キャプテン翼Ⅱ スーパーストライカー:シリーズ最高の呼び声も高いサッカーゲームの傑作


はやぶさ2が帰って来ました。正確に言うと小惑星リュウグウの試料を持ち帰ったとみられるカプセルだけが地球に降り、本体の大半は大気圏突入で燃え尽きてしまいましたが。

もしはやぶさ2が高度なAIを積んでて「JA、JAXA!助けてください!!げ、減速できません!JAXA!助けてください!!」とか叫んでたらJAXAの職員はいたたまれなかったでしょうね。それともシャアのように「は、はやぶさ2。はやぶさ2には大気圏突破能力はない、気の毒だが…。しかしはやぶさ2、無駄死にではないぞ。おまえがカプセルを持ち帰ったおかげで小惑星リュウグウの試料が手に入るのだ!」と告げるのでしょうか。

本日は1年以上ぶりにレトロゲームの紹介です。「キャプテン翼Ⅱ スーパーストライカー」。本作は1990年7月20日にテクモから発売されました。もう30年以上前か…(遠い目)。ファミコン用ソフトは3MbitROMカートリッジで6900円。1988年に発売された「キャプテン翼」の続編に当たりますが、前作はプレイしていません。

少年ジャンプに連載されていた原作は88年に終了しており、主人公大空翼らの小学生~中学生時代が描かれ、フランス・パリで開催された第1回国際Jr.ユース大会に出場し、数々のライバル国に打ち勝って優勝を果たしました。その後、チームメイトの多くが高校に進学する中、翼はブラジルへ旅立ち、物語は一旦終了します。

「ワールドユース編」は94年から連載されますが、ゲームは翼がブラジルに旅立って3年後から物語をスタートさせます。すなわち、テクモのオリジナルストーリーの展開。ついでに言うと選手や必殺技もオリジナルが多数登場します。サッカーなのに必殺技というのもなんですが、そうとしか呼びようがないのも確か。

サンパウロFCで新たなチームメイトと共にリオカップを戦い抜く大空翼や、冬の全国高校サッカー大会を戦う岬太郎や日向小次郎らの活躍が描かれ、最終的には全日本代表としてワールドユース大会を優勝するのが目的となっています。このためサンパウロFC、南葛高校、全日本の3つのチームを操作していくことになります。

ゲームオリジナルのストーリーながら、ファンにはこのストーリーの評価が極めて高く、「これこそがキャプテン翼の正史だ」という声まであるほどです。サブタイトルの「スーパーストライカー」ですが、これはジャイロという過去のブラジルの選手のことで、彼がヘディングが苦手という自分の弱点を克服するべく編み出した必殺シュート「サイクロン」を翼が完成させるという展開になっています。


本作は登場キャラクターたちがドラマチックに会話するなど、ファミコンとしては最高峰の演出力を見せており、時には試合中にもビジュアルシーンが挿入されて、展開を盛り上げます。


また敵をふっ飛ばしたり、逆にふっ飛ばされる描写が多く、必殺シュートを放つと、ディフェンダー数人とキーパーをまとめてふっ飛ばした上にゴールネットを突き破ってゴールすることもあります。特にキーパーが必殺シュートにふっ飛ばされる光景は、以後のシリーズで外せないお約束となりました。「もりさきくん ふっとばされた!」(森崎だけではないですが)という有名なセリフは、本作で初登場しました。

有名選手同士がドリブルとタックルでぶつかり合った場合、互いのカットインとセリフが挿入され、直接対決の盛り上げに繋がりました。これによって、原作でやたら使用される「なにィ」の登場頻度も上がりました。

本作はサッカーゲームですが、シミュレーションゲームなので、アクション性はありません。ないからこそ買ったとも言えますが。選手の体力を表す数値が「ガッツ」で、ボールを持っていたり、各種コマンドを実行したり、吹っ飛ばされた時などに消費します。ボールを持たないでいると徐々に回復するのですが、ガッツがないとパスすら出来なくなるという笑える仕様になっています。それこそ体力のなさをガッツでカバーして欲しいのですが。ちなみに必殺シュートを放つとガッツは激減します。

このガッツがないと何も出来ないというシュールさはネタになり、しなきゃいけないけどしたくない時などに「くっ、ガッツが足りない」と言ってサボったりしていました。

なお、ガッツは味方のみにあるというか、敵はガッツ無限と言う理不尽な仕様になっていました。なので敵チームは必殺ワンツーで守りを突破して、必殺技を放ってくるのです。こちらも同様のことは出来ますが、敵はガッツ無制限で必殺技使い放題なのが辛いところ。

ところがその手強い敵が仲間になると、一転有限化するガッツにより大幅に弱体化。立花兄弟よ、あの強さはどこに行った?

