2016年冬季アニメの感想(その4):亜人/彼女と彼女の猫

筑波嶺の散り際の桜を見てきました。あまりにもベタですが、桜はいいですね。あまりに儚い鑑賞期間というのもまたその価値を高めているようです。

それでは本当に最後の2016年冬季アニメの感想です。まずは「亜人」。てっきり2クール行くのかと思いきや、13話で終了してしまいました。「オレ達の戦いはこれからだ」的結末だったので、当然第二期が制作されると思われます。

登場人物の大半が好きになれないという不思議な作品ですが、その分物語をクールに見られていいのかも知れません。主人公の永井圭は、自分で「うわべ以外で人の心配などしたことがない」と語る人で、自己の利益のためなら他人を利用することに躊躇がありませんが、関わりが出来た人間を助けようとするなど、一見合理的ではない行動をすることもあります。でもこれは、結局のところ自分の気持ちが傷付くとか、スッキリしなからという利己的な理由からのような気がします。まあそんなこと言い出すと、人間の行動の大半は利己的理由によるということになってしまうかも知れませんが。

仲間を集めて過激な行動を取る佐藤に対し、平穏な生活を望んで田舎に隠れ住み、山中のおばあさんの孫を装っていましたが、過激派亜人の首領である佐藤が亜人の無残な生体実験を行っていたグラント製薬のビルを爆破・倒壊させ、さらに捕獲に動いたSAT部隊を壊滅させたことで、田舎でも亜人であることが発覚してしまい、いやいやながら佐藤を止めることを決意します。

でもそれまでは佐藤を止めようと訴えた中野に対し、保身を優先して監禁するなど、非常に利己的な行動が目立っていました。でも清々しいほどにエゴイスティックなのでむしろ爽快感すら感じてしまいます。亜人は「黒い幽霊」を出すことができ、山中で操る訓練をしていましたが、圭の「黒い幽霊」はなかなか言うことを聞いてくれませんでした。

「黒い幽霊」は別名IBM(Invisible Black Matter)と呼ばれ、屈折率が0パーセントの完全に透明な物質で構成されています。霊的な存在ではなく物質であるとされていますが、亜人の権威であるオグラ博士(この人も超変人)によると、「黒い幽霊」を構成する物質は極めて不安定で、発生と同時に崩壊が始まっているのだそうです。1日に出現させる事ができる「黒い幽霊」のは1~2体が限度だとも言っていましたが、圭は何度も「黒い幽霊」を出現させていました。

過去には同時に複数の「黒い幽霊」を出現された事例もあるそうなので、「黒い幽霊」の能力同様、亜人によって個体差が大きいのかもしれません。全ての亜人が「黒い幽霊」を操れる訳ではなく、「黒い幽霊」を操る者は「別種」「アドバンス」と呼称されています。そうなると亜人の中にも差別が生まれそうです。

死んだ亜人が復活する際、「黒い幽霊」を出現させる時と良く似た黒い物質が身体から噴き出しているので、亜人の不死身の秘密に「黒い幽霊」が密接に関わっているのではないかと思われます。生き返る回数に限度はあるのか、成長や老化はあるようなので、生涯事故などに遭遇しなかった場合は寿命で死ぬのかなど色々と疑問がありますが、今後解明されるのかどうか。

作品世界では多くの人間は「亜人は人間でない」と定義していますが、普通の人間の中から出現し、子供を作ることが可能で、その子も亜人とは限らない(死んでみないと亜人かどうかわかりませんが)など、亜人の起源・発祥などには謎が多く、「亜人も人間である」と主張している人々もいるようです。

亜人×浪人というMADがありました。「落ちれば、わかる。」そうです(笑)。
続いて「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」。3月に放映されたので厳密に言えば冬季アニメではないのですが、1回8分弱でたった4話で終了したのでここで紹介しておきます。

原作は新海誠の初制作アニメ「彼女と彼女の猫 Their standing points」(1999年)ですが、5分弱のモノクロ作品だったので、今回のはほぼ完全新作と言っていいかと。原作がYouTubeにありました。ナレーションは新海誠自ら務めています。登場するチョビとミミは、姿は全然違いますが「秒速5センチメートル」にも出演していました。
旧作の「彼女」は既に働いている女性ですが、新作の方の「彼女」(美優)は短大生。母親の再婚を促すために友人とアパートをルームシェアしていました。「彼女」が小学生の頃におそらく離婚に伴う引っ越しと転校があり、友だちができない「彼女」の友だちとしてママンがダルを連れてきたのでした。

それから10年ほどが経ち、ダルはすでに老猫となっています。ダルはナレーションも務めていますが、認識は猫のレベルに留まっているので、人間の事情とかは理解できず、ただ彼女の感情だけを察して、自分にできることをやっています。

ダルをきっかけに友だちとなった友人は、結婚を考えるほどの彼氏が出来て、同棲のため出て行ってしまいます。ママンには再婚して貰いたい、でも相手の男性をパパンとは呼べない、就職活動は頑張っても頑張っても内定を貰えない、アパートの家賃は一人で払うには高すぎる……いろいろなことが上手くいかず、状況を打開する術もないままに傷付いていく「彼女」。見守ることしかできないダルは…

「ただ生活しているだけで、悲しみはそこここに積もる」…これは「秒速」での貴樹のモノローグですが、新海誠作品には生活していくことの漠然とした寂しさ・微かな痛み・ささやかな温もりなどが溢れているように思われます。日々の暮らしを見守っている猫のダル。猫はただそこにいてくれるだけでありがたい存在ですが、ダルは彼にとっての大仕事をした後、静かに息を引き取ってしまいます。10歳で死ぬのはネコとしてはやや早すぎるような気がしますが、拾われたときにはもう子猫ではなかったので実際の年齢は10歳以上だったと思われます。

「彼女」の声は花澤香菜で、「言の葉の庭」の雪野百香里に続くヒロイン起用(今回は新海誠監督作品ではないですけどね)となりました。「彼女」、実は後の百香里じゃないでしょうね。短大生だと高校教師は無理かな。旧作では「彼女」の顔を見ることはできませんが、新作では20歳ということもあり、幼い雰囲気があります。はなざーさんの声には百香里よりマッチしていると思います。
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