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奈良小旅行(その4):中将姫伝説の古刹・當麻寺

12月の長谷寺

 12月というのも暖かいですね。月が変わって秋から冬になったとはいえ、そうあっさりと気候までは変わらず、紅葉もまだまだ見頃の場所がたくさんあります。

奥院から見た伽藍 

 先週に引き続き奈良小旅行です。なんか最近は京都より奈良の方がお気に入りになってきました。奈良も東大寺や奈良公園のある奈良市はともかく、南部(奈良県の、ではなく奈良盆地の)は外人が少ないし、そもそも観光客の数が段違いに少なくて、静かに観覧できるんですよ。いや、インバウンドやら多くの観光客が名所名跡を潤してくれ、ひいては日本の経済に必要だということは判るんですが、個人的にはやはり周囲に人が多くて騒がしいのは苦手です。

わたしは奈良派 

 あと、千年の都・京都の偉大さと素晴らしさは世界的に有名なんですが、奈良にはそれより更に古い寺社がごろごろしているという。まあ平城京はもとより、それ以前の飛鳥時代とかは奈良盆地に都がありましたから当然なんですが、近鉄の宣伝文句じゃありませんが、私も奈良派になりそうです。

二上山 

 ということで、本日は近鉄も乗って當麻寺に行ってきました。「當麻」は「たいま」と読みます。沖縄在住の元女優がピクッと反応しそうな名前ですが、マリファナとは関係ないようです。大阪平野と奈良盆地は生駒山地と金剛山地が隔てているわけですが、金剛山地北部の二上山の麓、奈良盆地の西南端にあって、古代においては交通・軍事上の要衝だったようです。

當麻寺境内略図  

 當麻寺創建の伝承によると、別の地に聖徳太子の異母弟である麻呂子王(当麻皇子)が天武天皇14(685)年に弥勒仏を本尊として草創した禅林寺が、天武天皇9(680)年にこの地に移されたものだとされています。寺に残る仏像、梵鐘等の文化財や、出土品などの様式年代は7世紀末までは遡れるので、當麻寺は壬申の乱に功績のあった当麻国見(葛城氏の一族で麻呂子王の孫)によって、7世紀末頃に当麻氏の氏寺として建立された氏寺であるとみられています。創建の正確な時期や事情については正史に記録がなく、奈良時代から平安時代にかけての寺史も史料が乏しいため、詳しいことがわからないようです。

近鉄当麻寺駅 

 宗派は高野山真言宗と浄土宗の並立となっています。平安初期、弘法大師・空海が當麻寺を訪れて曼荼羅を拝し、それ以降、當麻寺は真言宗寺院となったという伝承があり、また平安末期に末法思想が広まった際、當麻寺には阿弥陀如来の浄土を描いた「当麻曼荼羅」があったために信仰を集めるようになったということで、浄土宗の塔頭も多く擁しています。

當麻寺参道
當麻寺仁王門 

 近鉄南大阪線当麻駅(駅名は「當麻」ではなく「当麻」)を降りて一本道の参道をまっすぐ西に向かうと見えてくるのが仁王門。この参道、両側に並ぶ家並みとかもなかなか雰囲気があって良いのですが、車両の交通がかなり激しいのが玉に瑕。車両が行き交うには幅員が狭いので、歩行者専用だと最高なんですが。

日本最古の梵鐘 

 仁王門をくぐるとあるのが鐘楼の梵鐘。日本最古の梵鐘と言われ、當麻寺創建当時の遺物と推定されています。無銘ですが国宝に指定されています。

當麻寺本堂 

 さらに進んでいくとぶつかるのが国宝の曼荼羅堂(本堂)。平安時代末期の建築ですが、一部には奈良時代の建物の部材が転用されています。ここで拝観料500円を払うと、本堂の他に講堂と金堂に入れます。本堂の本尊は仏像ではなく、縦横4メートルはある巨大な当麻曼荼羅(国宝)。中将姫と呼ばれる尼僧が蓮の糸を用い、一夜で織り上げたという伝説があります。

中将姫像 

 ということで中将姫に触れなければならない訳ですが、先週訪ねた談山神社に祀られている藤原の鎌足の曾孫である右大臣藤原豊成の娘ということになっています。夫婦の間に長い間子供が出来ず、桜井の長谷寺(ここも訪ねました)の観音に祈願したところ、授かったのが中将姫でした。しかしママンは中将姫が5歳の時に亡くなり、その後豊成は後妻を迎えることになります。

絵本の中将姫 

 中将姫は幼少から美貌と才能に恵まれますが、継母に憎まれてしまいます。継母は様々ないじめを行った挙げ句、夫の不在時に家臣に殺害を命じますが、命乞いをせずに極楽浄土へ召されることをのみを祈って読経を続ける中将姫を家臣は殺める事が出来ませんでした。13歳で三位中将の位を持つ内侍となり、16歳の頃、天皇に後宮入りを望まれますが、これを断って当麻寺へ入り、尼となりました。

歌川国芳による中将姫 

 26歳で長谷観音のお告げにより、「当麻曼荼羅」を織り上げますが、仏行に励んだ徳によって仏の助力を得て、一夜で蓮糸でを織ったとされています。宝亀6(775)年春、29歳で入滅しますが、その際には阿弥陀如来を始めとする二十五菩薩が来迎し、生きたまま西方極楽浄土へ向かったとされます。

中将餅 
中将湯 
 付近では当麻に昔らか伝わるという餡をつけたよもぎ餅を中将姫にちなんで「中将餅」として販売しています。また婦人病の家庭薬として知られる中将湯も、中将姫が伝えたものだとされています。

