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だいこん:気っ風のいい美人の細腕繁盛記

だいこん
 
 本当に、いつ果てるとも知れない絶倫の夏が続いてますね。夏のやつ、宝仙堂の凄十でも飲んだのでしょうか。

彼、どうやら飲んだらしい

 そう、「彼、どうやら飲んだらしい」のアレです。こっちとしてはいい加減さっさと果てて欲しいのですが……

 阿部さんみたいな「いい秋」に早く来てもらいたいものです。

ウホッ!いい男

 そして「ウホッ!いい男…」ならぬ「ウホッ!いい秋…」と言わせて欲しいものです。

 さあ、小粋なオープニングジョークはこれくらいにして、本日の記事行ってみましょう。今日は昨日読み終わったばかりの山本一力の「だいこん」をご紹介します。
 
 また図書館で借りてきたんだろうとお思いのあなた。

そのとおりでございます。

 ……さすがにちょっと使いすぎな感じがしてきました。
 
 作者の山本一力は64歳。1997年に「蒼龍」でオール讀物新人賞を受賞してデビューし、2002年には「あかね空」で直木賞を受賞しています。主に江戸時代を描いた数多くの時代小説を執筆しています。

 描くのは主に江戸下町の町人達で、商人や職人の他、渡世人や駕籠かきや飛脚なども主人公となっています。特徴は、真面目に主人公が誠心誠意仕事に取り組んでいると、それを影ながら見て評価している人達がいて、主人公が困難に直面したときにさりげなく助けてくれたりするという筋立てが多いことです。基本的に正直者が馬鹿をみてばかりでない、理不尽な目に遭ったりもするけどそればかりではないというハッピーエンドが多いので読後感が爽快です。

 まあこの世の中、そんなに上手くはいかないよと、空を斜に見上げて毒づきたくなる日も多いですが、山本一力の著作を読むと、2,3日はちょっと真面目に生きてみようかなという気にもなるという、そんな力があるような気がします。

 「だいこん」の主人公はつばきという大工の娘で、本編では彼女の3歳から25歳くらいまでの期間を描いています。

 昔「ルックルックこんにちは」というワイドショーをNTV系列でやっていたのですが、コーナーの一つに「ドキュメント女ののど自慢」というものがありました。のど自慢だけに女性の参加者が持ち歌を熱唱するのですが、その前にVTRで再現された参加者の波瀾万丈な半生がドキュメントとして紹介されるのです。例え歌が下手でもドキュメントが感動的だと下駄を履かせもらって合格できたりするという(笑)。夏休みになると女子高生大会なんかもありました。女子高生にそんなにそんなに波瀾万丈なドキュメントがあるものなんでしょうか?しかし島谷ひとみも女子高生大会に出場してデビューにつながったらしいです。

島谷ひとみ

 しかし、「だいこん」のつばきの場合、25歳の若さでもう十分「ドキュメント女ののど自慢」合格間違いなし、スペシャル賞獲得おめでとう的な人生を送っています。
 
だいこん(文庫版)

 腕のいい大工だけど酒と博打に目のない父親が10両もの借金を賭場で作ってしまい、つばき一家は十一(といち。十日で一割という暴利です。これで良ければ私も幾らかはご用立てできますので、お入り用の方はご連絡を……へっへっへ)の利子を払うのが精一杯で元金が減らない極貧生活に喘ぎます。そんな中で妹は生まれるは親父は番所に引っ張られて笞で叩かれるは大火事は起きるはといろいろな出来事が起きます。

 そんな中、飯炊きの才能を見いだされたつばきは、10歳になる前から鳶が集まる番小屋の食事番となり、母親といっしょに父親の半分は稼ぐようになります。借金も帳消しになってからは小金を地道に貯めて、17歳にして一軒家を借りて飯屋「だいこん」の開店にこぎ着けます。

 このつばきが極めて商才に長けていて、格安で飯食べ放題、おかず食べ放題を実現し、味の良さと薄利多売で人気を博していきます。そのうちに弁当屋もやるようになり、酒もだすようになって居酒屋化したり、料亭を居抜きで買ったりと様々な展開をした後に、ある商人との口論の果て、売り言葉に買い言葉で料亭を手放し、それまでの根城だった浅草から深川へ進出していくというところで物語は終わっています。

 またつばきは、単に飯炊きが上手いというばかりでなく、気っ風が良くて意志が強く、曲がったことが大嫌いという、下町の職人や鳶が皆して惚れまくりそうな性格で描かれています。ただ三姉妹の長女で母親がちょっと頼りないせいで、妹たちの母代わりになってしまったせいか、可愛げがないことを本人は気にしていたりします。

 「だいこん」命で暮らしていく中で、様々な人と知り合い、絆が出来ていき、義理人情を大切にする中でさらにその姿勢気に入った人達が寄ってくるという好循環。もちろんそりの合わない人々も出来てきて摩擦も起きたりしますが、常に味方が大勢いるというのはうらやましいです。きっと現代に生まれていたらホテルチェーンの女社長あたりになっているのではないかと思うような細腕繁盛記ぶりです。

 酒の博打でもめ事を起こす父親や、時々ヒステリーを起こす母親、甘えん坊な妹たちと、家族は必ずしも理想的な性格というわけではありませんが、短所もまとめて愛するという包容力のあるつばきは、妹たちを次々と嫁に行かせて自らは「行かず後家」となっていますが(今の世の中、25歳で「行かず後家」なんて絶対言えませんが、なにしろ江戸時代の話なので勘弁して下さい。この時代だとこう言われてしまうのです)、自分のお店という本当に熱中できるものがあれば恋愛なんてどうでもいいような気もしますね。もっともつばきは美形らしいし、恋をしないつもりもないので、色恋沙汰は起きていくでしょう。

 おそらく続編では、つばきの深川での活躍とか恋愛などが描かれる第二部が執筆されないわけがないと思うのですが、おそらくつばきが80歳まで生きても幕末にはなお届かず、江戸時代ど真ん中を生きることになるでしょう。

江戸時代の吾妻橋

 Amazonのレビューを見ていたら、こんなに面白いのに☆一つの評価の人がいて、何でだろうと思ったら、時代考証に間違いがあるというのです。この小説ではつばきの過ごす時代が年号と西暦表記で示されるので非常にわかりやすいのですが、その人のご指摘によると、1764年生まれのつばきが6歳ころ(つまり1770年頃)に嵐の中を吾妻橋を渡っていて、危なく川に落ちそうになるというエピソードがあるのですが、実は吾妻橋は1774年架設の橋で、それ以前は渡し船が出ていたと言うことです。

現在の吾妻橋

 物語の面白さを帳消しにするようなことは決してありませんが、確かにこれは言い訳のきかないミスとしか言いようがないですね。つばきの生まれを4年くらい後に下げた方がいいかも知れません。

 ちなみに吾妻橋は墨田区の地名にもなっていて、例のアサヒビールの本部ビル(通称ウ○コビル)なんかがあります。

墨田区吾妻橋

 すかっとした秋空のような小説を読んでみたい方、一度お試しを。
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