2019年冬季アニメの感想(その2):ケムリクサ/グリムノーツ The Animation/魔法少女特殊戦あすか

昨日は夕方から天気が崩れて、夜には春の嵐みたいになりましたが、今日は天気が回復したので良いので桜之宮公園に行ってきました。この公園は大川の東岸と西岸に沿ってありますが、西岸の方が桜の開花状況が早いみたいでした。大阪市民が盛大に花見に興じていましたが、今日も午後にはしばしば天気雨が降ってきて天候に落ち着きがありませんでした。酔ってごまかせ?


昨年9月の台風21号のせいで、公園の木々も大被害を受けており、桜の木も枝が折れたり幹が折れたりしていましたが、それでも春がくれば花を咲かせるんですね。その不屈さを見習いたいものです。

さて、2019年冬季アニメの感想を続けていきましょう。「ブギーポップは笑わない」は全18話と変則的で、既に全話放映されましたが、「オーバードライブ 歪曲王」の視聴が追いついていないのでまた後日に。ではまず「ケムリクサ」。

「ケムリクサ」はなんというか…説明が足らなくてよく判らない部分もありますが、一言で言えば「不穏なけものフレンズ」といった感じがします。たつき監督の「けものフレンズ」降板騒動のせいかもしれませんが、彼が描きたかったじゃぱりパークは本来こういう所だったのか、とか。じゃぱりパークはそこまで廃墟世界ではないぞと言われそうですが、けもフレ1期EDに延々登場した廃墟となった遊園地の映像、あれがケムリクサの世界に近い感じを受けました。


薄暗く赤い霧が立ち込め、廃墟が広がる世界で、赤虫と呼ばれる異形と戦いながら水を探して旅をする姉妹達の前に突如出現した記憶喪失の青年わかば。姉妹達はわかばを赤虫の仲間かと疑いますが、わかばは見た目完全に人間。むしろ不可思議な能力を持つ姉妹達の方が人間離れしているんですが…

断片的に判明したところによると、姉妹は「さいしょのひと」から分かたれた存在で、当初6人いたものが現在6人いるという。同じじゃねーかと突っ込まれそうですが、わかば出現前に3人(りく、りょう、りょく)が既に死亡していて、人手不足を解消するために姉妹のうちりなが能力を使って6人に分裂したが、既にそのうち2人が死亡しているということです。実はエンディングの映像はこの状況を説明したという。

基本的には生存に必要な水を求めて島伝いに移動していく姉妹&わかばの旅と、その過程で遭遇する様々な形態の赤虫や未知の世界が描かれていましたが、11話で世界観とかそもそもの発端の物語が描かれました。しかしいきなり情報量が多すぎて…

そもそもこの世界、タイトルにある「ケムリクサ」で作られた3Dコピーのようなものらしいのです。異星人だか宇宙から戻った地球人だかのわかばはケムリクサの転写の力を使って、地球の文明の再現を行うという作業に取り組んでいました。この仕事には依頼者がいるらしく、わかばは研究者のような存在のようでした。そんなわかばが一緒に暮らしていたのが地球人らしい「りり」。


しかしこのりり、水中から突如出現したということで、わかばを驚かせたそうですが、ケムリクサの転写の力が事故により死者蘇生として作用したのか。とすると、1話で突然わかばが水の中から出現したのも同じ理屈なのでしょう。

りりはわかばに懐いていて、もっと一緒に過ごしたかったようですが、わかばな仕事に没頭してあまり相手をしてあげられなかった様子。わかばと一緒にいたいのと、わかばのオーバーワークを心配したりりは、数種のケムリクサを接合してケムリクサを抑制しようとしたところ、それは暴走を始めてしまい、赤霧を伴った赤虫になってしまいました。

ケムリクサは大人しか扱えないものがあり、子供のりりはわかばを救うために自身をケムリクサ化して分割するという計画を立案、実行します。その結果出現したのが6人姉妹でしたが、その前にわかばは既に死んでいることが判明してしまったため、りりは「記憶の葉」に書いておいた本来の分割の目的である「わかばを助ける」という文章を抹消し、わかばの願いであった「好きに生きて欲しい」だけを残しました。りん以外の5姉妹はそれに従って好きに生きていたようですが、唯一りんだけは自分自身の「好き」な事を見付けられずにいました。おそらくりんがりりの本来の気持ちを一番継承していて、「わかばと一緒にいる」が好きなことだったせいではないかと。

