年間の札幌勤務の後にようやく見つけました。例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。

警視庁上野署の八神瑛子。容姿端麗ながら暴力も癒着も躊躇わない激烈な捜査で犯人を挙げてきた。そんな彼女に、中米の麻薬組織に狙われる男を守ってくれ、という依頼が入る。男を追うのは残虐な手口で世界中の要人や警官を葬ってきた暗殺者。危険すぎる刺客と瑛子はたった一人で闘いを始める……。爆風を巻き起こす、炎熱の警察小説シリーズ第二弾。

低利で金を貸すことで警官達を牛耳り、暴力団ともギブアンドテイクの関係を築き、中国マフィアとも繋がる八神瑛子は、所属する上野署の富永署長らから徹底的にマークされていますが、どこ吹く風で抜群の情報収集力と検挙数でエースとして君臨しています。悪徳警官視される彼女の真の目的は、自殺にみせかけて殺された夫(週刊誌記者)の死の真相と下手人を見つけ出すことです。そのためには手段を選ばず、犠牲も厭わないという彼女の姿勢はテロリストにも擬せられています。

今回は真相に迫る情報を知っている暴力団印旛会の大幹部のために一肌脱ぐというか、協力させられます。日本最大の暴力団華岡組がメキシコの麻薬組織と提携して大量の覚醒剤を密輸して荒稼ぎしているところ、麻薬組織を裏切って情報と共に逃亡した男を印旛会は匿っています。これに対し、麻薬組織は“グラニソ“の異名を取る殺し屋を派遣し、裏切り者の抹殺に動きます。これを阻止するのが八神瑛子の仕事です。

グラニソはスペイン語で「雹」の意で、突然降ってきて作物に壊滅的打撃を与える様が、敵対者を虐殺する様子に似ていることから付けられたようです。子供の頃にスクールバスごと拉致され、クラスメートと殺し合いをさせてただ一人生き残ったという経歴を持つまだ20歳そこそこの青年がグラニソの正体でした。

このあたり、幼少時代に「孤戮闘」を生き抜いた経歴を持つ「魁!!男塾」の伊達臣人みたいですね。

孤戮闘(こりくとう)……「それはまさにこの世の地獄。そこには世界中からさらわれたり買われてきた年端もいかぬ子供達が集められていた。集められた子供達は絶対脱出不可能な谷底に落とされ一週間程、飲まず食わずの飢餓状態にされる。そしてそこに百人に対して五十人分の食糧が投げ込まれる。当然その食糧をめぐってすさまじい奪い合いとなる。力が劣り闘いに負け糧を得られなかった者にあるのは死…。再び時を置き、生き残った五十人を飢餓状態にし、今度は二十五人分の食料を投げ込む。また闘いの末人数は減っていく。こうして地獄絵図は続くのだ。二十五人が十人、十人が五人、五人がふたり。最後のひとりとなるまで…。そして最後に生き残った子供を素質のある者と認め、それ以上に過酷な修行を受けさせる。喜びも悲しみも一切の感情を捨てただ敵を倒すことだけを宿命とする戦士を作り上げるためにな」

これは冥凰島十六士で同じく孤戮闘を生き延びた紫蘭による解説です。メキシコにもあったんかい。

印旛会にも少数声援の戦闘集団がいてグラニソを迎撃しましたが、予想を超えるグラニソの強武器と戦術により壊滅してしまいます。でも内容紹介の「危険すぎる刺客と瑛子はたった一人で闘いを始める……。」は看板に偽りありで、実は麻薬組織を裏切った男は、家族をグラニソに殺された復讐のために麻薬組織に入り、実績を上げて経理担当となったところであえて裏切ってグラニソを差し向けられたところで討ち取ろうとしていたのでした。

関東連合がモデルと思われる半グレ集団「東京連盟」が登場するなど、出版当時の世相を反映しています。警察の監視を受けて表立って動けない華岡組に代わってグラニソの支援活動を行っていますが、あまりの残虐性によりドン引きしており、唯一通訳で、東京連盟でケンカナンバーワンを自負する比嘉アントニオだ
けがグラニソに付いています。

前回に続いて女子プロレスラー上がりの里美が再登場しますが、グラニソ相手ではやばすぎるだろうと思ったら、比嘉アントニオの相手でした。いかにレスラー上がりとはいえ、女に負けたのはアントニオもくやしいのうwww、くやしいのうwww。

あと今回は富永署長の命を受けて瑛子のストーカーと化する西という元刑事が登場します。こいつは瑛子と違って私利私欲しか考えなかった正真正銘の悪徳警官でしたが、悪行が露見してクビになったのでした。そんな奴でも腕は確かだと雇うあたり、富永署長も「毒を以て毒を制す」気分になったのかも知れません。そんなゲス野郎、西の心を見事にへし折る瑛子が素敵です。ついでにその手法も。「アッー」で「ウホッ」な訳ですよ(笑)。

なおシリーズ第1作の「アウトバーン」はテレビドラマ化され、「アウトバーン マル暴の女刑事・八神瑛子」のタイトルで2014年8月9日にフジテレビ系で放映されました。瑛子役は米倉涼子。瑛子は30台半ばで美貌なのでそんなとこですかね。もうちょっと若い人を起用してもいい気もしますが。

ドラマで米倉涼子は、ドレスやミニスカート、チャイナドレスなどあらゆるファッションを着こなし、場面ごとに性格や行動も七変化する“世界一ファッショナブルで世界一アウトサイダーな女刑事”を演じているそうですが……節子それ八神瑛子とちがう、キューティーハニーや!!ちなみに私は変身前の如月ハニーの
方が好きです(ソンナ事誰モ聞イテナイ)。

八神瑛子シリーズは第三弾「アウトサイダー 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅲ」で完結するので、ぜひこれも読みたいと思いますが、テレビドラマも三部作全部やらやきゃ嘘だろうと思います。瑛子は魅力的なキャラなので、3巻で完結ではややもったいない気もしますが、引っ張れば良いかと言えばそうでもないので、とりあえず第一部終了で、生き延びていたら後日新シリーズをやればいいのかな、なんて。

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