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2017年冬季アニメ中盤の感想:小林さんちのメイドラゴン/けものフレンズ

226事件

 本日2月26日といえば二・二六事件(古い!!)。1936年ですから81年も前の話なんですね。受験の時は「ひどくさむいぞ二・二六」と覚えましたが、「ひど」が1なんてちょっと苦しいですね。ちなみに五・一五事件(1932年)は「いくさにつながる五・一五」で、こっちの方が語呂は良かったような。

翼も出したトール 

 さて序盤の感想はひととおりやりました2017年冬季アニメですが、その時点では未視聴だった作品が2本追加されましたので、これらについては語っておこうかと思います。今季はなんと10本も見てるんですが、空前の数ではなかろうか。杉田智和にそそのかされてつい。

小林さん 

 まずは「小林さんちのメイドラゴン」。普通のOL小林さんと超絶な能力を持つ異世界のドラゴン・トールの異種間コミュニケーションを描いた作品です。異種姦じゃなくて良かった(笑)。小林さんは女性ですが、ファッションがユニセックスなのであんまり女性を感じさせないですね。

ちょろゴン達の真の姿 

 酔っ払ってなぜか山中の森に迷い込み、勢いで巨大なドラゴンに刺さった剣を抜いた小林さん。そのドラゴン・トールはメイド好きだという小林さんのために人間のメイドに姿を変えて、小林さんの自宅に住み込んでお世話を始めます。そして、次第に様々なドラゴンが集まるようになってくるのでした。小林さんの住む朧塚は埼玉県越谷市がモデルになっているそうです。首都圏の人は聖地巡礼しやすそうです。

小林さんちのメイドラゴン トール 

 ハードワークにお疲れ気味の25歳の女性システムエンジニアである小林さん。勤めている会社は「地獄巡システムエンジニアリング」だそうですが、それは原作者クール教信者の別作品である「おじょじょじょ」のヒロイン・地獄巡春の実家が経営している末端企業なんでしょうか。

滝谷真 

 同僚で友人の滝谷真は結構イケメンで、おまえらつきあっちゃえYO!と言いたいところなのですが、その招待は隠れオタクで、これが発現するとなぜか出っ歯になり、ぐるぐる眼鏡で語尾に「ヤンス」が付きます。小林さんもあんまり女を感じさせませんが、滝谷もあんまり男を感じさせないという意味で同類のようです。CV中村悠一の無駄使いにも感じます。

オタクモード 

 トールはわりとスタンダードなドラゴンで、元の世界ではケイオスケイオスの混沌側の主力として人間達と戦っていたようです。基本人間は「劣等種」として蔑視しており、しばしば毒を吐きますが、表面上は愛想良くしているので近隣とは良好な関係を作っています。ファンタジー世界では強力な種族で知られるドラゴンですが、トールは炎のブレスの他に各種魔法も使える(竜語魔術?)ので、非常にオールマイティーです。これだけ凄ければ人間を劣等種と言うのも仕方ないような。

竜眼のトール 
原作メイドラゴン 

 可愛い容姿をしていますが、よく見ると目が竜眼。目だけみるとちょっとコワイです。なお原作のトールは下のような姿で、いかにもクール信者教のキャラなんですが、アニメ化にあたってのキャラデザインは正義かつ勝利ではないかと思います。

小林カンナ 

 そのトールを頼ってやって来たのが妹分のカンナカムイ。アイヌ神話に登場する雷神ですが、度重なるいたずらが災いして、故郷を追放されてしまったとか。その割りに小林さんちに居候するようになってからは特に大きな騒ぎも起こさず、小学校に通って周囲とも上手くやっています。反省したんでしょうか。

ルコアさん 

 ルコアことケツァルコアトルは、メガテンシリーズではおなじみの竜神で、アステカ神話の“羽毛ある蛇”ですが、温和で心優しく人付き合いの良い性格をしており、魔法使いの家系で悪魔の召喚を試みていた翔太を救うために自ら召喚されたことで、使い魔として翔太の家で暮らしています。ケツァルコアトルはメガテンならかなりレベルが高くないと仲魔にできないので、ラッキーといえばラッキーですが、巨乳なサキュバスだと誤解されているよう。

ファフニールさん 

 唯一の雄のドラゴンであるファフニールは人嫌いで無愛想ですが、なぜか気まぐれで人間界に住むことにし、トールから大山猛の名を与えられ、滝谷の部屋に居候することになりました。その後は滝谷の趣味に染まり、コミケに作品を出すまでになりました(全然売れなかったけど)。これはかなりのオタクでは。

出てこないエルマ 

 そしてED「イシュカン・コミュニケーション」を歌うちょろゴンずの一員であり、OPでは最初から登場しているエルマはなんと7話まで未登場。次回8話でようやく登場するようですが、番宣ラジオでもCV高田憂希がネタにされまくっていました。

ツノをつけたちょろゴンずの中の人達 

 基本癒やし系アニメなんですが、クール教信者原作らしくしばしば毒をぶっ込んできます。ドラゴン同士の遊び(じゃれあい)とかドッジボールは人間にとっては超絶戦闘になりますが、被害の完全復旧や記憶操作など、なんでも出来るのだったらもっと激しいバトルシーンも展開して欲しいですね。

怒りのトール 

 続いて一回見ると知力が1下がると思われる「けものフレンズ」。たーのしー!なんですが、ゲーム、マンガ、アニメとメディアミックスな展開をする中、主力であるはずのゲームがアニメが始まる前に終了してしまったという。すごーい!キミは間が悪いフレンズなんだね!アニメが大人気を読んでいますが、親会社はすでにオワコンと見なしていて、再開する意向はないようです。まあ私も存在すら知りませんでしたしね。

フレンズのみなさん 

 舞台は世界中の野生動物が集まる巨大な動物園でありジャパリパーク。現生種だけでなく絶滅種やUMAも存在しているという謎施設ですが、しばらく管理がなされておらず、崩壊しつつある模様です。動物達はサンドスターという謎のエネルギーによってフレンズ(アニマルガール)化しており、外見や生態に元の動物の特徴を残しつつも、姿はまるでコスプレしている女の子のようになっており、自然界における捕食・被捕食関係も失われています。

 サーバルちゃんかばんちゃん

 大きさはほぼ均一で人語も解しますが、人間の姿には慣れていないので声の出し方や手の使い方がぎこちないフレンズがいたり、文字が読めなかったり智恵が足りなかったりします。「ジャパリまん」という饅頭型の共通食料がどこからともなく出てきて皆それを食べていますが、野菜などからジャパリまんを作る設備がなお稼働しているようです。

持ってるのがジャパリまん 
じゃぱりとしょかん 

 記憶を失って「さばんなちほー」を彷徨っていた「かばん」(大きなかばんを持っていたことからサーバルちゃんが命名)は、自分の正体を知るべく、出会ったサーバルやラッキービーストと共に「じゃぱりとしょかん」を目指して旅をしました。7話でたどり着いた図書館で、アフリカオオコノハズク(博士)たちに自分の正体が「ヒト」であることを教えてもらいましたが、既にヒトは絶滅したと聞かされます。これからは生き残りのヒトを
探すべく、ヒトに適したちほーを探すことになります。

ジャパリバス

 これまで通過した場所としては、「さばんなちほー」のほか、「じゃんぐるちほー」「こうざん」「さばくちほー」「こはん」「へいげんちほー」、そしてじゃぱりとしょかんがある「しんりんちほー」がありますが、快適に住めそうなのは「こはん」かな。ビーバーとプレーリードッグに家を建てて貰えば結構快適に暮らせそうですが。

ラッキービースト 

 ラッキービーストはフレンズ達から「ボス」と呼ばれており、どうやらジャパリパークが正常に営業していた頃は観光客のガイドをやっていたようですが、かばん達と一緒のラッキービーストはアップデートがされていないらしく、データの現状が一致しないとしばしばフリーズするなど、頼りないところがあります。フレンズが話かけても一切応えず、かばんの声にしか反応しなのは、動物とヒトを見分けてのことのようですが、時折目を光らせて、電子音ではない声で喋り始める事があるなど、色々と謎を秘めています。

アライさん 
フェネック 

 それからアライグマとフェネックがなぜかかばんの後を追っているのですが、どうやらその理由も物語の根幹に関わるもののようです。番宣ラジオはサーバル、フェネック、アライグマでやっていますが、三人が出会うのは終盤なんでしょうか。

トキのハイライトのない目 ツチノコ
目のハイライトが消えかかったかばん 

 トキのような絶滅危惧種、ツチノコのようなUMAは目にハイライトがないという特徴がありますが、博士たちにヒトが絶滅したと聞かされたかばんの目からもハイライトが消えかかりました。これは何を意味しているのか…。実はヒトは完全に絶滅しており、代わりに動物達が一生懸命ヒトの真似をしているのがフレンズ、なんてことだと哀しすぎるんですが。それでもサーバルちゃんをはじめフレンズ達は明るく無邪気に生きて行くのかな?でもジャパリまんの供給システムもいつまで保つのか…

フレンズいろいろ 

 博士達が「合わないちほーでの暮らしは、寿命を縮めるのです」と言っていましたが、ヒトであるかばんとサーバルちゃんは明らかに居住に適切な「ちほー」が異なるので、これは別れのフラグなんでしょうか。サーバルちゃんの底抜けの明るさがなかったらかなりの鬱展開になっていた気がするだけに、別れは辛いなあ。

ライオン対ヘラジカ スナネコさん
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旅のラゴス:人生は旅、旅は人生

プレミアムフライデー

 昨日のプレミアムフライデー、いかがお過ごしでしょうか。てっきりお国の指示で3時で終業なのかと思ったら、自主的に有給休暇(時間休)を取れというショボい話で…。それなら自分の都合で休むっての。いっそ金曜日を半ドンにしてくれると嬉しいんですけど、自分の有給休暇使えって話だったらノーサンキューですね。

旅のラゴス 文庫版 

 本日は筒井康隆の「旅のラゴス」を紹介します。筒井康隆というと、若い頃は貪るように読んだものですが、そのせいかドタバタ、エログロナンセンスといった黒い笑いのSF作品という印象が強いのですが、本作は全く違っていました。

虚構船団 

 そもそもそういった作品は作家としての経歴の初期の60~70年代のものが多く、80年代以降は前衛的な作品を発表しているんですよね。「虚構船団」とか「ロートレック荘事件」なんかを読んでいるので知らない訳でもなかったのですが。

断筆をめぐる大論争 

 そして断筆宣言(1993年)を経て断筆を解除した1996年以後はジュブナイル小説も復活させています。「愛のひだりがわ」はブログ記事にもしています(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-71.html)。それでもドタバタ・ナンセンスというイメージを持ち続けているのですから、若い頃に持ったイメージの影響力というのはそれはそれは凄まじいものがありますね。

愛のひがりがわ 

 「旅のラゴス」は1986年9月に単行本が徳間書店から刊行され、1989年7月に徳間文庫から文庫版が刊行されています。また1994年3月には新潮文庫からも刊行されています。新潮文庫版が刊行されて以来、息の長いロングセラーとして読まれ続けてきた作品ですが、2014年初め頃から1年ほどで10万部を超える大増刷となったそうです。テレビで有名人が紹介したわけでも、新聞に大きな書評が掲載されたわけでもないですが、ネットで「面白かった小説」といったテーマの「まとめサイト」でよく見かけるようになったということで、ネットでの口コミということなのかも知れません。

