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万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ:素敵ヒロイン凜田莉子登場

雨を見つめる黒猫

 いかにも梅雨らしい一日でした。鬱陶しいですが、こういう日も一年の間には必要なんでしょう。7月に入る土曜日あたりから暑くなりそうですね。今年の夏は厳しい予感が…

万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ

 本日はここのところよく読む松岡圭祐の「万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ」を紹介しましょう。松岡圭祐は人気シリーズ物が多いですが、「Qシリーズ」は2010年から始まった比較的新しいシリーズで、「催眠」や「千里眼」でくどいほど言及されていた催眠に関する話は一切登場しません。

 「Qシリーズ」は第一部「万能鑑定士Qの事件簿」(全12巻)、第二部「万能鑑定士Qの推理劇」(全4巻)、短篇集「万能鑑定士Qの短編集」(既刊2巻)が刊行されています。「Qシリーズ」は「千里眼シリーズ」とともに松岡圭祐の双璧シリーズと思われます。

凜田莉子 

 キャッチフレーズは「面白くて知恵がつく 人の死なないミステリ」で、その通りシリーズを通し一件も殺人事件がなく、物語中では自然死も描かれません。私立探偵や刑事でないフリーランスの職業の、若く美人だが天然系の女性が広範な知識を武器に、少々頼りない男性助手と共に「人の死なないミステリ」を解決していきつつ、恋模様も描かれるというライトミステリ・シリーズで、三上延の「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズや西尾維新の「掟上今日子の備忘録」シリーズ等の先駆けとも言われています。

 実は「万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ」は、シリーズのプロローグであり、さあこれからが大変だというところで終わっており、事件の結末は次巻「万能鑑定士Qの事件簿Ⅱ」に持ち越されているのですが、これまで読んでいるとブログ記事に間に合わないので、一応一冊は読んだと言うことで強行紹介してしまいます。

貼られている力士シール

 「万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ」は2010年4月25日に角川文庫書き下ろしで刊行されました。その後の刊行は極めてハイペースで、第一部「万能鑑定士Qの事件簿」全12巻が2011年10月までに連続刊行されています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

波照間島
 
 東京23区を侵食していく不気味な“力士シール”。誰が、何のために貼ったのか? 謎を追う若き週刊誌記者・小笠原は、猫のように鋭く魅惑的な瞳を持つ美女と出会う。凜田莉子、23歳──瞬時に万物の真価・真贋・真相を見破る「万能鑑定士」だ。信じられないほどの天然キャラで劣等生だった莉子は、いつどこで広範な専門知識と観察眼を身につけたのか。稀代の頭脳派ヒロインが日本を変える!書き下ろしシリーズ第1弾!!

波照間島周辺図
 
 ヒロインは凜田莉子。出身地は波照間島。九州から遥か南西にある沖縄県ですが、沖縄本島からさらに南西にある石垣島を中心とする八重山諸島の一島で、人口は490人。有人島として日本最南端の島であるとともに、民間人が日常的に訪問できる日本最南端の地でもあります。沖縄本島よりも台湾の方がずっと近いという。

波照間島地図 

 上京して5年、23歳にして万能鑑定士という凄まじい肩書きを持ち、警察や大学などにも知己を持つ凜田莉子は、相方となる「週刊角川」編集部の小笠原悠斗と出会いました。緩いウェーブのロングヘア、猫のように大きく円らな瞳を持ち、モデルのように長い手足を持つ掛け値なしの美人である莉子は、悠斗の目の前で他の依頼人による絵画の真贋鑑定を一発で、かつぐうの音もでないほど論理的に行ってその実力を見せつけます。莉子の事をよほどの大学を出た天才的慧眼の持ち主と思う悠斗ですが、ところがぎっちょんちょん。

 JK時代の莉子その2

 石垣島の高校に通っていた莉子さん、もちろん美少女JKではありましたが、体育や音楽・美術を除いてオール1という万年最下位の凄まじい劣等生だったのでした。美貌とは裏腹に天真爛漫で明るく素直で、担任の先生も卒業を含めてその行く末を心から心配しているという状態でしたが、本人はあっけらかんとコネも伝手もないままに上京すると言います。

JK時代の莉子その1 

 実は慢性的な水不足に悩む故郷の波照間島の生活環境をなんとかしたいという高邁な夢を持っており、純粋かつ真摯な莉子の姿勢に打たれた先生は、おそらく莉子の高校卒業に多大な貢献をなしたと思われ、晴れて莉子は18歳にして上京することができました。中野の三畳一間のボロアパートという、「SHIROBAKO」の新人アニメーター安原絵麻以下の住環境に甘んじながら(まさに掃き溜めに鶴)就職活動を行いますが、なにしろ一般常識も知識のないため大難航することになります。

絵麻ちゃんのアパート 
 
 上京後一ヶ月で、家賃すらままならないほど困窮することになった莉子は、不要品を売ろうとリサイクルショップを訪れます。そこの社長瀬戸内陸は、かつて牧師になって孤児院をやろうと思った人物ですが、そのためにまず財をなそうとリサイクルショップを始めたものの、人助けに追われて経営も火の車という人物でした。が、莉子にとってはまさに神様。困窮する莉子の話を聞いて援助してくれたばかりでなく、莉子に合った勉強法を伝授してくれたのでした。

瀬戸内陸 

 実は莉子、非常に感性豊かで音楽や絵画・小説にのめり込むと他の事を全て忘れて感動するタイプでした。そういう人が勉強のために淡々とクールに教科書を読むというのがそもそも間違っていたということで、まずは感性にフィットしやすい歴史や国語から攻略し、以後理数系などでも勉強法を伝授されたことで、「賢く」なることに成功します。というか莉子は本来とても賢い子だったのですが、彼女に相応しい勉強法を教えて貰えていなかったのですね。

凜田莉子と小笠原悠斗 

 あらゆる商品カタログを高速で読み込み、しかも忘れないという特異な才能を発揮しだした莉子はリサイクルショップで働き始め、鑑定士に必要な知識を身に付けていきますが、莉子が20歳になった頃、いよいよリサイクルショップの経営が危うくなり、瀬戸内は独立を勧めます。

 そして飯田橋の神田川沿いにある雑居ビル1階に、「万能鑑定士Q」の店を構える莉子。「万能鑑定士Q」の名称は瀬戸内が付けたもので、「Q」はクイーンを意味するそうですが、そのネーミングセンスは天然の莉子さえドン引くかせ、以後「Q」の意味を聞かれる度にとぼけるようになっています。なお莉子は特別な資格を持っているわけではなく、「鑑定士」はあくまで屋号ですが、絵画、骨董、宝石、ブランドは勿論、漫画や映画など広いジャンルの事柄について即座に鑑定するだけの知識、能力を有しているほか、高度な論理的思考(ロジカル・シンキング)法を駆使します。

 小笠原悠斗

 で、そうした莉子が「万能鑑定士Q」を開業するまでの過去が描かれつつ、現在小笠原悠斗が持ち込んでいる鑑定ネタが入っていきます。悠斗は編集長から最近あちこちに貼られている謎の「力士シール」の謎を追うことを命じられており、その鑑定を莉子に依頼しようとしていたのでした。

カオスチャイルドの力士シール 

 「力士シール」とな!?それは冬季アニメ「CHAOS;CHILD」に登場した不気味なアレか!「CHAOS;CHILD」では猟奇的な事件(ニュージェネレーションの狂気の再来)の現場付近に多数の力士シールが貼られているのが確認されていました。この「力士シール」、私はてっきり「CHAOS;CHILD」のオリジナル設定だと思っていたのですが…なんと実在していたのでした。

傷だらけの力士シール

 「力士シール」は、2008年頃から東京都内の壁や電柱、ガードレールなどの至るところに大量に貼られ始めたという、謎のシールで、力士の顔を二つ繋げたようなデザインをしていることから「力士シール」と呼ばれるようになりました。シールの枚数が数百枚と大量に見つかっていますが、シールの制作者が誰なのか、貼っている目的が何なのかが一切不明なことなどから、インターネット上では様々な憶測が飛び交ったそうです。き、気付かなかった…このリハクの目をもってしても(いやリハクだからだ)。

このリハクの目をもってしても(いやリハクだからだ) 

 サイズやデザインは複数のバリエーションがあり、ネットでは「海外の犯罪グループによる、薬物取引の目印説」「カルト組織による、何らかの暗号・記号説」「カラーギャングによる、縄張り争い説」などの憶測がなされていたそうです。いやあ知らなかったなあ。
 
 作中での「力士シール」は、莉子の鑑定により二種類のバリエーションがあること、描き手が異なることが判明しましたが、知り合いの早稲田大学准教授に依頼した科学的分析によると、前後関係はなく同時に描かれたもので、しかもスタンプを押すように瞬時に描かれたものであることが明らかになります。

ヒャッハーさん達 

 さあそしてどうなると注目される「力士シール」の顛末ですが、実はそれどころではない事態が勃発します。莉子と悠斗が出会って数日後、日本を未曾有のハイパーインフレが襲い、町はヒャッハーな暴徒が暴れている始末。かつての日本の姿はもうどこにもありません。どうやらそれは、莉子が察知して警察に知らせた不法侵入事件を関係があるようなのですが、その概要については明らかにされていません。しかし混乱の中、莉子は故郷である波照間島に帰ろうとしています。単なる郷愁ではなく、彼女なりの思惑があるようなのですが…以下続巻となっています。

マンガ版万能鑑定士Qの事件簿 

 「千里眼シリーズ」の岬美由紀がスーパーウーマン過ぎて「さすおに」的な気分になってちょっと辟易しましたが、凜田莉子はいいですね。スゴイ美女ですけど、感受性が強くて涙もろいし、JK時代の天真爛漫さを持ち続けています。特別タフでもないので、ヒャッハーな環境に置いておいては危ないのですが、何しろシリーズが「人が死なないミステリ」なので、雌奴隷にされたりといった西村寿行的展開はないでしょう。莉子ちゃんには「そのままの君でいて」と思ってしまいます。
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2017年春季アニメの感想(その1):つぐもも/クロックワーク・プラネット/ひなこのーと

ガクアジサイ

 気温はそれほどでもないですが、やたら湿度が高くてムシアツゥイ!ですね。こういう時に楚々とした風情のあるガクアジサイを見ると気分が少し晴れます。普通のアジサイの原種がガクアジサイだそうですが、日本原産ってスゴイですね。日本から中国、そしてヨーロッパに伝わっていったという。

つぐももその1 

 春季アニメが続々と最終回を迎えているので、本日はその感想をば。まずは「つぐもも」。土地神・くくりから怪異を調伏する「すそはらい」の任を命じられた加賀見一也と、一也をやたら振り回すやたら強気な帯の付喪神・桐葉の物語ですが、一見少年漫画的な絵面なので、なぜに深夜になるのかとも思いましたが…

つぐももその2 

 本作、やたら下ネタが多いです。やはり深夜にやるしかないか。これまでに2回アニメ化の話があったものの、いずれも流れていたということですが、そのせいじゃないでしょうか。いや、下ネタ自体はもっとスゴイ作品もあるんですが、少年漫画そのものなキャラデザインとの間に大きな落差が。一也を始め悪友達や生徒会長まで女性声優を起用しているというのにイマイチ萌えないのは、キャラがあんまり可愛くないから。

下ネタの一例 
メガテン3のキクリヒメ 

 付喪神って、名前に「神」が付いていますが、実際には長い年月を経た道具に魂が宿ったものなので、妖怪ですよね。それにしちゃあ傍若無人の限りで、力を失っているとはいえ土地神のくくり(菊理媛神)への態度が酷すぎる。キクリヒメといえばメガテンシリーズにも登場するメジャーなお方だぞ(もっともメガテンシリーズはマイナーな神や悪魔を好んで取り上げる傾向がある気もしますが)。

小山内治 

 個人的お気に入りキャラは男だけど小山内治。非常に沈着冷静で、怪異にもほとんど動じず、一也たちの中でもブレーンとしての役割を果たすほか、なにげに実家がお金持ち。ぜひお友達になりたいですな。

奈中井ななこ 
皇すなお 

 物語的には序盤部分をやったというところで終了しているので、ストーリーを本格的に展開させるには二期以降が必要なんですが、幼馴染みを始め主要女性キャラがあんまり魅力的じゃなかったので円盤が売れるかどうか。脇役の奈中井ななことか終盤登場の皇すなお辺りは可愛いかったので、彼女らをもっと登場させられていたら…

クロックワーク・プラネットその1 

 続いて「クロックワーク・プラネット」。惑星一個がまるまる時計仕掛けになっているというもの凄い設定で、電波すら聞くという異常聴覚を持つ見浦ナオトと彼が直した自動人形(オートマタ)リューズ、そして天才時計技師マリーの活躍を描く物語…なんですが。

リューズさんの壁紙 

 風や気温、重力などあらゆるものが全て歯車によって制御されているという虎将仰天な設定といい、修理不能な故障が発生した場合に、都道府県ごとに分けられている区画(グリッド)を意図的に崩落させて他への波及を防ごうとするパージを、わりと簡単に行おうとする軍とか政府の凄まじい人命軽視ぶりに唖然とします。ナオト達の行動を正当化するために悪役を押しつけられているとはいえ、無能っぷりが目にあまります。

リューズとナオト
 
 じゃあナオト達が好感が持てるかといえば、こいつらもほとんど性格破綻者なのでついていけません。特にナオトはしっちゃかめっちゃか過ぎて共感性ゼロでした。正直よく最後まで見てたなと思います。

ドヤ顔ナオト 

 加隈亜衣演じるツンデレというよりヤンデレチックなリューズの毒舌を聞くのだけが楽しみだったような。敵勢力もそれなりに魅力的に描かないといかんなあと改めて思いました。ラスボスがナオトとマリーを、地球上全ての機能を歯車で再現した時計技師Yとみなしていましたが、それは何か根拠があったんですかねえ。

ヤンデレ風味のリューズさん 

 個人的お気に入りキャラは当然リューズ。時計技師Yが1000年前に製造したというInitial-Yシリーズの壱番機で「付き従うもの」。ナオトやマリーに対する毒舌は当然すぎて爽快になる位でしたが、もしや「毒づくもの」の間違いじゃないの?

