
早いものでもう5月。1年の三分の一が終了してしまいました。古今和歌集「夏の歌」の“五月待つ 花橘の香をかげば 昔の人の袖の香ぞする”(よみ人知らず)を思い出す季節です。「伊勢物語」では六十段でこの歌にまつわるエピソードが描かれていますが、時代が違うせいなのかも知れませんが、オチは納得できない感じですね。ネットなら簡単に検索できるので興味のある人はご覧下さい。ともあれ、柑橘系の香りの女性って悪くないですね。
さて、しまっちゃうおじさんの如く春季アニメ序盤の感想をどんどん片付けていきましょう。まずは「骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中」。バリバリの「なろう」系です。4話まで視聴しました。主人公はオンラインゲーム中に寝落ちし、目覚めたらゲーム世界そのままの異世界にゲームで使用していたキャラクターの姿で転移していましたが、そのキャラは骸骨そのものでした。
骸骨姿で異世界転移というと、「オーバーロード」を真っ先に思い出すのですが、鎧を着た骸骨というと、ワールドチャンピオンしか装備できない鎧を装備したパーフェクト・ウォリアー状態のアインズ様ということになるでしょうか。それじゃ魔法が使えないけど。
或いはアインズ様の仮の姿冒険者モモンの方が近いか。全身鎧は漆黒なので本作とは対照的ですが。ただしモモンは見た目おっさんの姿に偽装しているらしいので、兜を脱いだら髑髏ということはないようですが、アンデッドの本質は変わらないのでやはり飲食はしないようですが。
ただし本作の主人公アークはアインズ様とは違い、アンデッドではない模様。なので飲食が可能というか、お腹が空くらしいので飲食が必須となっていますが、飲食したものはどこへ行くのか不明。ともあれ最強装備を持ち、レベルやステータスが最大まで成長した状態なので、ルンルン気分で異世界探索に赴くことに。
例によって異世界はエルフとか獣人とかがいる世界ですが、普通の人間からは差別的に扱われているようで、エルフ狩りとかが行われています。彼らも人間には不信感を持っているので、アークも当初は不審がられますが、精霊獣が懐いていることで、悪い人ではないと認識される様子。
高笑いしながら様々な魔法を操り、豪腕で剣を振るうアークの姿はアインズ様というよりは黄金バットという感じもせんではないですが、元の世界に戻ることとか一切考えずに異世界を堪能しているところを見ると、アインズ様同様現世はろくでもないところなのかも知れません。
アークはお人好しなほど親切なので、「オレtsueee!」を連発していてもあんまり辟易することはありません。周囲の人達からはいい人と認識されているので、呪いをかけられたとか言い訳すれば骸骨姿を見せても大丈夫な気もしますが。わりと毎回ロリ姫様とかロリエルフが可哀想な目に遭いかけるのは視聴者サービスなんでしょうか。危ういところでアークが助けるからいいのですが、ロリキャラが酷い目に遭うのは目にするに忍びないです。でも女の子や小動物に優しいアークはいいですね。
続いて「サマータイムレンダ」。視聴を打ち切った「村人A」に代わって“超豪華なリザーバー”から昇格しました。3話まで視聴。和歌山県沖の離島・日都ヶ島を舞台にしたSFサスペンスで、原作は田中靖規が「少年ジャンプ+」で連載したWebコミックです。
日都ヶ島は架空の島ですが、モデルは友ヶ島のようです。友ヶ島は無人島ですが、旧日本軍の要塞跡があり、ゲーム「デスクリムゾン」(伝説のクソゲー)や「SIREN2」(ホラーゲーム)のロケ地としても有名です。
幼少期に両親を失い、母方の縁戚である小舟家に引き取られた主人公網代慎平。中学卒業後に調理師専門学校に入学するために上京しており、日都ヶ島には2年ぶりに戻ってくることになりました。しかし楽しい帰省などではないのは、義理の妹ともいうべき小舟潮が海の事故で亡くなったからです。
しかし、潮の死には不可解な部分があることを知り、また死の数日前に「影」を見たということを潮の妹の澪から慎平。「影」とは日都ヶ島に伝わる古い伝説で、自分そっくりの「影」を見た者は死ぬと言われていました。ドッペルゲンガーもそう言われることがあるようですね。
そして澪の「影」に射殺される慎平。しかし、その瞬間、慎平の時間は巻き戻され、島に到着寸前の時点に戻ります。一体何が起きているのかと戸惑う慎平ですが、惨劇を回避するために悪戦苦闘することに。「Re:ゼロから始まる異世界生活」というか、「僕だけがいない街」というべきか。リゼロなら「死に戻り」、「僕だけがいない街」なら「リバイバル」という能力に近いですが、自分が死ぬと発動するようなので、やはり「死に戻り」に近いかも知れません。
