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失踪日記2 アル中病棟:8年掛かった渾身の「失踪日記」続編

リオデジャネイロのオリンピック

 オリンピックは始まるわ、高校野球は始まるわで、この八月は大スポーツ月間ですね。ある程度は注目していますが、私はスポーツには極めてネガティブな青春時代を送ったので、連日寝不足なんてことは起きようがありません。その分仕事をきっちりやるかと言えばそうでもないんですが。

失踪日記2 アル中病棟 

 本日は吾妻ひでおの「失踪日記2 アル中病棟」を紹介しましょう。以前「失踪日記」を紹介していますが、本作はそこでちょっとだけ触れられていたアルコール中毒で入院していた3か月強の体験を詳細に描いたものです。

アル中の幻覚 
強制入院 

 もともと作者は低迷期に入った80年代半ばからさかんに飲酒していましたが、から「失踪日記」に描かれた二度の失踪後、1998年春頃までに重度のアルコール中毒(現在はアルコール依存症と呼ぶようですが、作者が「アル中」と表現しているのでこっちを使います)になり、眠っている時以外は酒が手離せなくなる「連続飲酒」状態になっていました。胃がやられて酒すら受け付けなくなると幻覚を見るようになり、奇行や自殺未遂を頻繁に行うようになり、同年12月末に家族によって三鷹市の病院に強制入院させられました。

失踪日記 

 三ヶ月の治療プログラムを終了して退院した後は、現在も断酒を続けていますが、2005年3月に出版した「失踪日記」には一度目の失踪を描いた「夜を歩く」、二度目の失踪を描いた「街を歩く」、アルコール依存と治療の時期を描いた「アル中病棟」を収録しています。この作品は話題になり、第34回日本漫画家協会賞大賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第10回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第37回日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門を受賞しました。

朝のアル中病棟 

 そして「失踪日記2 アル中病棟」は2013年10月出版。なんと続編が8年後に出た訳ですが、その理由は一コマごとの描き込みのボリュームの凄さでしょう。巻末対談でとり・みきも指摘していますが、一コマに沢山の人間(しかも全身像)を描き、しかもかっちり背景も描いている、今時他にあるとは思えない描き方を
しているので、そりゃあ時間がかかる訳です。

入院時のあずま先生 

 なもんで、最初は図書館で読み飛ばそうと思ったのですが、読むのも時間がかかるので、借りてきて家でじっくり読ませて貰いました。患者、医者、看護師、断酒会やアルコホーリクス・アノニマス(AA)といったアルコール依存症患者の自助グループの人々など、当然異なる人生や性格を持っている多数の人々を、よくここまで描き分けたなと思います。

御木本女王様 

 特に患者は一番接する機会があるので詳しく描かれていますが、アル中患者といっても様々で、なぜこんな人がアル中になったのかと疑いたくなるような人や、アル中との因果関係はわかりませんが、完全に性格破綻者だろうという人もいたりして、世間から隔離された病棟といえどもやはり人間社会の縮図なんですね

 焼きそばクマさん

 私が好きなのは絶対もてそうなナイスミドルの小林さん。自ら入院しに来た安達さんも男前に描かれています。大男ながらとても優しい大島さんは、きっと自分にも優しいからまた飲酒しちゃうんだろうなと思います。あと元修道女らしい御木本さんは裏で病棟をシメる女王様として描かれていましたが、この人がアル中になる経緯はぜひ知りたいです(謎のまま退院してしまいましたが)。

怪人浅野 

 ダメな方では、寸借詐欺の常連浅野。こいつはマンガで読んでいる分には面白いのですが、アル中はさておき絶対付き合いたくないキャラですね。夜中に病室で立ちションベンするし。寝ションベンじゃないだけまし(?)。顔つきからしてうさんくさい脇道とのタッグは強烈でした。あと自治会長をやっていた杉野というキャラも仕切り屋のせいか作者は大嫌いだそうですが、描写の中ではそれほどひどい人には見えません。相性というヤツでしょうかね。

元気な患者達 

 なかなか知ることのできなアル中病棟の実態は非常に興味深いのですが、意外に緩いなと思えてしまいます。自助グループの会合参加の他、散歩や買い物で頻繁に外出できるし。入院時のみ家族による強制入院でしたが、以後は自由意思での入院となっていますし。入院している作者からするとそれでも拘束感を強く感じたようですが。まあ個室じゃありませんから当然かも知れませんが。
酒漬け生活 

 途中でアル中患者が少なくなったということで、他の精神病患者と同居することになるのですが、そこで様々な軋轢が生じて分離独立要求(民族運動みたい)がされて看護長から「アルコール依存症の病の嫌な部分を見た気がします」と回答されてぶち切れるアル中患者達が面白いです。病院の外から見れば似たようなものだと大半の人から思われてるのに。まあ飲まなきゃ常人とそう変わりがないんですが。

他人の不幸を喜ぶ患者達 

 アル中病棟においては、アル中患者は人がスリップ(再飲酒してしまうこと)すると大喜びし、人が先に退院すると腹を立て、やけどとか寸借詐欺などの痛い目に遭わないうちには忠告すらしないという妙な傾向が窺われますが、これは病気のせい?それとも人間の業?

断酒会にて 

 看護師さんや女性患者は多くが美人に描かれています。作者はまたお世話になるかも知れないからと言っていますが、ロリコンブームの火付け役と評される作者の面目躍如ですが、多分可愛い女性キャラも描かないとつまらないんでしょうね。

ボロボロの絵 

 それにしてもアル中が画力も奪うらしく、入院中に描いたミャアちゃんの絵はまるで絵の下手な人が物真似で描いたみたいで衝撃的です。他人が見ても驚きなので、本人にとっては大ショックだったでしょう。

アル中患者にビビる奥さん 

 作者も苦労していますが、一番大変だったのは奥さんだったのではないかと思います。「アシスタントA」として本作や「失踪日記」も手伝っていますが、体調を崩したそうで、人ごとながら心配です。元気になっているといいのですが。

完全主義者は身を滅ぼす 

 作中、完璧主義者がアル中になりやすいという話があり、本作の描き込みぶりを見るにつけ、作者は本当に完璧主義者なんだろうなと思います。辛い現実から逃避するために依存症になってしまうようですが、アルコールが抜けると今度は鬱がやって来るという。

ゆるキャラのような鬱 

 本作では鬱がゆるキャラみたいに描かれていますが、実際は辛いんでしょうね。アル中は不治の病で、入院で回復し、数年に亘って断酒に成功していたとしても、一口でも飲酒すればたちまち元の木阿弥に戻ってしまうという。さらには進行性の病気なので、さらに症状が悪化していくそうです。怖いなあ。私は毎日酒を飲まなくても全然平気ですが、週に一度くらいは飲みたいので、一生飲めないなんてことになったらえらいことです。ピロリ菌除菌のときみたいに期間が決まってたら耐えられますが。

お酒の誘惑 

 お酒とは長い友達でいたいので、アル中にならないように気をつけようっと。Wikipediaに載っている症状を見るだけでも恐ろしいです。飲まなきゃやってられなくなっちゃいそう。 

一生飲めないなんて 
 
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