シン・ゴジラ:ゴジラは使徒だったんだよ!

今年は新型コロナ禍でいつもと違う年末年始を過ごすことになった人も多いと思います。私自身、新型コロナとはあんまり関係なく今までと違う環境での年末年始となっていますが、何が起きようとも年は暮れ、そして新しい年が明けていくんですね。年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず…年を取ると漢詩が心に沁みるようになりますね。

秋季アニメの感想も途中なんですが、昨夜見た「シン・ゴジラ」がインパクトありありだったので久々に映画の話題を取り上げたいと思います。私はAmazonプライムで見ましたが、2時間の映画を見ようと思うと、年末年始のようなまとまった休みがないとなかなか。

「シン・ゴジラ」は2016年7月公開の特撮映画で、総監督・脚本は庵野秀明。そのせいでエヴァンゲリオン的なモチーフがあちこちに感じられました。東宝製作のゴジラシリーズの第29作ですが、1954年制作のシリーズ第一作「ゴジラ」の原点回帰したというか、第一作の現代版リメイクといった雰囲気も感じました。

「ゴジラ」登場のゴジラは、ジュラ紀から白亜紀にかけて生息していた海棲爬虫類から陸上獣類に進化しようとする中間生態を持つ生物が、ビキニ環礁の水爆実験で散布した放射能を浴びて変貌し、人間に恨みを持っているかのように東京湾から品川へと上陸し、東京の各所を次々と破壊し、最期は東京湾に潜伏中に、特殊な物質を電磁的に反応させることにより水中の酸素を一瞬で破壊し、その場にいるすべての生物を一瞬のうちに死に至らして完全に液化するという恐怖の薬剤・オキシジェン・デストロイヤーで溶解され、消滅されました。

本作登場のゴジラは、太古の時代より生き残っていた深海棲の海洋生物が、60年前に投棄された放射性廃棄物を大量摂取したことにより放射能に耐性が付いただけでなく、それの影響により突然変異と異常成長を繰り返し誕生したと推測される生物となっています。形態は5つに変化し、水中生物形態、上陸形態、二足歩行形態、これが上手くいかず一旦海中に戻ってさらに巨大化して陸上に適応した直立二足歩行形態(いわゆるゴジラらしいゴジラ)、そして小型群体化形態。これは本格的に活動しませんでしたが、無限増殖されたら人類は終わりだったかも知れません。

第一作以降の昭和・平成のゴジラシリーズでは、ゴジラという怪獣の存在は周知の事実となっていましたが、本作では限定回帰して初めて未知の怪獣が出現した時の政府の混乱や有事に即応できない体制のもろさが描かれました。それはそれで面白いのですが、ずっとこれで行かれると怪獣映画としての盛り上がりに欠けるなあと思いましたが、その心配は杞憂でした。後半はちゃんとバトルをします。

ゴジラといえば口から吐く放射能火炎。後に放射熱線と呼ばれるようになりましたが、私が見ていた頃は放射能火炎でしたねえ。まあ火炎というよりはビーム風だし、放射能と放射線を取り違えている(これは今でも取り違えられることが多いですが)ので後者の方が適当なんでしょうね。

シン・ゴジラでは放射線流と呼称されています。火炎を収束して打ち出す紫色の熱線で、口以外にも背びれや尻尾の先端からも発射可能で、意図的に放射するほか、対空自動迎撃も行っていました。

総理以下政府要人が官邸から立川に移動する際、搭乗したヘリがゴジラの放射線流によって撃墜され、多数の閣僚とともに死亡してしまい、その後生き残った閣僚や与党幹事長らが臨時政府を形成することに。その後は若手政治家が要職に登用されたこともあり、かなり事務手続きはすっきりした感があります。

大怪獣出現という予期できない異常事態に、通常の官僚機構、というか民主主義政体が対応できないのがよく描かれていましたが、首相が覚悟を決めて自衛隊の出動を決断すると、さすが有事即応を常に考慮している自衛隊の対応は見事でしたね。ただ、第三形態を攻撃できるチャンスに、人命最優先ということで攻撃中止となったあたりが旧軍と違うというか民主主義下の軍隊というか。もしここで攻撃していたら、第四形態による大被害もなく勝利していたかも知れませんが、それじゃ映画にならないか。或いは外部攻撃に適応したより強力な形態に進化していたのか。