謎のベストセラー 

 私が手に取った図書館の文庫版も2015年8月発行の29刷なので、多分ネットで本書の存在を知った誰かがリクエストしたのでしょう。私もこれまで読んでいませんでしたし、特に注目もしていなかった作品なのですが、なるほど口コミどおりこれは当たりの作品ですね。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

旅のラゴス 新書版

 北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

 まるで職業“旅人”なラゴスは、筒井作品の主人公として非常に理性的で真面目で、女性からモテまくるのですが、それも女たらしとかいうのではなく、好人物であるこということが周囲の人々にそこはかとなく感知されるが故のようです。だから男からも大体好意を持たれます。そんなラゴスが生まれ育った先進的な北部の都市から野蛮かつ治安の悪い南部に旅を続けていきます。

 その過程で、ラゴスが旅するのがグループ全員がテレポートする「集団転移」、家畜と心を通わせる「同化」、その他予知能力、読心術などが当たり前の技術として存在する世界であることが明らかになっていきます。内容紹介に登場する「壁抜け」は、大道芸人ただ一人にしかできない技とされていますが、ラゴスも試しにやって成功しているので、しっかり体系化されれば誰でも出来るのかも知れません。

 そういった超能力が存在する反面、文明レベルは現代以下、というか16、17世紀レベルなこの世界。途中で奴隷にされて7年もの間、銀鉱山で働かされたりしながら、なおも南へと向かうことを止めないラゴスの旅の目的は一体何か? 以後ネタバレになります。未読の方はご注意を。

旅のラゴスを描く 









 ラゴスが目指したのは海を渡ってさらに南方の別の大陸にある「着地点」。そこは2000年以上前に宇宙を旅してきた先祖の宇宙船が着陸した場所でした。1000人いた乗組員は全員高度な技術の専門家でしたが、コンピューターやロボットの支援が必要な技術ばかりだったので、未開の地では継承することができず、その子孫達は遥かに後退した文明で拡散していくほかありませんでした。

宇宙船廃墟のイメージ 

 ただし、宇宙船が運んできた各種の書物はポロという森の中の村の一隅の宇宙船の一部を使ったと見られるドームの中に集められ、散逸の処置を執られて保管されていました。学者達は誰でもここに来れば好きなだけ書物を読むことができますが、持ち出すことは禁じられているほか、危険極まりない旅をしなければならないので、知識の継承より書物の風化が先でないかと憂慮されているのでした。

 ラゴスはここで15年以上を過ごして、書物を読み続けますが、その間にコーヒーの木が野生化して繁殖しているのを知ってコーヒーの作り方をポロの村に伝授し、村はそれを交易品とすることで繁栄していきます。ラゴスがドームに籠もっている間にポロは豊かになり、商人が大挙して訪れるほか、周辺からその繁栄ぶりを狙われるようになっていきます。

王様 

 ラゴスの教示により大砲を備えて襲撃者を撃退するポロは遂に王国となり、ラゴスは王に据えられます。二人の妃に2人の王子、1人の王女を持ったラゴスは奴隷から王様までという、ドラゴンクエストⅤの主人公のような流転を経験しますが、ラゴスにとっては身分などどうでもいいものでした。

 ラゴスは旧文明のエッセンスを羊皮紙に書き込み、王国を密かに出てそれを生まれ故郷である北部に伝えようとします。しかしその途中でまた奴隷に商人に捕らえられて奴隷にされ、せっかくの羊皮紙は愚かな奴隷商人によって散逸させられてしまいます。

奴隷 

 しかし、奴隷売買のために連れて行かれたのはラゴスの一族が市長を務める北部の都市でした。しかも既に北部では奴隷制は廃止されていたという。時代錯誤な奴隷商人は哀れお縄となり、ラゴスは解放されて両親の元に戻ることができました。

 そこで穏やかな暮らしができるかと思われましたが、ラゴスが伝える旧文明の知識は周辺のインテリ達の評判を呼び、あちこちにひっぱりだこになります。そしてあまりうだつがあがらず、「兄よりすぐれた弟など存在死しねえ!!」的な(ジャギ兄さんほどひどくはないですが)兄との不和や、幼馴染みでもある兄嫁が寄せる密かな愛情(プラトニックですが)などにより、故郷にして生家にも居づらくなっていくラゴス。

ジャギ兄さん 

 そんな時、世界中を旅したという画家が残した放浪記を読んだラゴスは、北にいるという「氷の女王」の挿絵に驚愕します。それは旅の初期、恋に落ちた遊牧民族の少女が成長した姿に他なりませんでした。その少女はラゴスを待っていましたが、強い読心力を持つが故に傷つきやすく、何かというと暴れて厄介者扱いされていた青年を見かねて結婚し、二人で集落を去ったという話でした。盗賊の頭になったという噂もありましたが、その後の消息は不明となっていました。

 ラゴスは、「氷の女王」に会おうとして、今度は北へ北へと向かいます。既に70歳を超えたラゴス。少女もとっくにBBAを通り過ぎているはずですが、ラゴスのイメージは可憐な少女のまま。といって耄碌したとか痴呆症だとかいう訳ではありません。

氷の女王 

 「わたしは、そもそもがひとつ処にとどまっていられる人間ではなかった。だから旅を続けた。それ故にこそいろんな経験を重ねた。旅の目的はなんであってもよかったのかもしれない。たとえ死であってもだ。人生とおなじようにね」というラゴス。吹雪の中に踏み出すラゴスのシーンで物語は終わり、ラゴスは果たして氷の女王に会えたのかどうかわかりませんが、きっと会えたんじゃないかと思います。そこは天国かも知れませんが。

映画版パプリカ
 
 これは「パプリカ」のように、劇場アニメ化とかありじゃないでしょうかね。というか是非制作して貰いたいです。世界各地の奇妙な光景、奇妙な人々。そしてラゴスが出会ういろいろな美女達……きっと絵になると思うんですよね。
 

かばん屋の相続:銀行を舞台とした池井戸潤の短編集

けものフレンズ

 今日は猫の日ですね。だからという訳ではないですが…やあ!キミはどんなフレンズなの!?僕はねえ…猫好きなフレンズなんだよ!すっごーい!わーい!たーのしー!!

ゲーム版は終わっちまったけものフレンズ 

 ……え~、ということで、杉田智和の「アニゲラ!ディドゥーン!!!」でめっちゃ推していたので「けものフレンズ」を見たら…すっかりハマってIQが10くらい減少しました。ネットではとっくに大人気だったらしいですが、なにしろ情弱なもので。

2話のフレンズ達 

 誰でも楽しめる…というタイプの作品ではないと思いますし、私自身1話だけだと「おいおい」的感想になってしまっていましたが。とりあえず3話まで見ましょう。3話で登場するトキとアルパカはインパクト大です。アルパカはバリバリの栃木弁だし、トキは金朋地獄ですよ。

トキ…病んでさえいなければ 

 ト…トキ……病んでさえいなければ…(笑)。それでダメなら打ち切りましょう。

金朋のトキ 

 棒読み独特な演技が光るサーバルちゃんですが、だんだんハマってきてしまいます。相手を否定せずに基本全肯定、わかりやすいワンフレーズの連呼、オウム返しと感嘆の嵐というサーバルちゃんは、コミュ力の高い人気キャバ嬢のようだという声も。ちなみに「たーのしー!」は2話でコツメカワウソが言っていましたが、いつの間にかパクったなサーバルちゃん(笑)。

サーバルちゃん 

 フレンズが女の子だけなのはなぜ?正体不明の敵・セルリアンって何者?食物連鎖が消えて代わりにどこからともなく出てくる共通食料「ジャパリまん」は何の味?EDの廃墟の遊園地は何を意味しているの?など謎もたくさん。

かばん屋の相続 

 さて本題ですが、本日は池井戸潤の「かばん屋の相続」を紹介しましょう。2011年4月10日に文庫オリジナルとして文春文庫から刊行されました。2005年から2008年にかけて文藝春秋社の「オール讀物」で掲載された短編6編が収録されています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 池上信用金庫に勤める小倉太郎。その取引先「松田かばん」の社長が急逝した。残された二人の兄弟。会社を手伝っていた次男に生前、「相続を放棄しろ」と語り、遺言には会社の株全てを大手銀行に勤めていた長男に譲ると書かれていた。乗り込んできた長男と対峙する小倉太郎。父の想いはどこに?表題作他五編収録。

地方銀行 

 いずれも元銀行員だった池井戸潤が得意な銀行ものですが、大銀行ではなく地方銀行や信用金庫など、中小企業を相手にする地元密着型の金融機関を舞台にしたものが中心となっています。完全無欠なハッピーエンドという作品はなくて、ほろ苦い終わり方をするものが多いです。

 「十年目のクリスマス」。10年前に火災事故で倒産した中小企業の経営者を見掛けた銀行員。当時融資を求められたのに応えられず、見殺しにせざるを得ない状況の中、必死に金策をしていたはずなのに、今はすっかり裕福そうです。この10年の間に一体何があったのか?

中小企業 

 「セールストーク」。零細印刷会社の融資申し込みを断る銀行。担当者は何とかしてやりたいと思っていましたが、支店長が頑として首を振りませんでした。それを聞いた印刷会社社長は激怒。何やら社長と支店長の間には秘密がある様子です。窮鼠猫を噛むで、社長が取った手段は…。本作で唯一スカッとする話ですが、そのために支店長を悪人にしすぎたきらいもあります。

約束手形 

 「手形のゆくえ」。ちょいワルを気取ってロックな生き方をしながらもそれなりに成果も挙げてきた若手銀行員が、受け取った1000万円の手形を紛失してしまいました。銀行内をくまなく探しても出てこない手形。手形の振り出し先や受け取り先を駆け回りますが、「銀行が悪い」でけんもほろろ。日頃いかに銀行が恨みを買っているかが判ります。そして遂に判明した手形の在処は…。内部処分待ったなしですが、恋は身を滅ぼしてしまうものなのか。身を滅ぼしても惜しくないだけの恋愛をしたい、なんてことも思ったりもしますが、その後がねえ…

 「芥のごとく」。女手一つで20年間鉄商会社を続けてきた大阪のパワフルおばちゃん。経営は火の車ですが、その生き様に感銘を受けて、共に頑張りたいと思う新人銀行員。毎月25日は金策に駆け回ってギリギリ入金ということを繰り返えすおばちゃん社長を支えるべく、熱い稟議書を書いて応える銀行員。綱渡りながら、いい関係が築けるかと思った矢先、おばちゃん社長痛恨のミス。なんとかするべく取った手は、破滅への第一歩…。悪人が出てこないだけに、一番悲しくやりきれない話です。

メガバンク 

 「妻の元カレ」。学生時代は地味だったけど、就職氷河期の中、銀行に就職を決めて一気に「勝ち組」となった夫。妻は大学のテニスサークルの花で、イケメンと付き合っていましたが、なぜか別れて自分と一緒になってくれました。そのイケメン、就職活動に失敗してフリーター生活を送っていたということで、いわば「負け組」。ところが「負け組」イケメン、一転攻勢で会社を立ち上げて社長となりました。そして密かにイケメンと逢瀬を重ねる妻。「勝ち組」だった夫はあまりうだつが上がらない課長補佐で支店を転々。子供のいない夫婦の間に秋風が吹き始めて…。NTRか?NTRなのか!?と興奮したいところですが、そういう話ではありません。はっきり描かれていない妻の心理に視点を合わせるとまた興味深いストーリーになりそうです、長編にリメイクしても面白いのではないかな。