ひなこのーとその1 

 最後に「ひなこのーと」。「ごちうさ(ご注文はうさぎですか?)」難民の避難先かと思われた作品でしたが、「ごちうさ」とはまた傾向が異なっていました。

ひなこのーとその2 

 ど田舎出身で、口下手であがり症の桜木ひな子が、かつて劇を見て感動した東京の藤宮女子高校の演劇部に入部しようと上京し、喫茶店と古本屋を併設するアパート「ひととせ荘」で過ごす一年間を12話で描いていました。

バニーひなこ 

 このひな子、極端な人見知りで、緊張するとかかしのように棒立ちになってしまうのですが、最終回近くになってもなおかかし状態になっていて結構うざかったです。早とちりしがちで、悪気なく酷いことを言うクセがあったりして。ただルックスとプロポーションが非常に良く、「大家さん」こと萩野千秋とともにお色気要員になっていました。CVはM・A・Oで、「学校ぐらし!」のりーさんのようなお姉さんキャラがハマリ役かと思っていたら、こういう役もこなすんですね。

チャイナ大家さん 

 「ひととせ荘」の住人にして「劇団ひととせ」のメンバーでもある4人は、桜木ひなこ(春)、夏川くいな(夏)、萩野千秋(秋)、柊真雪(冬)春夏秋冬の季語が含まれていますが、5人目のメンバー中島ゆあのみ、アパートに住んでおらず季語も入らない、おまけに事ある事にハブられがちという不遇っぷりで全米が泣きました。OP・ED共に一緒にいるのにひどい。

お色気シーン多し 

 もうかかしはいいので、演劇やら日々の生活やらをまったりと描いてぜひ二期もお願いしたいと思います。水着回もコスプレ回もありましたが、ひな子や千秋の肉感的ボディは「ごちうさ」にはない味なので、それはそれでいいのではないでしょうか。

水着の真雪 

 個人的お気に入りキャラは柊真雪。実は主要登場人物ながら、恥ずかしがり屋で舞台には立たずに裏方ばかりやっていました。子供に間違われるほど小柄ですが、しっかりした性格で料理上手で家事全般を得意として、器用でダンスも上手いので、演劇部顧問の黒柳ルリ子(小学生なのに)からも勧誘されていました。アパートに併設された喫茶店で働いているせいかメイド服を着ていることが多いのですが、それが平気なら舞台ぐらい何でもないんじゃ。

中の人もメイド服 

 そういえば中の人(小倉唯)もメイド服を着ていましたね。天使声優がCVをやっているということになれば、やはり「好きなアニメキャラ」で取り上げざるを得まい。

エロマンガ先生も終了 
 
 あ、山田エルフ大先生がすっかりお気に入りだった「エロマンガ先生」も終了していますが、これについては次回の楽しみに。

空を見上げる古い歌を口ずさむ:ゲスモノ、マレビト、タガイモノ

藤井某のマネ

 将棋で歴代最多タイの28連勝中で時の人となっている藤井聡太四段の顔真似をした物真似タレントのツイッターが炎上して当該ツイートを削除するという騒ぎがありました。確かに顔真似は似ていましたが、バカにしたり貶めようとした印象はなかったので、削除までしなくても…とは思いますが、その一方で、芸人ならツイッターではなくテレビとか舞台で芸の一環として見せればいいのになあとも思います。ともあれ、あまり住みにくい世の中にならないといいのですが。

単行本 空を見上げる古い歌を口ずさむ 

 本日は小路幸也の「空を見上げる古い歌を口ずさむ」を紹介します。小路幸也の作品を読んだのは初めてですので、例によって著者紹介から。

小路幸也 

 小路幸也(しょうじ ゆきや)は1961年4月17日生まれで北海道旭川市出身。学生時代はミュージシャンを夢見ましたが、24歳の時に広告制作会社に就職しました。30歳の誕生日に「職業として」の作家を志し、ゲームシナリオの執筆や専門学校のゲームシナリオ科講師を務めながら小説の執筆を続け、2002年11月、本作で第29回メフィスト賞を受賞し作家デビューしました。

メフィスト誌 

 メフィスト賞は、講談社が発行する文芸雑誌「メフィスト」から生まれた、未発表小説を対象とした公募文学新人賞です。対象となるジャンルは、ミステリー、ファンタジー、SF、伝奇などを含めたエンタテインメント作品で、明確な応募期間は設けられておらず、「メフィスト」誌編集者が直接作品を読んだ上で選考を行うなどの特徴を持っています。

メフィスト賞とは 

 当初から賞金はありませんが、受賞作品はそのまま出版につながるため、印税が賞金代わりとなるほか、受賞に至らなくても編集者の興味を惹いた作品があれば応募者とコンタクトを取り、それが講談社からのデビューに繋がることもあるということで、ほぼ「持ち込み」を制度化したような賞といえるでしょう。

すべてがFになる クビキリサイクル

 基本「面白ければ何でもあり」で、まるで漫画雑誌みたいですが、受賞作家のジャンルは本格的ミステリ、純文学的作品、ライトノベル的作品など多岐にわたっています。受賞作家には、先日読んだ「群衆リドル Yの悲劇'93」の古野まほろ(2007年受賞。受賞作は「天帝のはしたなき果実」)、アニメで見た「すべてがFになる」の森博嗣(1996年受賞)、やはりアニメで見た「〈物語〉シリーズ」や「刀語」の西尾維新(2002年受賞。受賞作は「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」)、「殺人鬼フジコの衝動」など“イヤミス”の女王・真梨幸子(2005年受賞。受賞作は「孤虫症」)などがいます。

孤虫症 天帝のはしたなき果実

 小路幸也は青春小説・家族小説からミステリー・SFまで多彩なエンターテインメント作品を次々と発表しています。代表作はシリーズ化された「東京バンドワゴン」で、2013年10月から12月にかけて「東京バンドワゴン〜下町大家族物語」のタイトルで日本テレビ系でテレビドラマ化されました。

東京バンドワゴン
 
 また「東京公園」は、2011年に映画化され、第64回ロカルノ国際映画祭で金豹賞(グランプリ)審査員特別賞を受賞し、第85回キネマ旬報ベスト・テンにて第7位に選ばれました。

東京公演 

 現在は北海道江別市在住で、本、音楽、映画、スポーツをこよなく愛し、スポーツでは特にサッカー好きで、地元のコンサドーレ札幌を応援しているそうです。また、70年代のTVドラマやバラエティー番組に強い郷愁を抱いており、作品にもその影響を見ることができます。

文庫版 空を見上げる古い歌を口ずさむ 

 「空を見上げる古い歌を口ずさむ」は“pulp-town fiction”シリーズの第一作で、2003年4月に講談社から単行本が刊行され、2007年5月に講談社文庫から文庫版が刊行されました。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 みんなの顔が<のっぺらぼう>に見える――。息子がそう言ったとき、僕は20年前に姿を消した兄に連絡を取った。家族みんなで暮らした懐かしいパルプ町。桜咲く<サクラバ>や六角交番、タンカス山など、あの町で起こった不思議な事件の真相を兄が語り始める。懐かしさがこみ上げるメフィスト賞受賞作!

 旭川市中心部

 凌一・美佳夫婦の一人息子彰は、小学5年生になった春のある日、急に人の顔がのっぺらぼうに見えると言い出します。すわ病院かというところで凌一は20年会っていない兄・恭一の言葉を思い出します。恭一は姿を消す直前、「いつか、お前の回りで、誰かが<のっぺらぼう>を見るようになったら呼んで欲しい」と言ったのでした。

 電話するや否やすぐにやってきた恭一は、自分も人がのっぺらぼうに見えるのだと言い、28年前の出来事、すなわち人がのっぺらぼうに見えだした頃の話を語り始めます。本書の大半は、恭一の昔話で出来ているので、事実上の主人公は恭一ですね。

旭川市パルプ町

 恭一と凌一、そしてその家族が住んでいたのはパルプ町と呼ばれる製紙工場を中心とする町でした。実際旭川市にはパルプ町という町があり、日本製紙の工場があります。本書においては大半が製紙工場職員の社宅か系列会社の職員の住舎で構成されており、床屋や銭湯は無料だったとされています。おそらく職員とその家族への福利厚生の一環だったのでしょう。

 恭一は謎の高熱で数日寝込んだ後、人の顔がのっぺらぼうに見えるようになってしまいました。知っている人なら声を聞けば誰だかわかり、写真のような画像がのっぺらぼうの顔に張り付くので識別可能ですが、知らない人はのっぺらぼうのままです。これは一体どうしたことかと思い悩みながら秘密にしていた恭一ですが、旭川市のデパートに行った時、群衆の中にはちらほらとのっぺらぼうではない人もいることを知ります。向こうも恭一のことがわかるようで、そのうちの一人のデパガは、「こちら側にようこそ」と囁きます。

日本製紙の工場 

 そうしてパルプ町では次々と奇怪な事件が発生するようになります。自殺する警官、失踪する友人、心臓麻痺で死ぬ大人達。恭一を見張っているらしいのっぺらぼうの白シャツの男(誰だか判らない)、顔は見えるけど誰だか判らない中学生くらいの少年。やがて恭一は自分が何者なのか、そして顔が見える人達が何者なのかを知ることになり、それが家族の元を去る転機をももたらすことになります。

 恭一と凌一は6歳差で、当時はわずか5歳。恭一の抱えた苦悩を知るには幼すぎ、ほとんどが初めて聞く話でした。内容紹介では“懐かしさがこみ上げる”と言っていますが、個人的にはあんまり。なにしろ旭川だし、年代も私よりだいぶ上なせいかも知れません。

旭橋 

 ちなみに人がのっぺらぼうに見えるようになった恭一が見た、ちゃんと顔がある人の一部は、ゲスモノ、マレビト、タガイモノとされます。ゲスモノは「解す者」、マレビトは「稀人」、タガイモノは「違い者」で、作中のある人物によるプロレスでの例えによると、「解す者」は日本人レスラー(つまり善玉:ベビーフェイス)、「違い者」は外人レスラー(つまり悪役:ヒール)、「稀人」はレフェリーなんだそうです。今ではそういう構図は崩壊していますが、70年代頃までは一部を除き日本人は善玉、外人は悪玉でしたね。無論外国に行けば日本人が悪玉になるんでしょうが。

 恭一は「稀人」で、強力な「違い者」を「解す者」が倒すためには「稀人」の協力が必要なんだそうです。それじゃあレフェリーを抱き込んでいるみたいですが、「違い者」の凶器や反則をしっかりチェックすれば自ずと「解す者」が勝つということでしょうか。

BI砲 

 恭一によればおそらく先祖に「稀人」の血が流れていたのだろうということで、弟の凌一にはその気配がなく安心していたが、その息子の彰に発現したということで、今後は近くに住んで教えられることは教えるということになります。これまで遠ざかっていたことについては、恭一としてはちゃんとした理由があり、本当に正しいかどうかはともかく切ないというか悲しいというか。

 なお、恭一から顔が見えるのは「解す者」と「違い者」ばかりではないようで、それ以外のタイプもいるようです。一時行方不明になっていた(「違い者」に拉致されていた)恭一の友人の「ヤスッパ」も、救出後には顔が見えるようになっており、それまでとは違い何かに変わっていましたが、「解す者」でも「違い者」でもないようです。顔が見える人は、恭一に好意的(例えばデパガ)な人もいれば、敵意や悪意を持つ者もいますが、そういう人には近づかないようにすれば向こうも何もしないのだとか。まあプロレスに例えれば、善玉や悪玉という分類以外に、格闘技色の強いU系とかショー的要素の強いお笑い系や怪奇系、さらにデスマッチ系など様々なレスラーがいますから、デパガの言う「こちら側」にもいろんなタイプがいるんでしょう。

ブッチャーとタイガージェット・シン 

 どちらかというと物事ははっきりさせたい方ですが、よくわからないまま終わってしまう朦朧法も嫌いではありません。なおのっぺらぼうに見えるかどうかはともかく、「顔を見てもその表情の識別が出来ず、誰の顔か解らず、もって個人の識別が出来なくなる症状」を相貌失認といいます。頭部損傷や脳腫瘍・血管障害などの脳障害が後天的に相貌失認を誘発する要因となるそうですが、親しい知人の顔が突然認識できなくなるという、典型的な症状は古代ギリシャ時代から確認されています。実は先天的に相貌失認を発症するケースもあり、その確率は2%程度と推定されるそうです。……結構多いですね。ただ、人間の個体識別は顔の認識だけでなく声や着衣、体格、振る舞いなど様々な情報を総合して行われているので、顔の認識に障害があっても他の機能で代償し、日常生活に支障をきたしていないため、相貌失認を自覚していない人が相当に存在するのだと考えられるそうです。実は私達も…

相貌失認の例 

千里眼 完全版:“女流ジャック・バウアー”岬美由紀八面六臂の大活劇

夏至なんですが

 昨日は全国的に夏至だった訳ですが、関東地方は大雨&強風でミニ台風といった感じでした。一番昼が長い日が曇天というのは宿命のようなものですが、せめて梅雨らしくシトシト降って欲しいものです。そういえば昨日は北陸と東北で梅雨入りが発表されましたが…まだ入ってなかったんかい(笑)。

千里眼 完全版 

 本日は松岡圭祐の「千里眼 完全版」を紹介します。千里眼シリーズは、デビュー作「催眠」から始まる催眠シリーズに続くもので、旧版「千里眼」は1999年6月に小学館から刊行されました。旧版は小学館文庫から全12巻が刊行され、一旦完結しましたが、角川文庫で再発売する際、初期作には内容に大きく手を加えて「完全版」と銘打ち、クラシックシリーズとして一部作品は新作と入れ替えて刷新しました。さらに角川文庫からはクラシックシリーズの続編の新シリーズも刊行されています。

旧版千里眼 

 千里眼シリーズは、元航空自衛官2尉でイーグルドライバー(F15のパイロット)だった経歴を持ち、今は臨床心理士となっている岬美由紀を主人公としたミステリー・エンターテインメントで、今までに累計600万部以上を売り上げる人気シリーズですが、手にしたのはこれが初めてでした。りゅ、流行を追わない漢なもので(汗)。

映画版千里眼 

 「千里眼 完全版」は2008年11月1日に角川文庫から刊行されました。旧版から10年近い歳月が流れているということで、「催眠」同様、アップデートが行われており、旧版で描かれていた「目の動きで心理を読む」という技術は科学的根拠がないとして否定しているほか、世間の“催眠術”なるものへの偏見を様々な形で否定しています。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

東京湾観音 

 房総半島の先にそびえる巨大な観音像を参拝に訪れた少女。突然倒れたその子のポケットから転げ落ちたのは、度重なるテロ行為で日本を震撼させていたあるカルト教団の教典だった…。すべてはここから始まった!元航空自衛隊の戦闘機パイロットにして、現在戦う臨床心理士岬美由紀の活躍を描く、千里眼シリーズの原点が、大幅な改稿で生まれ変わり、クラシックシリーズとして刊行開始!待望の完全版!

