ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者:ホラー風味の良作推理アドベンチャー

豊平川の堤防の歩道はだいぶ歩きやすくなってきました。でも河川敷はまだまだ雪で覆われていて突入は時期尚早のようです。早く信号のない道を歩きたいものですが。

レトロゲームの日曜日、本日はファミコンディスクシステムのゲームを紹介しましょう。「ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者」です。 「ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者」(以下「消えた後継者」)は、ディスクシステム用のコマンド選択式アドベンチャーゲームで、1988年4月27日に前編、同年8月10日に後編が発売されました。

2004年8月10日にはゲームボーイアドバンス移植版が発売され、こちらは前後編が1本にまとめられています。登場時(1986年)にはROMカセットに比べて約3倍の大容量だったディスクシステムですが、あっという間に大容量ROMカセットが登場し、優位性を失って失速していきました。「消えた後継者」が発売された1988年にはNECのPCエンジン用CD-ROMハードCD-ROM2が登場しており、退潮ぶりは如何ともし難い状況となっていましたが、こういう佳作が比較的安価で登場し、なお気を吐いていました。

当時は推理アドベンチャーゲームが多数発売されていましたが、本作の特徴は、10代の少年が探偵役にして主人公を務めているところです。また、謎を推理して事件を解くことよりも、物語のドラマ性や物語を読むことが重視されており、ゲーム進行に不必要なコマンドはゲーム側で極力省くなどしており、コマンド総当りが可能で比較的難易度は低めになっています。

実は類似のシステムを取り入れた作品としては、1987年に発売された「ふぁみこん昔話 新・鬼ヶ島」という作品があるのです。プレイしたんですが…プレイしたことは確かなんですが、内容をすっかり忘れてしまって(てへぺろ)。ラストはちょっともの悲しかったなあという印象はあるんですけどね。きっと童話系より推理系が好きなんですよ、私(開き直る)。

「ファミコン探偵倶楽部」はシリーズ化され、1989年にはホラー推理の傑作である「ファミコン探偵倶楽部 PART Ⅱ うしろに立つ少女」が発売されましたが、1990年にスーパーファミコンが登場したことでディスクシステム自体が陳腐化したこともあり、2作で打ち止めとなってしまいました。

関連作品としては、「BS探偵倶楽部 雪に消えた過去」というのが1997年に放送(!)されています。これはスーファミのサテラビュー(1995年から2000年までBSアナログ放送で実施された、スーファミ向け衛星データ放送サービスを受信するためのデータ放送受信端末)で放送されたものですが、サテラビューのサービス終了によりプレイすることは不可能となっています。シリーズのヒロイン格である橘あゆみが主人公となり、しかもCVは皆口裕子だというのに、サテラビューが全くと言って良いほど普及しなかったせいで、どマイナーな作品となっています。

シリーズを通じての特徴は、事件に関連して怪談が結び付けられ、全体的にホラータッチで描かれていることです。「消えた後継者」では死人の蘇り伝説、「うしろに立つ少女」では血染めの少女の霊の話、「雪に消えた過去」では落武者の亡霊伝説が登場します。これは、原作担当者が推理小説を横溝正史の「犬神家の一族」と「悪魔の手毬唄」しか読んでいなかったために、横溝作品の世界観が色濃く反映される事になったからだそうです。

崖の傍で記憶を失って倒れていた主人公は、天地という男性に助けられて意識を取り戻します。その後、橘あゆみから、自分が空木探偵事務所の探偵助手であることや、突然死を遂げた資産家・綾城家の当主綾城キクの死について調査を依頼されていたことを知らされます。自分の名前を思い出した主人公は、明神村にある綾城家に向かいます。

うらびれた寒村である明神村で一番の資産家である綾城家には「死者が蘇り綾城家に仇なす者を殺す」という奇妙な伝承が代々言い伝えられていました。当主であったキクの死により、明神村全体に不穏な気配が立ち込める中、事件は綾城家の関係者を巻き込んだ連続殺人事件へと発展していきます。キクの残した財産を得ようと目論んでいた人間たちが次々と死を遂げていく中、失われた記憶と事件の真相を知るために奔走する主人公の運命は…

主人公は少年探偵で、実の両親とは幼少時に生き別れており、現在は空木探偵事務所で空木探偵の助手を勤めています。名前は任意に決定できますが、ゲームブックでは高田直哉とされています。自称空手三段だそうですが…

ヒロイン格の橘あゆみは同じく空木の助手で、主人公の捜査に色々と協力をしてくれますが、前編ラストでは主人公のコーヒーに睡眠薬を入れるなど、驚きの行動をして後編発売まで気を持たせました。緩く一本に縛ったお下げ髪を右肩に垂らしている(「雪に消えた過去」のみなぜか左肩)が特徴です。

「うしろに立つ少女」が1998年にリメイクされたため、橘あゆみのイラストも大変化。ディスクシステムは容量とか性能のせいもあってかなりあっさり目でしたが、時代に合わせて変化しています。

公式サイトにはなぜか水着姿の橘あゆみも掲載されているのですが、これってサービス?それなら新規イラスト版でも作って欲しいのですが(笑)。

二人の親分である空木俊介は腕利きで、警察にも顔が利き、探偵業で多忙な日々を過ごしていますが、「消えた後継者」では長期出張中で名前のみの登場となります。というか、他作品でも終盤にならないと登場してきません。彼が出てくると主人公の出る幕がなくなってしまうからでしょう。

古い作品とはいえ、「ポートピア連続殺人事件」ほど犯人が有名になっていないので、一応伏せておきましょう。「消えた後継者」とは、キクの財産の相続人に最も近い立場にある一人娘の綾城ユリのことと云えますが、美しく優しい女性だったようですが、過去に恋人と駆け落ちして現在は行方不明となっています。彼女のその後の人生はオチとも直結してくるのですが……

出来は悪くなく、連続殺人という題材にオカルト要素を絡めて緊迫感を深め、衝撃の真相へつなげる…といったシナリオは高く評価されています。前編から後編へと続くくだりも、次々と殺されてゆく後継者たちとの関連が疑われる「新たな当事者」の存在にぐっと近づくところであゆみに眠らされるということで、先が気になる引きでした。

主人公についても、よくある「プレイヤーとの一体感」を演出したものと思われた設定を上手く物語に生かしており、調査が進むにつれて徐々に記憶が戻り謎が明かされ、クライマックスに向けて意外な展開を見せていきます。

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