 表題作「かばん屋の相続」。これは現実にモデルとなった事件があって、21世紀早々に京都にある布製かばんのメーカーである「一澤帆布工業」で起きた相続トラブルだ下敷きとなっています。こちらは「第2の遺言書」の登場とか長男と三男の訴訟合戦など、様々な話題を呼びました。

一澤帆布のかばん 

 「かばん屋の相続」はもう少しシンプルで、親の遺言で銀行員だった長男がかばん屋を継承することになり、それまで専務としてかばん屋を実質的に経営していた次男は新会社を興します。すると職人全員が次男について退職することに。退職金を支払うために取引先だった信用金庫に融資を求める長男ですが、先行き不安ということで信用金庫はいい顔をしません。大銀行に勤めていた長男は居丈高な態度をとり続けますが、やがてなぜ次男に「相続を放棄しろ」と言っていたのかが判明する日が来ます。問題解決に10年もかかった一澤帆布工業に比べると短期で、しかもスッキリと解決しています。

預金通帳  

 しがないリーマンである私にとっては銀行というのは乏しい月給の預け先程度の認識しかないのですが、日々の生き残りに必死な中小企業にとっては喜怒哀楽の舞台なんですね。社長なんてカッケーっと思っていましたが、なればなったで苦労が絶えないようです。

記憶に残る一言(その81):恵那司のメール文(大相撲八百長問題)

堕ちそうな花火
宮前透

 日曜日はスーパーアニメタイムで、一週間分のアニメを見ている訳ですが、「クズの本懐」の直後に「セイレン」を見ると、同じ女子校生を巡る恋愛ものでも、かくも内容が違うものかとびっくりします。まあ上の画像ではどれだけ違うかわかりませんが、全然違います。どれくらい違うかと言うと…

ターニャさん 
ロッタ 

 「幼女戦記」での“化け物”ターニャの時と「ACCA13区監察課」での“普通の女の子”ロッタの時の悠木碧の演技の差くらいは違います。おいちゃんはすげーなやっぱり。

宮前先輩の兄貴 
グラサン竹刀講師 

 で、どっちがいいと訊かれたら…もちろん宮前先輩の方が断然いいに決まってるじゃないですか。宮前先輩は裏表がなさそうだし。花火は声は綺麗だけどパーペキメンヘラこじらせ系女子なので面倒くささマックスですし。透(とおる)という男っぽい名前が玉に瑕だけど。ちなみに宮前先輩の兄貴って、常木燿編でグラサン竹刀だった夏期講習の鬼講師ですよね?世間は狭いなあ。

謝罪する放駒理事長 - コピー 

 本日は記憶に残る一言ですが、たまには実在の人物のセリフを取り上げようと思います。元幕下・恵那司のセリフというかメールの文面です。

大相撲八百長問題 - コピー 

 2011年に起きた大相撲八百長事件。発覚の端緒となったのは2010年の大相撲野球賭博問題(日本相撲協会の現役の大相撲力士、年寄などによる野球賭博などの違法賭博への関与をめぐる問題)で、警察が押収した力士の携帯のデータから、大相撲本場所での取組での八百長への関与が窺われる内容が判明したことでした。

春場所中止 - コピー 

 特別調査委員会の調査の結果、八百長を認めた力士が出たことで大問題となり、春場所の開催中止にまで至りました。この問題で引退・解雇された力士は58人にも及び、多数の親方も処分を受けました。まあ昔の話だし、今回この問題を糾弾したい訳でもないので詳細は控えておきましょう(調べれば簡単に判ります)。

恵那司 - コピー 

 この時、関取同士の八百長を画策したとみられるメールを出した一人が恵那司でした。当時30歳を超えていた恵那司は、関取への昇進は果たせず、現役晩期は幕下と三段目との往復が続いていました。その恵那司が春日錦に送った文面が今回の記憶に残る一言「立ち会いは強く当たってあとは流れでお願いします」です。これに対して春日錦は「了解いたしました!では流れで少し踏ん張るよ。」と答えたとか。

春日錦 - コピー
 
 春日錦は2011年初場所で現役を引退して親方になっていましたが、八百長への関与により職務停止2年の処分を下された後、2011年4月に退職しています。恵那司も同月に引退しています。

八百長を報じるニュース 

 八百長関連メールの文面はその他にも多数あるのですが、このフレーズが問題を端的に象徴し、かつ使い勝手が良かったらしく、当時は流行語にもなりました。

週刊現代中吊り広告 - コピー 

 当時、課長と不倫(?)する某OLさんは、“この前のメールにはビックリ。「明日のデートは夕方からホテルに行こうと思っているのですが、部屋に入ったら立ち合いは強く当たって、あとは流れでお願いします」だって。完全に大相撲の八百長メールのパクリじゃん。それで私も「流れですぐに挿入されないように少しは踏ん張るよ」と返信。本当にバカですよね、私たち。”という投稿をしてたりします。実に楽しそうだなあんたら(笑)。

東京中日スポーツの記事 

 写真やテキストを投稿するオンラインサービス「bokete」にも色んな作品が投稿されていましたので一部ご紹介。

鳥獣戯画編 

 鳥獣戯画編。ウサギを投げ飛ばすカエルですが、実は八百長だったのか。一説には負けっぷりにもオプション価格があったりするとか。ここまで吹っ飛ぶとはオプション料金払ったんですかね。

アンパンマン版 

 ア○パ○マン編。相手に黒い囁きをしているア○パ○マン。ところで相手は何マンなんでしょうかね。ネギ?

ウルトラマン編 

 ウ○ト○マン編。メフィラス星人に八百長を持ちかけるウルトラマン。確かにメフィラス星人はウルトラマンに負けなかった強者ですが…はッ、あの引き分けすらも八百長だったの?

ストイコビッチ編 

 ストイコビッチ編。監督なのに退場になったピクシーの言い訳。選手時代もグランドでプレーしているより退場になっている時間の方が長いと言われた人ですが、監督になっても…。だがそれがいい。

プロレスラー編 

 プロレスラー編。試合前の煽りで八百長を持ちかけるとは。しかしこの二人誰なんだろう。ジャイアント・キマラのような気がしていたけど、別にそういうことはなかったぜ!

北朝鮮編 

 北朝鮮編。若き指導者に何事かを囁く軍幹部。対米外交姿勢とかについてのアドバイスなんでしょうかね。実は異母兄弟抹殺に関しての…あわわわ。

ナースコール:男心を惑わせる「ナース」という単語

春一番

 昨日は関東地方で春一番ということで、強い南風が吹きました。気温もぐっと上がって20度超えとか。思わず「アツゥイ!」と言いたくなりましたが、これはヤツがやって来ますね。そう、スギ花粉です。でも一転して今日は花粉が飛びそうにない寒い曇天。三寒四温という時候なんでしょうか。

ナースコール 

 本日は宮子あずさの「ナースコール」を紹介しましょう。宮子あずさの本は初めて読みました。

宮子あずさ 

 宮子あずさは1963年6月30日生まれで東京都出身の看護師・エッセイストです。母は作家・評論家の吉武輝子。この人は慶應義塾大学卒業後に東映宣伝部で活躍し、日本で初めての女性宣伝プロデューサーとなった人で、フリーになってからは女性問題中心に評論活動を行い、参議院選挙に出馬したりしています(落選)。

吉武輝子 
 
 宮子あずさはママンである吉武輝子の強い勧めで明治大学に入学したものの、学歴だけを手に入れるということを疑問に感じて中退し、看護専門学校に入り直して1987年から看護婦として勤務しました。文中看護婦と書いたり看護師と書いたりややこしいですが、今女性の「看護師」と呼ばれる人々をかつては「看護婦」と呼んだのでした。男は「看護士」と呼ばれていましたが、2001年に「保健婦助産婦看護婦法」が「保健師助産師看護師法」に改定されたことにより、2002年3月から男女ともに「看護師」という名称に統一されることになりました。しかし、「看護婦」という名称に差別とか蔑視といったニュアンスは感じられず、むしろそこはかとなく素敵な雰囲気を感じるのは私だけでしょうか。可能であれば「看護婦」という名称は残して欲しかったな。ま、ままならぬのが人生です。

 

 2009年3月に勤務先を退職し、現在は精神科病院のパート訪問看護師として勤務するかたわら、大学非常勤講師やコラムニストを務めています。看護師として勤務中も通信教育で短大や大学を卒業し、教育学修士や看護学博士の称号も所有しています。看護師の仕事も夜勤とかあって不規則そうですし、激務そうですが、よく学問への興味を持ち続けたものですね。母からの遺伝なんでしょうか。

単行本ナースコール

 看護婦となる前から著作があった作者ですが、本書は「ナースコール : だから看護婦はやめられない」と題して1997年7月に講談社ニューハードカバーとして刊行されました。内容は科学雑誌Quarkと東京新聞に連載されたエッセイをまとめたもので、1993年から1996年の頃の作品がテーマ別に並び替えられています。

 文庫版は2010年12月15日に講談社文庫から刊行されました。例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。

白衣の天使達 

 看護師の仕事は魅力的!? 「○○さん、頑張ってね」と患者さんを励ますうちに、不思議なことに自分までが元気になってくる。ときに、やりきれなさや限界を感じつつも、「“辞めたい辞めたい”も“仕事が好き”のうち」と続けてこられた理由を、病院内の人間ドラマや身近な出来事で綴った、看護師の本音エッセイ。

 夜勤、不定休、ミスの許されない仕事、死との直面…私の看護師に関するイメージはひたすらハードそうだな、というものなんですが、宮子あずさに言わせれば精神的に追い詰められたりしたことはあっても、辞めようと思ったことはないのだそうです。内科と神経科(精神科)で勤めたからなんでしょうか。というのは外科手術に立ち会って失神した経験があるそうなので。

夜のナースステーション - コピー 

 どんな病院でも色んな患者がいていろんな医者・看護師がいる。そんな中で一所懸命に務めても評価されず心が折れそうになったりもする。それでも続けていけるのは、性格的な向き不向きもあるんでしょうが、やはり心の持ちようなんでしょうね。同じ職場に長く勤務する人が少ないそうですが、それは看護師という仕事を辞めたということではなく、別の病院などでやはり看護師として勤務していることが多いようです。そういう意味ではつぶしがきいて羨ましい職業でもありますね。

 「○○さん、頑張ってね」と患者さんを励ますうちに、不思議なことに自分までが元気になってきたり、時としてやりきれなさや限界を感じつつも、「“辞めたい辞めたい”も“仕事が好き”のうち」と続けて行く看護師達。心を折るような態度を取るのが患者なら、ほっこりさせるのも患者。あるだろうとは思っていましたが、病院内の人間ドラマはそれはそれは色々あるようですね。