ジャック・バウアー 

 「催眠」シリーズに比べ、ミステリー色よりもアクション・エンターテイメント色が強い作品で、ヒロイン岬美由紀が「24」シリーズのジャック・バウアーも仰天の不死身の活躍を見せます。解説者は本作をリアリティーが高いと評していますが、むしろリアリティーを度外視して面白さを優先したように思えるのですが。

F15J.jpg 

 防衛大学校を首席卒業し、航空自衛隊に入隊して女性自衛官として初のF-15Jパイロット、イーグルドライバーとなった岬美由紀は、被災地救援や不審船追尾で命令逸脱があったことで査問にかけられましたが、上層部は優秀かつスターである美由紀の免職を好まず、代わりに上官を失職させて決着を図ろうとしましたが、美由紀はこれに反発して自衛隊を辞め、被災地で出会った「千里眼」の異名を持つ臨床心理士兼脳外科医の友里佐知子に惹かれ、臨床心理士になりました。

GSX-R1100.jpg 

 友里が院長を務める東京晴海医科大付属病院で臨床心理士として勤務を始めた美由紀ですが、折りしも日本では社会不安が増大しています。恒星天球教を名乗る謎のカルト教団が日本全国各地で爆破テロを連発させ、その実態が皆目見当も付かないという状態が続いています。

イージス艦 

 恒星天球教のテロは、在日米軍のイージス艦をジャックして高速対地ミサイルを総理官邸に向けて発射態勢にするまでに至ります。犯人は制圧したものの、目標はパスワードでロックされています。日本政府は「千里眼」である友里に一抹の望みをかけ、犯人からパスワードを読み取ることを依頼します。美由紀は友里と共に横須賀に向かい、心理学的手法を駆使してパスワードを割り出してすんでのところで発射命令をキャンセルしましたが、犯人は米兵から拳銃を奪って自殺してしまいます。

アストンマーティンDB9 

 恒星天球教は失敗も折り込み済みだったらしく、5日の猶予を与えて日本政府に“全面降伏”を要求します。美由紀の示唆もあり、警察はようやく恒星天球教の幹部一人を割り出しますが、潜伏先に踏み込んだ時、信者十数人と共に自爆してしまいます。教祖阿吽拿(アウンナ)以下、勢力も全貌も不明のままの恒星天球教。そして催眠では犯罪や自殺はできないとの美由紀の主張とは裏腹に凶悪犯罪は自決を厭わない信者達。一体どんなからくりがあるのか。

ベレッタM92 

 事件解決の契機は、美由紀がカウンセラーを担当する幼女の行動でした。なぜか早朝東京湾観音に向かう彼女が後催眠にかかっていることに気付いた美由紀は、事件の鍵が東京湾観音にあると睨み、張り込みますが…

C4爆薬 

 物語は美由紀の行動の他、官邸の官房長官、美由紀のかつての上司である航空総隊司令官らの行動を交互に織り交ぜて進んでいきます。美由紀の相棒は、美由紀こそ恒星天球教と関わりがあるのではないかと疑っている警視庁捜査一課の蒲生警部補。最初はいがみ合っていた二人がやがて協力関係になるという展開は、その後恋仲に…と言いたいところですが、スーパーレディ美由紀の相手におっさんは務まらないのでした。

東京湾観音の後ろ側 

 あまりにも意外な恒星天球教教祖阿吽拿の正体もさることながら、終盤のアクションの連続はスゴイですね。東京湾観音に仕掛けられたジャミング装置により、羽田空港に向かう航空機がミサイルと誤認され、パトリオットPAC3による迎撃準備が行われる中、なんとか装置を止めようとする美由紀と、立ちふさがる凶暴な信者のバトル。その後F15での激しい空中戦、そして銃撃によりコクピットが破壊されてパイロットが死亡した航空機に乗り移り、なんとか空港に着陸させる…

早一ヶ月か 

 これが数時間の間に連続して発生しています。イベントと度に負傷する美由紀ですが、なぜか超人敵ミッションをこなしまくっていきます。個人的には「男塾」みたいにそれぞれのイベントの間に一ヶ月位は欲しいところだと思いますが。「早いモノじゃのう…○○からもう一ヶ月か…」的なのがないと、途中でダメージの大きさにノックアウトされていそうです。いくら元自衛隊員でも強すぎる。

B777.jpg 

 催眠では犯罪や自殺は起こさせられないにも関わらず、なぜかそれを行っている信者という矛盾。実はそれを解決していたのは、いわゆるロボトミー手術でした。側頭部に穴をあけ、前頭葉を脳のその他の部分から切り離し、催眠のほか薬品も使って完全な操り人形にしていたという。

ロボトミー手術 

 ロボトミーという言葉から人を「ロボット (robot)」 のようにしてしまうという誤解がありますが、ロボトミー(lobotomy)は、肺や脳などで臓器を構成する大きな単位である「葉(lobe)」を一塊に切除することを意味する外科分野の術語です。前頭葉は、現在の行動によって生じる未来における結果の認知や、より良い行動の選択、許容され難い社会的応答の無効化と抑圧、物事の類似点や相違点の判断に関する能力や課題に基づかない長期記憶の保持といった役割も担っているほか、社会的に好ましい規範に適合するように情動を調整する機能を持っているとされ、ロボトミー手術は精神疾患を抱える患者の苦悩を軽減することに成功した場合もありましたが、副作用として感情、意思、人格の鈍化といった深刻な副作用も見られ、手術の危険性もあいまって、現在では精神医学的な療法としてはほぼ姿を消していますが、まさかカルト教団の信者作りに利用するとは。

こめかみからのロボトミー 

 オウム真理教をモデルとしたらしい恒星天球教、そして航空機を使ったテロも9.11以後は現実のものとなってしまいました。そういった意味では恐ろしいカルト教団が凶悪なテロを引き起こすと言う事態は決して夢物語とは言えないのですが、本作では美由紀以外があまりにも無能なのと、美由紀があまりにも超人なのでリアリティを感じるかといえばちょっと…。ラノベだったら丁度良かったんじゃないかと思いますが。

羽田空港

 リアリティに疑問を感じる部分その1:イージス艦に侵入した犯人を捕らえたのはいいとして、腕を前にして手錠を掛け、さらに抜きやすい状態で拳銃を持った兵士がそばをうろうろしている。銃社会のアメリカでは、警察も容疑者拘束の際には後ろ手にしているようですが、軍はしないのか。

パトリオットPAC3 

 その2:単独行動する警視庁捜査一課警部補。そしてそれをとがめる参事官。上司といえば上司だけど、警部補(主任)との間には係長(警部)とか管理官(警視)といった連中がいるはず。なぜに警視正の参事官から直接命令されたり叱られたりしているんだ。

ロボトミーカード 

 その3:ロボトミー手術を受けて教団の操り人形と化しているのに、誰にも疑問を持たれずに日常生活を送っている信者達。さすがに以前とは違うとか周囲に思われないのでしょうか。中にはカウンセラーをやっている信者まで。

DVD 千里眼 キネシクス・アイ 

 旧版の方を原作に、映画「千里眼」が2000年6月10日に公開されていますが、脚本を松岡圭祐が担当したにも関わらず、実際には使用されず、作者としては忸怩たる内容だったようです。その後監督・脚本・編集を松岡圭祐が務めた「千里眼 キネシクス・アイ」が制作されました。元は千里眼シリーズ10周年記念として同名タイトルの小説単行本にDVDを封入して期間限定発売されたものでしたが、2009年9月12日、SBS静岡放送でCGリニューアル版が放送されました。

視聴予定の2017年夏季アニメ:来季も日曜日がスーパーアニメタイムに(汗)

異方存在沙羅花

 春季アニメも最終盤となってきまして、今週あたりから最終回を迎えるていきそうです。終盤に来て驚愕の展開をぶっ込んできたのが「正解するカド」。非暴力的なファーストコンタクトものかと思いきや…まさかのバトル展開に。外務省国際交渉官の徭沙羅花、いきなりの異方存在カミングアウトに虎将仰天です。ほとんど魔法少女だ。

ヤハクィアミバ 

 革新的アイテムを次々と提供し、人類に革新をもたらしてきた異方存在・ヤハクィザシュニナですが、宇宙を繭、人類を糸に例えてきました。“只より高いものはない”もありますが、やはり無償なんてありえなかった訳ですね。でも急にヤハクィザシュニナに小物臭が漂いだしたような。「北斗の拳」で前号までトキだったのがいきなり胡散臭い目付きになってアミバと化したのを思い出します。「コウジロウ、異方はいいぞ!!」なんて。これからはヤハクィアミバと呼びましょう。

2017年夏アニメ一覧 

 まあ感想は終了後に改めて述べるとして、春季アニメが終わるとなれば夏季アニメを物色しなければなりません。春季アニメは視聴打ち切りが2本も出るなど、チョイスが上手くなかったような気もするので挽回したいところです。

サクラクエスト視聴続行 

 まず2クール展開の「サクラクエスト」は引き続き視聴続行。町おこしのためにあの手この手で奮闘する女の子5人組の話ですが、私のお気に入りはロコガール四ノ宮しおり。「しおり」というと家が隣の幼馴染みに「一緒に帰って友達に噂されると恥ずかしいし…」と平然と言い切る藤崎詩織を連想してしまいますが、こっちは明るくおっとりした世話好きな女性なのでお願いされればきっと一緒に下校してくれたことでしょう。

さゆりしおり姉妹 

 仲間からは天然系小悪魔とか年上キラーとか言われていますが、むしろ他の4人のクセが強すぎるんじゃ(千鳥風)。お姉ちゃんのさゆりも美人で、しかもCVは能登麻美子と、声まで美人姉妹。看護師なのに天然というところに危うさも感じますが、だがそれがいい。

異世界食堂 

 ここから夏季アニメですが、まず「異世界食堂」。Webサイト「小説家になろう」で連載され、書籍化された、犬塚惇平の人気が原作です。一見普通の洋食屋ながら、週に一度だけ異世界に繋がる扉がある「洋食のねこや」。訪れる様々な人々と店主、料理の一期一会を描くファンタジー作品だそうです。

異世界食堂その2 

 店主が諏訪部順一、魔族(!)のウエイトレスが上坂すみれと、実写でもいけそうなキャストですな。飯テロアニメになるかも知れません。

終物語の続編 

 「終物語」。まだ終わってなかったんかいと突っ込もうと思いましたが、そういえば前回ラストで主人公阿良々木暦が臥煙伊豆湖に殺されてた気がするので、途中も途中でしたね。

終物語下巻 

 原作の「終物語」が上中下巻の三部構成の大作で、今回は下巻分のようで、第五話「まよいヘル」、第六話「ひたぎランデブー」、第七話「おうぎダーク」が放映されるようです。じゃあいよいよ〈物語〉シリーズも完結か…と思うでしょ?なんと「続・終物語」というのがあるんです。まだまだアニメを制作できるよ!やったねシャフトちゃん!こっちは正直少々飽きてきてるんですが、ここまで見たら全部見ねばという義務感が。

地獄少女 

 お懐かしや「地獄少女 宵伽(よいのとぎ)」。2008年以来となる続編で、過去の人気話セレクション6話と新作6話の計12話で放送するそうです。第一期は見ましたが、二期の「二籠」、三期の「三鼎」は見ていないんですが…

地獄少女その2 

 久々に能登さんの少女役を聞きたくなったということもあります。死神が能登さんの声で語りかけてきたら、ためらいなく三途の川を渡ってしまいそうです。出来れば地獄じゃない方がいいけど。

捏造トラップその2 

 「捏造トラップ-NTR-」。コダマナオコ原作のマンガ作品をアニメ化したもので、初めて恋人ができた岡崎由真とその幼なじみの美少女・水科蛍、2人のカレシ持ちJKによる百合を描くそうです。連載誌が「コミック百合姫」では仕方が無い(笑)。

捏造トラップ 

 題名を見てNTRだとぅ!?と飛びついたんですが、捏造トラップを省略しただけなんですかね。でもまあ百合も好物なんでいいや。ヒロイン岡崎由真を最近お気に入りの加隈亜衣が演じますが、丹下桜系の声でエロい声を出しまくってくれることを期待したいです。そういえば「迷家-マヨイガ-」ではやたらに処刑処刑!!拷問拷問!!と騒ぐ狂気少女・らぶぽんを熱演していましたね。作品はクソアニメでしたがらぶぽんはインパクトがありました。

バチカン奇跡調査官その2 

 「バチカン奇跡調査官」、3年B組金八先生の名言…って節子それバチカンと違う、バカチンや!藤木稟のゴシックミステリー小説を原作とした作品で、カトリックの聖地・バチカンに寄せられる「奇跡」の真偽を調査し、奇跡の裏にある事件や陰謀を暴いていく奇跡調査官、天才科学者にして真理究明の申し子・平賀と古文書/暗号解読のエキスパート・ロベルトの活躍を描きます。

バチカン奇跡調査官 

 奇跡調査官は、サン・ピエトロ大聖堂の中に近代的なオフィスを持ち、世界中から寄せられた奇跡的な現象の申請に対し、真の「奇跡」として認めるかどうかの調査を行う「聖徒の座」に所属する秘密調査官ということです。キャストが見事に野郎ばかりなんですが、ミステリーならそういう作品もいいでしょう。

Fate Apocrypha 

 「Fate/Apocrypha」。TYPE-MOON作のビジュアルノベルゲーム「Fate/stay night」のスピンアウト小説で作者は東出祐一郎。Fateシリーズも色々やっていますが、“Apocrypha”は外典という意味で、本来はユダヤ教・キリスト教関係の文書の中で、聖書の正典に加えられなかった文書のことを指します。「ヨハネの黙示録」なんかは新約聖書に入っていますが、正典としての受け入れをめぐって多くの論議を呼びおこしてきたそうです。

