やさぐれ刑事:原田芳雄のツンデレっぷりが凄まじい、NTR好きは一見の価値ありのアクション映画

春のセンバツが開催されている今日この頃ですが、画面を見て「あれ?」と思ったのは、いつもバックネット裏にいるラガーシャツのおっさん(通称「ラガーさん」)の姿がないことです。20年以上前から「8号門クラブ」という、バックネット裏前方の座席を確保するために野宿を辞さない人達が存在していたそうですが、割り込むとか他の人を排除するなどの問題行動が指摘され、昨年にはネットに抗議ページが作られたり、高野連や夏の大会主催の朝日新聞、センバツ主催の毎日新聞、そして文科省までへも批判やクレームが殺到する事態となりっていたそうです。

そのため、今回からテレビ中継時に映るバックネット前方に小中学生を無料招待するドリームシートが設けられることになり、ラガーさん「等8号門クラブ」は、これまでの席に座ることができなくなったそうです。向かって右側(三塁側)に十数列ずれて、相変わらず最前列に居るという話もありますが、テレビには滅多に映らなくなりました。高野連は「野球人気を復活させるため、小中学生の夢を育むため」と発表しており、「8号門クラブ」対策とはおくびにも出していませんが、“あ…(察し)“というところでしょうね。

ドリームシートは夏の大会でも継続される見通しということですが、 不断の努力の結果として席を確保していたとしていも、徒党を組んで他者を排除していたということなら、やはり糾弾されてしかるべきだったのでしょう。ドリームシートに異議はないですが、それ以前に指定席化すればよかったんじゃないかという気もしますが。

ここのところ冒頭で妙に時事ネタを扱っていますが、日記的意味に過ぎず、硬派路線とかにシフトする気はありませんので。ということで本日は、唐突になんと40年前の邦画、「やさぐれ刑事(デカ)」を紹介したいと思います。

「やさぐれ刑事」は1976(昭和51)年4月3日公開されたアクション映画で、藤本義一の同名小説が原作です。主演は原田芳雄。この年に西村寿行原作・高倉健主演の「君よ憤怒の川を渉れ」に出演し、罠に陥って犯罪者とされた杜丘検事役の高倉健を執拗に追跡する矢村警部を演じていました。終盤は協力しているので悪役ではありませんが。

なんで「君よ憤怒の川を渉れ」を持ち出したかと言えば、文化大革命後に初めて公開された外国映画であり、大変な人気を呼び、中国での観客動員数は8億人に達したとされるからです。もしや世界で一番視聴された邦画だったりして。

しかも原田芳雄、なんと鬼の哭く街・A立区出身なんですね。2011年に71歳で惜しくも亡くなりましたが、紫綬褒章はじめ、俳優として各種表彰を受賞している名俳優です。デビュー当時は純朴な青年風キャラクターでしたが、その後浅黒いワイルドなアウトロー風キャラへとイメージチェンジを図り、圧倒的な存在感と的確な演技力を武器に、100本を超える映画に出演しました。「やさぐれ刑事」主演当時、原田芳雄は35、6歳ということで、油が乗りまくっている感がします。


あらすじは…全国制覇をたくらむ関西十文字組の策謀に呼応して、各地で一斉に暴力団が動き始め、対する警察の動きも活発になってきました。北海道においては、暴力団取締りの中心にいた大西警部が殺されるという事件が発生します。犯人は十文字組の幹部・杉谷(高橋悦史)で、かつて大西警部の部下である西野警部補(原田芳雄)に逮捕される遺恨を持っていました。


さらに杉野は西野警部補の妻・真穂(大谷直子)に車のセールスマンを装って接近し、あっさり寝取った上に一緒に札幌から姿を消してしまいます。妻を寝取られた男が刑事を捨て、北海道から、東北、東京、神戸、九州へと日本を縦断して二人を追い詰めていきます。予告編がYouTubeにありました。
www.youtube.com/watch?v=b16k7Vd4KP4
西野の部下の松井刑事は清水章吾が演じています。ほら、以前某サラ金会社のCMでチワワを見つめていたあの人ですよ。この頃は実に若いですね。

やさぐれて、狂犬となった西野は、拳銃を持ったまま杉谷と真穂を追跡します。そして杉谷が厄介になる各地の暴力団を攻撃しまくり、大被害を与えるというテロ活動を実施。「杉谷を匿うとエラい目に遭う」という定評を作り出して追い詰めていきます。


真穂とは比較的早くに再会しますが、おそらく仕事一筋で家庭を顧みないどころか、最近では夫婦生活すらあったからどうか怪しい西野なので同情の余地はあるんですが、刑事の妻なのにあっさり浮気しすぎです。いや、刑事の妻が他の人妻より貞淑という根拠はないんですがね。ただ画面上は「もう関係持ってますよ」的ニュアンスしか描かれないので、欲を言えば真穂が寝取られる仮定を詳しく描いて欲しかったですね。さらには仇敵の嫁を寝取って勝ち誇る杉谷の表情とか。


ちなみに杉谷役の高橋悦史と原田芳雄を比較すると、どうみても高橋悦史の方がインテリ風で、とても暴力団には見えません。インテリヤクザというやつなんでしょうか。これがセールスマンと偽れば騙されますな、これは。


しかし駆け落ちの相手はなんとバリバリのヤクザだったということで、真穂の運命は大きく暗転していきます。夫と再会しても犯された上に情報屋にされてしまったり。原作では途中でそれが発覚して殺されることになるのですが、映画では最後まで生きながらえているのでそこはましでしょうかね。なお原作では死亡時妊娠していたのですが、誰の子かは不明。西野の子だったということだとさらにアイロニーが効くのですが、明らかにはなっていません。