ナースのお仕事劇場版 - コピー 

 病院に行ったことがない、という人は日本ではほぼいないでしょうけど、実は私、入院体験がありません。それは幸せなことには違いないんですが、ちょっと美人ナースに甲斐甲斐しく看護してもらうなんて憧れがあったりします。まあ実際入院したらそんな心に余裕はないのかも知れませんし、ナースは忙しいから四六時中付き添ったりしてくれないのでしょうけど。

透けない白衣 

 ちょっと前に「透けない白衣」が開発されたというニュースがありましたが、制作会社には「こんなもの作るな」と怒鳴る電話や、無言電話がかかってきたとか。まったく男ってヤツはつくづくバカですねえ…

ナースキャップ 

 かつては白衣と共に看護婦を象徴するものとして、ナースキャップがありました。看護学生が病棟実習に出る前に看護師としての意識を高めるため、初めてナースキャップをかぶる「戴帽式」というセレモニーがあったりして、たとえオールヌードだったとしてもナースキャップさえ付けていれば看護婦さんだとわかるという、象徴的アイテムでしたが、ナースキャップの形を整えるノリが細菌増殖の温床になっていることが判明したり、ベッドサイドで処置をする際にナースキャップが点滴セットに触れて外れそうになったり、精密な医療機器のボタンに触れて誤作動をさせたりなどの事故がしばしば起きたことから、現在ではほぼ廃止されているようです。

戴帽式 

 ただし、戴帽式はやっと一人前の看護師になれるんだという喜びと自覚を新たにする伝統の行事なので、現場においてはナースキャップが廃止されても、式典においてはナースキャップを頭に載せてもらうということを継続している所もまだまだあるようです。

 ところで…看護婦とかナースという単語がどれだけオノコに影響を及ぼすかについてですが、本書のタイトル「ナースコール」。これ自体に決して性的なニュアンスはないはずなのに、ググってみると出てくるのは…

風俗のナースコール 

 例えばこれ。痴女M性感だそうですが…ナースコールとどういう関連があるんでしょうか。

ナースコールガール - コピー 

 さらにこんなのも。ナースコールガールって、駄洒落かYO!美乳解放病棟だそうですってよ、奥様!!
ゲーム版ナースコール - コピー ナースコールパケ裏 - コピー

 当然(?)エロゲーにもあったナースコール。どうやら1998年頃のゲームのようですね。セックスをしても最後までイケないという深刻な悩みを抱えた主人公が訪れたのは、可愛い美少女達の待つ病院だった…という設定ですが、本当にそこは病院なのか?上にあった痴女M性感なんじゃ…

映画版ナースコール 
 映画もありました薬師丸ひろ子主演の「ナースコール」。1993年の作品ですが、ということは本書が原作ということは無いわけですね。ナースの日常を静かに描いたドラマだそうです。

天使大学 - コピー 

 ナースといえば「白衣の天使」ですが、北海道・札幌にはずばり「天使大学」があります。カトリック系で全国的にも珍しい看護栄養学部(看護学科・栄養学科)を有し、多数の看護師、保健師、管理栄養士を輩出しているそうです。まさに天使養成学校ですね。白衣の天使が集う天国みたいな所…というイメージしか湧いてきませんね。

ウルトラセブンと戦うナース - コピー 

 完全な余談ですが、ウルトラセブンにナースという怪獣が出てきました。「宇宙竜」という別名を持ち、金色の竜型ロボットだけど頭部を中心に渦を巻くことで円盤状に変形が可能という。それはともかく、なんでナースという名前なんでしょう。竜ということで「ナーガ」とかだベタですが理解できるんですが。ナースの綴りはNURSEで、まんまナースなんです。

円盤形ナース 

 すっかり本書の内容から脱線してしまいましたが、それだけ「ナース」という言葉が魔力を持っているということで。今後お世話になることもあるでしょうが、せめてなるべく迷惑をかけない患者になりたいと思います。

S先生の言葉:大脚本家・山田太一のエッセイ・コレクション

正男さん

 有望若手女優は出家するは、半島一家の正男さんは毒殺されるはで世間はたいそう騒がしいですね。いやあ、暗殺ってまだまだ過去の遺物じゃないんですね。ゴルゴ13の連載が続く訳です。

某若手女優 

 女優の出家の方はそれに比べればまだしも平和ですが…やはりいきなりだと各方面に大きな影響を及ぼすでしょうね。とりあえずあそこの教祖様は近日中に「正男です。」的な霊界からのメッセージ本を出版しそうな気がします。

S先生の言葉 

 で話はがらりと変わって、本日は山田太一の「S先生の言葉」を紹介しましょう。脚本家として有名な人ですが、山田太一の本を読んだのは初めてです。

山田太一 

 山田太一は1934年6月6日生まれで東京都台東区浅草出身。小学3年生の時に戦争による強制疎開で神奈川県湯河原町に家族で転居しました。神奈川県立小田原高等学校を経て、1958年に早稲田大学教育学部国文学科を卒業しました。

木下恵介 

 在学中から小説を書いていましたが、当初は教師になって休みの間に小説を書きたいと思っていたようです。しかし就職難で教師の口がなかったため、松竹に入社し、助監督として木下惠介監督に師事しました。木下恵介といえば黒澤明と並ぶ巨匠で、「二十四の瞳」とか「喜びも悲しみも幾歳月」「楢山節考」などの代表作があります。

岸辺のアルバム 

 1965年に松竹を退社して、フリーの脚本家となり、主としてテレビドラマの脚本を手掛けました。代表作は「岸辺のアルバム」「早春スケッチブック」をはじめ、「男たちの旅路」「ふぞろいの林檎たち」などなど。倉本聰、向田邦子と並んで「シナリオライター御三家」と呼ばれました。

異人たちとの夏 

 脚本:シナリオだけでなく、小説やエッセイも多数手掛けており、小説「異人たちとの夏」では山本周五郎賞と日本文芸大賞、エッセイ「月日の残像」では小林秀雄賞を受賞しています。「S先生の言葉」は、多数執筆されたエッセイの傑作編の第一弾として2015年10月10日に河出文庫から刊行されました。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

早春スケッチブック 

 「岸辺のアルバム」「早春スケッチブック」「ふぞろいの林檎たち」…名作テレビドラマの数々を送り続けた脚本家は、折にふれ、思いや記憶を書き留めてきた。忘れえぬ人、心に残る言葉、家族、戦後日本。頁をめくれば哀愁を帯び色気を放ち、大切な何かがよみがえる。山田太一エッセイ・コレクション第1弾。

月日の残像 

 本書には70年代中盤頃から2000年代初頭のエッセイが収録されています。身辺雑記から青春時代の回想、松竹の助監督時代の思い出、他著の解説など雑多に亘っていますが、特に面白いと思ったのは青春時代の回想でしょうかね。

ヒロポンを扱った漫画 

 表題作の「S先生の言葉」は中学校で出会ったヒロポン中毒のS先生を描いた作品です。ヒロポンとは要するに覚醒剤のことで、現代だったら問答無用で逮捕なんですが、戦後の一時期までは合法だったようで、「サザエさん」で有名な長谷川町子のマンガにも原作にもヒロポンを扱った作品があります。

ヒロポン 

 ちなみに使用すると、頭にあったモヤモヤが一気に消え去り、爽快な気分になって、体に力がみなぎるような錯覚をして、途轍もない集中力を発揮するそうです。代わりに効果が切れるとこの世の終わりと思わんばかりの苦痛が待っているそうなので、君子危うきに近寄らずがよろしいようで…

パスカルのパンセ 

 その戦争体験故の悪癖を持ったS先生ですが、授業は実に真面目だったようで、パスカルの「パンセ」の一節を引用して「宇宙は、なにも知らない。だから、人間の尊厳の全ては、考えることのなかにある」の「だから」の部分を「そうだとすれば」に変えたときの相違を縷々述べたのだそうです。「宇宙はなにも知らない」と断定できるのであれば「だから」でもいいのですが、できないのであれば(普通できませんね)「そうだとすれば」と言う方が適切であると。そして山田太一は自分には「そうだとすれば」という姿勢が足りないのであとつくづく思い知らされたのだそうです。

ふぞろいの林檎たち 

 青春時代は多感ですから、色んな人のセリフや書物の一節が大きな影響力を与えますが、S先生に傾倒するあまり、中学教師こそが教職のなかで一番重職だという思いが今でもあるとか。私も先生というものに尊敬の念を持てたのは中学生まででしたね。高校教師というのものにはどうしても批判的な見方をしてしまったような。それだけ精神的に成長して、盲信とかいうものから脱却して批判精神が涵養されたともいえるのでしょうけど。

マリリン・モンロー 

 「モンローの魅力がわからなかったころ」では、高校時代は奥手な友人の恋路を応援するために色々とバカやっています。エッセイなどで青春時代を取り上げたものは大抵バカをやっているのですが、山田太一も例外ではなかったということですね。もっとも真面目一筋で勉強ばかりしていたというのではエッセイの題材になりませんが。男子高校生なんてものは多かれ少なかれ昔も今もバカやったり余計なことやったりしているものなんですね。男の“性”なんでしょうか……

ポケットジョーク ブラックユーモア 

 「抜き書きのすすめ」では、学生時代から読んだ本の抜き書きを行っていたという話で、読み返すと当時何に感銘を受けたのかがわかって日記のような効果があるとか。また今読んでも感銘を受けたり、逆にさほど感銘しなかったりするのが、年齢を重ねても変わらない感性とか変わってしまった感性を象徴するのかもしれません。私は抜き書きはしないのですが、角川文庫の「ポケットジョーク⑤ブラックユーモア」では面白かったものに赤線が引いてあって、これを読むと感性の変化がわかって結構面白いです。一部は2012年5月20日付のブログ記事に掲載しております(http://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-10.html)。

性悪猫 

 やまだ紫の「しんきらり」と河合隼雄の「とりかえばや、男と女」の解説文も収録されていますが、残念ながらどっちも読んでいませんでした。やまだ紫といえば「性悪猫」ならずんぶん昔に読んで大いに感銘を受けましたね。  

記憶に残る一言(その80):留学生アルバイターのセリフ(孤独のグルメ)

好きになってきた茜先生

 「クズの本懐」の5話を見たら、クソビッチ先生こと茜先生のことが一周回って好きになってきました。常に男の目を気にしてあざとい演技をし、「ラッキースケベ」を故意に演出し続けるその努力は偉いですね。昨日と同じ服を着てあっさりお泊まりを見抜かれる間抜けさ(これは天然でしょう)といい、アホ可愛いというかビッチ可愛いというか。こうなったら徹底的にやって下さい。花火と麦が本気で付き合う展開になったら、You、麦も奪っちゃいなYO!