Fate Apocrypha その2 

 第2次世界大戦前夜に行われた第三次聖杯戦争の最中、何者かに大聖杯が奪われた結果、世界中で小規模な亜種の聖杯戦争が起きているという、原作ゲームの並行世界が舞台となっています。この世界では冬木市から大聖杯が失われているため、「Fate/Zero」の第四次聖杯戦争や、「Fate/stay night」の第五次聖杯戦争は発生していません。聖杯を強奪したユグドミレニア一族と魔術協会の、7騎対7騎というかつてない規模の「聖杯大戦」が描かれるそうです。バトルロワイヤルが通常の聖杯戦争ですが、こっちは対抗戦…中二病心をくすぐりますね。

メイドインアビス
 
 「メイドインアビス」。つくしあきひとがWEBコミックサイト「コミックガンマ」で連載中のマンガが原作。果てしなく続く巨大な大穴「アビス」と、その縁に築かれた街「オース」を舞台に、母のような偉大な“探窟家”を目指す少女・リコとロボットの少年レグが繰り広げる冒険を暖かなタッチで描きます。

メイドインアビスその2 

 人類最後の秘境と呼ばれる、未だ底知れぬ巨大な縦穴「アビス」。特異な生態系を持ち、人類にとってのオーバーテクノロジーである「遺物」が数多く眠っており、深く潜れば潜るほど「遺物」も価値も高まりますが、帰路に「アビスの呪い」と呼ばれる負荷がかかり、深くなればなるほどその負荷も重くなっていくそうです。結構前評判が高い作品らしいので、取りあえず見て見ましょう。

RWBY.jpg 

 最後に「RWBY Volume 1-3: The Beginning」。「RWBY」でルビーと読みます。アメリカのRooster Teeth Productionが制作し、3DCGの硬さを感じさせないキャラクター造形、迫力のアクション、ハートフルなシナリオなどで国境を越え人気を獲得したWEBアニメ「RWBY」VOLUME1~3」の日本語吹き替え版を特別編集したものです

RWBYその2 

 人類を脅かす“グリム”に対抗する“ハンター”の養成所に通う少女が仲間たちとともに成長していく様子を描くアクション作品です。主人公ルビー・ローズのCVというか吹き替えが早見沙織で、ずばり今季のはやみん枠です。オリジナル版のキャストのほとんどは製作スタッフが声を当てていたということで、日本語吹き替え版の声優の豪華さには全米が嫉妬しているのではないかと。

セントールの悩み 

 以上継続1作+新作8作の9作品を視聴予定。この他「亜人ちゃんは語りたい」的な気がする「セントールの悩み」も気になりますが…。相変わらず日曜日はスーパーアニメタイムになってしまいそうですが、今回は視聴打ち切りがないといいなあ。

アウトサイダー 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅲ:「八神瑛子」シリーズ完結編

早見沙織のふり~すたいる♪

 先週の「早見沙織のふり~すたいる♪」を聞いていたら、はやみんが最近ビタミンBを摂っているので喉の粘膜の調子がいいと言っていました。それを聞いて奇遇だなあと思ったのは、私も最近ビタミンBの摂取を始めてたから。私は声優ではないので喉ではなく、口角炎対策でした。

口角炎 

 春先から口角炎ができまして、オロナインを塗って対抗していたんですが、なかなか治りませんでした。そもそもオロナインが効くのかという抜本的問題もありますが、外傷にはオロナインと子供の頃からマインドコントロールされているもんで。プラシーボ効果かも知れませんが一応治ったんですが、最近再発しまして。

ビタミンB群 

 またオロナインで泥沼というのも馬鹿馬鹿しいので、そもそもどうして口角炎になるのかを調べたら(ネットは偉大ですね)、ビタミンB2とB6が欠乏すると口角炎が起きやすくなるという情報が。食事から摂取するのが王道だろうとは思うのですが、普段の食事で足らないというのなら、この際サプリに頼っても良かろうと手に取ったのが。アサヒのDear-NaturaのビタミンB群。ビタミンBには、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB12、葉酸の八種類があるのでビタミンB群と呼ばれていますが、お互い助け合いながら働くのでビタミンB群は全部一緒に摂るのが望ましいらしいです。おかげで飲み始めたらあっという間に口角炎が治りましたが、30日分あるので全部摂るぞ。

アウトサイダー 

 本日は深町秋生の「アウトサイダー 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅲ」を紹介しましょう。八神瑛子シリーズは、当ブログでは第1弾「アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子」を2013年6月17日(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-404.html)、第2弾「アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅱ」を2016年4月20日(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-1287.html)に紹介しており、4年掛けて堂々完結です。作品の方は2011~2013年の2年間で完結していますが、紹介記事が倍かかってしまっているという謎仕様。

 本作は2013年6月30日に幻冬舎文庫から書き下ろしで刊行されています。刊行後ほぼ4年かかってようやく読めるとは。図書館頼みだとこんなもんでしょうかね。みんなビンボがいけないんじゃ。ぼやきはさており、例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

八神瑛子三部作 

 自殺とされた夫の死の真相に迫る警視庁上野署の八神。警察による証拠改ざんの疑いが増す中、執念で摑んだ手がかりは、新宿署の五條の存在だった。権威と暴力で闇社会を支配する五條に、八神は命を賭した闘いを仕掛ける。硝煙の彼方に追い求めた真実は見えるのか? 美しくも危険すぎる女刑事が疾走する警察小説シリーズ、壮絶なクライマックスへ。

 警視庁上野署組織犯罪対策課に勤務する警部補八神瑛子は、過去に雑誌記者だった夫を亡くし、そのショックで娘を流産しています。その原因が、夫が追っていた暴力団印旛会系高杉組会長芦尾の死と関係があると睨む八神ですが、捜査一課は自殺との判断を変えませんでした。そのため、警察組織にありながら警察組織を恨む八神は、敏腕マル暴刑事という評価の裏で、警官達に低利で金を貸して協力者に仕立て、外部でも情報提供者を多数抱えています。その全ては夫の死亡事件を殺人と断定し、その犯人や黒幕を暴くことにあり、合法非合法を問わず、あらゆる手段を駆使していきます。

深町秋生 

 上司である上野署長の富永は、八神を腐敗警官とみなして危険視し、こちらも八神の部下や元刑事を使って八神の動向を監視しています。第1作では強くて美しい八神のスーパーウーマンぶりが目立ちましたが、2作3作と続くうちに敵も強力になって、やられるシーンが多くなっていきます。今回は特に拉致や死の危険にさらされることに。

 八神瑛子は未亡人ですが、もの凄い美人という設定で、2014年8月9日にフジテレビ系で放映された「アウトバーン マル暴の女刑事・八神瑛子」(第1作が原作)では米倉涼子が演じていました。個人的イメージでは、中谷美紀とか木村佳乃あたりの方が合っている気もするのですが。

テレビドラマ版では米倉涼子が演じていた

 八神の危険を伴う探索行の傍ら、署長の富永と八神の対立という構図もあるのですが、本作では最後の最後に遂に共闘という形になります。富永も警察の腐敗を憎む心が強く、それが故に不良警官として八神を危険視して忌み嫌っていたのですが、八神が追っている敵がどうやら警察内部に存在するということを知って助けることになるのですが、やっぱり八神の美貌あってのことのような気がするのは私だけでしょうか。

 それだけ美貌なら拉致→レイプという危険もありそうなもので、実際ちょっと危険な状況になったりもするのですが、最後まで操(?)は守られました。どんなに強い女でも平然と性奴隷に堕とす西村寿行だったら大変な目に遭っているところで、それはそれで好物なんですが、まあ仮にやっちまうと、西村寿行のエピゴーネンだと言われるでしょうしね。西村版八神瑛子は妄想するだけに留めましょう。「男根様」とか「男様」とか口走っちゃう八神や、ワンパンで倒せるようなチンピラに陵辱されまくる八神…うーむ、ハードロマン。

峠に棲む鬼上下巻 

 内容紹介にあるとおり、実行犯は新宿署の五條。そのバックには元警視庁警備部長で現在は警察共済組合理事の殿山がいました。彼らが高杉組を使って財テク&マネーロンダリングを行っていたのを逆手に取って脅そうとした高杉組長は、五條に返り討ちにされて自殺に見せかけて殺され、事件を追っていた八神の夫もやはり同じく自殺を装って殺されていたのでした。

トカレフ 

 第二作目のメキシコ人の殺し屋“グラニソ”も強力な敵でしたが、五條も強い。身体的能力も極めて高い上に躊躇無く殺人を実行し、防弾ベストなどで防御もバッチリです。五條に言わせれば、理由はどうあれ警察内外に多くの手下を作っている八神は自分と同類なんだそうで、ショットガンを向けながら「組まないか」と持ちかけたりします。道下君なら「ウホッ!いい刑事」とホイホイ付いていってしまったことでしょうが…残念!八神は女だった(笑)。

組まないか 

 一応大団円ということになるのでしょうが、五條は自殺、殿山も自殺してしまい、もっといたはずのグループの全容はできていません。なおも捜査にあたって実はさらにビッグな黒幕がいたという話にもなりそうですが、物語はここで終わっています。いがみ合っていた富永署長と八神が和解できたということで、今後は共闘もスムーズに進みそうですが、実は富永署長、ツンデレなだけで実は最初から八神が好きだったんじゃないかという疑惑も。男女を問わずモテモテでいいなあ八神。仮に警察を追われても中国マフィアの劉英麗がクラブのホステスとして(ゆくゆくはパートナーとして)すぐに雇ってくれるという。

ショットガン 

 破天荒刑事を描くにしても、本作は矢月秀作の「もぐら」シリーズよりはよほどリアリティがありますが、それでも同僚刑事の拳銃を不発に細工するなど、そんなこと簡単にできないだろうというシーンはあります。そもそも「警察官等けん銃使用及び取扱い規範」なんかを見ると、刑事は拳銃なんてそんなにいつも持ち歩いていないようですし、管理は徹底されているので他人の拳銃に細工するなんてとてもとても。公務じゃないから拳銃を持たず、それでやられてしまうという方がリアルなのかも知れません。ま、嘘は嘘でも上手に嘘をついている分こちらの方がいいですな。

ドラマ版アウトバーン 

禁断の魔術:ガリレオシリーズの最終作?

野際陽子逝去

 女優の野際陽子が13日に亡くなっていたことが本日判明しました。数々のドラマに出演してきたベテラン大女優ですが、なんと81歳にもなっていたんですね。個人的にインパクトがあったのは「ガラスの仮面」の月影先生。

原作から抜け出てきたかのよう 

 今から20年前の1997年のことで、ヒロイン北島マヤは安達祐実が演じていましたが、他のキャスティングはともかく、月影先生(月影千草)の半端ない再現率には驚愕したものです。月影先生は何かというとマヤの演技に「おそろしい子……」というのですが、本当におそろしい(素晴らしい)のはあなたでした。ご冥福を心からお祈り致します。
 
禁断の魔術 文庫版 

 では本題ですが、本日は東野圭吾の「禁断の魔術」を紹介します。2015年6月10日に描き下ろしで文春文庫から刊行されました。流行を追わない(追えない)私としては最新刊の部類ですね。

 「禁断の魔術」は、もともと2012年10月15日に文藝春秋から刊行された連作短編「禁断の魔術 ガリレオ8」に収録された最終話「猛射つ(うつ)」を大幅に加筆・改稿したものです。残りの三編(「透視す(みとおす)」「曲球る(まがる)」「念波る(おくる)」は2015年3月10日発売の文春文庫「虚像の道化師」に収録されています。

禁断の魔術 単行本 

 ガリレオシリーズは1996年10月に第一作「燃える」を皮切りに長編3作、短編集5作が刊行された訳ですが、「猛射つ(うつ)」を長編化した本作が4作目の長編にしてシリーズ最終作になる可能性があります。東野圭吾は本書の公式HPで“この物語では、湯川に試練を与えようと思いました。私の頭に浮かんだのは、「もし自分のせいで殺人犯になりそうな人間がいたら、湯川はどんなふうに苦しみ、どうやって責任を取るだろう」というアイデアでした。(中略)クライマックスで湯川がとる行動には、きっと多くの方が驚かれることだろうと思います。”と言っていますが、湯川の行動はまさに最終回的というか、一歩間違えれば本当に最終回にせざるを得ないものでした。

 また“ガリレオのことは当分考えたくありません。”とも言っており、最後かどうかはともかく、当面は書かないような雰囲気です。まあその間、加賀恭一郎シリーズをやってくれれば個人的にはそれはそれで結構なんですけどね。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

禁断の魔術 コシマキ

 高校の物理研究会で湯川の後輩にあたる古芝伸吾は、育ての親だった姉が亡くなって帝都大を中退し町工場で働いていた。ある日、フリーライターが殺された。彼は代議士の大賀を追っており、また大賀の担当の新聞記者が伸吾の姉だったことが判明する。伸吾が失踪し、湯川は伸吾のある“企み”に気づくが…。シリーズ最高傑作

 進学校である統和高校の物理研究会は部員ゼロの危機に陥っていました。最後の部員古芝伸吾は、支援要請を快く引き受けた湯川の指導により、あっと驚くパフォーマンスで新入生から部員を獲得することに成功し、部活消滅の危機を乗り越えます。

公式HPの煽り文 

 一年後、古芝は帝都大学に入学し、湯川に挨拶に来ました。湯川も古芝を飲み込みの良い後輩として目を掛けており、二人の交流はこれからもっと本格化するのか思われましたが…。小芝の両親は既に亡く、新聞記者をしている姉が保護者となっていましたが、なんと小芝の帝都大入学直後に急死してしまったのです。

 小芝は帝都大を中退し、足立区梅島(自慢じゃないですが、西新井に長く住んだ私には土地勘がありますよ)の金属加工の町工場で働き始めます。保護者が誰もいなくなった以上仕方ないじゃないかと思われますが、実は姉の尽力で結構な奨学金を得ており、勉学を続ければ続けられたのです。それでも中退を選んだ意味は…

子宮外妊娠 

 小芝の姉・秋穂の死因は子宮外妊娠による卵管破裂でのショック死。つまり殺人事件とかではなかったのですが、政治記者だった秋穂は担当であった大物代議士大賀仁策と深い仲だったことが判明。その日もホテルで密会していたはずなのですが、秋穂の異変をフロントに知らせるわけでもなく、救急車を呼ぶでもなく放置して逃げ出した模様。小芝の狙いは姉の復讐なのか。

 一方、大賀の地元・光原市では、大賀のお声掛かりで「スーパー・テクノポリス計画」が推進中。環境破壊などになり地元では反対運動が起こっていますが、そんな中、反対派の有力メンバーで大賀仁策のスキャンダルを追っていたフリーライターの長岡が殺害されるという事件が発生します。現場に残されたメモリーの映像は、不思議な爆発シーンでした。

学園都市 

 これは小芝が高校時代にパフォーマンスで行った「レールガン」の実験と同じものなのではないか。また屋形船の窓が突然破壊されて火災が発生したり、倉庫の壁に孔が空いたり、オートバイのガソリンタンクが突然火を吹いたりという怪事件も頻発。小芝は復讐のためレールガンで大賀を狙っているのか?