なおりりは同人版では7分割されていて、「記憶の葉」の代わりに記憶・情報担当がいたのですが、わかばが既に死んでいるという記憶まで継承してしまったからか、名無しの彼女は出現直後に赤霧に身を投げて自殺してしまいました。本作では6話で「7-74」(名無し)の記載が。ちょうどわかばが記憶の葉の「せかいのしくみについて」を読み始めたあたりなので、とっても意味深。


ケムリクサは自然のものではないらしく、機械のように操作や調整が可能です。おそらくは異星ないし未来のオーバーテクノロジー。それがこの世界のあちらこちらにあるということは、この世界自体が本当の世界ではなく、何らかの構造物の中ということを示唆しているようです。シロ(「けもフレ」のラッキーさんを彷彿とさせますね)をはじめとするしろむしと呼ばれるロボットはわかばを船長と呼び、その命令を実行することを至上命題としていますが、それはこの世界がわかばが地球の文明を復元・記録していた巨大な船の内部そのものであることを示しているのでは。


いずれ世の才子達がより詳しく考察してくれるでしょうが、りりとりんのCVが小松未可子だということは、まあそういうことでしょう(笑)。既に死んでいたはずのりく、りょう、りょくは実は死んでおらず、といって姉妹の元に戻ることもせずに独自行動を行っていましたが、なぜなのかは不明。3人で1枚のケムリクサを共有しているような描写もありましたが、最終回では3人同時に出現していましたし。あれが本当の別れのようにも見えましたが、実はケムリクサになってしまうと死は史ではない…ということもあるのかも。


諸悪の根源のようだった赤虫も、その由来を知ってしまうと、「悪意」ではなく、りりがわかばと一緒に過ごせる時間を作りたかったという「善意と純愛」が形を変えて暴走してるともいえ、そう考えるとちょっと切ないですね。もっとも赤虫自体にそういう記憶も意志もなかったでしょうけど。

続いて「グリムノーツ The Animation」。スマホゲームが原作です。ストーリーテラーによって生み出された無数の「想区」。そこに暮らす人々は、全員が「運命の書」を持ち、それに生き方を定められていますが、まれに「運命の書」が空白である人が出現するようです。彼らは何のために出現したのか?

各想区にはストーリーテラーが異常を起こした存在であるカオステラーが出現することがあり、それまでの運命に縛られることがなくなる代わりに、秩序を失った想区は破綻して崩壊する末路をたどることになります。それを防ぐことが出来る「調律の巫女」とその一行になって想区を巡って世界を守るというのが「空白の書」の所有者の生き方の一つ。

もう一つは逆に「ストーリーテラーからの開放」を掲げ、積極的にカオステラーやヴィラン(「運命の書」を書き換えられた想区の住民が変身した怪物)を産み出していく「混沌の巫女」とそれを助けるフォルテム教団。つまりこの作品の騒動は「空白の書」の所有者同士の内ゲバのようなものではないか。

物語によっては救いのない展開のものも多いので、登場人物が「そんな運命まっぴらだ」と思うのも当然かという気がしますし、かと言って反逆すれば世界自体が崩壊してしまうので、他の運命に納得している人々を巻き添えにしていいのかという気もします。つまり主人公達とロキ達悪役達の言い分にはどちらも一理あるように感じます。故に最終的にはメガテンシリーズのLAWとCHAOSのように和解はありえず、対決して勝つしかないような。

「空白の書」の持ち主は「導きの栞」を使うことで一時的に様々な物語のヒーロー・ヒロインに変身してその能力を使用することが出来ますが、特に主人公のエクスは変身するヒーロー・ヒロインに制約のない「ワイルド」の紋章持ちで、使い勝手が良いようです。ですがなぜかアリスを中心にヒロインに変身することがほとんどで、もしや女体化が趣味なのかと(笑)。他のメンバーが自分の性別に即したキャラに変身しているだけにその異様さが目立ちました。まあ女性キャラが多い方が見ていて楽しいのは確かですが。

結局12話では「内ゲバ」に決着は付かず、というか敵対するロキ達も「空白の書」の持ち主であることが判明してびっくりというところで終わっているのですが、エクスが最後に変身した「グリム」って。実は作品のタイトルが「グリムノーツ」ですが、エクスやレイナが加わっている旅人の一団こそ、ヒーローとして召喚されたグリム兄弟が中心となって結成したものなのだそうで、その名が「グリムノーツ」らしいです。つまり「内ゲバ」はグリムノーツとフォルテム教団の戦いであると。