終盤のワールドユース編になるとマラドーナの再来のようなディアス(アルゼンチン)、パーフェクトキーパー・ヘルナンデス(イタリア)、スライダーシュートのピエールとキャノンシュートのナポレオン(フランス)、ファイヤーショットのシュナイダー、幻のキーパー・ミューラー、仕事師カルツなどを擁する西ドイツ(東西統一前でした)ら、国際Jr.ユース大会のライバル達が登場してきますが、最大の敵はブラジルのカルロス・サンターナになります。


カルロスは1986年に公開された映画「キャプテン翼 世界大決戦!! Jr.ワールドカップ」に登場した選手で、映画では全日本選抜、南米選抜、アメリカ選抜、ヨーロッパ選抜がトーナメントで戦うのですが、南米や欧州が連合チームなのに日本が一国単独チームというのが凄い。そこはまあ置いておきますが、決勝で全日本選抜が戦うのが、ヨーロッパ選抜を破った南米選抜で、そのエースがカルロスなのです。


ゲームではミラージュシュートという無数の残像を残しながら飛んでいく必殺技を放ってきます。原作では「勝利こそすべて」が信条の「サッカーサイボーグ」との異名を持つチームワークという言葉を知らないような選手でしたが、ゲームでは最初から好青年です。

翼の新必殺技・サイクロンはボールにバックスピンを掛けて真上に蹴り上げ、落下中にドライブシュートで蹴る事で通常のドライブシュートよりも鋭角に曲がり落ちるシュートで、桁外れに威力が高いため、普通にプレイしていればまず止められることはなく、また地上・空中の両方から撃てるため汎用性も高いのですが、どう考えても成功率が低そうなシュートです。試合中にボールにバックスピンを掛けて真上に蹴り上げること自体が至難の業としか。

余談ですが、ワールドユースアジア予選編に登場するのは北朝鮮、シリア、中国、イラン、サウジアラビア、韓国。北朝鮮はモブ選手のみで構成され、これと言った特徴はない弱いチームとなっています。ノドンシュート・テポドンシュート、拉致ドリブルなどを駆使して欲しいところですが、この時代にはまだ明らかになっていなかったんですね。

選手の能力格差が大きく、国内ではともかく世界では通用しなくなる選手の存在には涙を誘われます。シュート特化なのに必殺シュートが通用しなくなる新田とか、スタメンDFなのにディフェンス必殺技がない松山とか、全体的に能力が低いため、万能の顔面ブロックが発動できなくなる石崎とか。

三杉もシュート以外の必殺技がありませんが、ステータスが飛びぬけて高いのでこちらは活用できるという。さすが天才。でも心臓病のせいで前半か後半のどちらかしか出場できないのはお約束(笑)。

サッカー素人の私は、ゲーム開始直後にセンターサークルからドライブシュート(後にサイクロン)を放ってとりあえず1点取るという大味な試合を好みましたが、これをやるとしばらく翼が役に立たなくなるんですよね。翼は攻撃はもとより守備でも大事な人材(というより他があまり役に立たない)ので、戦術的にはあまりよろしくなかった気もしますが。

当時ゲーム購入の際に大いに参考にしていたゲーム誌「ファミコン通信」の「クロスレビュー」では40点満点のところ31点でしたシルバー殿堂入りではあるものの、そんなに高評価ではなかったんですね。しかし、同誌の「'90ベストヒットゲーム大賞」においては、読者支持で4位にランクインしているので、クロスレビューの評価以上にプレイヤーからは支持されたのでしょう。

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