 今回湯川は最初から警察には非協力的です。ギリギリ嘘は言わないまでも、知っていることを積極的に語ったりはしません。そもそも直木賞受賞作「容疑者Xの献身」以降、湯川は警察に批判的になっており、正義感が強く真相究明に全力を注ぐ内海薫という女性刑事が登場したおかげでなんとか繋ぎ止めている状況でしたが、今回は愛弟子が容疑者ということになっているのでなおさらなのでしょう。

悪代官的悪徳代議士 

 今回「へぇ~」と思ったのは、普通の作家なら“絶対悪”として描いてもおかしくない大賀サイドの状況についても触れている点でしょう。秋穂も深い仲になるにあたってはそれなりの接触があった訳で、まあ男女の関係というものは、肉親、つまり弟であっても計り知れない部分があるということでしょう。が、大賀には弁解する機会も意思もないわけで、小芝が復讐に突っ走っても仕方がないとも言えます。

 そして最後の最後。大賀を射程に捉えたレールガンのコントロールを奪った湯川は、小芝に「もし撃てというのなら私が撃つ」と言い放ちます。遠距離射撃なので当たるかどうかはわかりませんが、当たれば殺人、当たらなくても殺人未遂は免れないところ。そして湯川を守る構えの薫。ここは旧友草薙も拳銃を引き抜いて欲しかった。薫も湯川も射殺するも、湯川のレールガンも大賀を殺害するなんてバッドエンドもありの展開はゾクゾクします。

フレミングの左手の法則 

 ところで復讐というか犯行に使われるレールガンですが、フレミングの左手の法則により、電磁誘導を利用して物体を加速して打ち出す装置です。原理的には古くから知られており、SFやゲームなどに幅広く登場しています。太平洋戦争中には日本でも研究されていたようです。

ウォーシップガンナー2 鋼鉄の咆哮 

 大好きな馬鹿ゲー「ウォーシップガンナー2 鋼鉄の咆哮」でも登場しました。画像の細長いのがレールガンです。ただ、発射シーンなどが他の超兵器(レーザー、荷電粒子砲、光子魚雷、波動砲などなど)に比べて地味で、威力のほどがよくわからなかったので、私はあまり使いませんでしたが。

ウォーシップガンナー2のレールガン 

 レールガンのメリットとしては次のようなものがあります。
① 初速・射程を調整可能(弾体をどれだけの速度で打ち出すかは掛ける電力次第)
② 長射程(米海軍の艦載レールガンの計画射程は300~500km以上)
③ 超高速の発射速度(理論上は光速まで。実際は現状で秒速8キロ程度。戦車砲で秒速2キロ弱なので4倍以上の速度)

レールガンの原理 

 デメリットとしては以下のようなものが。
① 大電力が必要
② 異常な発熱(加速が桁違いのため。冷却できるまで次弾発射不能)
③ レールが消耗(定期的に要交換。まあ通常の砲身も要交換ですが、頻度はもっと高い)

現実のレールガン 

 米海軍は近い未来に本気でレールガンを艦載仕様で実用化しようとしているとみられ、もし実用化が可能になると、既存のミサイルシステムに比べ大幅に安価に、対空防御や弾道ミサイル、巡航ミサイルからの防衛が可能になると見られます。最新鋭のズムウォルト級ミサイル駆逐艦にレールガンを装備すれば、大規模な空母打撃群が必要なくなったりして。

映画の中のレールガン 

 よーし日本も負けずに…と言いたいところですが、平成27年度概算要求で「艦載電磁加速砲の基礎技術に関する研究」を記載している段階で、米国とは比較にならない段階のような。アニメ世界では「超電磁砲(レールガン)」の通り名を持つ御坂美琴がいるんですけどねえ。この人をクローンで量産すれば…って原作でやってましたね(噛ませ犬でしたが)。

一番役に立ちそうなレールガン 

 あとレールガンを直訳して「列車砲」としないこと。これならドイツが昔使いましたけど、ドーラのようにどんなに大きくても通常の火砲ですから。なお、ロマン砲(絶大な威力や効果が期待されるものの、事前準備が非現実的だったり使用した際のデメリットがあまりにも大きなもの)といわれる根拠の一つとして、第二次大戦後に列車砲を調査した連合軍の「技術的には驚異的だが、戦術的には失敗策だ」「列車砲に注がれた資金、資材、技術者、兵員を爆撃機の開発に回していれば大きな脅威になったが、列車砲に回されたおかげで連合軍には有利に働いた」という評価があります。

列車砲ドーラ 

艦隊これくしょん-艦これ-(その8):プレイ開始して一周年です

紫陽花の群落

 昨日は30度超えした筑波嶺ですが、本日は最高気温26度。明日からは結構低温みたいですが、なかなか雨予報が出てきません。やはり空梅雨なんでしょうか。紫陽花は色づきつつあるんですけどね。

艦これその8 

 本日はプレイ開始一周年を迎えた艦これの話題です。4月末にその7をやったばかりですが、イベントがあったりしたせいで、わりと短期の間に新たな艦娘が増えたので紹介したいと思います。

谷風 

 駆逐艦谷風。陽炎型駆逐艦の14番艦です。絵でも判るとおり、初期装備で爆雷を持っている珍しい娘です。勲章目当てで毎月トライしてはバケツ(高速修復材)を浪費している3-5でボスにS勝利したらやって来ました。この娘は3-5と4-5でしかドロップしないレアキャラです。

国後 

 海防艦国後。占守型海防艦の2番艦です。海防艦は2017年春イベントで実装された新艦種で、占守、択捉とともに三隻登場したのですが、ゲットしたのはこの娘だけ。海防艦は駆逐艦より小型で魚雷、缶、タービン、探照灯、照明弾、ドラム缶を装備できず、低速で雷撃戦もできません。 

国後改 

 燃費の良さだけが売りかと思いきや、潜水艦には非常に強く、先制対潜攻撃をバリバリやってくれます。元々海防艦は旧式化した軍艦の総称で、1万トン級の戦艦クラスから、千トン未満の小型艦に至るまで、多岐に渡りますが、太平洋戦争突入後の1942年に海防艦の定義を大幅に変更し、船団護衛等のシーレーン防衛や沿岸警備を主任務とする小型戦闘艦を海防艦と呼ぶようになりました。

軍艦の分類 

 旧帝国海軍では、駆逐艦や潜水艦は軍艦扱いされず、「その他艦艇」扱いで、そのため菊花紋章が艦首に付いていませんが、国後など海防艦は1942年の定義変更までは軍艦で、軍艦籍を離れて菊花紋を取り外した後も、艦内規律の気風などは軍艦然としていたそうです。

朝雲 

 駆逐艦朝雲。朝潮型駆逐艦の5番艦です。山雲と共にほっちゃんこと堀江由衣がCVを務める艦娘です。本来姉の朝雲の方が先に登場したのですが、我が艦隊への加入は山雲の方が先でした。制服といい容姿といい、ガチロリとの定評がある朝潮型ですが、朝雲はすらりとした手足と長身で垢抜けた印象があります。

春日丸 

 軽空母春日丸。2017年春イベントで第三作戦海域クリア報酬として実装された艦娘です。搭載スロットが2つしかないなど、軽空母としては極めて低性能で、なにが報酬だと思ったのですが…

大鷹 

 LV30で大鷹に改名。スロット数が3に増え、既存の軽空母とは性格が異なる対潜護衛空母となります。なんと空母なのに先制対潜攻撃が行えるという。国後と共に対潜攻撃のプロ登場で、1-5は任せましょう。 

瑞穂型 

 水上機母艦瑞穂。大鳳を狙って大型艦建造を行ったらやって来た言わば“ハズレ”艦娘ですが、持ってなかったので全く問題なしでした。水上機母艦としては“ちとちよ姉妹”こと千歳・千代田がいますが、改造すると軽空母にクラスチェンジするちとちよとは違って瑞穂は改造しても最後まで水母のままです。反面、最終的なステータスや艦載機搭載数はちとちよよりも高めになっています。大和撫子風のルックスが可憐でいいですね。

大鳳 

 装甲空母大鳳。あまりの喜びで入手直後にブログに書いてしまいましたが、大型艦建造で遂にお迎えした装甲空母です。艦娘初の装甲空母で、他の空母と違って中破状態でも艦載機を飛ばすことができるのが最大の特長です。 

大鳳改 

 既に大鳳改に改装済みですが、艦載機数が86機と加賀改の98機に次ぐ第二位になっています。鋭意育成中で、早く主力艦隊のレベル(現在LV90)に追いつかせようとしています。悲劇の空母という史実の影響で運が極端に低く、まさかの2。改になってもたったの4。ということで運は全く期待できないので、純粋な実力でのし上がっていって欲しいです。

江風 

 駆逐艦江風。白露型駆逐艦の9番艦です。「かわかぜ」と読みます。2-5でドロップしました。中大破すると「なろー、やられたぁ」と言いますが、空耳で「まろーん」と聞こえるので通称「まろーん」。転じて作戦行動中の艦娘の誰かが大破して艦隊が撤退することを「まろーんする」と言ったりします。CVは瑞穂と同じ石上静香ですが、おしとやかな瑞穂に対して江風はチャキチャキしています。

長門改二 

 それから新規入手ではありませんが、最近改二にした艦娘について。まず長門改二。5月22日のメンテナンス&アップデートで実装されましたが、改装レベル88に達していたので早速改装しましたが、弾薬8800・鋼材9200と膨大な資源量を必要とし、おまけに改装設計図も必要でした。その甲斐あって火力・装甲は大和型に次ぐ全戦艦中第3位になりました。ますます大和型がいらなくなってきたような。

皐月改二 

 皐月改二。睦月型駆逐艦の5番艦です。先制対潜と対空カットインが両立できる上、耐久・装甲・回避が高く生存能力に長けるというマルチタレントです。そのせいか改造レベルは75と、駆逐艦としてはやたら高かった…

朝潮改二 

 朝潮改二。真面目可愛いで有名な朝潮型駆逐艦のネームシップです。どう見てもいいとこの私立小学校に行ってそうな容姿です。改装レベルは70でしたが、レベル85でさらに改二丁への改装が可能となるので、なおレベルを上げていかなければなりません。

暁響霞 

 駆逐艦も任務をクリアするためには改二にしていかなければなりませんが、改二になると軒並みルックスが良くなるのが楽しみです。今後も暁、響、霞あたりを改二に育成したいと思っています 

催眠 完全版:ショーやオカルトではない“科学的”な催眠とは

チューチュー明里ちゃん

 空梅雨の予感ひしひしですね。梅雨入り宣言以降全然雨降らないし、今日は「アツゥイ!」し。リアル明里ちゃんも思わずプリキュア系ゼリーをちゅうちゅう。リアル明里パパによると、最近保育園で下ネタ系単語を覚えてきてしまっているそうな。いかん、いかんぞ。明里が下ネタ全開だと貴樹がドン引きしちゃいますよ。

催眠 完全版 

 本日は松岡圭祐の「催眠 完全版」を紹介しましょう。松岡圭祐の作品を読んだのはこれが初めてです。いい歳のおっさんになっても“初めて”があるのは素敵なことなのか未熟の証しなのか…。まずは例によって作者紹介から

松岡圭祐 

 松岡圭祐は1968年12月3日生まれで愛知県出身です。実はプロフィールに関する情報が少なく、学歴とかは不明ですが、元臨床心理士なので大学で心理学を学んだのでしょう。1997年10月に「催眠」で作家デビューし、いきなりミリオンセラーとなり、シリーズ化されて映画化・テレビドラマ化もされました。「催眠」は「本の雑誌」で1997年国内ミステリの4位に選定されています。

千里眼 完全版 

 以後、「千里眼」シリーズ、「マジシャン」シリーズ、「探偵の探偵」シリーズ、「Q(万能鑑定士Q)」シリーズと立て続けにヒットシリーズを放っています。残念ながら大きな文芸賞とはノミネート段階でまだ縁がないようです。

探偵の探偵 

 作家になる前は、臨床心理士だった他、催眠術師としてテレビにも出演していたようです。学術的な催眠誘導法の他、エンターテイメント性が強いショー用の舞台催眠術(テレビ番組でよく見るアレですね)を学んでいた事で業界から声がかかったそうで、1990年代の後半に芸能事務所と契約し、催眠術師としてのキャラクターで活動していたそうで、フジテレビ系の深夜番組「A女E女」などに出演していたそうです。

A女E女 

 この番組は同時間帯にテレビ東京で放送されてヒットしていた「ギルガメッシュないと」に対抗するもので、「日本一のお下劣バラエティー」を謳って、松岡圭祐がAV女優や売れないモデルたちに催眠術をかけて太鼓や木魚などの音を聞かせて悶させていたそうです。しかし、1997年度の民放深夜番組で最高視聴率を記録したものの、「あまりにも低俗すぎる」との批判を浴び短命番組に終わったとか。私は至極真面目なタイプなので(笑)、一度も見たことないんですが。

若い頃の松岡圭祐 

 番組開始時、既に松岡圭祐は「催眠」を出版していた訳で、テレビ番組誌では「テレビで催眠なんてバカらしい。そういう質のものではない。徹底的にバカをやってこの手の番組を鼻で笑えるようにしたい」と表明していたとこのとで、確信犯的に出演していたようです。また、他番組でも「催眠が人を意のままに操るというのは幻想で、ショーはその思い込みを利用して見せるもの」という趣旨の発言をしています。

