薬師丸ひろ子の歌で妄想する「秒速5センチメートル」:あえて告白してみた花苗のその後は…

北の大地に深い傷跡を残し、ようやく爆弾低気圧が去っていきました。三連休は好天で…といって欲しいところなんですが、明日はともかく日月は雨模様であまりよろしくない雰囲気です。10月の三連休なんて観光のためにあるようなものなのに。あ、私はお金もないので豊平川を歩くばかりですけどね。

海のリハクの目を持つと評判の私の予想通り今年も村上春樹のノーベル賞受賞はなし。英国ブックメーカーが本命としていたベラルーシの作家に決まりました。本命が受賞ということで自然と言えば自然なんですが、村上春樹は本命とされた年でも受賞を逃しています。何なんでしょうかね、この差は。もういっそ、ずっと落選した方がハルキストの集う光景が秋の風物詩となって定着していいんじゃないでしょうか。「ハルキスト」が秋の季語になったりして。

そして本日のアクセスランキング。注目していただきたいのは6回目のサブジャンルランキング1位ではなく、ジャンルランキング26位の方です。これ、多分当ブログ史上最高位だと思います。今後はジャンルランキングに目標を設定していこうと思います。とりあえず当面の目標は20位以上ということで。棒高跳びの世界記録並みに刻んでいきますよ(笑)。

それでは本日は「妄想秒速」を。金曜日にやる傾向がある気がしますが、特に意味はありません。今日は薬師丸ひろ子の「紫の花火」で、“貴樹に告って交際を始めたけど、自分から別れを切り出す花苗”を妄想してみたいと思います。

秒速ファンなら誰もが思う(かな…?)、“「コスモナウト」で花苗が告白していたらどうなったか”という疑問。コミック版や加納版小説では貴樹が「言うな」というオーラを出していて言うに言えない状況だったようですが、映像版とか新海版小説ではそれほどの圧迫感はありませんでした。なので、本編より鈍感力の高かった花苗が、ロケット発射にもめげずに貴樹に告白していたらどうなったかを妄想してみましょう。

私の妄想は非常に明快かつ端的で「貴樹は花苗に応じ、二人は交際を開始するが、いずれ花苗から別れを切り出すだろう」です。これは水野理紗との恋愛や、断片的に語られる貴樹の大学時代の恋愛などからの類推です。

すなわち、貴樹は(明里も同様だろ思いますが)恋愛においては押しに弱いタイプなのではないかと。けっこうイケメンだし、女性には優しいし、モテる要素を持っている貴樹ですが、告られたけど振ったというエピソードは本編、小説、コミックのいずれでも確認できません。本当はあった、と想像することも可能ですが、それだと全く根拠がないので完全オリジナルストーリーになってしまうでしょう。

で、大学時代の生協のアルバイトで一緒だった子と水野理紗は、自ら別れを切り出しています。これは貴樹の方に別れを切り出させる要素があるせいなんですが、とりあえず貴樹の方から別れを切り出した訳ではありません。以前貴樹には残酷な優しさがあるという話をしたことがありますが、自分からは別れを言わずに、相手をして別れを持ち出させるというのは、恋愛を終わらせる方法としては非常に巧妙です。ストーカー化してつきまとってくる怖れはないし、「振られちゃった…」と被害者ぶることも可能ですし。

じゃあ水野さん達は貴樹に飽きたりイヤになって別れているのかというと、実はそんなことはなく、二人とも「今でも好き」と主張しているのです。なのになぜ別れるのかと言えば、貴樹が、自分が貴樹を愛しているほどには自分を愛していないことをひしひしと感じるからなのです。一方通行の愛はほぼ片想いと同じ。否、両手で抱きしめている相手が、実は自分を見ていないという感覚は、片想いより辛いかも知れませんね。

ではなぜ貴樹は水野さん達を(彼女達が貴樹を愛しているのと同じほどに)愛せないのかといえば、そこは秒速病の皆さんご承知のとおり、「雪の一夜」の呪縛によるものだと私は解釈している訳ですが、これは当然高校時代の貴樹も縛っている訳です。

既に明里との文通は途絶え、現在の明里とどうこうしようとは思っていない貴樹。が、貴樹の心はあの日の明里をずっと見つめているのです。そんな状態の貴樹に告った花苗はどうなるのでしょうか。

