劇場版 クラッシャージョウ:今さらですが見ました33年前の名作アニメ映画

最後の豊平川ウォーキングをやってきました。去年は今頃河川敷を歩けたのですが、今年はまだちょっと早い感じです。雪が少ない少ないと言われていましたが、3月になってちょいちょい降ったせいかもしれません。それにしても“最後”っていうのはいつもちょっと淋しいものですね。

通常はレトロゲーム紹介の日曜日なんですが、今回は今日唐突に見てしまった「劇場版 クラッシャージョウ」の話をしたいと思います。

「劇場版 クラッシャージョウ」は1983年3月12日に松竹系で上映されました。ほぼ同時期に「幻魔大戦」や「宇宙戦艦ヤマト 完結編」が公開され、「1983年春のアニメ映画興行戦争」と呼ばれました。なので存在自体は当時から知っていましたが、当時平井和正にかぶれていた私は当然のように「幻魔大戦」を見に行ったのでした。

そのせいかどうか、3作の中で興行成績トップは「幻魔大戦」、次いで「宇宙戦艦ヤマト 完結編」でした。「劇場版 クラッシャージョウ」は最下位に沈んだ訳ですね。

原作は高千穂遙。「スタジオぬえ」の主要メンバーであり、日本初の本格的なスペースオペラ作品(「クラッシャージョウ」)や本格的ヒロイック・ファンタジー(「美獣」)を執筆し、日本SF作家クラブの会長も務めた(2007~2009年)という、日本SF界の重鎮というべき存在です。そうなんですが、どうも私、この人が昔から苦手で。

読んだことがあるのは「ダーティーペアの大冒険」のみ。星雲賞受賞作でもあり、これは面白かったです。でも続編は読まず、「クラッシャージョウ」シリーズは全く読むことがありませんでした。これは、この人の作品がどうとかいう問題ではなく、当時やたらにSFについて過激かつ強気な批評を行っており、「○○はSFではない」という断定的かつ攻撃的な主張を繰り返していたのです。○○の中にはヤマトやガンダムなどが入ると思って下さい。その主張が、どうも私には受け入れられなかったんですね。ま、この話題は今更あんまり深く掘り下げるのもアレなんで、このへんで。

高千穂遙は、SF小説におけるヴィジュアル面の重要性を活動初期から強く認識していた作家で、「クラッシャージョウ」シリーズや「ダーティペア」シリーズの表紙には、当時アニメーターだった安彦良和を起用しています。そして「劇場版 クラッシャージョウ」は安彦良和の初監督作品なのです。当時のアニメ雑誌はこぞって本作を称賛してたのを覚えています。キャッチコピーは「宇宙が熱い」。

興行的にはライバル作品に遅れを取りましたが、アニメファンには支持され、「アニメージュ」が主催する第6回アニメグランプリで大賞を獲得しています。スタッフが係わったアニメのパロディーや関係者をモデルにしたモブキャラなど、「業界ネタのお遊び」がちりばめられているのが特徴で、衣装・生き物など有名漫画家達が提供したスペシャルデザインも話題作りに一役買いました。参加したのは吾妻ひでお、いがらしゆみこ、いしいひさいち、大友克洋、高野文子、高橋留美子、竹宮惠子、とり・みき、鳥山明、細野不二彦、御厨さと美、和田慎二と錚々たるメンバーです。

また劇中でジョウらがダーティペアの映画を観賞するシーンがあります。原作者が一緒だから出来たこの豪華な組み合わせ。なおどちらも同じ世界観で、22世紀の話という設定ですが、ダーティーペアの方が20年位前の話のようです。ということは、クラッシャージョウの時代には「ラブリーエンゼル」の二人はもはやBBA…

「クラッシャージョウ」は、ワープを可能にし、人類が銀河に乗り出して植民を行っている世界が舞台になっています。クラッシャーとは、惑星改造を始め「宇宙の何でも屋」として活躍する職業集団で、犯罪以外なら報酬次第でどんな事でも引き受けているため、軍からは“荒事さえやるならず者”と見られ、海賊と同一視する向きもあるほどです。

主人公ジョウは、クラッシャーの創始者であるダン(現:クラッシャー評議会議長)の息子で、生え抜きのクラッシャーとして若干19歳ながらチームリーダーを務めています。そしてダンの片腕だったタロス、孤児だったリッキー、元王女アルフィンとチームを組み、様々な事件に挑んでいます。

大仕事を終えたジョウたちは、休暇中に飛び込みで依頼された仕事を“クラッシャー評議会”を通さずに引き受けてしまいます。難病のためコールドスリープ状態の大企業の令嬢・エレナを、手術のできる医師がいる星へと送り届けて欲しいというもので、お家騒動の渦中にあるので極秘裏に行う必要があるのでクラッシャーを頼ったという話です。しかし、ジョウ達の母船ミネルバはワープ中に原因不明の事故に遭遇し、全員が気絶している間に、エレナや依頼人達が消えてしまいます。

その後連合宇宙軍重巡洋艦コルドバの艦長コワルスキー大佐に海賊と疑われて捕まったり、釈放されたらされたでクラッシャー評議会から6か月の活動停止を命じられたり散々でしたが、実はこれら一連の事件はすべて仕組まれたもので、依頼人は実は宇宙海賊一味で、エレナも彼らが誘拐していたのでした。しかも、彼女は本当はエレナという女性ですらなく…。果たしてジョウ達は汚名を返上し、事件の真相に迫れるのか?