なお西野さんのあっちの方のテクですが、青森の売春婦に酷評されているので、自分勝手で下手くそだったんでしょうね。メシまず嫁は旦那が逃げ出しますが、あっちがまずい夫からは嫁が逃げ出すのか。

さらに福島県相馬では十文字組系に押されて落ち目の暴力団の姐さん・三千子(絵沢萠子)と親しくなって、十文字組系の経営するパチンコ屋に住み込みのアルバイトとして入り込みます。そこでチンピラ達が大喜びで見ていたのは、なんと真穂主演のブルーフィルム(今でいうAV)。強烈にNTR感を味わった西野は怒りにまかせて事務所ごと爆破という暴挙に出ます。


真穂さん、杉谷の情婦だけやっている訳にはいかなかったようで、杉谷の金づると化してAVに主演したり政界の黒幕(大滝秀治)にあてがわれる高級コールガールをやったりと大忙しです。骨までしゃぶられるという奴でしょうかね。罪の報いといえばそうなんでが、酷いなあ。


その後大阪・神戸では西野は真穂からの情報をもとに、十文字組の幹部を射殺したり、三億円にのぼる麻薬を押収したりして打撃を与えていきます。そして折にふれなぜか西野に接触する松井刑事。道警の人なのに各地に出没し、犯罪者となった西野を逮捕するそぶりも見せずに情報だけ提供したりして、事実上支援活動を行っています。

個人の立場でそこまで出来ないと思うので、道警上層部(あるいは警察庁上層部)の意でも受けたんでしょうかね。十文字組にありとあらゆる非合法な打撃を与え、しかも全責任を退職刑事におっかぶせる作戦だったりして。西野もやたら拳銃ぶっ放していますが、なぜか銃弾が尽きないのはこっそり松井が補充してたんだったりして。ハジキをよこせと襲われたときは拒絶してましたが。

さらに南に逃げる杉谷を追って鹿児島に来た西野は、十文字組の麻薬ルートの連絡中継点である杉谷の愛人らしい三味線の師匠・浅見俊江(赤座美代子)の家に押し入りますが、杉谷は沖縄に麻薬の取り引きに出て留守でした。真穂を寝取られた恨みからか、「杉谷が抱いた女は、すべて犯す」と、西野は俊江を犯します。青森では「下手くそ」と酷評を受けていた西野ですが、その後真穂や相馬の姐さんらを相手に経験値を上げたようで、なかなかの健闘を見せています(笑)。

遂に西野は杉谷と坊ノ津港の突堤で対峠します。西野のリボルバーが火を吹き、杉谷の眉間をぶち抜いたその頃、枕崎のとあるバーで、真穂は酔っ払って、涙で頬を濡らしながら客を引いていました。それを知ってか知らずか、松井に逮捕されて護送される車中、西野は「あいつも可哀想な奴だった」と咳くのでした。


貞淑そうな若妻だった真穂の果てしない堕ちっぷりが萌えますね。当時26歳でよくやったと思いますが、濡れ場に物怖じしない人で、後には「受胎告知」という妊婦ヌード写真集を発表(1981年)したりしているので、肝っ玉姐さんなんでしょう。

NTRを契機に狂っていく刑事と堕ちていく妻の物語を通じて日本を縦断していくという異色作ですが、NTR好きには西野の気持ちにシンクロしてなかなかに良い作品だと思います。真穂のブルーフィルムに見入るチンピラ達がまたやたらゲスくて最高です。できればブルーフィルムをもっと見せて欲しかった(笑)。

以下、余談ですが「やさぐれ刑事」のナゾです。

ナゾ①:青森の十文字組系組織に拳銃の密売を持ちかけた西野。取引に寄越されたのが何と真穂で思わぬ再会を果たすのですが、なにゆえに青森のヤクザはド素人の真穂を寄越したのか?普通はマユツバものの取引話だと思ったにしても、チンピラの若い衆くらい寄越すんじゃないの?そもそもこの頃の真穂は大幹部である杉谷の情婦的ポジションなので、粗略には扱えないと思うのですが。杉谷が「お前ヒマそうだから行ってこい」とか言ったのでしょうか。

ナゾ②:凶悪テロ犯すぐる西野。各地でヤクザを射殺しているのは、まあよしとして(おいおい)。相馬での爆破事件だけはいただけません。真穂のブルーフィルムを見てNTR感沸騰で発狂状態というのは判りますが、あのヤクザ事務所、一階はパチンコ屋で当時は営業中なんですよね。建物全てを爆破した状況なので、二階のヤクザ達はもとより、一階で遊んでいた素人さんも多数死傷したんじゃなかろうか。

ナゾ③:西野最後のセリフ「何にも終わっちゃいねぇ…まだ野村が残ってるんだよなあ…」。今回の西野の復讐行は、真穂を寝取った杉谷に対するものかと思ったのですが、大滝秀治演じる政界の大物・野村がいつの間にターゲットになったんかい。あ、高級コールガールに堕ちた真穂が野村に抱かれたから? 自分以外に真穂を抱いた男は皆殺し、ブルーフィルムを楽しんだ男も皆殺しということなんでしょうか。実は愛妻家だった西野(笑)。ツンデレ?

ナゾ④:西野の裁判の行方。杉谷殺しはもう免れないところではありますが、行く先々で殺しをやってるんですよね。レイプもあるし。悪人ばかり殺しているといっても極刑は免れないか。なによりも、相馬の爆破テロが西野の仕業だと判ったら絶対死刑でしょう。でもうすうす事情を知っている気配の三千子は言わないだろうし、松井も黙ってそうなので、立件されるかどうか。

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