催眠 

 今回読んだのは「催眠 完全版」で、これは2008年1月に刊行されています。「催眠」は作者に言わせれば、学術的な正しさに徹する作風ではなかったのだそうです。これはまだ臨床心理士という職業というか資格がまだ定着していなかったことなどによりますが、その後定着してきたことや、心理学や脳医学が発展して世間一般もオカルト的な催眠術というものに囚われなくなったことから、リアリティと現代性を念頭に全面的改稿を行ったのが「催眠 完全版」なのだそうです。

永遠の仔 

 このため旧版「催眠」で描かれていた「目の動きで心理を読む」という技術の原理(つまり視線をどこに向けているかで心理が読めるという)は科学的根拠がないとして「完全版」では否定しています。また天童荒太の「永遠の仔」などで描かれている子供時代の抑圧されたトラウマが引き起こす犯罪というものも否定しています。「永遠の仔」が1999年作品なので「あれ?本作の後の作品じゃん」と思ったのですが、「完全版」での改稿によるものだったのですね。「永遠の仔」、ずいぶん前に宮部みゆきの「模倣犯」と一緒に外国暮らしの頃に読みました。でも外国暮らしをしていたせいか(なぜ)、どちらもあまり感銘を受けなかったんですよね…。宮部みゆきはその後色々読んでますが、天童荒太はあれ以来縁がありませんね。

永遠の仔のワンシーン 

 そもそも単行本の文庫化の際には数十ページ単位の加筆や大幅な改稿がなされたり、別シリーズの人物同士を登場させるなどしており、読者を飽きさせない工夫をしてきた人ですが、「催眠」シリーズや「千里眼」シリーズについては大幅改稿した「完全版」を角川文庫から刊行しており、これを一連のシリーズ正史としています。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

ショーの催眠術 

 インチキ催眠術師の前に現れた不気味な女性。突然大声で笑い出しては、自分は宇宙人だと叫ぶ彼女が見せる予知能力は話題となり、日本中のメディアが殺到した。その頃、2億円もの横領事件の捜査線上には、ある女性が浮かび上がっていた。臨床心理士・嵯峨敏也が、催眠療法を駆使して見抜いた真実とは?衝撃のどんでん返しの後に感動が押し寄せる、松岡ワールドの原点が、最新の科学理論を盛り込んで完全版となって登場! 

臨床心理士になるには 

 本作では主人公である嵯峨敏也(東京カウンセリング心理センター催眠療法科長)、その後輩の小宮愛子、そして二人の上司にあたる室長の倉石勝正の三人の臨床心理士が登場し、それぞれ解決すべき問題を抱えて対応していく様子が描かれます。嵯峨は上記のインチキ催眠術師がスカウトした“自称宇宙人”の入絵裕香が解離性人格障害(いわゆる多重人格)を抱えていると睨み、彼女を救おうと奔走。小宮愛子は場面緘黙症の小学生竹下みきを、そして倉石室長は、別れた妻・脳外科医の根岸知可子と、彼女が手術した女性患者(手術は成功したものの、顔面麻痺などが現れ、手術の失敗が疑われる)を救おうとします。

ベタな催眠術アイテム 

 最も厄介なのはやはり入絵裕香のケースで、多重人格である他、以前務めていた証券会社で発生した2億円もの横領事件の重要参考人(ほぼ容疑者扱い)を受けています。また、インチキ催眠術師実相寺も入り絵裕香を金づると思っており、ことごとく嵯峨とぶつかります。臨床心理士といっても民間資格で特別な権限は一切ない中、本人からの依頼も受けずにまっすぐに警察にぶつかっていく嵯峨。カッコイイけど、組織の長としてはトラブルメーカーとしてクビにしたくなるかも知れません。

カウンセリング中の臨床心理士 

 催眠に関する世間一般の知識は大きく変わったということですが、本書を読んで改めて「へぇー」と思ったのは、催眠術というのは相手を意のままに操れるようなものではなく、電車の中でのうたた寝がほぼ催眠状態だということ。降りるべき駅ではっとなって慌てて駆け降りるとうことは誰でも経験すると思いますが、つまり催眠状態というものは状況によって簡単に解除できるもので、術者が説かなければずっと催眠状態が続くというものではないのです。

パチンコ屋の中 

 ただ催眠状態にあると、暗示にかかりやすくなるのは事実のようで、それを応用(悪用)しているのがパチンコ業界なんだそうです。あの音と光で催眠状態にしてパチンコを打たせ、時間の経過や投入した金額をおぼろげにしてしまうだけでなく、常習性まで持たせてしまうという。

昔のパチンコ屋 

 私自身はパチンコは数えるほどしかやったことがなく、負けっ放しだしタバコで煙いしで二度と行かないなあと思っていますが、最近のパチンコ屋はだいぶ様相を異にしているんですねえ。よく夏の乗用車内に子供を置き去りにしてパチンコに熱中して子供が大変な事態にというニュースを耳にしますが、「だからパチンカスは」としか思っていませんでしたが、そういう罠があったんですね。

悪魔ッ子 

 かつて「ウルトラマン」の前番組に「ウルトラQ」というのがあって、「悪魔ッ子」というシリーズ屈指のホラー回として名高いエピソードがありました。シリーズ屈指のホラー回として名高い催眠術で幽体離脱の芸を披露していた魔術団の少女リリーが、催眠術かけ過ぎの影響でシナプス(神経細胞間や多種細胞間の信号を伝達する部位)の破壊現象が起こり、毎晩精神のみがさ迷い出て、数々の災厄を引き起こします。

分裂したリリー 

 リリーの精神はリリー本人の意思とは関係なく深夜にさまようようになり、最後には自らの肉体をも抹殺しようとして線路に誘います。まああわやという所で助かるのですが…。なにしろ50年以上前の作品なんですが、娯楽が少ない時代とはいえ、視聴率31%超えだったという。このエピソードなんかは松岡圭祐のような催眠のプロからすれば噴飯物なんでしょうが、当時の視聴者が催眠術を恐ろしいものだと誤解してしまうには十分なインパクトがあったと思われます。

 解離性同一性障害のイメージ

 そしてダニエル・キイスの「五番目のサリー」や「24人のビリー・ミリガン」で知られるようになった解離性同一性障害については、心因性の障害で、ほとんどの場合で幼児期から児童期に強い精神的ストレスを受けているとされます。入絵裕香はアラサーの女性ですが、人格交代の甚だしさはここ数年によるもののようです。嵯峨達の尽力により辿り着いた真相は、彼女を食い物にしようとするかなり酷いものでしたが、嵯峨達には真犯人とおぼしき人物を逮捕することもできません。しかし、入絵裕香が犯人ではないことを証明すれば、警察も馬鹿ではないので再捜査により真相に辿り着くことでしょう。入絵裕香の症状が軽減して記憶が戻ればなおさらです。

五番目のサリー
 
 そしてその希望はあります。嵯峨は入絵裕香の症状は完全に治ることはないと言っていますが、ラストの驚愕のどんでん返し(「時計館の殺人」以来、久々に驚きました)結末は、決して暗いものではないからです。これは旧版とは全然違うラストだそうですが、おそらくこちらの方が良いラストなんではないかと思います。

24人のビリー・ミリガン

 なお、解離性人格障害のゴールは、以前であれば人格の「統合」でしたが、最近はあまり言われなくなっています。分離した人格が生じるには生じるだけの理由があり、記憶や意識を分離し、解離することによって、ギリギリで心の安定を保ってきたので、むやみに「統合」を焦るとその安定が崩れかねないのだそうです。そういう意味で、嵯峨は完全には治らないと言ったのでしょう。

多重人格のイメージ 

 嵯峨が組織人としてはかなり逸脱していて、この人はフリーランスの方が性に合っているのではないかという気もしますが、全ては入絵裕香を救いたいという純粋な動機からのものなので、刑事たちも苦笑いしつつ大目に見ているというところがいいですね。

映画版催眠 

 1999年の映画版の「催眠」は稲垣吾郎主演で菅野美穂が入絵裕香を演じましたが、理知的な原作と異なり、異常な事件が起こるサスペンスホラー映画として製作されたそうです。また続編として2000年にTBSでテレビドラマ版が放送されています。原作との差違については、松岡圭祐自身が「世にも奇妙な物語」風アレンジによるホラー方向を目指していたらしいので、特に問題はないのですが。

映画 千里眼 

 その後の「千里眼」の映画化(2000年)については、脚本を松岡圭祐が書いたにも関わらず、大幅に違う作品になってしまったということで、かなり不満があるのではないかと囁かれています。

検察捜査:現役弁護士が書いた江戸川乱歩賞受賞作

梅雨入りですと

 本日気象庁が四国、中国、近畿、東海、関東甲信地方が「梅雨入りしたとみられる」と発表しました。九州沖縄地方だけだったのに一気に来ましたね。なんかやっつけ仕事のような気がしないでもないですが、梅雨来たりなば、夏遠からじ。この梅雨寒天気を懐かしむ日がもうすぐそこに来ているのですね。

検察捜査 

 本日は中嶋博行の「検察捜査」を紹介しましょう。中嶋博行の本は初めて読みました。

中嶋博行 

 中嶋博行は1954年9月12日生まれで茨城県筑西市出身。早稲田大学法学部卒業後、1985年に司法試験に合格し、横浜に弁護士事務所を開業しました。1994年に「検察官の証言」で第40回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビューしました。

検察捜査新版

 弁護士と作家の「二足の草鞋」を履く異色の作家…と思ったら、大平光代、和久俊三、佐賀潜と結構居るみたいですね。「リーガル・サスペンス」と題し、弁護士としての専門知識を生かした推理小説が特徴でとなっています

ホカベン 

 犯罪被害者の支援活動にも尽力しており、新米弁護士が犯罪に立ち向かう「ホカベン」というマンガの原作も行っています。マンガでは主人公は男性弁護士ですが、テレビドラマでは女性弁護士に変更されて上戸彩主演で2008年に日本テレビ系でテレビドラマになっています。なっていますが…視聴率的はあまり振るわなかったようです。

ホカベン ドラマ版 

 また、遊戯銃への造詣が深く「トイガン文化を守る会」代表、日本遊戯銃協同組合ソフトエアガン安全会議常務理事を務めています。ちなみに直接関係ありませんが、最近引退を撤回した「巨匠」宮崎駿はかつて「鉄砲オタクっているのが一番嫌いなんですよ。はっきり言いますけど、ああいうのはレベルが低いと思っているんですよね。鉄砲の中でも、ピストルのマニアっていうのは一番レベルが低いんです。一番幼児性を残してるんです(笑)。」と言っています。

宮崎駿の主張 

 ああそうか、だから「ルパン三世 カリオストロの城」ではピストルが活躍しないんですね。次元のコンバットマグナム(S&W M19)はカリオストロ公国の暗殺部隊・カゲに全く通用せず(代わりに対戦車ライフルで対抗)、ルパンのワルサーP38なんか使う間もなくレーザーで溶かされてしまってました。だけど宮崎駿の言っているピストルマニアが“一番レベルが低い”とか“一番幼児性を残している”というのはちょっと意味が理解できない主張ですね。銃オタクよりも戦車オタクや戦闘機オタクの方が高尚とか(笑)。オタクじゃない人から見れば五十歩百歩じゃないかと。

次元の対戦車ライフル 

 おっと話が逸れてしまいました。「検察捜査」は、受賞作「検察官の証言」を改題して同年9月に講談社から刊行され、文庫版は1997年7月15日に講談社文庫から刊行されています。黒木瞳主演で1995年に「検察捜査 知られざる強制捜査の裏側」と題してフジテレビ系で単発ドラマとして放映されたそうですが…が、画像がない(汗)。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 横浜の閑静な高級住宅街で、大物弁護士・西垣文雄が惨殺された。横浜地検の美人検察官・岩崎紀美子は、捜査を進めるほど、事件の裏に大きな闇を感じる。日弁連と検察庁、警察庁そして県警の確執……。現役弁護士作家が法曹界のタブーを鋭くえぐった、第40回江戸川乱歩賞受賞の傑作リーガル・サスペンス!

