松任谷由実の歌で妄想する「秒速5センチメートル」(その2):外国に越していた貴樹と、明里の想い

ひしひしと感じる秋の気配に思わず羽毛布団を出してしまった昨夜ですが、やはり夏は終わってしまったのでしょうかね。

赤とんぼは飛び交っていますが、蝉の声は聞かなかったなあ。北海道には蝉が少ないのでしょうかね。かつてはツクツクボウシがやかましく鳴くのを聞きながらゆっくりと晩夏が過ぎてゆくのを感じるという印象があったのですが。アオマツムシもいませんが、これはありがたいです。あの金属音のような鳴き声には情緒もへったくれもありません。

ということで、秋の淋しさから本日は「妄想秒速」です。本日は久々にユーミンの歌で妄想してみましょう。今日は「青いエアメイル」です。

「青いエアメイル」は1979年7月20日にリリースされた松任谷由実の7thアルバム「OLIVE」に収録されています。オリコン最高位は5位。2曲目が「青いエアメイル」なんですが、「エアメイル」という言い方が時代を感じさせるような気がします。Eメイルとかってあまり言いませんね。でも歌詞は古くささを感じさせません。人の気持ちや想いというものはあまり変化しないということでしょうか。

2007年12月29日にNHK系「Yuming Films〜映画になったユーミン・ソングス〜」の第2話「バイバイ、ベアー〜青いエアメイル」でドラマ化されています。主演は多部未華子。この頃の多部未華子には、実写版明里をやらせてもいいんじゃないかという雰囲気があるような。

あらすじは…奈那子(多部未華子)は、幼いころから転校が多く、無視やイジメにあいがちでした。高校1年の秋に転校した高校では、里香と出会って親友になりますが、再び奈那子転校が決まり、里香との関係もぎくしゃくしてしまう…というもので、歌詞の内容からは逸脱して、男女の恋愛ではなく女子同士の友情ないし百合関係のようですね。

岩崎宏美に提供する予定の曲でしたが、没になったのだそうです。代わりにというわけでもないでしょうが、2013年10月9日にリリースした、今井美樹による松任谷由実のカバーアルバム「Dialogue」でカバーしています。

妄想の設定ですが、本編とさして変わりありません。ただ貴樹が単に遠くに引っ越したに留まらず、異国に行ってしまったのです。海外ですよ海外。種子島も海の外といえばそうですが、さらに遥か彼方、日本語も通じない異郷です。それでも二人は文通を始めますが…

青いエアメイルがポストに落ちたわ
雨にしみぬうちに急いでとりに行くわ
傘をほほでおさえ待ちきれずひらくと
くせのある文字がせつなすぎて歩けない

ときおり届いたこんなしらせさえ
やがてはとだえてしまうのかしら
けれどあなたがずっと好きだわ
時の流れに負けないの

このあたり、高校生時代までの貴樹と明里の文通のやりとりに酷似していると思います。貴樹の手紙を自室に戻るのも待ちきれずに途中で開いてしまう明里。どれだけ待ち望んでいことか。ただ、そんな喜びの中にも、やがては途絶えてしまうだろうという“予感”を持っているのですね。「ずっと好き」、その気持ちだけは時の流れに負けずに持ち続けることを誓う明里ですが……

冬は早く来るあなたの町の方が
最後に会ったときのコートを着ていますか
5年いえ8年たってたずねたなら
声もかけれぬほど輝く人でいてほしい

選ばなかったから失うのだと
悲しい想いが胸をつらぬく
けれどあなたがずっと好きだわ
時の流れに負けないの

けれどあなたがずっと好きだわ
時の流れに負けないの

風に飛ばされてしまって渡すことの出来なかった貴樹の手紙には「いつかずっと先にどこかで偶然に明里に会ったとしても、恥ずかしくないような人間になっていたいと僕は思います。」という一節がありました。明里はこの貴樹の想いを知るよしもありませんが、“5年いえ8年たってたずねたなら 声もかけれぬほど輝く人でいてほしい”と思っていたのです。やはり二人は良く似ていたのでしょうか。

“選ばなかったから失うのだと 悲しい想いが胸をつらぬく”……そう、文通も途絶えた遥か後に、明里は祐一さんという人を伴侶に選びました。それは同時に貴樹を失うことを意味していましたが……

“けれどあなたがずっと好きだわ 時の流れに負けないの”例え結ばれなくても、二人の花壇に花は咲かなくても、貴樹のことをずっと好きでいるという気持ちは明里はずっと持ち続けているのです。

明里の渡せなかった手紙の末節は“貴樹くんがこの先どんなに遠くに行ってしまっても、私はずっと絶対に好きです。どうか どうか、それを覚えていてください。”です。結ばれずとも、明里がずっと好きでいてくれているのなら、もうそれでいいじゃないか貴樹よ!と私は思ってしまいます。祐一さんに抱かれていても、心はずっと貴樹を想っている…なんかこれこそ真のNTRという気がします。

明里の好きっていうのは、恋愛とかを超越しているものなのかも知れません。だから年を取ろうが旦那がいようが子供がいようがそんなの関係なく、ずっと好きなんですよ。じゃあ貴樹もしっかりして明里に恥じない人間にならねばなりますまい。あの踏切でそんな明里の想いが貴樹に伝わったかどうか…普通に考えれば伝わるわけもないのですが、もし伝わったのだとしたら最後の貴樹の笑みの意味もまた違ったものになりますね。

それでは聴いてみて下さい。まずは本人歌唱版。
玉木夕也というものまね歌手が歌っています。くせを良く掴んでいますね。
永崎翔という大阪出身のシンガーソングライターのカバー。正直ユーミンより上手かったりして。
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