JD時代の茜先生 

 さて本日は「記憶に残る一言」なんですが、11日にマンガ家の谷口ジローが亡なくなったとのニュースが今日報じられたので、「孤独のグルメ」から紹介したいと思います。

谷口ジロー 

 孤独のグルメについては2015年2月18日付の当ブログ記事(既にhttp://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-947.html)で紹介しておりますので省略しますが、主人公の井之頭五郎、ただのB級グルメなおっさんではなく、祖父が古武術の館長で、五郞も高校まで古武術を叩き込まれていたということで、意外に筋肉質だったりします。そして修行の成果?を繰り出してみせたのが第12話「東京都板橋区大山町のハンバーグランチ」です。

洋食屋に入る五郞さん
厳しい店主 

 大山町の線路沿いにある洋食店にハンバーグランチを求めてやってきた五郞さん。その店では言葉がカタコトの外国人留学生が働いてますが、店主がやたらに厳しく叱りつけています。退店しようとした五郎ですが、店主に引き留められたので、オススメだというハンバーグランチを注文します。

 作中の大山ハンバーグランチ

 出てきた大山ハンバーグランチは550円と実に安いのに、鉄板皿に所せましと様々な具材が盛りつけられています。半熟の目玉焼きが乗った大きなハンバーグ。ケチャップベースのソース。カレー味のスパゲティとポテトフライ。「ほー いいじゃないか こういうのでいいんだよ こういうので」と五郎さんもご満悦。

五郞さんも評価するハンバーグランチ 

 しかし、せっかくのランチを堪能しようとしている間にも厨房での険悪なやりとりが耳に入ってきます。電話で出前の注文を受けた料理の調理に関して留学生店員の不手際が発覚したようです。留学生店員に対する叱責は、五郎がランチを食べているのも構わずにネチネチと続き、店主が「チョップ」で留学生店員に体罰を加えるに至り、ついに五郎の堪忍袋の緒が切れてしまいます。

ネチネチ店主 
 店主のチョップ

 五郎さんは席から立ち上がり、店主に向かって「とても空腹だったのに、あなたが騒いでいたせいでハンバーグランチがぜんぜん喉を通らなかった」と訴えます。しかし「うるさい。知ったことではない。お代はいらないから帰ってくれ」と取り合わない店主。

五郞さんのクレーム 
 
 それを聞いた五郎さん、切なげな表情を浮かべながら「あなたは客の気持ちを全然まるでわかっていない!モノを食べる時はね誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……」とのたまいます。まるでポエム朗読。
 
まるでポエム 
五郞を小突く店主 

 それに困惑した店主は「なにをわけのわからないことを言ってやがる。出て行け」と言って、五郎の肩を小突きます。その瞬間、五郎さんはすさまじい速さで店主に「アームロック」をキメます。

アームロックを決める五郞さん  
折にいく五郞さん 

 肩とヒジと手首を固められた店主は「痛っイイ お…折れるう~~」と悲痛な叫びを上げます。そのとき、留学生店員が発したのが今回の記憶に残るセリフです。

それ以上いけない 

 腕を折られそうな店主と、そうしたら傷害罪で告訴されそうな五郞さんの双方を助けるWinWinな魔法の言葉ですね。アームロックを解除した五郎さんは店を後にしますが、留学生店員の「目つき」に釈然としない思いをかかえながら、さきほどの振る舞いを悔みつつ、五郎は大山町を去っていくのでした。

釈然とせずに去って行く五郞さん 

 作中では「…あいつ…あの目」しか言わないので五郞の心情がわかりにくいですが、ドラマCD版では「…あいつ…あの目…なんであんなに悲しそうな目をするんだ」と言っており、留学生店員のあまりにも悲しそうな目を見て思わず呟いたもののようです。

アームロックをかける五郞
ココアにアームロックを掛けるリゼ 

 ネットでは、関節技や絞め技をかけているネタイラストに使われるほか、肉体的または精神的に瀕死の相手へ追い打ちしようとするキャラに対してとか、やっちゃいけないかやるとマズイ行為をしようろするキャラに対してのツッコミとしても使用されているようです。 パパンが傭兵だったリゼならコマンドサンボとか習得してそうです。時に結構うざいかも知れないですが、ココアの腕を折るのは堪忍してつかぁさい。そばにいるはずのチノ、早く「それ以上いけない」と言うんだ。

アームロック再び 

 ちなみに五郞さん、腕っ節には結構自信があるようで、「孤独のグルメ2」でも大立ち回りを見せています。

大山ハンバーグランチ 

頂上決戦:警視庁公安部・青山望シリーズ第7弾

全部インスタイル

 最近テレビで見たんですが、シャツなどのトップスをパンツやスカートにインしてもオシャレだという「全部イン」とか「前だけイン」なんて着こなしが女子の間に流行っているそうじゃないですか。私は大抵全部イン状態で生きてきたので、「遂に時代が私に追いついてきたか」「かぁ~つらいわ~!追いつかれてしまったか~!オレのファッションセンスが遂に世間に追いつかれてしまったか~!かぁ~!」(地獄のミサワ風)なんて思っているのですが…(笑)。どうせイケメンはいいけどそうじゃないのなダメか言うんでしょうな。

あ~はいはいはいはい 
 
 さて話は変わって本日は濱嘉之の「頂上決戦 警視庁公安部・青山望」を紹介しましょう。単行本描き下ろしで2016年1月10日発刊ということで1年以上前の作品なんですが、私にとってはほぼ最新刊。既に第9弾まで発刊されているようですが、私が読めるのは図書館がいつ置いてくれるかによりますね。ここまで置いたんだからいずれは置いてくれるんでしょうが。

警視庁公安部・青山望 頂上決戦 

 前巻「巨悪利権」では青山望をはじめとする警視四人組の中から、刑事部捜査二課の龍一彦が暴力団に襲撃されて病院送りにされましたが、今度は青山本人に刺客が迫ります。例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。

フグの肝 

 初冬の温泉郷で発生したフグ毒殺人は、公安vs巨悪「頂上対決」の幕開けだった―。上海と香港の中国マフィア勢力争い、新旧日本ヤクザの利権争い、そして警視庁に巣食う派閥争い。それぞれの大分裂が絡み合う中、青山ら同期カルテットが対峙する新たな敵の正体とは。公安警察を知りつくした著者による人気シリーズ第7弾! 

博多湾 

 前巻で「悪のカリスマ」とされた半グレ団体「東京狂騒会」出身の神宮司武人を逮捕した青山ですが、その背景には日本一の巨大暴力団岡広組、チャイニーズ・マフィア、極左団体、宗教団体、さらには政治家と様々な勢力の思惑が隠されていました。特に岡広組は、旧来の下部組織からの上納金収奪型の総本部と、経済活動に特化した反総本部に二分され、抗争状態に入ることになってしまいました。このあたり、現実の巨大暴力団の分裂抗争を思わせますね。
 
爆買い 

 博多には巨大客船で大陸国家から大挙して観光客が押し寄せるということで、大きなビジネスチャンスが潜在しました。それに早くから目を付けていた反総本部側と、それを奪わんとする総本部側の戦いは、鉄砲玉の派遣という段階に。それを阻止線とする青山率いる警視庁公安部の精鋭部隊は、福岡県警もぶっ飛ぶハイテク捜査により次々と犯罪計画を解明していきます。

異形鉄筋 

 しかし、岡広組もバカばかりではありません。戦争におけるセオリーどおり、敵の指揮官を狙うという作戦を取ってくることになります。前回は龍を狙いましたが、今回はずばり青山がターゲットになりました。今まで作中では暴力的修羅場に遭遇してこなかった青山ですが、今回ばかりは危機一髪となりました。

博多の屋台

 ですが、九死に一生を得たような形ですが、襲撃が失敗してみればどこから情報が漏れたのかなど反撃の機会が生まれることになります。公安警察内部にも敵の手が伸びていることを知り、青山の弔い合戦(死んでないけど)に燃える部下達の働きにより、今回は関東のチャイニーズマフィアのトップである袁偉仁のタマを取ることになります。

青山のレストラン 

 博多に東京にと多忙を極める青山ですが、忙中閑ありといいますがその諺とおりに博多の屋台や有楽町のガード下で料理に舌鼓を打ちつつ酒を飲む青山。出来る男は仕事と遊びを両立するんでしょうかね。そして私のような出来ない男はどっちも中途半端で何のための人生かわからないと。

有楽町のガード下

 前巻でカルテットの一人藤中の親戚とお見合いをした青山ですが、相手の銀行総合職の武末文子との交際は続いています。デートはちゃんと青山のレストランとかでやってるんですね。グルメで酒飲みの青山ですが、文子もウワバミ級。酒癖の悪い人は困りますが、いい酔い方をするなら飲める人の方が楽しいですね。

 仁義なき戦い

 今回命が助かったのも一緒にいた藤中のおかげですから、これはもう結婚するしかないでしょう。銀行の総合職で給料も青山より高いらしい文子と一緒なら、グルメ道も酒道も楽しく進めそうです。結婚も時間の問題かな

新宿黒社会 

 このシリーズは現実の世界の動きともかなり連動しているので、この団体のモデルはあれだなと想像するのも楽しいです。例えば岡広組→岡山・広島→その先の県は…と考えるとモデルは一目稜線ですね。その他も大体見当がついたりします。楽しみながら世相がわかるという学習漫画的な要素もあるようです。

後藤田正晴 

 濱嘉之は警察出身の作家ですが、作中で警察出身の政治家については青山の口から毒舌をかましています。唯一偉かったと評価している政治家は後藤田正晴のようです。後藤田さんの評価が高いのは世間的な共通認識のようですが、弟子格の佐々淳行あたりももし政治家になっていたら評価されたんでしょうか。

佐々淳行 

 余談ですが、後藤田さんが「絶対に総理にしてはいかん。あれは(市民)運動家(出身の政治家)だから統治ということはわからない。あれを総理にしたら日本は滅びるで」と発言したその人、現実に総理になってしまったんですよね。その結果えらいことになったのは周知の事実ですが…やはり慧眼!え?誰のこと、ですか?それはWikipediaあたりで後藤田さんの記事を読んでいただければ自ずと…

KN人 

赤い指:“家族の闇”を暴く加賀恭一郎シリーズ第7作

メイトーのなめらかプリン

 最近メイトーの「なめらかプリン」にはまっています。プリン系はそもそも好きなんですが、コンビニで色々試してみた結果、コストパフォーマンスが一番優れているのはこれではないかと。公式HPでの宣伝文句は“風味豊かな牛乳と卵をたっぷり使い、卵の力だけでじっくり丁寧に蒸しあげました。クリーム感が引き立つ、上品な味わいです”ということです。一見量は少なめなんですが、密度が高くて満足感があります。

とろける杏仁豆腐 

 後は雪印メグミルクの「アジア茶房 杏仁豆腐」。パッケージには「濃厚とろける杏仁豆腐」と書いてあります。公式HPの宣伝文句は“とろけるような食感の、本格的で濃厚な味わいの杏仁豆腐です。「杏仁霜(あんにんそう)」にこだわった杏仁豆腐を、手軽にたっぷりとお楽しみいただけます。”ということです。トロトロ感があって名前どおり濃厚です。杏仁霜てなんやねんと思ったら、杏子の種を粉末に加工して砂糖、コーンスターチ、全粉乳などを添加したものだそうです。コンビニには色んなスイーツが売られていますが、現時点ではこの二つだけをを交互に食べてやっていけます。

赤い指 文庫版

 さて本日は東野圭吾の「赤い指」を紹介しましょう。最近はまっている加賀恭一郎シリーズの一作で第7弾になり、以前読んだ「新参者」の直前の話となります。シリーズ第2弾「眠りの森」では警視庁捜査一課の刑事だった加賀恭一郎は、所轄刑事となって練馬署で勤めています。優秀な刑事として名を馳せている加賀恭一郎が本庁から所轄に異動したのは、「眠りの森」で恋に落ちた浅岡未緒の裁判で、弁護側の情状証人として出廷したせいのようです。そしてこの後「新参者」でさらに日本橋署に異動する訳ですね。