3話までで既に2回澪の「影」に殺されていますが、戻る時点は変化しているので、「死に戻り」よりはやや融通が効いているようにも見えますが、例によって何故発動するのかは不明です。
「影」は殺した相手の姿を乗っ取って増殖することが可能で、死体も消してしまうことができます(床や地面などに影だけが残る)。その強さから澪の「影」が親玉のようにも見えますが、本物の澪を殺して成り代わることはまだ出来ていない模様。ただ、別のキャラのセリフから、島には「影」が相当数存在しているようです。
3話ラストで死んだはずの潮が再登場したので、これは間違いなく潮の「影」だと思われます。「影」のヤバさは知っているはずなのに、澪を置き去りに追いかけてしまった慎平。これはあれか、慎平は潮に恋心を持っていると言うことでしょうか。一方澪は慎平を慕っているようで、慎平の親友は澪に2回も告って振られているとか。狭い世界でドロドロの四角関係にならなければいいですが。
なお慎平には「死に戻り」の他、自分を俯瞰して第三者の立場で見る能力(?)があるようです。これは単なる思考の癖なのかも知れませんが、自分の後にもう一人の自分がいるという描写があるので、もしかするとそういう能力なのかも。しかしあまりやり過ぎると世紀の怪作「グラスリップ」の沖倉駆になってしまうぞ。
潮は金髪で、これはパパンがフランス人だからのようですが、妹の澪には外人っぽさが全然ありません。ここには何か謎はないのでしょうか(笑)。ともあれ、誰が「影」なのか、またいつすり替わるか判らないというサスペンス感が強いです。「影」は容姿だけでなく記憶までコピー可能なようなので、合い言葉とかを決めてもその後にコピーされたら役に立たないように思われます。
次は「まちカドまぞく 2丁目」。原作の4コマ漫画は現在も連載中の「きらら」系作品です。4話まで視聴。1期は2019年夏季アニメで、ほぼ3年近く経過してしまいましたが待望の2期です。
ある日突如闇の一族「まぞく」に覚醒してしまった吉田優子はシャドウミストレス優子(略称シャミ子)として光の一族(魔法少女)を倒す使命を受けますが、偶然見かけた魔法少女の千代田桃は圧倒的なパワーを持っていて、勝負になりません。不本意ながら桃と親しくなっていくシャミ子ですが、二人には先代からの因縁が錯綜していることが判明。緩やかな日常生活の片割れで真相に近づいていくことになります。
ミカン箱に封印されているシャミ子の父ヨシュア(それ故かナレーターとなっています)。そして失踪した桃の姉で先代魔法少女の桜。およそ10年前に二人を巡って何かがあったことが現在の状況を生んでいるらしいということで、真相に迫っていくのが今期のテーマのようです。といっても「きらら」系なのでサスペンスの雰囲気はほとんどありませんが。
2話でヨシュアの持ち物だった魔法の武器が発見され、シャミ子の持ち物に。ママンの清子やご先祖のリリスがうろ覚えだったせいで名前が不明で「なんとかの杖」という情けない呼ばれ方をしていますが、おそらくモーゼが神から授かった「アロンの杖」ではないかと。旧約聖書の「出エジプト記」では、“時に蛇に姿を変え、触れた水を血に変え魚を死に至らしめ、蛙の大群を出現させ、ブヨやアブを大量発生させ、疫病を流行らせ、雹を降らせ、イナゴの大群を発生させた”という凶悪性能を発揮しています。
4話ではまぞくが集うという「純喫茶あすら」が登場。偵察に赴いたシャミ子が謎の中毒性のあるまかない料理の食べ過ぎで健忘症状態になってしまいましたが、新キャラが登場してきたので、10年前の真相に少しは近づくのではないかと。
普通人だけどやたら顔が広いシャミ子の友人杏里や、人間らしいけどやたら怪しいしおん(シャミ子は知人ではあっても友人とは思っていない様子)も変わらず登場。特にしおんは積極的に援助をすることがありますが、そこには彼女自身の思惑もあるようで、闇の一族とも光の一族とも違う第三勢力なのかも知れません。
一期後半から登場したもう一人の魔法少女・ミカンがシャミ子一家が住むばんだ荘(ほぼ廃屋に近い見た目)に引っ越して隣人となり、それを追って桃も入り浸るようになっています。「光闇割」という割引があって、光の一族や闇の一族は格安で住めるそうですが、こんなボロアパート、割引がなくても大した家賃じゃないような(笑)。個人的にはなんとなく自分の幼少期を思い出して…うっ、頭が…