多分告白が受け入れられて両思いになったということで、しばらくは歓喜することでしょうが、次第に以前とあまり状況が変わらないことに気づきます。待ち伏せして偶然を装う必要はなく、堂々と二人で帰ったり校内でいちゃついたりはできるようになりましたし、休日などはデートしたりもできるようになったでしょうが、貴樹の花苗に対する姿勢が全然変わらないのです。

手を繋いだり、思い切ってキスしてみたりすることもいいでしょう。何なら身体を重ねたって。貴樹はそれを拒絶することはないと思います。でも次第に花苗は気づきます。本編では、花苗はモノローグで「遠野君は私を見てなんていないんだってことに、私ははっきりと気づいた。だからその日、私は遠野君に何も言えなかった。」と語っています。

貴樹のことを、どうしようもなく好きだという思いを優先して、それに気づかず、或いは気づかないふりをして告白したところで、状況はやはり同じでしょう。「私が遠野君に望むことはきっと叶わない」なのです。

それでも、一応交際して、それなりのステップを踏んだことで、貴樹と別れることになっても花苗も諦めがつくのではないかと思います。そうすると、コミック版ラストのオリジナルストーリーのようなことはなく、踏切で貴樹が寂しく微笑んだ頃、花苗は種子島で夫ないし恋人とよろしくやっていることでしょう。コミック版を読むまでは、花苗が貴樹をこれほどまでに引き摺ってるとは思っていませんでしたが、花苗で幸せになって欲しいので、それならばこっちの方が良くはないでしょうかねぇ。

遅くなりましたが楽曲情報です。薬師丸ひろ子を思いだしたのは、昨日取り上げた水瀬いのり→あまちゃん→鈴鹿ひろ美という連想のせいですが、昔私は彼女の透きとおった歌声がとても好きで、ファーストアルバムの「古今集」なんか買っちゃいましたよ。その後「時をかける少女」のせいで私の興味は原田知世に流れていってしまうのですが、それはまた別のお話です。

「紫の花火」は1986年6月9日(薬師丸ひろ子の誕生日ですな)にリリースされた3rdアルバム「花図鑑」に収録されています。「古今集」「夢十夜」「星紀行」と初期作品は漢字三文字なのが特徴です。オリコン最高順位は2位で売り上げは17.9万枚(LP、カセット、CD合算)。「古今集」の47.7万枚から順調に右肩下がりに推移していますが、6thアルバム「LOVER'S CONCERTO」まではずっと右肩下がりです。楽曲の出来のせいではなく、薬師丸ひろ子が角川から独立したりしてアイドル色を薄めていった時期だったせいではないかと思います。

「花図鑑」は全曲作詞松本隆で、作曲陣には筒美京平、井上陽水、細野晴臣、中田喜直、そしてモーツァルト(!)を迎えています。そんな中、「紫の花火」は薬師丸ひろ子自身の作曲という異色作です。歌詞を見ていただければ、私の妄想を理解していただけるのではないかと思います。

あの日私は日傘をたたみ
防波堤から波を見ていた
あなたに呼ばれ振り向いた時
夕日が胸に流れておちた

そうね別れを決めていたこと
きっとあなたは知っていたはず
華やいだ娘を演じた私
心で拍手してくれたのね

紫の花火 まんまるに
紫の花火 海の上
綺麗だね 瞳に残る
綺麗だわ 夏の残像

空の花火を海が映して
世界を一瞬明るく照らす
笑顔のままで見あげた頬の
光った糸をあなたが拭いた

最初に好きになった私が
最後の言葉を切り出すなんて
あなたにすれば何て勝手な
わがままな娘と思うでしょうね

紫の花火 燃えつきて
紫の花火 落ちてゆく
綺麗だね 結んだ指を
綺麗だわ そっと離した

紫の花火 まんまるに
紫の花火 海の上
綺麗だね 瞳に残る
綺麗だわ 夏の残像

前半で散々語ったので、もはや言うことはありません。とにかく聴いてみて下さい。歌詞付きフルバージョン。一枚絵かと思いきや、微妙に変わります。
こちらはLP版の再生なので、いかにもLPらしいノイズが入っていますが、それはそれで情緒があって良し。こちらも歌詞付きです。
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