弁護士会館 

 日弁連会長候補として出馬が噂され、内閣法制局の法制審議会委員も務める大物弁護士が、横浜市の自宅で拷問を受けたとしか思えない無残な姿で殺害されているのが発見されます。任官2年目の美人女性検事・岩崎紀美子が捜査担当を命じられますが、それはたまたま彼女だけがヒマだったからという。

 実は検察庁では検事の定員割れが深刻化し、若手検事でプロジェクトチームを作って司法修習生のリクルートを行ったのですが、結果は惨憺たるものでした。紀美子の戦果は堂々のゼロ。関東甲信越地方の地検の元締めである東京高検で油を絞られた直後のことです。

横浜地検 

 捜査といっても部下は検察事務官の伊藤ただ一人。捜査への介入を嫌う神奈川県警は非協力的です。殺害状況から怨恨ではないかと睨んだ紀美子は、警察と同じ事は出来ないと言うことで、西垣の過去の裁判記録を調べることにします。過去五年でも500件はあるというファイルを一つずつひっくり返すという根気のいる仕事です。

 しかしその甲斐あって、西垣が被告となった民事裁判の記録を発見します。さらには懲戒請求も受けていたという。日弁連もいつくかの派閥に別れており、会長選挙を巡っては水面下で暗闘があるようで、どうやら西垣は自分の派閥の中で反乱が起きていた模様。

裁判所合同庁舎 

 そうなると西垣の旧腹心で今や次期会長の最右翼となった宮島を取り調べる必要がでてきましたが、日弁連を真っ向敵に回すのということには、向こう見ずの紀美子もさすがにたじろぎます。それでも地検のナンバー2である首席検事に申請を行いますが、なぜか首席検事は雲隠れ。そうこうしている内に、なんと東京地検が弁護士会館の家宅捜索を行い、紀美子の手から事件をかっさらってしまいます。

 どういうことだオイと首席検事に詰め寄る紀美子ですが、首席検事は事件は君の手を離れたと言うばかり。そして紀美子は、日弁連のみならず、検察庁の中にも派閥があることに気が付きます。検察官不足を一気に打開するべく、検察至上主義者が取った驚くべき手段とは?そして紀美子にも魔の手が迫ります。

法務合同庁舎 

 本作では殺人の実行者が誰かということはあまり問題ではありません。真性ドSのプロの犯行なので。そのプロを操っているのは誰かということが問題なのですが…本作では作者が弁護士のせいか、検事に思いっきり泥を被せてしまいましたな。

 法曹界の闇を描くという意味では、現職の弁護士というのは実にぴったりなんですが、「この作品はフィクションであり…」という例のお約束があればたいてい大丈夫じゃないかと思うところ、作者はさらに用心深くなっているようです。そのせいでリアリティーが損なわれているように感じる部分が。例えば…

検察庁 

 その①:東京高検に司法部というセクションがある。総務部、刑事部、公安部、公判部はわかります。主要地検には特別捜査部(特捜部)とか特別刑事部というのもありますね。でも…司法部というのはどこにもありません。一体何をやってるセクションなんだこれ。法務省は戦前は司法省といいましたが、戦後司法権といえば最高裁を頂点とする裁判所ですよね。検察庁が司法部なんてセクション作ったら大問題になりそうです。

 その②:横浜地検で紀美子は首席検事の指揮を受けます。首席検事って…?地検、すなわち地方検察庁のトップは検事正で、ナンバー2は次席検事です。弁護士なんだからうっかりミスという訳でもないでしょうが、架空のポストを作らないとヤバイと思ったんですかね。

検察官バッジ 

 その③:東京高検と横浜地検なら、組織上の上下関係でいえば当然東京高検>横浜地検です。トップ同士、つまり東京高検検事長と横浜地検検事正ならこれももちろん東京高検検事長>と横浜地検検事正なんでしょうが、それ以外の役職だとどうなんでしょうか。すなわち、東京高検の部長クラスと横浜地検の次席検事(作中では首席検事ですが)だと、一方的に東京高検部長>横浜地検次席になるのかどうか。ましてや東京高検の部長の部下である次長が横浜地検の次席検事に一方的に指揮命令しているようなのですが、それって組織構造的に正しいのでしょうかね。「作中世界では」と言われればそれまでなんですが。

 あと、ヒロイン紀美子のキャラ立ちがイマイチのような。切れ者なんだか猪突猛進なんだかはっきりしません。どっちかにハッキリさせた方が良かったかも。それから事務官の伊藤を自宅に泊めたりして、ただならぬ仲のような気配も感じたりしますが、こっちもなんだかよくわかりません。仕事と恋愛は切り離すタイプの方が個人的には好きですが。

弁護士バッジ 
 

 また、紀美子の相方的存在となる、神奈川県警の郡司刑事はいい味出しています。最初は米山係長という警部が出てきましたが、紀美子の相手を嫌ったようで郡司刑事に役目を押しつけたかのようです。それはともかく、一介の平刑事(もしかすると警部補くらいになっているかも知れないけど、「刑事」では巡査だってありえます)に検事の相手をさせるというのが組織として「あり」なのかなあ。それに郡司はいつも一人で登場し、しかも紀美子との情報交換によって独自の捜査も行うのですが、警察小説では捜査は二人一組が常識となっているのでやや不自然な観が

神奈川県警

 リーガルサスペンスという異色の作風は評価できますが、私が読んだ江戸川乱歩賞受賞作品、東野圭吾の「放課後」(第31回)、桐生夏生の「顔に降りかかる雨」(第39回)、藤原伊織の「テロリストのパラソル」(第41回)、野沢尚の「破線のマリス」(第43回)、池井戸潤の「果つる底なき」(第44回)なんかに比べるとミステリーとしてのストーリー展開やキャラ造詣などがいまいちな気がしました。

江戸川乱歩賞 

 本作が書かれてから23年が経過しましたが、作中デスマーチ状態となっていた検事不足は、最近ではあまり聞きませんね。司法試験制度の改革で合格者が増えたからでしょうか。弁護士も東京のような大都市圏では過剰となり、仕事の奪い合いみたいになっているようで、弁護士や医師は高額所得者というイメージも変わりつつあるのかも知れません。反面過疎地には弁護士や医師がいないということも往々にしてあるようですが、お金のためだけではないでしょうけど、お金が全然稼げそうにない地域であえて開業というのもなかなかに決断出来ないことでしょうね。

好きな声優さん第5期(その6):中村悠一~姿も声もイケメン声優

6月の晴天

 6月というのにいい天気です。まあ関東地方は梅雨入りは平均8日頃らしいのですが、実は空(カラ)梅雨だったりして。雨ばかり降っても憂鬱ですが、空梅雨も渇水で困ったことに。何事もほどほどがよろしいようで。

中村悠一その1 

 本日は4月ぶりに「好きな声優さん」です。前回杉田智和を紹介したので、そのマブダチである中村悠一も紹介せずにはいられませんな。杉田智和がはやみんこと早見沙織を好きなのは周知の事実ですが、そのはやみんとなにかと共演することが多いのが中村悠一。親友に彼女をNTRされる的なシチュエーションはなかなかにそそるものが(笑)。

中村悠一その2 

 中村悠一は1980年2月20日生まれで香川県高松市出身。高校卒業後、声優になるために上京し、代々木アニメーション学院を経て2001年に声優デビューしました。2007年に「CLANNAD」の岡崎朋也役でテレビアニメで初主演を務め、同年以降主要キャラクターを次々と演じて知名度を上げて行きました。

岡崎朋也 

 「特技は1日24時間ゲームプレイ」と言うほどのゲーム好きで、かつては「バーチャファイター」の全国大会本戦への出場資格を得たことがあるそうですが、交通費が自腹だったので参戦を断念したそうです。それ以外にも多くのゲームをプレイし、ネットゲームやアーケードゲームも嗜み、ゲーム好きな声優仲間と様々なゲームをプレイしています。

中村悠一&杉田智和 

 杉田智和とは、アニメデビュー作「電脳冒険記ウェブダイバー」で共演したことを契機に交友が始まりましたが、当時同年代の男性声優が非常に少なかったのと、お互いゲーム好きということからあっという間に親しくなった模様です。杉田智和は「アニゲラ!ディドゥーーン」など自身のラジオであまりに頻繁に中村悠一の話題を出すので、彼の近況は杉田智和のラジオを聞けばだいたい判ってしまうという。リスナーや共演者もよく承知しており、わざわざ中村悠一の話題を振ることがあります。

中村悠一その3 

 デビュー当時からの愛称「ゆうきゃん」は、鈴村健一命名。目立った活躍がない頃から鈴村健一や福山潤などに注目の若手声優として推されていて、しばしばメディア上で話題に出されていたそうです。見ての通りイケメンですが、カロリーが高い物が好きで、2014~5年あたりは本人が「宣材に映っているやつ(痩せていた時の自分)は死にました」と言うくらい太っていましたが、2016年に減量を始め、ダイエットに成功しています。

能登さんと中村悠一 

 好きな女性声優は能登麻美子だそうです。うむ!いい趣味。好きな音楽のジャンルは「ケルト音楽」で、学生時代は吹奏楽部でユーフォニアムを担当していたほか、2008年に何か新しいことを始めようとヴァイオリンを購入したそうです。

七河正志 

 それでは私が知っている中村悠一の演じたキャラです。概ね年代の古い順。まずは「ときめきメモリアル4」の七河正志。私はこれで中村悠一を知りました。

七河瑠衣

 このゲームには男友達が2人登場しますがその一人で、イケメンでスポーツが得意で女生徒から人気があるものの、恋愛には興味がないという“無駄イケメン”。しかし他人の恋愛には敏感なようで、主人公にときめいている女の子がいる状態で彼と下校しようとすると、気を遣って主人公を女の子と帰らせたりします。そういうところがまたモテるんでしょうな。

オレと伝説になろう 
 
 双子の姉である瑠依が正志に変装してよくきらめき高校に潜入してくるのですが、彼女と仲良くなると周囲からはモーホーの疑惑を持たれてしまうという。しまいには「オレと伝説になろう!」とウホッな迫り方をしてきます。うわぁガチホモじゃねーか!と思いきや夢オチでしたが。瑠衣が入れ替わっている時は学校を休んでいるそうですが、代わりに瑠衣の学校(「ときめきメモリアル2」の舞台であるひびきの高校)に女装して登校すればいいのにと思いましたが…身長が180センチもあったら流石にばれますかね。

高坂京介 

 「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の高坂京介。「俺妹」の主人公にして語り手です。非凡な才能を持つ妹・桐乃に対し、平凡が服を着たような人物として描かれていますが、一度決めたことは恥をさらしてでも貫き通す責任感の強い一面もあり、周りからは「お節介焼きのお人好しだが少し鈍い」という印象を持たれています

京介と桐乃 

 平凡といいながら、幼馴染みの麻奈実、桐乃のオタク友達黒猫(五更瑠璃)、桐乃のリアル友達新垣あやせ・来栖加奈子など、多くの女性キャラから好意を持たれており、ほぼハーレム状態。にも関わらずそれらをすべて拒否して実妹である桐乃に告白するというまさに外道。クリスマスから卒業式まで限定で恋人になり、卒業したら普通の兄妹に戻るという約束でしたが、恋愛ってそんなビジネスライクに出来るモノなんですかねえ。

ヤンデレあやせにビビる京介 

 あやせなんか京介がちょっかい出しまくった挙げ句に好きにさせておいて、告白を断るという鬼畜プレイをしてましたからね。ゲームではあやせに刺されるバッドエンドもありましたが、アニメでは意外にも穏やかな結末でした。あやせといえばはやみんに「ヤンデレに定評のある早見沙織」というタグを付与するに至ったキャラですが、これが私が見た中村×早見の初共演です。

折木奉太郎 

 「氷菓」の主人公にして探偵役の折木奉太郎。「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」がモットーのものぐさ省エネ君ですが、姉の脅迫で廃部寸前だった古典部に入部したことからヒロイン千反田えるに出会い、推理力を見込まれることになりました。

里志と奉太郎 

 人間関係は基本的に淡白で、親友の福部里志ともお互いの家に遊びに行く仲ではなく、とりとめのない会話を学校・下校中にする程度でした。えるの「私、気になります!」に振り回される形で様々な事件を解決していく中、えるへの好意を自覚していきますが、原作がまだ完結していないので「恋の行方」はまだ不明です。早く原作を執筆して貰い、アニメ二期を制作して欲しいですな。

千反田えると折木奉太郎 

 「魔法科高校の劣等生」の主人公司馬達也。妹の深雪が「四葉家」現当主の姪で、“四葉の最高傑作”とされて次期当主に指名されているのに対し、達也は深雪のボディガード程度にしか認識されておらず、四葉家や第一高校では不遇な扱いを受けていますが、実は色んな意味で「さすがはお兄様です!」(by深雪)な人です。

司馬達也 

 6歳のとき「人造魔法師実験」の被験者にされ、「人工魔法演算領域」を与えられた唯一の成功例となりましたが、その性能は一般的な魔法師が生来持つ魔法演算領域と比べると著しく劣っており、生来使える「分解」と「再成」以外の魔法は全てその「人工魔法演算領域」でしか行使できないことから、魔法科高校では劣等生扱いを受けています。

モノリス・コードの達也 

 しかし、実際には非常時や実戦における咄嗟の対応力や戦闘能力は超一流で、国防陸軍の独立魔装大隊所属の「戦略級魔法師・大黒竜也特尉」でたった一人で一国の侵攻軍を壊滅させたり、伝説の魔法工学エンジニア「トーラス・シルバー」の片割れで画期的な製品を世に送り出していたりと「さすおに」のオンパレードで、中二病患者が憧れ、かくありたいと熱望するであろうキャラとなっています。

司馬兄妹 

 近日劇場版「魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女」が公開されますが、アニメ第二期もはよ。なお本作では深雪を演じるはやみんとは兄と妹ですが、原作ではなんと婚約することになるという。まるで「俺妹」で果たせなかったあやせの悲願が成就するかのようですな。

里見孝太郎 

 「六畳間の侵略者!?」の主人公里見孝太郎。某大俳優そっくりの名前です。直情的な性格で自他共に頭は良くないと認識しており、細かい気配りが出来ないので女性にもてないタイプだと思われていますが、無意識のうちに人に優しい態度をとっており、人が本当に嫌がるような態度も取らず、一緒にいると安心できるためか、親友からは「極少数の魅力的な女性が孝太郎に惚れる」と評されています。

侵略者の人達 

 実際登場する大半のヒロインたちから好意を抱かれていますが、幽霊・地底人・宇宙人・魔法少女と、涼宮ハルヒだったら狂喜乱舞しそうなラインナップとなっています。

ハーレム団欒 

 六畳一間ですがバストイレキッチン付きの「ころな荘」106号室に住んでいます。ころな荘の家賃は月5万円ですが、幽霊が出ると噂になっている106号室のみは月5千円の格安設定。孝太郎にとっては格安物件ですが、幽霊にとっては両親の帰りを待つ場所、魔法少女にとっては魔力溜まりのある場所、地底人にとっては父祖の霊を奉る祭壇を設置する場所、宇宙人にとっては試練のために侵略をする場所になっています。

黄昏の桜庭先輩 

 原作は27巻も出ているので二期カモンなんですが、音沙汰がないところを見ると円盤の売れ行きに問題があったのでしょうか。はやみんも登場していましたが、宇宙人の姫のお付きだったので関係性は他の作品に比べるとやや弱かったような。桜庭先輩が好きでしたが…

一ノ瀬グレン 

 「終わりのセラフ」の一ノ瀬グレン。吸血鬼殲滅部隊「月鬼ノ組」の総隊長で日本帝鬼軍中佐。主人公百夜優一郎の命の恩人であり、軍にスカウトしました。常に飄々としており、毒舌家でもありますが、自分の部下達を「家族」として大事に思っており、チームワークや軍規を遵守させることを重視している面も。

上司が中佐で部下が大佐 

 日本帝鬼軍を設立した柊家の分家筋で軍上層部の会議に参加する権利を持っていますが、柊本家からは嫌われており、階級も低く抑えられている様子です。中佐なのに部下に大佐がいるという。