最後に「処刑少女の生きる道」。4話まで視聴しました。視聴予定はなく、超豪華なリザーバーでもなかったのですが、ネットでの評判を聞きつけて見ることに。「生きる道」と書いて「バージンロード」と読みます。佐藤真澄のライトノベルが原作で、第11回GA文庫大賞の大賞受賞作です。
冒頭、主人公のように描かれた異世界召喚された少年が、神官を名乗る少女にあっさり殺害されるという出オチのような展開は「無能なナナ」を彷彿とさせました。「無能なナナ」では様々な特殊能力を持ったクラスメートを殺害していく無能力者(普通人)のナナが主人公でしたが、本作では召喚された異世界人を殺す神官の少女・メノウが主人公です。
異世界転生者を殺すと言えば、去年「異世界転生者殺し -チートスレイヤー-」という漫画がありましたが…既存の異世界転生作品の主人公やヒロインを丸パクリしていたことからネット上で波紋を呼び、たった1話で連載中止となってしまいました。
ここに便利な比較画像が。アレッタ(右から二人目)なんかそもそも転生者じゃないし(笑)。チート能力で調子に乗った転生者を断罪するという趣旨の作品だったようですが、元ネタ作品の作者らに一切許可とか了承を取らなかったというのが凄すぎます。それに元ネタのキャラに悪人がいない(左から二人目の「賢者の孫」だけはウザがられているかもですが)にも関わらず、突如極悪人にしてしまうのはいくらなんでもなあと思います。
本作も異世界転生者を殺すというテーマですが、転生者にモデルとかはいないのと、なぜ殺さなければならないかとしっかり説明しているので、特に嫌悪感とかは起きません。ただ、転生者は全員日本人で、そのせいでこの世界の言語も日本語になってしまったという設定には笑いました。
異世界転生者の「純粋概念」と呼ばれる異能にのり発展した異世界。しかし、純粋概念は使用し続けると暴走し、世界的な大災害に至ってしまうことが何度もありました。それで異世界召喚は禁止されていますが、それでも力を求めて召喚する連中が後を絶たないとか。異世界人を殺害することを任務とする神官が、処刑人と呼ばれます。
1話で転生者ミツキを殺した処刑人メノウは、同時に召喚されたトキトウ・アカリの殺害を試みますが、なんと彼女の純粋概念は時間の巻き戻しでした。また出た「死に戻り」。しかし、アカリに気付かれないように殺害したせいか、アカリ本人は死んで復活したことを覚えていません。不死身というこれまでにない能力に驚愕したメノウですが、その力に対応できる儀式場があるという大司教の言葉により、元の世界に戻れると騙して古都ガルムへ同行することに。
転生者は「迷い人」と呼ばれていますが、メノウ自身も幼い頃に迷い人の「すべてを漂白する」という純粋概念による災害に巻き込まれ、故郷も家族も失ったという過去があります。なぜメノウ自身が死ななかったのかは不明ですが、心は漂白されて無感情になっていました。
後輩の処刑人にモモがいて、主にバックアップを担当していますが、なかなかどうして強いキャラです。CV金元寿子で、かなり「らしい」声を出しているので、「社畜さん」で納得のいかなかった私のようなタイプはモモの声を聞いて納得しましょう。
メノウのCVは佐伯伊織。「ウマ娘 プリティーダービー」でキングヘイローを演じている人ですね。
キングは一見悪役令嬢風ですが、本人の育成ストーリーはもとより他のウマ娘のストーリーにも結構登場し、その度に評価を爆上げしているというとてつもなく「いい人」キャラで、取り巻き達も金や権力ではなくキングの人柄に魅せられているだけという。
初期設定では“勝つためならば何でもするという策謀家”とされていましたが、今では“何でもする”というのは“どんな努力でもする”という意味と認識されています。
ナイスネイチャのCV前田佳織里が前季アニメ「怪人開発部の黒井津さん」の主人公黒井津燈香を演じてたりと、「ウマ娘」声優の活躍が目立ってきたような。既に有名な声優もたくさんいますが、新人声優にとっては登場するゲームの大ヒットというのは結構影響があるのかも知れませんね。キングもネイチャも好きなキャラなので、CVの声優さんが活躍するのは結構なことです。
メノウも明るくしているのは演技で、実はハードボイルドな性格という設定のようですが、キングヘイローのように本当の彼女は実は…という展開があるかも。
また、生粋の異世界人のはずのメノウもなぜか日本の学校の夢を見るようです。制服がバラバラだったり妙な感じがしますが、メノウにも秘密があるのかも知れません。実は本人が迷い人だったとかね。いや、これは案外…だから漂白の純粋概念で皆死んだ中一人だけ生き残っていたのかも。