2020年春季アニメの感想(その1):球詠/かくしごと/八男って、それはないでしょう!

無観客ながらプロ野球が始まり、Jリーグも再開予定ということで、次第に日常が戻ってきています。それは電車のラッシュの再来とかも意味している訳で、いいことばかりという訳ではないのですが、やはり日常がいいですよね。せめてインフルエンザ対策くらいで済むようになって貰いたいものです。

6月も下旬に入り、春季アニメも続々終了しています。本日は終了作品の感想ということでを行ってみましょう。まずは「球詠」。

原作は芳文社の「まんがタイムきららフォワード」で連載中ということで、いわゆる「きらら系」ということなりますが、良くも悪くも「きらら系」の雰囲気が希薄でした。

「きらら系」とは、基本的にはゆるい少女たちの日常を描いた作品の総称で、特にストーリー性がない作品も多く、ほんわかしたゆるい作風が特徴です。もちろん各作品毎に多少の差異はあるのですが、男がいない(少ない)、美少女がいっぱい、水着回や温泉回がある、百合的描写があるなんてのも特徴でしょうか。「球詠」の場合、基本女の子ばかりという意味では「きらら系」の王道のようなんですが、思いのほか真面目に野球に取り組んでいます。

なので百合描写のようなものもないではないのですが、基本百合そっちのけでとにかく野球をやっています。練習試合で負けて、本戦で勝つなんて「ガールズ&パンツァー」的な展開もあります。てっきりゆるーく野球をやりながら百合展開かと思っていたら全然違っていました。特に終盤は3話使って強豪校との激闘をしっかりと描いており、まるでありし日の「ドカベン」を彷彿とさせてくれました。

展開的にはこういうスポーツに真摯に取り組んでいる姿も悪くはないのですが、気になる部分もあったので、いつくは取り上げてみましょう。


その1:作画
原作の絵柄は「きらら系」だけあってかなり可愛いのですが、アニメのキャラはなんというか…古くさいキャラデザインというか作画崩壊一歩手前でかろうじて踏ん張っている的な感じでした。「きらら系」は一にも二にもキャラの可愛さが命だと思うので、これは「きらら系」としてはかなりヤバイです。もっともストーリー展開的にはあまり「きらら系」を感じさせないので、むしろそれでかろうじて保ったという気もします。

その2:マネージャーが采配を振るう
ある意味今までなかった斬新な発想とも言えますが、監督がちゃんといるのにマネージャーが采配を振るっています。このマネージャー、双子の姉は初心者ながら選手をやっており、妹である彼女はずっと野球に造詣が深くて、各チームのデータや選手の能力を詳細かつマニアックに把握しているのですが、なぜか自身でプレイしようとしないのが謎です。怪我などでプレイできなくなった的なエピソードでもあれば特に問題なかったのでしょうが…

その3:でしゃばらない監督
マネージャーが作戦指揮を執っているのでやることがない監督。いや、なり手がなくてずぶの素人を連れてきたとかならいいんです。そういう作品もありますし。しかしこの監督、実はこの野球部が埼玉県屈指の強豪だった頃のOGなんです。練習では鬼コーチぶりを発揮しているし。なのになぜ采配を振るわないのか。もちろん高校野球では監督はダッグアウトから出ることはありませんが、伝令を使って色々作戦指揮を執っているのは高校野球でもおなじみですよね。

結論を言うと、「きらら系」的展開を期待して視聴するとあてが外れますが、野球に真面目に取り組んでいる姿は好感が持てます。作画がしっかりしていたらかなり良作だったと思われますが、残念ながらあの作画では円盤の売り上げは…という作品でした。

続いて「かくしごと」。原作はまだ連載中なのにアニメでオチまでやってしまいました。アニメオリジナルなのかも知れませんが、いやもうこれしかないだろうという形ではまっていましたので、もうあれでいいんじゃないでしょうか。

「現在編」と「未来編」の二本立てで、「現在編」は「風のタイツ」という下ネタギャグゴルフ漫画を連載している後藤可久士が、小学生の一人娘の姫に漫画家であることがばれないようにあの手この手を使ってごまかしている姿を面白おかしく描いているいます。

「未来編」は終盤に登場し、そこでは姫は18歳になっており、それまで知らなかった真実を明らかにしていくというギャグがほとんどないパートでした。最終回は完全に未来編になっていて、この断絶の間に何があったのかが明らかになります。

