2016年夏季アニメの感想:“少数”だったけど“精鋭”かどうか…

金木犀が咲いています。彼岸花はいきなり出てきて花を咲かすので驚くのですが、金木犀はいつもそこにあるけど、花が咲いて芳香がただよってきて、「ああ、この木は金木犀だったのか」と改めて思い出しますね。それまではあまり存在感がないという。

昔はトイレの芳香剤というと、今のように消臭機能がうまくいっておらず、一層強い臭いで打ち消すという手段を取っていたので、ジャスミンとか金木犀のような強い香りが多用されていました。そのせいで金木犀が街に香ると「トイレの匂いだ」と思っちゃったりして。あとジャスミン茶も…。今の芳香剤は消臭機能があるのでそんなり強烈に香りを出さないみたいですが。

さて「クロムクロ」が終わるのを待っていたので遅くなりましたが、2016年夏季アニメの感想です。5本しか視聴しなかったのですが、「のんのんびより」シリーズを見ることができたという副産物があって悪くなかったですね。最新の作品を見るより、定評のある過去の作品を見る方が賢いのかも知れませんが……傑作を「見いだした」感はやはり放映中のものを見ないと味わえませんから。

それでは「甘々と稲妻」。一言で言えば、妻に先立たれてた男やもめの高校教師が、幼稚園児の娘のために、教え子の女子校生の家で料理を作っておいしくいただく…というだけの作品です。ついでに女子校生もおいしくいただくということになれば一気にアダルトアニメになる気がしますが、別にそんなことはなかったぜ!(当たり前だ)

主人公の犬塚公平はそれほど男前ではありませんし、ヒロインのJK・飯田小鳥も(ヒロインとしては)それほど美人ではないのですが、それぞれ中の人が中村悠一と早見沙織ということで、「ラブリーマイエンジェル小鳥たん」とか「さすがです先生!」とか言い合いそうで、相性はばっちりです。杉田智和が血の涙を流すとか流さないとか。

真の主人公ともいえる幼稚園児の犬塚つむぎがいいですね。ママが亡くなって半年ということで、冒頭はわりと貧相な食事とか寂しさにも耐えていたようですが、次第に幼稚園児らしいわがままとか好き嫌いを前面に出してくるようになります。当初そういう子供らしさがあまり感じられなかったというのは、彼女なりに「非常事態」であることを認識して我慢していたんでしょうね。それが食事事情の好転→平常化ということで、本来の幼児らしさを取り戻しつつあるという。

特に大事件が起きることもない日常系アニメで、作る料理も初心者向けのものばかりですが、愛とほっこり感に満ちてるという感じですね。大した料理ではなくても皆で作って皆でおいしく食べるというのがいいんですよね。だから三人で作る時より、小鳥の友人のしのぶ(CV戸松遥)や公平の友人の八木(CV関智一)が加わった回の方が好きです。しかし金髪率高けーなオイ。

公平さん、やはり教え子に手を出すのはどうかと思うので、小鳥ママンの恵さんと再婚したらどうでしょう。料理の腕は超一流だし、結構年上かも知れないけどなぜかテレビではJKコスプレばかりしている若作りだし。そうなるとつむぎと小鳥は姉妹ということになって、なかなかいい感じじゃないですか?

「クロムクロ」。春季から続いた2クールものです。これは綺麗に終わらせましたね。P.A.WORKSの2クール作品は外れなしという感じじゃないですか?「花咲くいろは」しかり、まだ視聴途中ですが「SHIROBAKO」しかり。ということは未見の「凪のあすから」も面白いのでしょうか?

巨大ロボットアニメですが、異星体の侵略物ともいえます。SF者の端くれとしては、そっちの方が気になりました。「エフィドルグ」を名乗る敵は結局正体不明で終わりました。は?ちゃんと出てきたじゃん!と言われそうですが、連中は占領した惑星の知的生命体およびこれから占領する知的生命体かそのクローンであり、尖兵でしかありません。巨大とはいえ宇宙船一隻と7人しかいない乗員(辺境矯正官)でどうやって地球を征服しとうというのかと思えば、ワームホールを作り出して本国の大艦隊を呼び込むというものでした。昔の城攻めでいえば、密かに城内に潜入して中から門を開ける忍者のような役割ですね。