 「赤い指」は2006年7月25日に単行本が講談社から刊行され、2009年8月12日に文庫版が講談社文庫から刊行されました。東野圭吾が「容疑者Xの献身」でで直木賞を受賞した直後に発表された、受賞語第一作の書き下ろし長編小説です。

単行本 赤い指

 本作から加賀の従弟で捜査一課刑事の松宮脩平や看護師の金森登紀子など、以降のシリーズ作品にも登場するシリーズキャラクターが登場します。一方、当初から確執があった父隆正は本作中で亡くなります。加賀父子の確執の詳細が判明するのも本作です。それでは例によって文庫本裏表紙の内容紹介です。

 少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。 

修平と恭一郎 

 元々短編として発表したものを、長編向きに書き直した作品で、その間に6年間が経過しています。作者曰く「構想6年、執筆2か月」だそうです。「このミステリーがすごい!」 2007年版では9位、2006年の「週刊文春ミステリーベスト10」では4位になっています。文庫本は2009年8月24日付のオリコン“本”ランキングの文庫部門で首位での初登場以来、7週連続首位を獲得し、累計部数は135万部を超えています。

 本作は犯罪を推理するものではなく、犯人サイドから犯行の模様が描かれた後、恭一郎達の捜査により真相が暴かれるという「刑事コロンボ」のような倒叙物と呼ばれる形式になっています。なので読者は真相を予め知っており、恭一郎がそこにどのようにして到達するかを見守るという形になるのですが、本作の場合は読者も知らなかった真相の一端を加賀が暴くことになり、驚かされます。

赤い指ポスター 

 認知症の老人を抱える家庭の物語で、高齢化社会の断面図的な状況の中、普通のサラリーマン家庭だと自分達が思っていた家庭が、実はそれぞれの深刻な問題を抱えていることに見て見ぬふりをしていたものが、遂に臨界点を超えてしまった時に何が起きたか、そしてどのように対処しようとしたかという物語です。

 息子が犯した少女殺人事件を隠蔽しようとする家族。しかし警察の追及にどうにも逃れられぬと悟った時にとった、愚かにして非道な手段とは。まあ読んでいて一番腹が立つのは殺人犯である息子・直巳なんですが、中3にして引きこもり気味でペドフィリアの傾向が強く、自らの犯した犯行について罪悪感が乏しく、あらゆる責任は両親など自分以外に押しつけようとするどうしようもない奴です。

真相を暴く加賀恭一郎 

 そのバカ息子を溺愛する妻八重子が二番目に腹が立つ人物で、我が強くて、自分と息子の直巳のことしか頭になく、姑とは折り合いが悪い。まあ嫁姑問題については一方的にどっちが悪いとは言い難いですが、直巳を溺愛し、罪を償わせようともせず、彼の将来を守ることを第一にし続けます。こんなバカ息子にはろくな未来がないと思うんですけどね。

 じゃあ主人公格の夫昭夫に罪がないのかといえばそういう訳でもなく、嫁姑問題や息子の問題に関し、仕事を口実ににはその場しのぎな言動を繰り返して目を背け続けていました。そして冷え切った関係の家族に安らぎを見出せず、水商売の女性と浮気をしていたりもしました。

赤い指 

 で昭夫の母にして八重子の姑である政恵は、認知症になった夫を看取った後、掃除中に足を骨折したことで、息子一家と実家で同居することになりましたが、今度は自身が認知症となってしまいました。

 唯一の救いは昭夫の妹の田島春美が近所に住んでいて、認知症になった政恵を思い出の詰まった実家から出すべきではないと考え、施設に入れたがる八重子に対し、自分が政恵の世話をすると説得して、毎日のように前原家に通って政恵の面倒を見てくれたことでした。家族に関する問題を何一つ素人もせず、八重子にも強く物を言えない兄の昭夫には呆れかえっています。

惚けたお祖母ちゃん 

 愛するムチュコたんが犯罪者になることを回避するために取った外道の手段…それは認知症の政恵が少女を殺したことにしようとするものでした。認知症だから自分が置かれた状況もわからず、故に罪も問われない公算が高く、愛する孫を救うことにもなる…一石二鳥どころか三鳥を狙った虫のいい作戦ですが、それに対して恭一郎がどのように対処するかが本書のキモです。

 家族の問題の物語ですが、それは加害者一家のみならず、恭一郎の側にもあります。癌で余命僅かな父の隆正を見舞おうともしない恭一郎。従弟で警視庁捜査一課刑事となった松宮修平は、隆正の妹の子にあたり、母子家庭で苦しい家計だった松宮家に救いの手を差し伸べ、援助してくれたのが伯父の隆正なので、実の父のように敬愛しています。刑事を志したのも、隆正が就いていた仕事だということが大きいようです。

恭一郎のパパン 

 そんな修平は、病に伏した隆正の元を訪ねようとしない恭一郎に大きな不満を抱いていましたが、隆正が息を引き取った後に恭一郎と隆正の深い絆を知ることになります。隆正は、担当する看護婦の金森登紀子と将棋を指しているのですが、実は恭一郎が指示した手を打っているだけでした。つまり隆正は恭一郎と将棋を指していたことになります。恭一郎のママンは20年前に失踪し、5年前に孤独死しているのが発見されました。修平はだから恭一郎が隆正に辛く当たっているのかと思っていましたが、実は孤独に死ぬことを望んで恭一郎に見舞いに来るなと命じたのは隆正の方だったのです。修平にも来るなと常々言っていましたが、何も知らない修平は恭一郎が来ないことに反発し、却って頻繁に顔を出していたのでした。

テレビドラマ版 赤い指 

 2011年1月3日ににTBS系「日曜劇場」枠で「東野圭吾ミステリー 新春ドラマ特別企画 赤い指〜「新参者」加賀恭一郎再び!」と題してテレビドラマ化されています。恭一郎を演じる阿部寛は、本作を加賀恭一郎シリーズの中で一番好きな作品と公言しており、原作に近づけて演じたそうです。

好きな声優さん第5期(その5):杉田智和~誰もついて行けない深淵の超オタク声優

小林さんちのメイドラゴン

 いきなりですが、「小林さんちのメイドラゴン」も視聴することにしました。最初は「原作クール教信者…ああ、『おじょじょじょ』の人ね。嫌いじゃないけどそんなに好きという訳でもないんだよな…」と思って、視聴作品も多いことだしパスしようと思っていたのですが、本日紹介するお方が強く推すものでやむなく。「のんのんびより」もこのお方の仲間が推しているのを聞いて見たんですよね。

桑原由気 

 ヒロインのトールを演じている桑原由気、声も姿もとっても可愛い声優さんのですが、このお方ラジオの番組に出演していて子供の頃からファンだと言っていました。ついでに高橋美佳子の「美佳子@ぱよぱよ」を聞いたら800回記念でこのお方が登場していて、20年来の知己だと言っておりました。何気に芸歴が長いですね。

杉田智和その1 

 そういう訳でついにこのお方を紹介する機が熟したのだろうということで、本日は「好きな声優さん」です。前回の速水奨に続いて何と連続して男性声優。今回は杉田智和を紹介します。

杉田智和と高橋美佳子 

 杉田智和は1980年10月11日生まれで埼玉県出身。高校在学中の芸能事務所「ミューラス」に所属し、17歳の時に「仮面ライダー」のプレゼント告知ナレーションで声優デビューしました。このミューラスはバンプレストの子会社でしたが、採算が見込めないということで2001年9月30日付で解散となりましたが、当時高橋美佳子も所属していたので、共に声優活動最初期からの知り合いということですね。アニメデビューは何と浪人中の1999年の「魔装機神サイバスター」で、大学卒業まで学業と並行して声優活動を継続していました。

坂田銀時 

 2006年に「銀魂」の坂田銀時、「涼宮ハルヒの冒険」のキョン役でブレイクし、人気声優の座を不動のものにしました。やはり人気声優の中村悠一とは同期・同年齢といことで非常に仲が良く、中村悠一が一人暮らしを始めた時に、孤独感に耐えられず杉田智和に弱音を吐いたところ、「お前が帰れって言うまで泊まりに行ってやる」と中村宅に泊まってそこから仕事に通ったそうです。一週間に4泊もしたということで、中村悠一も「さすがに帰ってくれ」と言ったとか。水樹奈々に言わせれば二人は愛し合っているらしい。「ウホッ!」なのかッ「アッー!」なのかッ

中村悠一 

 声真似が非常に上手く、石塚運昇、シャア(池田秀一)、アムロ(古谷徹)、銀河万丈などは酷似しており、その他にもレパートリーは非常に豊富です。また独特なネーミングに定評があり、「ゴットゥーザ様」(後藤邑子)、「みかこんぐ先輩」(高橋美佳子)、「イマジン」(今井麻美)、「コンドム」(近藤佳奈子)、「こども先生」(悠木碧)などとユニークなネーミングをほどこしています。

杉田智和その2 

 折り目正しい態度や落ち着いた物腰とは裏腹に「絡みづらい」「フリーダム」「カオス」と定評があり、「声優界で一番絡みづらい声優」との声も。ゲームやアニメ、漫画などの造詣は非常に深く、各作品から引用したコアな小ネタやアドリブを乱発することが原因の一つと見られ、わかる人には面白いのですが、わからない人には「何言ってんだこいつ?」的な感覚になるのだと思われます。

アニゲラ 

 2009年から文化放送超!A&G+で放送している「杉田智和のアニゲラ!ディドゥーーン」は2011年に「杉田智和のアニゲラ!ディドゥーーン!!」に、そして2016年4月からは「アニゲラ!デゥドゥーーン!!!」に改題されて継続しています。「アニメ・ゲームの最新情報を扱うわけではなく、懐かしい話や好きな作品の話をして想いを共有するのが目標」とのことですが、実際取り上げる話題が古い作品であることが多く、私も知っているものが多いので楽しいです。

杉田智和とマフィア梶田

 相方のマフィア梶田はフリーライターですが、番組中のショートドラマに出演しているうちにめきめきと声優力をつけていて、声優でも食べて行けそうなレベルになっています。

 シン・ゴジラにも出演していた

 余談ですがこのマフィア梶田、でかくてスキンヘッドなので「ハードな元ヤン」と勘違いされることが多いそうですが、リア充嫌いでアニメやゲームなどの2次元への熱い愛を持った人で、カオスに流れがちな杉田智和に代わってアニゲラの進行役になったりしています。「シン・ゴジラ」では石原さとみのSP役として出演していました。

水樹奈々もあきれる 

 ファンを通り越して信奉の対象になっている声優に桑島法子と水樹奈々がおり、若手では早見沙織が好きなようです。はやみんは中村悠一と共演する機会が多いため、悔しがっているようですが、自らが原作を担当したゲーム「月英学園」では、メインヒロインの御月英理にはやみんを充て(これはわかる)、英理がブラコン並みに敬愛して止まない兄の御月大河に中村悠一を充てています。自分でやればいいのにと思ったら、桑島法子演じる仮面の理事長の執事役をやっていました。自分のポジションをわきまえているということなんでしょうか。

英理と大河 理事長と執事

 それでは私が知っている杉田智和の演じたキャラを紹介しましょう。「銀魂」は私はあんまり見ていないので、私が杉田智和を知る契機となったのは「涼宮ハルヒの憂鬱」のキョンです。

