記憶に残る一言(その68):クェス・パラヤのセリフ(機動戦士ガンダム 逆襲のシャア)

某知事、いよいよ窮地ですな。法的にはそんなに悪いことをしていないのに、という声もごく一部にあったりしますが、この人の場合は組織のトップに立つ資質とかモラルというものが厳しく問われているわけですね。

で、この人を見ていてぜひ贈りたいセリフを思い出したのでご紹介したいと思います。出典は「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」です。

「逆襲のシャア」は1988年3月12日に公開された劇場版アニメ映画で、「機動戦士ガンダム」から14年後の宇宙世紀0093年の「第二次ネオ・ジオン抗争」を描いています。一連のシリーズで因縁のライバル同士であったアムロ・レイとシャア・アズナブルの戦いにピリオドが打たれ、劇場版「機動戦士ガンダム」シリーズの完結編とされています。「宇宙世紀シリーズ」はこの後も「機動戦士ガンダムF91」とか「機動戦士Vガンダム」で続いているのですが、一つの区切りであると言えましょう。


幾多の戦いを経ても旧態依然とした地球連邦政府に絶望したシャアは、ネオ・ジオンを率いて反乱の狼煙を上げ、小惑星の落下による地球寒冷化計画を実行します。ネオ・ジオンは地球政府高官と密かに裏取引を行い、停戦交渉に合意しますが、これは欺瞞で、停戦に安堵する地球連邦を尻目に、シャアは取引によって得た小惑星アクシズを地球に衝突させようとします。アムロやブライト達の所属する連邦軍の外郭部隊ロンド・ベル隊はアクシズを内部から爆破して軌道を逸らそうとしますが…

今回のセリフの主であるクェス・パラヤは、ネオ・ジオンとの和平交渉を進める地球連邦政府の参謀次官アデナウアー・パラヤの娘です。クェスはアデナウアーに伴われて、ネオ・ジオンとの交渉の場であるスペースコロニー・ロンデニオンに向かいます。

クェスはその途中でブライトと未来の息子であるハサウェイ・ノアやアムロと出会いますが、コロニー・ロンデニオンでシャアと出会い、アムロとシャアが格闘するのを目撃したクェスは、シャアの味方をして彼を助け、彼の誘いに応じてネオ・ジオン側へと身を寄せることになります。

この、自分の立場というものを一切考慮せずにフィーリングで行動するところは流石13歳だと言いたいところですが、「機動戦士Zガンダム」以降に登場するティーンのキャラには、ニュータイプや強化人間として破格の力を持ちながらマジキチなのと、そういう力はないけどマジキチなのばかりが登場してきます。中でもクェスはどこに出しても恥ずかしいマジキチの一人だと思います。

クェスはニュータイプの資質を持ち、感受性が強く、他人の心情を敏感に読み取ったり、相手が自分に対してこの先どのように関わってくるかを予見することができるという鋭い直感力を持っているのですが、情緒が極めて不安定で感情の起伏が激しく、浅薄で、周囲の状況を考えることができずに自分勝手な行動をとってしまったり、思ったことを包み隠さずに口にしてしまったりします。まさに無駄な能力の山盛り。

ロンデニオンで偶然出会ったアムロとシャアは、口論をしながら取っ組み合いをします。

アムロ「俺達と一緒に戦った男が、なんで地球潰しを?」
シャア「地球に残っている連中は地球を汚染しているだけの、重力に魂を縛られている人々だ」
シャア「世界は、人間のエゴ全部は飲み込めやしない」
アムロ「人間の知恵はそんなもんだって乗り越えられる」
シャア「…ならば、今すぐ愚民どもすべてに英知を授けてみせろ」
アムロ「…、貴様をやってからそうさせてもらう」

この二人の対決に、クェスは彼女なりの感想を差し挟むのですが、完全にシャアのシンパと化します。取っ組み合いでは決着が付かず、銃を抜こうとするアムロに対し、銃を奪ってクェスが放ったのが「アムロ、あんたちょっとセコいよ」です。ケチとか言われるメインキャラは結構いそうですが、セコいといわれるキャラはなかなかいませんね。

この時のアムロは不意打ちのような出逢いであったこともあり、とにかくシャアを倒してしまおうと焦っていた感じもあり、正々堂々としていないとクェスは感じたのかも知れません。少女は潔癖だからなあ。アムロ視点に立てば、既に5thルナを落下されており、さらに陰謀を巡らしているらしいシャアをなんとしてでも止めたいと思う気持ちはよくわかります。

ニュータイプのシャアとアムロなら、やはりMSで決着を付けて欲しい。それは視聴者全員が思うところですが、MSを使用しない勝負での決着がセコいとするならば、先にセコいことをしたのはシャアだと思います。「機動戦士ガンダム」最終回「脱出」では、ガンダム、ジオング共に撃破された後も二人は戦い続け、シャアはアムロに剣での戦いを挑むのです。その際、二人はこんな会話をしています。

シャア「わかるか?ここに誘い込んだ訳を」
アムロ「ニュータイプでも体を使うことは普通の人と同じだと思ったからだ」
シャア「そう、体を使う技はニュータイプといえども訓練をしなければ」

よくよく戦いながら喋るのが好きな二人ですが、このシャアのセリフのほうがよっぽどセコいと思われます。良かったなシャア、クェスに聞かれてなくて。なお、こんなセコいマネをしたにも関わらず、シャアの剣はアムロの腕を貫いたのに対し、アムロの剣は正確にシャアの眉間を捉えていました。ヘルメットとマスクのおかげでことなきを得ましたが、体を使う技でもダメじゃんシャア。


その後、クェスはネオ・ジオン側へと身を寄せることになりますが、シャア自身はクェスのことを持て余し、優しく振る舞いつつも彼女を戦争の道具として扱うだけでしたが、クェス自身は自分がシャアからそのように扱われていることに気づきませんでした。ニュータイプ専用機ヤクト・ドーガやα・アジールを駆りますが、自分が攻撃した巡洋艦のブリッジに父アデナウアーがいたことに気付かないまま父親を手にかけることになったことで感情のバランスを失っていき、盲目的に戦いにのめり込んでいきますが、α・アジールを撃墜され、戦死してしまいます。

クェスは愛のない家庭で育ったことによって、父親の愛情に飢えた状態にあり、アムロやシャアに父親的なものを求めていたようですが、最終的に選んだシャアもまた母の愛に飢えたまま大きくなった男だったので、クェスを受け止められる器はありませんでした。一時はララァの存在で満たされていたものの、ララァがアムロに殺された(アムロをシャアを狙っていたので、実際にはララァが盾になったことで生き延びた)ことで失ってしまい、それが二人の確執の原因となっています。

某知事に対しては、「マ○ゾ○、あんたちょっとセコいよ!」と言って欲しいのですが、ちょっとどころじゃないという話も。「マ○ゾ○、あんたものすごくセコいよ!」になってしまったりして。
スポンサーサイト