敵を洗脳して突破口を作らせて悠々と乗り込むという非常に効率の良い戦略を取っていますが、なんのために宇宙征服を進めているのかなど一切不明です。資源の確保という観点もありますが、それなら別に知性体の住む惑星に限らなくてもいいですし、個人的な印象では、知性体の住む惑星を侵略するのは、その星の人的物的資源を使って次の侵略を行うためのような気もします。

エフィドルグが自前の大規模な軍組織を有しているのであれば、手柄や昇進のためにも自ら出撃しないといかん気というがするのですが、そういうことをしないということは、エフィドルグ本体は少数かあるいはとっくに絶滅して、宇宙を征服するという意思のみがAIとかに継承されているんだったりして。ということは、ワームホールを開いてやってくる艦隊というのも、直前の征服地の知性体や資源を使って作り上げたものなのかも知れません。


剣之介が「鬼」と呼び、仇敵と勘違いしていたゼルの惑星(地球から220光年先の惑星)が直前にエフィドルグに侵略された星であり、そこで作られた艦隊が地球に攻めてくる予定だったのでしょう。ということは、地球が侵略された後は地球製の艦隊やロボットにより他星の侵略が行われるということに。

それにしてもあれだけ世話になったのに、エフィドルグ先遣隊を片付けた途端にゼルや剣之介らをあからさまに危険視する国連…。というか人間の浅ましさというか虫のよさが描かれていて嫌になりますね。まさに「狡兎死して走狗煮らる」。でもまあ心ある人もいて、ゼルをはじめ剣之介やムエッタが「解放戦争」に参加することができて良かったです。

ヒロインの由希奈も旅立つのかと思いきや、置いてけぼりになってしまいました。そっくりさんのムエッタがいるから別にいい?いやいや~。でも物語のラストで、5年後の2021年にソフィーらと一緒にエフィドルグのオーバーテクノロジーを利用したくろべ型調査航宙艦「くろべ」の第一陣クルーとなり、剣之介のもとに旅立つことになります。このあたり、新海誠の「ほしのこえ」のラストを彷彿とさせますね。ここで終わってもいいですが、続編もあちらでの戦いやエフィドルグの正体などに迫る「異世界編」ということで作れそうです。それにしてもたった5年で恒星間航行を可能に?

それにしてもエフィドルグのロボット(グロングル)であるクロムクロはわりと汎用型でしたが、他の有人グロングルはそれぞれオリジナルの姿と機能を持っていて、完全に各辺境矯正官専用機となっていました。プラモを作ると言った商業的にはいいんでしょうが、純粋に軍事的に見た場合、こういうワンオフ機ってどうなんでしょう。無人機のように同型機を量産した方が効率が良いように思えますが。

お姉さん的なキャラが得意と思っていたM・A・Oの由希奈は姉妹の姉なのにやや幼い感じで、のんびりした性格でしたが、窮地にあってもわりとのほほんとした所があって、パニクったりしないところが良かったですね。「銀河ヒッチハイクガイド」を読んだのかな?

一番お気に入りのキャラはソフィー・ノエルです。フランス人のお嬢様ですが、やけに日本文化に造詣が深くて思慮深くて冷静で、ゼルが最初に接触してきたのもうなずけます。当初はプライドの高さが目立って剣之介や由希奈に対して辛辣でしたが、後に彼らの努力や成長とともに親しくなっていきました。

「あまんちゅ!」。極度に引っ込み思案で消極的な女子校生大木双葉(てこ)が、やたらマイペースでハイテンションな小日向光(ぴかり)と出会い、スキューバダイビングを通じて徐々に積極的になり、青春を満喫するようになっていくというお話ですが、原作漫画のキャッチフレーズの「日常ときどきダイビング。」のとおり、スキューバダイビングの話よりは日常の話が多かったような。

とにかくOPの坂本真綾の「Million Clouds」が実に素晴らしい。個人的にはかの超名曲「プラチナ」以来の傑作だと思います。あと劇伴がゴンチチ。癒やしに満ちています。
ダイビングどころか水泳も出来ず、体力作りからしていかなければならなかったてこは、何かにつけ挫折しそうになる面倒臭くてネガティブな性格なんですが、ぴかりというベストパートナーと出会ったことで何とか前進していきます。じゃあぴかりは天使かと言えば…本人も言っていますが、マイペース過ぎるのでフィーリングが合わない人からは拒絶されてきたそうです。もしぴかりが男だったら、高校生時代の私は思いっきり敬遠していたと思います。この二人の場合はナイスカップリングだった訳で良かったですね。