キョン 

 本名不明の語り手であり、ツッコミ役も兼ね、ハルヒ絡みの厄介ごとを背負い込む苦労人です。何と妹にさえ「キョンくん」と呼ばれる始末。せめて「お兄ちゃん」と呼んで欲しい。テンポ良いアドリブとセリフ回しのうまさで作品を盛りたてていました。

SOS団ご一行 

 性格には大いに問題があるけど結構美少女のハルヒをはじめ、長門有希、朝比奈みくるといった美少女に囲まれて傍目にはリア充生活なんですが、口癖は「やれやれ」。

ジョセフ・ジョースター 

 ジョセフ・ジョースター(ジョジョの奇妙な冒険)。Part2「戦闘潮流」の主人公で二代目ジョジョ。ジョジョネタはトークで頻発させていたのでファンである事は周知の事実でしたが、このキャスティングにはきっと大喜びだったことでしょう。ちなみにママンであり師匠であるリサリサは田中敦子。実にクールなキャスティングですな。

ジョセフとリサリサ 

 紳士だった初代ジョジョ・祖父のジョナサンとは正反対で暴力的で気性が荒いですが、祖父譲りの正義と勇気を併せ持ち、相手の弱点や裏をかくことが得意で、戦闘においてはマジックやイカサマを応用し、不利な状況からでも逆転してみせます。また完全に劣勢の場合は、一旦逃走することで状況の打開を図ろうとする一面もあります。

老人ジョセフ 

 Part3「スターダスト・クルセイダーズ」では矍鑠とした老人として登場しますが、CVは石塚運昇に変わりました。杉田智和は石塚運昇の物真似が上手いので、石塚運昇の真似をさせた杉田智和の続投でも良かったのでは(笑)。

コンラッド大尉 

 リー・コンラッド大尉(バディ・コンプレックス)。やったね、はやみんと共演だぜと思ったら、佐藤利奈演じるエルヴィラ・ヒルと結婚することになりました。はやみん演じたヒナは松岡禎丞演じる渡瀬青葉と結ばれたと思われます。

エルヴィラとコンラッド 

 気さくで面倒見が良い性格で、若いクルーの中で兄貴分的存在でした。素性の知れない青葉にも優しく接していました。キャスティングされた声優を見ても、かなり力の入った作品だったと思われますが、第2期が制作されることはなく、代わりに駆け足で物語を収束させた完結編2話が作られたところを見ると、あんまり売れなかったんでしょうね、円盤…

桐原武明 

 桐原武明(魔法科高校の劣等生)。またもはやみんと共演ですぜダンナ。しかーし、稀代の美少女という設定の司馬深雪をはやみんが演じるのは当然として、「さすがですお兄様」連発でほぼ愛情の敬愛を捧げる兄・司馬達也は中村悠一が演じているということで、杉田智和の入る余地はなかったのでした。

武明と紗耶香 

 魔法と剣道をミックスした剣術部に所属しており、「剣道小町」の異名を取る剣道部(魔法なし)の壬生紗耶香に好意を抱いており、壬生紗耶香が「ブランシュ事件」に巻き込まれた際には達也に協力して掃討戦に参加し、解決に尽力しました。その後紗耶香と交際することになりましたが、紗耶香役は美人声優戸松遥なので、それはそれで結構うらやましいことだと思いますが…

達也と深雪 

 その傍らでは中村悠一とはやみんが四六時中ラブラブすぐるアフレコをやっているので、内心「ぐぬぬ…」となっていたのでしょうか。

烏間惟臣 

 烏間惟臣(暗殺教室)。防衛省臨時特務部所属の男性自衛官で、殺せんせーの監視、E組と暗殺者の調整やバックアップを行なっています。28歳なのに何と階級は1等陸佐だそうです。まあ20歳そこそこで大佐になったシャアという人もいますけど、破格の階級には違いありませんね。

殺せんせーと烏間 

 流石に殺せんせーには通用しないものの、人間の中ではトップクラスの格闘能力を持ち、作中では「人類最強の男」と称されていました。世界最強の殺し屋「死神」(二代目)との勝負においても、素手での格闘戦では遥かに上回って勝利しています。堅物で生真面目な性格ですが、生徒達からは信頼を寄せられており、女生徒からは「カッコいい」と評されています。

烏間とイリーナ 

 恋愛に関しては凄まじく鈍感で、「ビッチ先生」ことイリーナにあからさまに好意を寄せられていることに周囲が気付いていても分からないほどでした。さらには気付いたあとでも仕事を優先しているという朴念仁。でも結ばれて良かったですな。イリーナ役はかのラブリー・森島はるかも演じた伊藤静なので、いい役回りじゃないかと思います。

あっちゃん 

 あっちゃん(坂本ですが?)。本名前田あつし。主人公坂本とクラスメートで、まりお、ケンケンを従えたヤンキー三人組のリーダー格で、仲間からは「あっちゃん」と呼ばれています。武勇伝武勇伝♪

ヤンキー三人組 

 何かと目立つ坂本を標的にいじめを行おうとしますがクールにかわされ続け、その後は仲が良いのか悪いのかよく分からないスタンスで交流を持つことが多くなりました。最終回では、深瀬に操られて坂本を殺そうとしますが、逆に坂本に助けてもらったことで改心しました。

レフ教授 

 レフ・ライノール(Fate/Grand Order -First Order-)。「Fate/Grand Order」は私がプレイしていないスマホゲームですが、昨年12月31日に長編アニメが放映されたのを見ました。レフ教授は気さくで所長からの信頼も篤い、人類の営みを永遠に存在させるために秘密裏に設立された「人理継続保障機関・カルデア」の重鎮したが、その実「カルデア」の中央管理室を爆破し「カルデア」の破壊および幹部とマスター候補の抹殺を謀った黒幕でした。

正体を現したレフ教授 

 正直最初の好人物ぶりから「杉田智和にやらせんでも」と思っていたのですが、終盤正体を現してからは「やはり杉田智和でなければ」と思わせてくれました。ヤバイキャラなら杉田智和。ちなみにヒロイン格のマシュ・キリエライトは、種田梨沙が演じていたのですが、病気療養のため降板して高橋李依に代わっており、アニメでも高橋李依が演じていました。休養に入って4か月が経過しましたが音沙汰がなく…元気に復帰できるといいのですが。

種田梨沙復帰祈願 

 「早見沙織のふり~すたいる♪」にサタンクロスやウォーズマンのコスプレで登場する杉田智和。残念ながらはやみんは「キン肉マン」を全然知らないようですが、上坂すみれは食い付いていましたね。オタ道を進むならはやみんよりすみぺの方が断然相性がいいと思いますが、自分と違うものに憧れるのも恋というものか。ともあれ、面白いのでアニゲラは毎週聞きます。ぜひ古谷徹と池田秀一をゲストに呼んで欲しいです。

はやみんとサタンクロス 
杉田智和その3 

ワセダ三畳青春記:青春の終わりっていつなんだろう?

立春ですよ

 立春ですね。暖かいこともあってか、そこここで梅の花がほころび始めています。冬至から節分までの間、大学のそばにあった穴八幡宮では「一陽来復」のお守りを出していましたっけ。そんなことを思い出したのは、今回読んだ本のせいかもしれません。

穴八幡の一陽来復 

 本日は高野秀行の「ワセダ三畳青春記」を紹介します。高野秀行の本を読んだのは今回が初めてです。高野秀行は1966年10月21日生れで東京都八王子市出身。早稲田大学第一文学部在学中に探検部に所属し、国内はもとよりアフリカ・南米・東南アジアなどを探検しました。在学中にコンゴ探検をまとめた「幻の怪獣・ムベンベを追え」で作家デビューということになりますが、各地を探検している関係上、紀行・冒険もののテレビ番組関係などのライターしたりしてアルバイト料を稼いでいたようです。

ワセダ三畳青春記 

 ちなみにムベンベは、正式にはモケーレ・ムベンベという名前で、コンゴ・カメルーン・ガボンなどのアフリカ中央部の熱帯雨林の湖沼地帯に棲息しているのではないかといわれるUMAです。体の大きさはカバとゾウの間ぐらいで、ヘビのように長い首と尾を持ち、4本脚で、直径30cm以上の丸い足跡には3本の爪跡があるとされています。このとこからネッシーのように恐竜の生き残りではないかとも言われていますが、明確な証拠はまだ挙がっていません。

幻獣ムベンベを追え 

 「獣の列島」という漫画作品では、全長3~4メートルの環形動物に似た生物“獣(ワーム)”とされ、米軍が兵器化を試みて生体実験を行った結果恐るべき怪物となって人類を破滅に追い込んでいきます。知性を得るために女性は犯して子を産ませ、男は食料にするというとんでもない設定なのでごく一部にカルト的人気があるとかないとか。

獣の列島 

 「ワセダ三畳青春記」は、2003年10月22日に集英社文庫から刊行され、2005年に第1回酒飲み書店員大賞を受賞しています。なんだそのけったいな名称の賞はと思ったら、千葉県近辺の本と酒が好きな書店員と出版社営業が集まり、最も売り出したい本をコンペティションで決定する賞だそうです。それでは例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

モケーレ・ムベンベ 

 三畳一間、家賃月1万2千円。ワセダのぼろアパート野々村荘に入居した私はケッタイ極まる住人たちと、アイドル性豊かな大家のおばちゃんに翻弄される。一方、私も探検部の仲間と幻覚植物の人体実験をしたり、三味線屋台でひと儲けを企んだり。金と欲のバブル時代も、不況と失望の九〇年代にも気づかず、能天気な日々を過ごしたバカ者たちのおかしくて、ちょっと切ない青春物語。 

早稲田大学のそば 

 卒業出来る気がしないというほど大学の授業には出ず、探検部の活動に地道をあげていたので、当然ながらさっさと卒業→就職を期待する両親との折り合いが悪くなり、エスケープの意味も込めて入り込んだのが、早稲田大学正門から徒歩5分のところにある野々村荘の三畳間でした。立地の良さと月額1万2千円という格安の家賃で即決して入居した髙野秀行ですが、時に平成がまさに始まった1989年。三畳一間というと「神田川」を連想するのですが、あっちは70年代、こっちはバブル絶頂期で隔世の感があります。というかバルブ時代によくそんなアパートに住む気になったものです。

三畳一間 

 松本零士の代表作の一つである「男おいどん」でさえ、大山昇太は老朽下宿で極貧生活を送っているとはいえ、間取りは四畳半。私も自分の部屋が四畳半だった頃がありますが、正直これ以上狭い部屋には住めないと思いましたよ。「神田川」のカップルが三畳に同棲というシチュエーションは、私的にはマジかよスゲーなという印象でしたが、バブル期でなお三畳暮らしをする猛者が居たとは、上には上がいるものですね。

 しかも、大学の傍でアパート暮らしなんていうと、18歳から22歳頃までという人が大半じゃないかと思うのですが、この人の場合は大学4年生になった22歳の初夏から、大学をとっくに卒業した33歳の初夏の頃までというまる11年間住み続けたのでした。そのうち8年間が3畳間で、残り3年間がグレードアップして4畳半住まいでした。

