記憶に残る一言(その99):クレタ王ミノスのセリフ(クレタの牝牛)

暖冬と聞いていましたが、結構寒いですね。今週は後半寒波が通り過ぎると暖かいとか予報士が言ってたような気がしましたが、そういうことはなかったぜ!「着る毛布」使いまくりです。来週こそは寒さが緩むといいのですが。夏がクソ暑い大阪、その分冬はさほどでもないかと思いきや、それなりに寒いのでした。

本日は先週に続いて「記憶に残る一言」。正直前回は自分でもあんまり面白くなかったので今回は面白く出来るといいな。今回は田亀源五郎のゲイ漫画「クレタの牝牛」からミノス王のセリフです。

水棲昆虫の名前が重なったようなペンネームの田亀源五郎は1964年2月3日生まれの漫画家で、自らを「ゲイ・エロティック・アーティスト」と名乗っています。アートディレクター、グラフィックデザイナーを経て、1986年から「さぶ」にてゲイ漫画・小説の連載を始め、その後「Badi」「薔薇族」「G-men」などでも作品を発表しています。優れた画力で表現される男性の肉体描写、SMシーンの芸術性は国内外で高く評価されており、フランス語版の単行本が出ているほどです。

ゲイ漫画といえば「ウホッ!いい男」で有名なヤマジュンこと山川純一の「くそみそテクニック」が真っ先に思い浮かぶのですが、ヤマジュン作品をノンケでも安心して読めるイージーモードとするならば、田亀作品は超高難度のエキスパートモードということです。なので私も「クレタの牝牛」しか見ていません。

ノンケでも読める作品としては「弟の夫」(「夫の弟」にあらず)という非18禁漫画があり、2018年にNHKでドラマ化され、そして翻訳作品が同じく2018年にアメリカの権威あるアイズナー賞において、アジア作品最優秀賞を受賞しています。

「クレタの牝牛」は単行本「筋肉奇譚」に収録されています。テセウス、ミノタウロス、ミノス王などが登場するギリシャ神話世界の物語です。この後ちょっとギリシャ神話について語りますが、キャラとしては漫画やゲームのものを流用させて貰います。

「弟の夫」が「夫の弟」の間違いのように思えるように、「クレタの牝牛」も「クレタの牡牛」じゃないのかと思ってしまうタイトルです。ギリシャ神話によると、ミノスはゼウスとテュロスの王女エウロペの間に生まれます。

エウロペは何しろゼウスが一目で恋に落ちるほどの美貌だったので、その後クレタ王の妻となり、ミノスも義理の息子としてクレタで育ちます。

その後クレタ王が亡くなったので、ミノスが後継者となりますが、この時ミノスは海神ポセイドンに、王位継承の証として牡牛を海から送ってくれるよう祈り、その牡牛を生贄として捧げることを誓いました。ポセイドンはこれに応えて牡牛を送りますが、その牡牛があまりに美しかったため、ミノスは欲を出して別の牛を生贄としてしまいました。

これに怒ったポセイドン、仕返しにミノスの妃であるパシパエに呪いをかけ、横領された牡牛に恋情を抱くようにしてしまいます。人の道に外れた恋に悩んだパシパエは、名高い工匠ダイダロスに相談し、木製の雌牛の張りぼてを製作してもらい、これを使って牡牛への思いを遂げます。

これでパシパエは妊娠して子供を産みますが、その子供は人間の体に牛の頭が乗った怪物だったのでした。ミノタウロスという名前で有名ですが、これは「ミノス王の牛」を意味する異名で、本当の名前は星・雷光を意味するアステリオスです。ミノタウロスは成長するに従って凶暴になり、手に負えなくなったミノスはダイダロスに命じて迷宮・ラビュリントスを作らせて、そこにミノタウロスを閉じこめました。そして食料として当時クレタが支配下に置いていたアテナイから9年毎に7人の少年、7人の少女を送らせることとしたのでした。

アテナイの王子テセウスは、これに強い憤りを感じ、自ら進んで生贄の一人となってクレタに乗り込み、ミノスの娘である王女アリアドネの助けを得て見事にミノタウロスを退治します。

……これが神話のあらすじなんですが、「クレタの牝牛」は、クレタに乗り込んだテセウスがミノスを殺そうとするところから始まります。用心深いミノスが杖で隠しボタンを押すとテセウスは落とし穴に落ち、下ではミノタウロスが待ち構えていました。