当麻曼荼羅 

 実際の当麻曼荼羅は調査の結果、錦の綴織りであることが判明しており、高度な技術を要するので中国製なのではないかと推定されていますが、ま、それはそれ。学術的調査自体は重要ですが、伝説にツッコむのは野暮というものでしょう。

當麻寺金堂 

 重要文化財の金堂は平重衡の南都焼き討ちの際に焼失してしまい、鎌倉時代の再建です。中には本来の本尊である弥勒仏坐像や四天王立像などが安置されています。

當麻寺講堂 

 同じく重文の講堂。こちらも鎌倉時代の再建で、本尊の阿弥陀如来坐像、もう1体の阿弥陀如来坐像(小さい)、妙幢菩薩立像、地蔵菩薩立像(以上重文)のほか、多くの仏像を安置しています。

當麻寺中之坊 

 そして子院の中之坊。参観料500円。真言宗で、中将姫剃髪の地と伝承されています。中将姫の仏法の師である実雅の開基とされています。

中将姫剃髪堂 

 中将姫が剃髪したという剃髪堂には中将姫の守り本尊の「導き観音」が祀られています。

中之坊庭園から三重塔を望む 
庭園「香藕園」の紅葉 

 庭園は「香藕園」という名で、史跡・名勝です。大和三庭園のひとつに数えられています。東塔を借景とし、心字池を中心とした桃山期の名庭で、江戸時代初期に、4代将軍家綱の茶道指南役であった片桐石州(石見守貞昌)が現在の姿に改修しました。

丸窓席 

 庭園に臨む茶室「丸窓席」。江戸時代初期建立の書院(重文)にあります。円窓の直径は1.8メートルもあるそうです。

千仏院の庭園の門 
千仏院庭園 

 庭園は中之坊向かいの千仏院にもありました。こちらは人がおらず、100円を賽銭箱に入れるシステムでした。誰もいませんでしたが、当然真っ正直に100円を入れました。「香藕園」に比べるとかなり小さいですが、心字の池を中心に、回遊式の庭園となっていました。

當麻寺東塔 

 こんなものかなと帰ろうとしたのですが、「そういえば庭園から見えた塔も當麻寺のものだろう」と思い返して見に行きました。東塔です。西塔は修理中で見えませんでした。国宝の三重塔で、奈良時代末期の建築と推定されています。高さは24.4メートル。そりゃあ法隆寺の五重塔とか、奈良にはもっと古い伽藍もありますが、奈良時代の建築が残っているというのは改めて驚きますね。

西南院庭園案内図 

 思い返したついでに訪れた西南院。當麻寺の裏鬼門を守る寺院として創建されたそうです。拝観料は300円。庭園は江戸初期に造られ、中期頃に池泉廻遊式庭園に改修されました。借景として西塔(国宝)を組み入れていますが、現在修理中のため残園ながら、その優姿を見ることは出来ませんでした。

 西南院庭園の紅葉その3西南院庭園の紅葉その4西南院庭園の紅葉その1

 しかし紅葉はなお残っていましたので、西南院紅葉コレクション。

奥院境内図 

 さらに奥院。入山料500円。こちらは浄土宗の子院で、室町時代の応安3(1370)年、知恩院12世の誓阿普観が創建したもので、当初は往生院と称しました。知恩院の奥の院とされ、近世以降は「当麻奥院」と呼ばれています。

奥院楼門 

 重文の奥院鐘楼門。正保4(1647)年の建立。

奥院本堂 

 右はやはり重文の奥院本堂。慶長9(1604)年建立。左は阿弥陀堂。

浄土庭園の紅葉その1 

 なんと言っても浄土庭園が広いです。阿弥陀仏の姿を写す極楽の池「宝池」の回りを巡る池泉回遊式庭園で、二上山を背景にしています。

浄土庭園ロックガーデン 

 阿弥陀如来像を中心に数多くの仏をあらわした石が並んでいます。ロックガーデンですね。納骨も受け付けているそうで、浄土庭園の阿弥陀仏石像の地下に納められ、毎年回向を受けられるとか。興味のある方はどうぞ。

浄土庭園の十三重石塔 

 石造りの十三重塔もありました。石造りだと結構あるんですが、木製であれだけ巨大なものというと、やはり談山神社の十三重塔は珍しいし貴重ですね。

浄土庭園の紅葉その2 
浄土庭園の紅葉その3 
浄土庭園の紅葉その4 

 奥院は独自の霊宝館を持っており(中之坊にもありました)、二十五菩薩来迎像なんかが展示されていました。そしてここでも紅葉が。奥院コレクションです。

弘法大師堂 

 最後に大師堂。江戸時代創建の弘法大師を祀っており、高野山から移された等身大の弘法大師像を本尊としています。周囲には歴代當麻寺別当、中之坊法印、西南院住職などの供養塔があります。

日本最古の石灯籠 

 このほか、入ろうと思ったけどなぜかやめた護念院、宗胤院などもあります。そうそう、日本最古と記された石灯籠もありましたっけ。

散り敷き紅葉 

 見所満載ですが、全部入ろうとするとそれなりに拝観料などがかかってしまう當麻寺。醍醐寺のように一括払いにするか當麻寺のように分割払いにするか。見たいところだけ見られるという意味では分割払いの方がいいような気もしますが、ちまちま払うのが面倒だという人もいるでしょう。私のように一期一会だ、二度と来られるかどうかはわからんという場合、高く感じても一括払いの方が楽なような気もします。

大和七宝八福めぐりの御朱印帳 

 当麻寺も大和七福八宝めぐりの一つに数えられており、中之坊に布袋像が祀られているそうですが、全然気付きませんでした。やはり目がリハクだから(笑)。
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