第四形態のゴジラには対戦車ヘリの機関砲、ロケット弾、戦車砲、MRLSが攻撃しましたがほぼ効果がなく、米軍の地中貫通爆弾がようやくダメージを与えましたが、これによりゴジラは背びれからの放射線流自動迎撃モードに入ってしまいました。

国連による核攻撃が決定され、タイムリミットが近づく中、ゴジラの血液を凝固させてゴジラを凍結させる「ヤシオリ作戦」(日本神話で、ヤマタノオロチを倒す際に用いられた八塩折之酒から命名)が発令されることになります。


見ていて強く思ったのは、「ゴジラは使徒だ」ということ。自衛隊と米軍によるゴジラ攻撃は、エヴァの第一話、第3使徒サキエルが戦闘ヘリなどの猛攻に曝されても全くダメージを受けず、切り札のN2地雷(核兵器並みの威力があるが核汚染の心配はないらしい)でも時間稼ぎしかできなかったあたりを彷彿とさせました。地中貫通爆弾がN2地雷に相当か。

そして移動を止めて修復モードに入ったゴジラは第5使徒ラミエルに似ていました。近づく航空兵器を自動迎撃していたあたりがそっくり。ゴジラが使徒と違うのは、A.T.フィールドがないことと、S2機関がないのでガス欠を起こしやすいことでしょうか。なので使徒としては弱い部類になるかも知れませんが、その分人類側にもエヴァがなく、ネルフもありませんが。

ヤシオリ作戦はエヴァの「ヤシマ作戦」を想起させる名称です。そしてゴジラ攻撃のため、無人爆弾化されたN700系新幹線2編成がゴジラに突撃するあたりは、エヴァ弐号機がこじ開けた第6使徒ガギエルの口内に自沈するアイオワ級戦艦2隻が突っ込み、主砲を零距離射撃するシーンを彷彿とさせました。


さらにその後、無人爆弾化され、人を運ぶという使命を奪われた恨みを込めたかのようなJR在来線によるゴジラへの総突撃はまさに「電車でGO!!」。そして倒れたゴジラにタンクローリー、コンクリートポンプ車、ホイールローダーら重機群が押し寄せて血液凝固剤をゴジラの口内に流し込むと。このあたり、形態は異なりますが、ヤシマ作戦で日本中の電力を集めるシーンを思い出させました。


こうしてかろうじてゴジラを凍結し、東京復興の希望も見えてきますが、熱核攻撃のカウントダウンは「一時停止」のままで、もしゴジラが活動を再開した場合は58分46秒からカウントダウンが再開されて熱核攻撃が行われることになっています。

女性登場人物で綺麗なのは米大統領特使のカヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)のみで、後の女性キャラはほとんど化粧っ気がなくて。

環境省自然環境局野生生物課長補佐の尾頭ヒロミなんかすごく良い味だしていたのですが、綺麗キャラというのではありませんでしたね。いや、これはこれで素敵ですが。

カヨコのSPをマフィア梶田が演じていました。聞いてはいましたが、いかにもSPっぽくて違和感なかったですね。流石SP田中(笑)。


あと音楽が、エヴァのものが使われていたほか、ゴジラシリーズのものも多数使われており、特にヤシオリ作戦発動の際の「怪獣大戦争マーチ」がたまりませんした。やはり伊福部昭先生は偉大だ。

今年も一年、当ブログをご愛顧いただきありがとうございました。ほぼ毎日更新していた時期もありましたが、今ではほぼ週末ブロガー。そうなって既に久しいですが、「秒速5センチメートル」がテレビで放映されるとアクセスが増えるという現象は健在です。「秒速」についてはほぼ書き尽くしたのでコメントでも来ない限りは今後も触れないと思いますが、未だに視聴者に影響を与えているとは恐ろしい作品です。

皆さん良いお年を。来年もよろしくお願いします。
スポンサーサイト