個人的にはごひいき声優種田梨沙が赤ずきん他いろんな兼役で登場していたのがうれしかったですね。好きなんですよ彼女の声質。病気療養から復帰したとは言ってもどうもまだ完全復帰ではないような感じなのが気になるのですが、可能であればぜひいろんな作品に参加して貰いたいものです。

最期に「魔法少女特殊戦あすか」。魔法少女ものも「魔法少女まどか☆マギカ」で枷が外れたせいか、本当になんでもありになりましたが、本作も「なんでもあり」の流れの作品です。

異世界である地冥界の侵攻に遭い滅亡の危機にあった人間界は、別の異世界である精霊界から支援を受けて誕生した魔法少女達の活躍により、地冥界の撃退に成功しました。本来の魔法少女ものであれば地冥界との戦いそのものを描くのでしょうが、本作ではそれは過去の話。

大戦から既に3年が経過しており、世界はすっかり平和になったのかと思いきや、さにあらず。異世界との接触により入手された様々な新技術は魔法少女以外にも魔女や魔術師を生み出しており、人間界はそれらを取り込んだ新たな軍事バランスが生じています。まさに冷戦終結後に訪れたのは平和ではなく、テロが横行する世界であるかのように。

ということで、「その後の魔法少女」が描かれた異色作である本作ですが、テロリストが各種魔法や冥獣などの魔法生物を使用することでむしろ大戦以前よりも質が悪い状況になっている気がします。大戦を生き残った5人の魔法少女はマジカル・ファイブと呼ばれ、その戦力は別格扱いされていますが、主人公でマジカル・ファイブのリーダーであった大鳥居あすかはもともと精神面に脆さがあり、大戦の過程で両親を惨殺されていることもあり、引退して普通の女子高生として日常生活を過ごしていましたが、周辺で頻発するテロに身近な友人が巻き込まれるようになったことから、再び戦う決意をします。

しかし戦う相手はテロ組織とはいえ同じ人間。特に、魔法少女や魔術傭兵を多数抱えているバベル旅団は恐るべき戦力を持っています。後半の沖縄戦ではもはや「テロるってレベルじゃねぇぞ!」と言いたくなるほどの戦力を投入していました。何しろマジカル・ファイブ中4人を投入してやっと鎮圧したほどでしたから。それでもバベル旅団の本隊はまるまる温存されているようなので、どうすれば戦後3年でこれだけの組織が出来るんだと思います。密かに地冥界と繋がっているとか?

本作の特徴としては、描写のえぐさが上げられるでしょう。敵も味方も拷問上等。しかし味方の拷問は情報を引き出すとか、ちゃんと目的があるのに対し、敵の拷問はあまり意味もなくやっているというか、あすか達を煽るのが目的みたいになっています。

さらに高越事故で母を亡くし、自身は右足を失い、父から悲惨な虐待を受けていた少女を救い出したバベル旅団が魔法少女にして戦力化しますが、実は交通事故も魔法少女にすることも全てバベル旅団の当初からの筋書き通りだったという惨さ。

ちなみに大戦後に出現した魔法少女は第二世代と呼ばれていますが、魔術傭兵との差違がよくわかりません。男や大人だったら傭兵、少女なら魔法少女なのかしらん。「まど☆マギ」では少女を魔法少女にする理由がしっかり説明されていましたが、本作ではよくわかりません。適正とか魔力の素質とかは関係するようですが、特に少女でなくてもいいようです。しかし大戦終盤には11人もの魔法少女が投入されていたので、やはり第二次性徴期の少女の魔力が強いとかなんとかいう理屈があるのかも知れません。単に魔法GGEとか魔法BBAを見たくないとかじゃないでしょうね(笑)。

NEETやヒッキーに魔法力を付与して「最期のご奉公じゃ!」と地冥界に突撃させる魔法NEETとか魔法ヒキニートとか。しかし魔法力を使ってさらに引きこもったり働かなくなるだけでしょうか。ヒキニートが魔法を使えるようになったら、なんて「なろう系」の小説の題材になりそうな。

なにしろ展開が陰惨なのと主人公以下登場人物の目つきが悪いのとで、円盤はあまり売れないんじゃないかという気がします。ということは二期はない、ということに。あっても見るかどうかは考えどころですね。現実世界は極めて世知辛いですが、アニメまで世知辛くしてリアリティを出そうとしなくてもいいんじゃないかという気もしますので。

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