不意を突かれたテセウスは怪物に捕らえられ、なすすべもなく食い殺されるかと思われましたが…なんとミノタウロス、ヒゲマッチョのテセウスを「花嫁」にしてしまいます。これにはミノスもびっくり。

そして繰り返し(ウホッ!アッー!)されるうちにテセウスはミノタウロスの子を身ごもってしまいます。だんだんと腹が膨らみ乳首からは白い液体が噴き出すように。どこで子供が育っているのかといえば、腸の中としか言えないのですが、仮にそこで育つとして、“大”と一緒に出てきやしないかと思うのですが…

ミノタウロスは肛門から管を伸ばしてなにやら分泌物をテセウスに無理矢理食べさせており、これによってテセウスは栄養が十分な状態になっています。おそらくそれだけではなく“大”を出なくて済むような作用もあるのではないかと。それにしてもテセウスが食わされているものこそミノタウロスの“大”のような…

テセウスは、ミノタウロスとはアテナイの若者を生け贄に捧げさせるための口実にすぎない架空の存在だと思っていました。ミノスによれば、巷ではミノスの后パシパエが牛と交わって産んだ怪物と噂されていますが、実際には“天駆ける神盾(アイギス)”に乗って雷のように空からやってきた存在だということで、ミノタウロスとテセウスの間の子はクレタの守護神になるだろうとのことです。


そして王宮前の広場に引き出され、国民がこぞって見つめる中で“出産”を強いられるテセウス。恐怖に半狂乱になっています。そこにミノスが得意な杖とともに放ったのが今回のセリフ。

そしてテセウスの肛門から生まれたのは小さなミノタウロス。……たまげたなあ。なお作者によれば、「ミノタウロスはクローンを宿主に植え付け宿主の遺伝情報を取り込みながら増殖するタイプの生物である」とのことです。基本ミノタウロスなんだけど宿主の特徴とか長所は取り入れていくということなんですね。だから普通の生贄は喰らっていたミノタウロスは、人間の中でも屈指の勇士であるテセウスは別の意味で喰ったという。クレタの守護神となってくれるのかどうかは判りませんが、ミノタウロスジュニアはミノタウロスより強力になっているのではないかと。

なお余談ですが、ミノタウロスのパパンとなったミノスの牡牛は、ヘラクレスがミケーネ王エウリュステウスに命じられた「12の功業」の一つとして、素手で捕らえてエウリュステウスのところに連れて行って見せた後、放逐したそうです。その後この牡牛はギリシャ周辺を彷徨ってマラトンで暴れていたところをテセウスに退治されたそうです。親子共々テセウスに殺されるとは、なにやら因縁を感じさせますね。

それからミノタウロスのママンであるパシパエですが、もし恋のお相手が雄馬ならオシラサマを産んだのだろうかとかしょうもないことを考えてしまいますな。それにしても絵が牛飼い娘って…。それはさておき、パシパエは太陽神ヘリオスと女神ペルセーイスの娘で、姉に高名な魔女キルケー、姪にやはり高名なメディアがいます。


それならパシパエ本人も魔女なんじゃなかろうかと思ったら、やはり魔術に優れていたそうで、ミノスに魔法をかけて、彼が別の女を抱こうとすると体から毒蛇やムカデ、サソリを放って相手の女を殺してしまうようにしたそうです。ヘラクレスのように神と人間の間の子が半神になるのはわかりますが、パシパエやキルケーはそもそも神と女神の間の娘なので、それなら本人も神じゃないかと思いますが。

さらにミノスですが、ギリシャ神話では、同母弟のラダマンティス、異母兄弟のアイアコスと共に死後に冥界の審判者となったとされています。「聖闘士星矢」では冥闘士(スペクター)を統べる冥界三巨頭として登場しますが、ちゃんと由来があったんですね。冥界三巨頭は三兄弟でもあったとは。まあギリシャ神話ではゼウスはとにかくいろんな女とやりまくって子供を作りまくっているので、異母兄弟はやたらいるようですけどね。

「産め!神の子を!」は有名なセリフで、ネットではいろんな場面で使われていますが、画像付きのものとなるとあんまりありませんでした。見つけたのはこれ。女子のみなさん、キュンとしますかね?

あと勝手に作ってみたのはこれ。クリスチャンの皆さんすいません。怒らないでください。有名な「受胎告知」の絵の一つなんですが、マリアのリアクションがいかにもこういうセリフを言ってそうな感じだったもので。
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