しばしば入るてこのモノローグと面倒臭い性格をいかに許容出来るかでこの作品が好きになるかどうかが別れるのではないかと思います。CV茅野愛衣だから私は耐えましたが、耐えられない人もいたんじゃないでしょうか。


女子校でもないのに百合っぽい雰囲気が漂っているのは、実質男子生徒がほとんど登場しないから。ダイビング部にも「弟くん先輩」こと二宮誠がいるんですが、この人はほとんど中性的な存在で、てこやぴかりの恋愛対象とはなりそうにない気配です。ウホッ系だったりして。

てことぴかりの担任にしてダイビング部顧問の火鳥真斗(かとりまと)がやたら理解があるというか友達みたいな先生で、こんな先生がいたらそりゃあ有り難いなあと思いますが…いねえよ(笑)。どうでもいいけど、いつも暇そうな火鳥先生ですが、先生って授業以外にもいろいろ仕事があるんじゃないの?


原作はアニメ最終話の部分まで読んでました。でも途中で読まなくなったのは、名作「ARIA」に比べてデフォルメ絵がやたら多いことと、火星のニューベネチアと伊豆の伊東ではファンタジー成分に格段の差があるからでしょうかね。ARIAの登場人物は面倒臭い子がいなかったし。

ぴかりのお祖母ちゃんである小日向きのを井上喜久子が演じていたのが驚愕でした。17歳になんて役を振るのだ。あまりそうは見えませんが、元海女でダイバーに転向し、現在は引退して海の家とダイビングサービスを営んでいます。きっこさんなんだからもっと可愛い声のお祖母ちゃんでもいいんじゃないかなあ。豚汁は是非食べてみたいですが。

「Rewrite」。「人類は衰退しました。」の田中ロミオ、「ひぐらしのなく頃に」の竜騎士07などが参画するゲームが原作なんですが…1時間スペシャルだった第1話を見て打ち切ったというリアル明里パパン、君が正しかった。

ズルズル見たのはいつか面白くなるだろうと思ったからで、実際7話から日常を大きく逸脱していくのですが…。まあぶっちゃけ「ひぐらしのなく頃に」ですよこれは。世界は終わってしまいました。


2017年1月から「ひぐらしのなく頃に 解」にあたる2ndシーズンが開始されるそうですが、もう見ないと思います。女性キャラは可愛いし、サブキャラも面白い人が多いのですが、主人公の天王寺瑚太郎がとにかく嫌いなんです。多分この先どうあっても好きになれないでしょう。


話は人類の命運に関わるという結構重いテーマを持っているのですが、人類を守ろうとするガーディアンと、地球のために人類を滅ぼそうとするガイアという二大勢力の戦いの中、それぞれ信念とかがあって属していたであろうヒロイン候補の女の子達が、オカルト研究会で天王寺瑚太郎と親しくしていたというだけで離反するという。「てめぇの頭はハッピーセットかよ」と言いたくなりますね。いや、組織を裏切るだけの説得力のあるエピソードがあれば別にいいのですが、本編を見ている限り「これで?」と思わざるを得ません。やはり天王寺瑚太郎の魅力なるものが理解できないせいなのでしょう。

最後に私の中二病枠「クオリディア・コード」。「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」の渡航が参加しているので視聴しました。三人のラノベ作家のユニット「Speakeasy」の作品群が原作ですが、ストーリーはアニメオリジナルとなっています。

まず作画がひどいということは言わずにはいられないでしょう。理由が何にかは知りませんが、一説によれば三人の作品群が原作であるせいで、複数のレーベルによる企画になっており、速やかな意思決定ができなかったのかもとか、シリーズ総作監がいないから作画全体のクオリティが安定しようがないとか言われていますが、真相はどうなんでしょうかね?

