デジタル・デビル物語 女神転生:数々の派生作品を生んだ「メガテンシリーズ」の原点

「雪ミク」ラッピング市電が今年も走り始めました。初音ミクは札幌生まれなのです。生みの親であるクリプトン・フューチャー・メディアが札幌の企業なものですからね。「雪ミク」はさっぽろ雪まつり応援キャラクターで、2010年に登場してから雪像が展示されているほか、様々なキャラクターグッズが販売されていますが、これについていは詳しくは「北海道名物!」で後日改めて。

今日はドラクエ、FFと並んで三大RPGシリーズと言われた「メガテンシリーズ」の原点である「デジタル・デビル物語 女神転生」(略称DDS)を紹介しましょう。ドラクエとFFには異論は少ないところ、三つ目については「テイルズ」とか「ポケモン」など他の作品を挙げる声も強いとは思いますが…個人的にはメガテンで決まりです。

DDSは1987(昭和62)年9月11日にナムコから発売されたファミリーコンピュータ用ソフトです。数多くのファミコンゲームを発売していたナムコの「ナムコット ファミリーコンピュータゲームシリーズ」では第29弾に当たります。1995(平成7)年には続編と合わせた「旧約・女神転生」のタイトルでスーパーファミコン用ソフトとしてリメイクされたほか、2004(平成16)年には携帯電話アプリとしても配信されました。

後に開発元のアトラスがシリーズ化したことで「メガテン(「女神転生」の略称)シリーズ」の原点とされますが、発売がナムコからアトラスの自社販売に変わった際に「真・女神転生」とタイトルを改めた他、システム面の幾つかの要素を引き継いだ以外は完全に独立した新作として製作されたため、DDSと続編に当たる「デジタル・デビル物語 女神転生Ⅱ」のストーリーは、「真・女神転生」シリーズとは直接関係していません。

原作は西谷史が1986年に発表した長編SF「デジタル・デビル・ストーリー」の第1巻「女神転生」です。「デジタル・デビル・ストーリー」は3巻まであり、続編にあたる「新デジタル・デビル・ストーリー」が6巻までありますが、第1巻「女神転生」がOVA化やゲーム化に発展して、当時では珍しいメディアミックス作品として成長しました。

もっともDDSも登場人物と一部の設定を借りている以外は、ほぼオリジナル作品と言ってもよいでしょう。一応原作やOVAの続編という形は取っていますが。6つのエリアで構成された飛鳥の大魔宮を探索し、各エリアを支配する魔王(中ボス)を倒していく主観視点・3Dダンジョン形式(ウィザードリータイプ)のRPGで、途中で囚われた女神イザナミを救い出し、大魔王ルシファーを倒すという形はドラクエに近いですね。

ちなみに原作やOVAではヒロインでありイザナミの転生でもある白鷺弓子の存在感がいろんな意味で大きいのですが、ゲームではイザナギの転生である中島朱実が主役で弓子は添え物というかサポーター的存在になっています。

1980年代後半。天才的なプログラミング技術を持つ高校生・中島朱実は、ひそかに「悪魔召喚プログラム」を制作、逆恨みから自分に危害を加えた生徒達に復讐するためプログラムを稼動し、人間界に悪魔(デジタル・デビル)を召喚してしまいます。それによって実体化した魔王ロキやセトにより、召喚者である中島自身にも危機が迫った時、彼を救ったのは、イザナミ神の転生である転校生の白鷺弓子でした。中島はイザナギ神の転生だったのです。前世からの深い因縁と絆によって結ばれていた二人は、熾烈な闘いの末に悪魔たちを撃退します。(ここまで原作)