真昼とグレン
真昼とグレンその2 

 ヒロインである柊シノアの姉・真昼は幼い恋の相手でしたが、シノアによれば真昼はグレンに殺されたとか。グレンの持つ刀型の鬼呪装備「真昼ノ夜」には、鬼になった真昼が宿っているそうです。実は既に鬼になる一歩手前の「生成り」と化しており、一日の時間を二つの人格が行ったり来たりしています。もう一つの人格は死んだ恋人である真昼に取りつかれて鬼になり果てており、敵である吸血鬼の有力貴族フェリドと手を組み、「終わりのセラフ」の実験を行っています。 

シノアとグレン

 本作でははやみん演じる柊シノアとは上司と部下という関係でしたが、当初は信頼関係にあったものの、グレンの奇妙な行動により次第に疑念が湧いてきたようです。小悪魔的なシノアははやみんの新たな魅力を引き出しており、大好きなキャラでしたね。シリアスになった後半より、飄々としていた前半のシノアが魅力的でした。

無免ライダー 

 「ワンパンマン」の無免ライダー。ヒーロー協会所属のプロヒーローでランクはC級1位。本作ではヒーローのランクはS級~C級の四段階に分かれており、S級となると軍の一個師団並みの戦闘力を持っているとされますが、C級は最下級ランクで普段は主に強盗やひったくりなど、人間の犯罪者を退治して過ごしています。また数が多いために足切りされることが多く、一週間ヒーロー活動を行わなかった者は名簿から除名されてしまうという

無免ライダーとサイタマ 
 
 ボディースーツに競輪風ヘルメットとゴーグルを身に付けた「正義の自転車乗り」で、かつては持っていた原付免許は、事件現場に急行するためにスピード違反を繰り返したため失効してしまい、現在は自転車「ジャスティス号」を愛車としています。

不屈の正義(弱いけど)
 

 本来、ヒーローの各階級の1位は上のランクへの昇格権を得られますが、本人は自分の実力ではB級で通用しないと理解しており、C級1位として日々善行に励んでいます。格上のヒーロー相手でも毅然とした態度を取り、常に弱者に寄り添う姿勢を貫く好漢であり、弱くても一般大衆からは高く支持されています。

よくやった。ナイスファイト

 S級やA級ヒーローを苦も無く倒した深海王に対しても怯むことなく戦いを挑み、一方的に痛めつけられながらも決死の覚悟で食い下がることで、結果的にサイタマが到着するまでの時間を稼ぐことに成功しました。その奮闘ぶりにはサイタマも「よくやった。ナイスファイト」と称賛を送り、事件後サイタマに感謝の手紙を贈り、その後屋台で一緒に食事をして以降、友情が芽生えました。

地獄のフブキ 

 はやみんはB級1位の地獄のフブキを演じていましたが、アニメではほんのちょっとしか出番がなく、ましてや無免ライダーとの絡みも一切ありませんでした。フブキと無免ライダーが絡まなくてもいいからぜひ二期を早く制作して欲しいです。

犬塚公平とつむぎ 

 「甘々と稲妻」の犬塚公平。主人公で高校の数学教師にして幼稚園児つむぎのパパンです。半年前に最愛の妻多恵を病気で亡くし、娘のつむぎと2人暮らしとなりました。家事すべてを1人で行っており、つむぎを溺愛しているものの、妻を亡くしてからは仕事と家事に追われ、また自身が食に関心が薄かったこともあり、つむぎとまともな食事をしていませんでした。

 恵での料理会

 ひょんなことから教え子である飯田小鳥と料理をするようになり、食べる楽しさ、作る楽しさに目覚めていきます。小鳥は小学3年生の時に両親が離婚し、以降は料理研究家のママンと二人暮らしをしています。ママンは料理屋「恵」を営んでいるが、料理研究家としてのテレビ出演などで忙しくなり、店を閉めることが多くなっており、また小鳥は包丁で怪我をしたことがトラウマとなり、包丁が持てず料理を作れません。

 愛、食べてる?

 小鳥は当初は一緒に料理を作るという建前で、包丁を持てない自分の代わりに公平に包丁を使わせて利用するという形となっていましたが、つむぎに美味しいものを食べさせたい、店のあかりを消したくないという互いの利害が一致し、WinWin関係で共に料理を作ることとなりました。

5人での料理会

 料理会は、小鳥の友達で料理は手慣れた子鹿しのぶや、公平の高校時代の友人でカフェバーを経営している八木祐介らも参加することがあり、この人達が参加すると賑やかで一層楽しくなります。

完全に家族 

 はやみんは当然(?)飯田小鳥役。そして中村悠一との関係からして必然的(?)に犬塚公平に好意を抱いていきます。ただ、現状でははっきりした恋愛感情にはなっておらず、自分でも感情の正体がわかっていません。つむぎ役の遠藤璃菜がリアル小学生だったこともあり、中の人三人が並ぶとほぼ家族のように見えます。つむぎの通う幼稚園の園児達には本物の子役を使っているのが本作の特徴で、もし数年後に二期を制作ということになると、同じ子役を使えるかどうか(特に男児)と余計な心配をしてしまいます。

滝谷真 

 最後に「小林さんちのメイドラゴン」の滝谷真。主人公小林さん(下の名前不明)の会社の同僚で友人。普段は人当たりが良く穏やかな性格の好青年です。

オタクモードの滝谷 

 実はメイドや執事関連の隠れオタクで、そのモードに入ったときには突如瓶底眼鏡をかけて、なぜか出っ歯になって語尾に「ヤンス」を付けるなどの変貌を遂げます。
 
小林さんと滝谷 

 人間界に住むことに決めた雄のドラゴン・ファフニールをアパートの自室に居候させ、テレビゲームを通じて親しくなっていきます。ファフニールを「ファフ君」という固有の愛称で呼ぶことを認められていますが、後にその行為は強制的に彼に強い主従契約を結べる状況を作り出しているのだと知りますが、争う事があってもゲームで勝敗を決めるなど、2人の関係はあくまで対等なものとして捉えています。トールからは、力を介さずにファフニールとそれなりの関係を築いている事を不思議がられていたりします。

ファフニールと馴染む滝谷 

 トールは滝谷を小林さんに関して恋のライバル(?)視していますが、滝谷は小林さんを、あくまでオタネタを分かち合える友達と考えている様子です。

 異種間コミュニケーションに参加

 う~む、主なところでもこんなに登場していたか。さすが人気声優。私は見てませんが「おそ松さん」他人気作品にも大量に登場しています。流石人気声優。出演作品がやたらに多いから、私の「はやみん枠」での視調作品にもよく登場するというのも道理なのかも知れませんが、はやみんが同業者と結婚するなら杉田智和より中村悠一だよなと思ってしまいます。本当のところはどうか知りませんけど。

はやみんと中村悠一

雀蜂:雪中の山荘で展開されるパニックホラー

駆逐艦水無月

 あっという間に6月になってしまいました。またも艦これネタで恐縮ですが、4月には卯月をゲットし、5月には皐月を育ててきた訳ですが、水無月は通常海域でのドロップがなく、建造でも入手不可という悲しい現実が。現状ではイベントでのドロップ入手しか方法がなく、この前の春イベントでもドロップ設定があったそうですが、残念ながら出逢えませんでした。

雀蜂 

 本日は貴志祐介の「雀蜂」を紹介しましょう。貴志祐介の作品は初めてではないのですが、当ブログで取り上げるのは初めてですね。よって例によって作者紹介から。

貴志祐介 

 貴志祐介は1959年1月3日生まれで大阪市出身。中学生時代からミステリやSFを読み、京都大学経済学部在学中に小説の投稿を始めました。京大卒業後に生命保険会社に入社しますが、数年後に小説執筆意欲が芽生え、1986年に第12回ハヤカワ・SFコンテストに「岸祐介」名義で応募した短編「凍った嘴」が佳作入選します。この作品は後の大長編「新世界より」の原点だそうです。

十三番目の人格 

 1989年、30歳の時に会社を退職して執筆・投稿活動に専念し、1996年に「ISOLA」で角川書店の日本ホラー大賞第3回長編賞佳作を受賞し、作家デビューしました。同作は後に「十三番目の人格 ISOLA」と改題して刊行されています。1997年には「黒い家」で第4回大賞を受賞しました。

黒い家 

 人間の欲望や狂気が呼び起こす恐怖を描いたホラー作品を発表する一方、ミステリー、SFと幅広いジャンルを手掛けています。受賞歴は、2005年に「硝子のハンマー」で第58回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、2008年に「新世界より」で第29回日本SF大賞、2010年に「悪の教典」で第1回山田風太郎賞、2011年に「ダークゾーン」で第23回将棋ペンクラブ大賞特別賞を受賞しています。

硝子のハンマー 

 「雀蜂」は、2013年10月25日に描き下ろしで角川ホラー文庫から刊行されました。刊行された小説としてはなんと最新刊。最近は何をしているんでしょうか…。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

悪の教典 

 11月下旬の八ヶ岳。山荘で目醒めた小説家の安斎が見たものは、次々と襲ってくるスズメバチの大群だった。昔ハチに刺された安斎は、もう一度刺されると命の保証はない。逃げようにも外は吹雪。通信機器も使えず、一緒にいた妻は忽然と姿を消していた。これは妻が自分を殺すために仕組んだ罠なのか。安斎とハチとの壮絶な死闘が始まった―。最後明らかになる驚愕の真実。ラスト25ページのどんでん返しは、まさに予測不能!

雀蜂のPOP 

 ダークなミステリーやサスペンスを得意とする小説家安斎智哉は、出版不況にも関わらずまずまずの売れ行きをキープし続けており、八ヶ岳山麓に山荘を持ち、年の三分の一はここで過ごしています。妻の夢子も絵本作家として有名で、昨夜は二人の新刊のヒットに祝杯を挙げた…はずですが、翌朝妻の姿はなく、またなぜか車の鍵やPCや電話のコードも抜かれて外部との連絡を絶たれていることに気付きます。

 そして山ではもはや降雪もあって完全に冬だというのに次々に現れるキイロスズメバチ。スズメバチなんて誰でも嫌ですが、安斎は特に怖れる理由がありました。3年前にスズメバチに刺されており、今度刺されたらアナフィラキシーショックで命が危ないと医者から警告されていたのです。

雀蜂コシマキ

 次々に現れるキイロスズメバチは夢子と、夢子の同級生で大学で昆虫を研究する男の陰謀なのか?キイロスズメバチの攻撃をかいくぐって地下のボイラー室に入った安斎は、さらに恐るべき事態に気付きました。なんとボイラー室はオオスズメバチの巣と化していたのです。

 キイロスズメバチは日本に生息するスズメバチの中では最も小型ですが、攻撃性が非常に高く、スズメバチ類の刺傷例ではキロスズメバチによるものが最も多いとか。

キイロスズメバチ 

 オオスズメバチは日本に生息するハチ類の中で最も強力な毒を持ち、かつ攻撃性も高い非常に危険な種です。ミツバチどころか、キイロスズメバチの巣すら攻撃することがあるそうです。筑波嶺でもたまに見ますが、その大きさといいオレンジと黒の毒々しいカラーリングといい、一目でヤバイヤツだとわかりますよ。九州では幼虫やさなぎ、成虫を珍味として食す習慣があるそうですが…くわばらくわばら。

オオスズメバチ 

 アメリカでキラービーというはアフリカミツバチとセイヨウミツバチの交雑種がはびこり、攻撃性が強くて人間の死亡例も多いため、駆除用にオオスズメバチを導入しようかと検討されたことがあったそうですが、研究用に取り寄せたオオスズメバチをキラービーと戦わせてみたところ一方的な虐殺劇となり、「こいつら放したら俺らまで駆除されんじゃね?」とビビって取りやめにしたそうです。

キラービー 

 キラービー拡大のニュースを見た日本人は「ふさふさしててかわいい」「子リスみたいで好き」「ストラップにしたい」などとマスコット扱いで、反面「こいつ超ザコだし」「絶対スズメバチのほうが強い」「スズメバチ最強!」と、小学生男児のような口ぶりでスズメバチをプッシュする声が多く見られたそうですが、そりゃあキラービーといっても所詮はミツバチ。ヤンマやカマキリといった大型肉食昆虫と食うか食われるかのバトルを展開しているスズメバチとまともに戦えるわけありませんね。

キイロスズメバチの巣 

 そんな話も通じない獰猛なキイロスズメバチとオオスズメバチに挟まれてまさに前門の虎後門の狼状態の安斎、どうやって危機を乗り越えるか…というだけなら動物パニック小説になるんですが、そもそもなぜ安斎は殺されそうになっているのか?やはり妻とその愛人の計略なのか?それにしてもなぜスズメバチという手段を取ったのか?など謎も多く、その謎が安斎を苦しめます。家から出れば昆虫が生きていけない寒さなんですが、安斎も長時間は生きていけないという(笑)。

オオスズメバチの巣 

 安斎はスズメバチとバトルするだけでなく、死亡を確認するためにやってくるであろう妻と愛人とも相対しなければなりません。そうした中で彼が取った作戦は…。内容紹介にもありますが、ラスト25ページで真相が明らかになって驚くことになるのですが、これはネタバレになるので書くわけにはいきません。作中のそこかしこに「あれ?」と思う部分があるのですが、それがちゃんと伏線になっているのですね。スズメバチの大群もホラーだけど、ホラー要素はそれだけはなかったという。

雀が乗っ取ったスズメバチの巣 

 私なら…とりあえず山荘の窓という窓を開けて外部に脱出して物置に逃れ、スキーウェアなどを着てから山荘に戻り、ボイラー室のドアはしっかり閉めておいて、天井裏のキイロスズメバチの巣も隔離(寒さで大半死んでるかも知れません)。その後窓を閉めて保温すればいいかなと。なんとなれば風呂もありますし。まあ冬なのに室内でスズメバチに遭遇したらそんなに冷静に行動できるかどうかわかりませんが。

雀がドヤ顔で再利用中 

 雀蜂の画像を探していたら、雀蜂の巣を乗っ取った雀の画像が。そうか、昔の人は雀蜂が年を経ると雀になると思っていたので雀蜂という名前を付けたのか(爆)。真面目な話、雀蜂は巣を一年で使い捨てにするらしいので、その後をちゃっかり雀が再利用しているようです。雀さんなら何羽住んでいても安全なのでいいのですけどね。
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