まあ流石にスペオペらしく、前編活劇の嵐で息をつくヒマもありません。良く生きているなと思うほどの猛攻撃に曝されるクラッシャーチームですが、宇宙海賊マーフィー一味の規模が大きすぎです。惑星ラゴール星にアジトと呼ぶにはあまりにも大規模な基地を構え、衛星軌道上には宇宙要塞まで持っていて、艦隊まで保有しているという。一体何で儲けてそこまでの規模になっているのか謎です。

海賊から“スリーピング・ビューティー”と呼ばれていたエレナの正体はドクター・マチュア。大学の重力物理学研究所でパパンであるドクター・バルボスの助手をつとめていましたが、バルボス博士が開発した新型ワープ装置を狙って、マーフィー一味が襲撃。勢い余って開発チームを皆殺しにしてしまいました。しかし装置はまだ未完成だったため、唯一の生存者であるマチュアを誘拐して完成させようとしていたのでした。マチュアを官憲に発見されずに運ぶためにジョウ達は利用され、事故も新型ワープ装置によるものでした。

実はこの新型ワープ装置、他の宇宙船のワープ機関までコントロール出来るというとんでもない代物で、武器としても転用可能なものでしたが、使い方を間違えると宇宙が裂けてしまうという恐ろしい危険も孕んでいました。そんなことは全く知らないマーフィー一味は、この装置で宇宙の支配者になろうとしていたのでした。

ジョウは19歳らしく血気にはやる性格で、正直人ごとながら大丈夫かよ?と言いたくなるほど無茶を島倉千代子で、パパンのダンに強い反発心を抱いています。クラッシャーとしての腕前はともかく、人間的にはまだまだ未熟ですね。

その未熟さ故に海賊に利用されてしまいましたが、最後の最後は実はいろんな勢力からもいいように利用されていたことが判明します。ラゴールの大統領や連合宇宙軍、さらにジョウ自身は気づいていないようですが、パパンにまで利用されていたという、まさに釈迦の掌の上の孫悟空状態です。

クラッシャーは荒事上等なので、かなり荒っぽい事もするのはまあ黙認されているのでしょうが、本作では相手が海賊とは言え人を殺し過ぎです。ある程度は正当防衛が認められるのでしょうが、それだけでは済まない大量虐殺が発生してしまっています。相手が悪人ならいいのでしょうか?神林長平の「敵は海賊」シリーズの対海賊課ならその権限が与えられているのでいいのですが、クラッシャーは一応民間なのに。

頑固で融通の利かない軍人の典型であるコルドバ艦長コワルスキー大佐のCVは納谷悟朗で、この人は艦長だけど沖田艦長というよりは銭形警部的な性格です。この人も踊らされている人ですが、最後にはジョウに協力してくれたりしているので、憎みきれない役どころではあります。宇宙海賊の戦闘艦をばったばったと沈めるコルドバはさすがちゃんとした軍艦だなと思わせる強さです。

ヒロインはチームの紅一点であるアルフィンなんでしょうが…明らかにジョウに気があるのに、お約束のようにジョウはアルフィンの気持ちに全く気づいていないという朴念仁ぶりを見せています。ファンには悪いのですが、少なくとも劇場版のアルフィンは元王女のわりにあまり品がなく、酒癖が無茶悪く、正規の軍人じゃないからしょうがないのかもですが、任務中の言葉使いもあまり感心しません。

代わりに目を惹くのがドクター・マチュア。ラストで非業の死を遂げてしまう悲劇性もありますが、ジョウにとっては「憧れの年上の女性」的雰囲気を目一杯出しています。CVは武藤礼子で声も実に素敵なお姉さん感を出しています。何より真っ裸だったり裸に白衣だったりとやたら露出が高いところもポイント高いです。終盤は海賊支給の服を着ていますが、海賊なんだからもっとエロい格好させろよとか思ったり(笑)。この人については「好きなアニメキャラ」で別途語りたいと思います。

高千穂遙自身が本作をノベライズした「虹色の地獄」の表紙にも裸エプロンならぬ裸白衣のマチュアが登場しています。当然安彦良和の絵です。胸元は押さえていますが足下がお留守ですよ。

この時代というのはそろそろCGが使われ出した頃で、本作でも部分的にCGが導入されているそうですが、どこといってよく分かりませんでした。なお使用されたコンピュータは日立のベーシックマスターレベル3だそうです。な、懐かしい…すごく欲しかった頃がありましたよ(高すぎてとても無理でしたが)。

最後にジョウ達の母船・ミネルバについて。スペースシャトルに似たデザインで民間船のはずですが、かなりの強武装である他、戦闘機2機に装甲車まで搭載していて、流石にクラッシャーを単なる民間団体呼ばわりするのは無理があるのかと思われます。というか西部開拓時代のアメリカみたいにみんな武装しているんですかね。


搭載戦闘機のファイター1は河森正治デザインだけあってバルキリーを彷彿とさせるカッコイイ機体ですが、なんと座席は、タンデムではなくサイドバイサイドとなっています。Su-34か。色違いのファイター2もあるのですが、2機出撃すると、4人出払ってしまうことになります。

無人になったミネルバは、第5のメンバーであるロボットのドンゴが留守番を務めます。留守番中にエロ本を読むなど、いろんな意味で高性能のようですが、ミネルバ自体のコンピューターはどうなんでしょうか?

終盤登場する万能装甲車ガレオンは事実上戦車ですね。ガルパンに登場したら無双ができそうです。発進口はファイターと同じミネルバ後部ですが、攻撃による損害で格納中のファイター2が破壊されるシーンがありますが、ガレオンは無被害だったんですね。装甲のせい?

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