一方、ロキやセトの消滅によって力の均衡が崩れた魔界では、大魔王ルシファーが人間界征服を目論み、その足掛かりとしてイザナミ神が眠る飛鳥・白鷺塚の真上に大魔宮を建造し始めます。そして、一度は中島たちによって倒されたロキとセトを復活させた上、イザナミ神をその玄室ごと魔宮に封印してしまったのです。事態を知った中島と弓子は、囚われてしまったイザナミ神を救うため、そして復活してしまったロキとセト、大魔王ルシファー自身を倒すため、飛鳥の大魔宮に足を踏み入れます。果たして、彼らは再び地上に戻ってこられるのでしょうか……。

ということで、物語の発端は、そもそも主人公である中島が自らが招いた災厄のけじめをつけるというものであり、通常のRPGの勇者とは違ってむしろ責任者とでもいうべきかも知れません。いじめがきっかけでこういうことになってしまうのだから、いじめはやめましょう。OVAについてもまた別の機会に述べたいですね。

特に因縁がある訳でもなく、単に色っぽい美人だからという理由でロキの生贄にされてしまう小原先生カワイソス。ところで、漢字表記が苦しいファミコンでは二人は「ナカジマ」「ユミコ」と表示されていました。なのでこっちを使いたくなってしまいます。

DDSのユニークな点は、まず第一に悪魔召還の儀式とかもろもろのアイテムをプログラムで代用し、コンピューターを介して悪魔を召喚・使役するというところにあります。これができるのはDDSでは中島のみ。というか、人間キャラは二人しかいないですしね。

弓子は装備が貧弱ですが、回復、補助系魔法を中心とする各種魔法が使用でき、パートナーである中島のサポートが主任務となります。DDSでは悪魔は3体まで召還でき、個体の能力に応じて前衛向き後衛向き色々いますが、基本弓子は最後尾において敵の攻撃を受けにくくするのが基本です。中島と弓子が死んでしまうと、他の悪魔が健在でもゲームオーバーになってしまいますから。

ユニークな点その二は悪魔(注)との交渉でしょう。これはメガテンシリーズの特徴となっていますが、敵として登場する悪魔達と交渉し、仲間(「仲魔」と書くのがお約束)にしたり、アイテムなどを貰ったり出来ます。初期シリーズでは仲魔にしうる種族(後のNEUTRAL系悪魔)と、どうあっても仲魔にできない種族(後のDARK系悪魔)がいましたが、続編ではあらゆる悪魔を仲魔にしうるようになっていきます。

(注)メガテンシリーズでは唯一神(法の神)以外の存在は、各神話で神と呼ばれる存在も含めて全て「悪魔」と呼称されます。故にミカエルとかガブリエルといった大天使も広義では悪魔扱いされてしまいます。ここでの「悪魔」の「悪」というのは原義である「剽悍さ」や「力強さ」を意味し、「魔」は「(人を正気でなくさせる)異界の物」を意味しており、合わせてメガテンシリーズの「悪魔」とは「唯一神ではない、強力な異界の存在」といった意味合いになっているのではないかと思います。まあ強力とはいってもそれは一般的な人間に比べてという意味なので、主人公達が強くなると雑魚化していく悪魔も多いですけどね。

DDSでは仲魔にするには敵の悪魔を1体だけにしなければならず、複数登場している場合は1体を除いて倒さねばなりません。悪魔はアイテムやマグネタイト(生体マグネタイト=悪魔がこの世に留まるのに必要なエネルギー)、マッカ(悪魔世界で通用する通貨)などを要求してきますが、交渉が成立すれば仲魔になってくれ(る場合があり)ます。悪魔1種類につき1体しか仲魔にできず、既に仲魔になった種類の悪魔に話しかけても挨拶をして去っていくだけですが、これを応用すれば戦闘を回避することが可能です。仲魔は7体までストックすることができ、同時に3体まで召喚してパーティーに入れることができますが、召喚するにはマッカが必要で、仲魔を召喚している間は歩くごとにマグネタイトを消費していきます。召喚に必要なマッカや消費マグネタイトは、レベルの高い悪魔ほど多く必要になっていきます。