髙野秀行 

 そういう過酷ともいえる居住環境に適応できたのは、各地の秘境を回るということであらゆる環境に適応できるようになっていたということもあるでしょうが、やはり探検部なんてイロモノで活動するようないつまでも子供のような好奇心とか遊び心のなせるわざなんではないでしょうか。

 大学のそばにそういう面白い人が住んでいれば、当然探検部の先輩後輩も訪れるわけで、野々村荘で一緒に住む部員まで出ます。仲間達が四六時中にぎにぎしく出入りして、酒飲んだりドラッグ実験をしたりとバカやっているのだからそりゃあ楽しいでしょう。

哀愁の街に霧が降るのだ 

 仲のいい連中との共同生活というと、椎名誠の「哀愁の街に霧が降るのだ」を思い出すのですが、あっちは昭和時代に同居生活、こっちは平成時代に入り乱れてはいるものの個室生活とやや様相を異にします。うーん、どちらかと言えば、狭くても個室がある方がいいかなと思ってしまう私は昭和生まれだけで平成スタイルなのか。

あの頃のまま 

 どんなことにも終わりはあるもので、学生時代とか青春時代というのもにも終わりはあるのです。探検部の仲間達も卒業・就職で去って行く中、高野秀行はブレッド&バターの「あの頃のまま」の主人公の如く、一人気ままに街を彷徨しているのでした。青春に別れを告げた人々は、そんな彼を見て羨ましそうにしますが、高野秀行のほうは、気ままな暮らしの中で行き詰まりを感じていくようになります。

 行き詰まっているけど、何に行き詰まっているのかわからない。そんな状況を「暗闇の一人歩き」と表現していますが、やはり人間楽してのんびりしているだけではいかんということでしょうが。何らかの「生まれてきた甲斐」のようなものを求め出すのか。

 そして作者の場合、野々村荘時代=長かった青春時代との別れを決意させたものは、本気の「恋」でした。離れたくない、ずっと一緒にいたいという思いが自然に生まれ、恋人の住む街に引っ越すことに。ちなみに同年配だというその恋人、現在の妻でライターの片野ゆかだと思われるのですが、そうなんでしょうね?

片野ゆか 

 片野ゆかは「昭和犬奇人 平岩米吉伝」で2005年に第12回小学館ノンフィクション大賞を受賞しています。犬が大好きみたいで、犬関連の著作が多いです。元カノのハーフの女性の話もその直前に出てますが、奥さん的にはノープロブレムだったんでしょうか。

日本の特別地域 

 私も同じ大学出身なんですが、鬼の哭く街・A立区の貧乏家庭出身だったもので、何年も大学で留年するとか、探検部のようなサークルで遊びにうつつを抜かすとかは全然考えられなかったです。大学生時代自体はのんびりしていて今でも嫌いじゃないですが、当時は当然4年で卒業して就職して給料を貰うということに何の迷いもありませんでした。

働きたくないでござる 

 そうは言っても就職前の春休みには「働きたくないよ~」と転げ回ってましたけどね。高野秀行から見たらきっと“異邦人”だったことでしょう。でも、ま、私には三畳一間は無理だから仕方がありませんな。こうして本で覗き見る位がちょうどいいあたりです。

お文の影:宮部みゆきお得意の江戸の怪異譚

梅は咲いたか

 あっという間に2月ですね。11月に初雪が降って先々が思いやられましたが、それ以降大した降雪がなくてなによりです。もうすぐ節分&立春ですが、まだまだ油断はできません。 

お文の影文庫版 

 本日は宮部みゆきの「お文の影」を紹介しましょう。単行本としては「ばんば憑き」のタイトルで2011年3月に角川書店から刊行され、文庫版は「お文の影」にタイトルを変更して2014年6月に刊行されました。収録内容には変化はありません。

ばんば憑き 

 短編6編から構成され、「ぼんくら」シリーズや「三島屋変調百物語」シリーズの登場人物が登場する作品が含まれています。例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 「おまえも一緒においで。お文のところへ連れていってやるよ」月の光の下、影踏みをして遊ぶ子供たちのなかにぽつんと現れた、ひとつの影。その正体と、悲しい因縁とは。「ぼんくら」シリーズの政五郎親分とおでこが活躍する表題作をはじめ、「三島屋」シリーズの青野利一郎と悪童3人組など人気キャラクターが勢揃い!おぞましい話から切ない話、ちょっぴり可笑しい話まで、全6編のあやしの世界。

壺の絵の掛け軸イメージ 

 「坊主の壺」。コレラが猖獗を極める江戸末期。家族を失ったおつぎは材木問屋の田屋が設置したお救い小屋に引き取られます。コレラ菌の正体も対処法を未解明だった時代ですが、田屋の主人・重蔵はなぜか的確な指示でコレラを防ぎます。そんな中、重蔵が掛けた壺の掛け軸を見たおつぎは、壺の中に坊主がいるのを見ますが、他の人には壺しか見えない様子。おつぎの様子をみた重蔵は、不思議な話を語って聞かせます。

コレラのイメージ 

 伝染病などに対して的確な対処が可能になる代わりに、眠っている時に触手系の怪物に変化してしまうという宿命を持つ「坊主の壺」の継承者。明治大正昭和と時代が下っていくとだんだん必要性が失せていくような気がしますが、その由来とか正体とかが一切不明なのが釈然としませんが、怪談ってそういうものかも知れませんね。

影踏み 

 タイトル作「お文の影」。長屋の子供達が十三夜に影踏み遊びをしていると、主のない影が一つ混ざっているのが見つかります。相談を受けた政五郞親分は、長屋のある土地の来歴を調査してみると、かつては怪異が起きる忌み地であったことを知ります。

十三夜 

 茂七大親分の昔の捕り物譚を全て記憶している「おでこ」が語った昔話は、予想を越えたおぞましくも哀しい物語でした。独りぼっちで自分の影だけが遊び友達だった女の子・お文が無残に虐め殺されるという話は本当に胸くそ悪いですが、しかも殺した側が怪異になるという理不尽ぶり。お文の魂は西方浄土に向かったそうですが、なぜか取り残された影法師が彷徨っているというのが寂しいですね。

狛犬 

 「博打眼」。餓死した50人の死体や埋葬した地面の土を使ってこしらえるという恐怖の人造怪異・博打眼。契約者は、博打のような勝負事にはことごとく勝てる反面、すさんだ生活の中で身体を壊して短命になってしまいます。金儲けに執念を持った先祖が博打眼と契約したため、一族に取り憑いた博打眼が、新たな契約者を求めて醤油問屋近江屋にやって来ます。なんとか空き土蔵に閉じ込めますが、退治法は皆目検討もつきません。

犬張り子 

 近江屋の娘・7歳のおしゃまなお美代は、近所の古い八幡宮の狛犬が理解不能な言葉を発するのを聞き、東北から引き取られた孤児の竹兄のお国訛りに近いと感じ、竹兄を連れて来たところ、狛犬は博打眼の退治法を教えてくれました。神社の門番だけでなく、怪異退治にも役に立つ狛犬は実にありがたいですね。皆で磨いて大事にするのは当然ですが、主人筋である八幡宮の方はおろそかにしていいのか(笑)。

討債鬼

 「討債鬼」。家督を巡って兄弟が争った過去がある紙問屋大之字屋。結局兄が急死して弟の宗吾郎が相続しましたが、毒殺説など穏やかでない噂もあります。そこへ謎の乞食坊主・行然坊が突如やって来て、大之字屋の跡取り息子・信太郎には討債鬼が取り憑いていると言い出します。後ろ暗い過去がある主人はあっさり信じて息子を殺そうとしますが…

寺子屋 

 討債鬼とは中国に古くから伝わる怪異で、金を奪われたり借金を踏み倒されたりした者が、加害者の子供に転生して、奪われたり、踏み倒されたりした金額だけ分だけ親の金を蕩尽するというものだそうです。

願人坊主 

 侍だからと信太郎殺しを依頼されたのは、息子が通う寺子屋の若先生・青野利一郎ですが、とりあえず行然坊の狙いを探索すべく、寺子屋の腕白トリオに探らせつつ、信太郎を保護します。利一郎から逃げ回っていた行然坊ですが、腕白トリオの手引きもあって無事会見に辿り着きます。そこで判った意外な真実。二人は図り合って、討債鬼退治を演出します。100ページ近くあって一番長い短編ですが、それだけに展開が二転三転して面白かったです。

ばんば憑きその2

 「ばんば憑き」。元はタイトル作でした。小間物商伊勢屋の若夫婦がなかなか子宝に恵まれないということで箱根に湯治に行き、その帰りに戸塚で雨に降られます。お嬢様育ちのお志津は雨の中の旅など考えもせず、婿養子の佐一郎は一生懸命にご機嫌取りをしますが、足止めされた旅客が増えて老婦人と相部屋しなければならなくなります。すっかり機嫌を損ねて大酒を飲んでふてくされるお志津。その明け方、佐一郎は老婦人から過去の奇怪な話を聞くことになります。

憑依? 
憑依?その2 

 ばんば憑きとはある地方に伝わる奇怪な風習で、殺人事件が起きたとき、被害者の魂を加害者の身体に取り憑かせるというものです。横恋慕から起きた若い女性同士の殺しに際し、ばんば憑きが行われた結果、被害者の魂は加害者に宿ったということですが、昔話を終えた後、老婦人は首を吊ってしまいます。実は昔話のばんば憑きをされたのは老婦人本人だったのではないかと思う佐一郎は、息苦しい婿養子生活に戻ろうとする中で、なんとかその方法を知ろうとします。それだけが唯一の逃げ場だという重苦しい運命が辛いです。

 水木しげるによる野槌

 「野槌の墓」。「野菊の墓」のパロディみたいなタイトルですが、別にそういうことはなかったぜ。ネコマタや付喪神などの怪異がたくさん登場する面白いけど哀しい作品。妻に先立たれて娘の加奈と裏長屋に住んで何でも屋をやっている柳井源五郎右衛門。そこに依頼に来たのはなんと長屋の猫・タマ。実は100年生きるネコマタだったんですね。タマがいうには、仲間の怪異が人を殺めてしまった。もう仲間にしておけないので退治して欲しいと。

龍王ノズチ 

 その人殺しの怪異が「野槌」です。木槌の付喪神ですが、時間が経過すると蛇のような怪異になってしまうとか。むしろ蛇のような怪異としての野槌の方が有名で、野の精霊(野つ霊)が由来だとか。蛇のような怪異として知られ、有名なUMAであるツチノコは野槌の伝承に由来しているそうです。つまり「野槌の子」という意味ですね。メガテンシリーズには龍王ノズチとして登場していました。龍王は大袈裟過ぎる気もしますが、蛇系の怪異ということで龍族に分類されたのですね。

猫又 

 本作の野槌は、実は子供を殺すのに使われた木槌で、付喪神になって平穏に他の怪異と暮らしていたところ、怪異達の住処付近に捨てられた子供の遺体を見たことで「心が破れ」て人に仇成すようになってしまったそうです。実は付喪神ではなく殺された子供の魂が怪異になっていたのでした。これも哀れな話ではあるんですが、救いは男やもめの源五郎右衛門の娘の加奈がひたすら愛らしいこと。男手一つでこんな健気な娘が育つのか。こんな娘がいたらどんなお父さんでも頑張っちゃうぞ。そして嫁に出して泣くと。

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