可久士はかつて「KTMCMC(きんたましまし)」という下ネタギャグ漫画でヒットを飛ばしていますが、今ではさほど売れておらず、妻の父(日本画の大家)とは険悪な関係です。妻(CV能登麻美子)は姫が幼い頃に海難事故で行方不明になっており、ほぼ死亡には確定的にも関わらず、可久士は漫画で得た収入を使って、10年以上捜索をしていました。そりゃあ能登さんなら捜しますな。

そして可久士自身も歌舞伎役者と愛人の間の隠し子でしたが父とは疎遠で、妻を捜索していることが「美談」として週刊誌に載ったことで、「もう笑えない」という一部読者の心ない言葉に傷ついて漫画家を引退し、以後は肉体労働で姫との生活を支えましたが、作業中の事故で昏睡状態となってしまいます。1年後に意識が回復したときには、姫が10歳の頃から事故にあうまでの7年間の記憶が失われていました。


「未来編」の展開だけ紹介するとシリアス一色ですが、実際には「現代編」のおバカな展開こそが持ち味なので、毎回面白く見ることができました。原作が久米田康治なのでキャラのネーミングや各話のサブタイトルがどれもこれも笑えます。

可久士に振り回されつつもなんだかんだと楽しく仕事しているアシスタント達。女子大生で漫画家になるつもりが一切なく、いつも可久士にため口だった墨田羅砂(すみたらすな)が、未来編では看板作家になっていたのに笑いました。ゆるい雰囲気のわりに一番適切な意見を言うことが多く、作中一番好きなキャラでした。なにしろ可愛いし。「好きなアニメキャラ」でぜひ紹介したいと思います。

逆に一番嫌いなキャラは担当編集の十丸院五月(とまるいんさつき)。ギャグ作品であることを割り引いても本当にクズです。CVの花江夏樹は主人公キャラを演じることも多いのですが、こんなクズも演じられるとは。その演技力の高さは流石と言わざるを得ませんが…とりあえず「ガンジーが助走つけて殴るレベル」のクズです。

最後に「なろう系」の「八男って、それはないでしょう!」。二流商社に勤める主人公が夜食を作っている間に居眠りしていたら、異世界の貧乏貴族の家の八男坊になっていたという、理不尽の極みの出だしでしたが、タイトルはほぼ出落ちで、高い魔力を持ち、優秀な師匠がいたことでめきめき頭角を現していきます。

5歳児になったとは言え、大人だった知識や経験を駆使すれば色々と…と思うのですが、肉体年齢に魂が引きずられるのか、過去世の知識と経験は味噌醤油マヨネーズ製作程度にしか生きませんでした。「なろう系」が嫌われるのはこういうところなんでしょうね。なぜ異世界はまともな調味料がないところばかりなのか。単に作者のイマジネーションの欠如としか思えません。

パパンの騎士爵(騎士は貴族じゃないんですが…普通に男爵とかじゃいかんかったの?)は子作りばかりが得意の凡庸でしたが、その後を継ぐ長男クルトはこれに輪を掛けた無能で、主人公に取って代わられるためとはいえ、あまりといえばあんまりな設定っぷりに失笑を禁じ得ませんでした。CV杉田智和はそれでもちゃんとこの無能を演じてくれましたが。救いは奥さんのアマーリエのCVが敬愛するゆかなだったことでしょうか。


このアマーリエ、登場時からやたら美人でいい人風だったのですが、アニメでは描かれていないものの、実は主人公の愛人の一人になるそうな。兄嫁NTRはまあエロ小説では定番かも知れませんが、主人公は既に正妻格のエリーゼ、側室格のルイーゼ、イーナ、ヴィルマがいるというのに、一体何人持てば気が済むんでしょう。こういうハーレム展開も「なろう系」のお約束ではあるんですが。

クルトの自滅とその後の領地の“簒奪”と大規模開発に着手というところでアニメは終わりました。原作は当然その後もあるらしいのですが、二期はちょっと無理ではないかと。出だしが食事を作る合間に居眠りしたら異世界という展開だったので、異世界で面白おかしく過ごして一生を終え、はっと気づいたらまだ料理が完成していなかったという「邯鄲の夢」オチを期待していましたが、どうなんでしょうかね。

スポンサーサイト