さあ、ユニークな点第三にして最大のウリが「邪教の館」。DDSでは仲魔にした悪魔は成長してくれません。当初は役に立った仲魔も次第にレベルが高くなっていく敵悪魔との戦いは困難になっていきます。では新悪魔獲得のために解雇か?いえいえ、弱い悪魔もまだ使い道はあるのですが。それが「悪魔合体」。

任意の仲魔を「合体」させることで、全く別の新しい仲魔を作り出すシステムであり、それを行う場所が「邪教の館」です。基本的に合体で生まれる仲魔は合体元の仲魔よりも強化されるのと、合体でしか生まれない強力な仲魔(後のLIGHT系悪魔)もいるので、攻略を進める為に重要な役割を持っています。「邪教」と言っても特に布教活動とかしている訳ではなく、悪魔合体という行為そのものが背徳的ということでこういう名称になった模様です。

その後メガテンシリーズの大きなウリとして大発展を遂げていく悪魔合体ですが、第一作の本作はまだまだおとなしく、合体素材は2体のみで、DARK系悪魔は生み出せず、いろんな組み合わせを試してみても妖精ドリアードばっかり出来るてきてしまうということに。使えないんだコイツがまた(笑)。

他の作品でのドリアードは「樹の精霊」として少女の姿をしていることが多く、結構カワイイ場合が多いのですが、本作では単にキモイ木なので萌え度ゼロです。

仲魔といえば、比較的初期に仲間になり、圧倒的な強さでパーティーを守ってくれるケルベロスを忘れるわけにはいきません。これはOVAで中島が最初に呼び出した悪魔(電子獣)であり、本来はギリシャ神話に登場する三つ首の冥府の番犬ですが、本作ではOVAに準じた姿となっています。


正直序盤は中島、弓子、ケルベロスの三人パーティーといった状態です。その後のメガテンシリーズでもケルベロスには特殊な位置づけが与えられることが多いのも、原作やOVAでの活躍があったことと、本作で大変お世話になったからだったりして。

大魔宮は6つのステージに別れていますが、3Dの主観視点なのでまさに迷宮。方眼紙でマッピングをしていたいのですが…第1ステージ「ダイダロスの塔」あたりはともかく、第3ステージ「ヴァルハラ回廊」あたりからマッピングが苦しくなってきます。当時は「攻略本は見ずに独力で解く!」と粋がっていた私ですが、本作で初めて攻略本を買いました。


マッピングの苦労を考えたら、数百円の攻略本などものの数ではありませんよ。攻略本の帯に「この本なしでは前進不能!!」とありますが、まさにそのとおり。独力でクリアしたという人がいたらホント尊敬します。

まだLOWとかCAOSといった「横軸」の概念はなく、悪魔の種族も非常に少なく、ラスボスのルシファーも後の作品とは異なって普通に大魔王をしていたりと、作品の傾向は普通のRPGに近く、メガテンらしさは少ないですが、ロックを基調としたBGMとか、独自性というはかなり強く打ち出していました。しかしこの当時はまだああいう展開になっていくとは思いもよりませんでした。らしさが出るのは「女神転生Ⅱ」からでしょうかね。

私のお気に入りは…幻魔クーフーリン。「Fate/stay night[UBW]」にもランサーとして登場してたケルト神話の半神半人の英雄ですが、本作で初めて存在を知りました。古今東西の神話の神・怪物が登場するメガテンシリーズは、神話や伝説に興味を持つ契機としてはいい作品ですよね。そろそろケルベロスも陳腐化してくる中盤に悪魔合体で登場してきますが、鎧を着たその姿にふさわしく攻撃防御のバランスに優れていて、とても良い前衛でした。

後のシリーズ作品ではイケメンとして登場してきますが、ファミコンではこの表現は無理だったので許してやってつかあさい。でも魔獣ネコマタとかは結構可愛いと思うんですよね。

ネコマタはレギュラー悪魔で、後のシリーズでは格好良くなったりエロくなったりしていますが、可愛さでは本作が一番かと。


スポンサーサイト