とはいえ、作画に目をつぶれば(アニメでここに目をつぶっていいかどうかは議論があるでしょうが)「Rewrite」よりずっと面白いストーリーでした。30年前に突如出現した正体不明の侵略者・アンノウン(まんまや)に対抗すべく、南関東防衛機構が構築され、東京、神奈川、千葉の各防衛都市には、長きにわたるコールドスリープから目覚めたことで、特別な固有能力<世界>を身につけた少年少女が所属し、アンノウンと戦っています。しかし、それは全て欺瞞だったという孔明の罠。

アンノウンと戦う少年少女が、ランキング制度により貢献度を競わされているという設定に当初から違和感があったのですが、終盤明らかになった真相によってその理由が解明されました。なんとアンノウンと思っていたのは人間側の無人兵器で、人間だと思っていたものこそがアンノウンだったという。

戦闘に従事する少年少女の首筋にはクオリディア・コードという特殊紋様が取り付けられており、〈世界〉や各種端末の使用に大きく寄与するとされていると説明されていましたが、実際には認識を阻害することで人間側をアンノウンに見せ、アンノウンの支配地域の赤い空を普通の青空に見せていました。

侵入不可領域というものが設定され、そこに入ることは堅く禁じられていましたが、それも認識阻害の効果がある障壁の限界地点ということで、ここを越えるとクオリディア・コードが機能不全を起こしてしまうからでした。

アンノウンは子孫を産むことができず、コールドスリープ中の子供達を洗脳し、自分たちに近い身体に改造して、その身体を乗っ取ることによりさらなる進化を遂げようとしていたようです。つまり高いランキングを叩き出して「内地に栄転」というのは、アンノウンの洗脳と改造を意味していた訳で、より強力な能力を持った身体を欲していたが故の制度だったようですね。

生粋のアンノウンとしては大原さやか演じた主任医務官の大國真昼や能登麻美子演じた地域管理官の夕浪愛離が登場しました。わざわざことさらにいい声の声優を充てている皮肉。ただ大國真昼はともかく、夕浪愛離はアンノウンでありながら子供達に愛情めいた感情を持っており、子供達に接していた時の気持ちに嘘偽りはなかったようです。


特にお気に入りだった天河舞姫に倒されたことは、愛離にとってはむしろ本望だったのかも知れません。最終版には他のアンノウンを全て抹殺して面倒をなくしていましたし、舞姫の頭を優しく撫でながら消滅していきましたし。久々に能登さんが能登さんらしい声で演技しているなあと感じました。

彼女の愛情は子供達にも深く浸透していたらしく、八重垣青生(CV雨宮天)などは人間側を裏切ってアンノウン側についてしまいました。愛離を「お母さん」と呼んだから?そしてそれまでのおどおどしたおとなしい姿から一変して超戦闘モードに。お互い嫌い合っていた千種明日葉とキャットファイトを展開しました。メガネを外すと豹変するタイプなのか。


もう一人の地域管理官の朝凪求得は、半分アンノウン化していましたが生粋の人間でした。この人は言うなれば「沙耶の唄」です。あるいは「火の鳥・復活編」か。つまり原因は不明ですが知覚障害を起こし、すべてのものが異常な姿で見えるようになっていたという。求得の場合は周囲の人間が朧げな影としか見ることができなかったようですが、「沙耶の唄」の主人公の場合だと、風景や人物が肉塊のような気味の悪い姿形に見えていました。

そんな中唯一人間の(それも美女の)姿をしていた愛離に惹かれてしまうのは仕方なかったかも知れません。だって他の人間にシンパシーを持ちようがなかったのだし。「沙耶の唄」でも同じ事になっていましたね。

ただ、多分原作には登場するのでしょうが、終盤突如登場する人間側の総司令官“よはねす”こと千種夜羽は、唐突すぎて思わずWikipediaを見てしまいましたよ。霞と明日葉のママンで、幼かった明日葉はのことをほとんど覚えていなかったようですが、じきに慣れ親しんでいました。おそらくパパン似の霞の方はシニカルな見方をしていましたが、この人はそれがデフォルトだから仕方がない。


ということで、一番好きなキャラは中原麻衣が演じた千種夜羽と言いたいところなんですが…あまりにも登場が短くて、サッカーだと評価不能ですよきっと。なので人間じゃないけど夕浪愛離と「困ったときは笑顔」の宇多良カナリア(CV石川由依)ということで。カナリアは4話で死亡したと思われ、9話で再登場してきましたが、実際には7話から登場していた女性型アンノウンはカナリアだったんですね。

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