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刹那に似てせつなく:復讐鬼となった女二人の運命の行方は

良夜
 
 いや~涼しいって素敵ですねえ。こういうのを良夜というのでしょうね。明日は仲秋の名月ですし、秋はこうでないと。熱帯夜?何それ美味しいの?……ととぼけるにはまだ記憶に生々しいのですが。

刹那に似てせつなく

 本日は唯川恵の「刹那に似てせつなく」です。唯川恵の作品は多分初めて読みました。いい年して初めて読む作家さんが多くて情けないというか何というか。

唯川恵

 唯川恵(ゆいかわ けい)は1955年2月1日生、石川県金沢市出身です。地元の短大卒業後に北國銀行に就職し、転職を経て10年ほどOL生活を送ったそうです。茶道、華道、洋裁、エアロビクス、三味線、レザークラフト、着付け、医療事務など、多数の習い事をしてみましたがどれも長続きせず、日記だけが唯一長続きしていたことから小説を書いてみようという気になったそうです。日記から小説って飛躍が凄いですね。日記に創作ばかり書いていたのでしょうか?

 1984年に「海色の午後」で集英社第3回コバルト・ノベル大賞を受賞し、作家デビューしました。ということはジュニア小説家ということですね。“恋愛小説といえば唯川恵”と言われるほどに一世を風靡しましたが、恋愛小説にはそれほど深刻なテーマというものがなく、読みやすい反面飽きて読者離れを起こしやすい傾向があるそうです。男や大人の読者は最初からあまり手を出さないでしょうしね。

 唯川恵がそれまでの恋愛小説か・ジュニア小説家定評を打破したのが、1997年のホラー色彩の強い小説「めまい」と今回読んだサスペンス小説である「刹那に似てせつなく」だそうです。そして2001年に「肩ごしの恋人」で第126回直木賞を受賞しました。また2008年には「愛に似たもの」で柴田錬三郎賞を受賞しています。

 文庫では、解説を多くの作家に依頼しており、文庫版あとがきにおいて、解説者への謝辞を述べているのが特徴だそうですが、「刹那に似てせつなく」では書評家の藤田香織が解説を書いています。

肩ごしの恋人

 唯川恵の作品はテレビドラマにもなっており、「刹那に似てせつなく」は片平なぎさと蒼井優主演でTBS系で2005年3月16日に放映されました。このほか、石田ゆり子が主演した「彼女の嫌いな彼女」(1993年、2002年)とか米倉涼子と高岡早紀が主演した「肩ごしの恋人」(2007年)などが有名でしょうか。

 では例によって文庫版裏表紙の内容紹介です。

 42歳の並木響子は、復讐を遂げた。名前も年齢も偽り、掃除婦として潜り込んだ会社の副社長室で、男を刺し殺したのだ。3年前、愛娘・加菜を死に追いやった男だった。返り血を浴び、立ち尽くす響子。突如、その手を引き現場から連れ去る若い女が!? 19歳の道田ユミだった。彼女もまた、殺人を犯していた――。 恋愛小説の名手が極限の逃亡劇を描く、傑作クライム・ロマン!

 並木響子は不倫関係にあった男に裏切られ、身籠もった娘を一人育てていましたが、ロリコン変質者に辱められた娘の可菜は12才で死を選びました。相手は大企業の御曹司ということもあり、警察もとりあってくれないどころか、相手側のマスコミ操作により死後も娘を貶められた響子は自分の人生を捨て、3年の歳月をかけて見事復讐を果たします。

TBSドラマの「刹那に似てせつなく」

 一方フィリピン人のじゃぱゆきさんの娘(父親の日本人は逃亡)である道下ユミは、14才で母が死に、以後はヤクザの手駒として売春をさせられてきましたが、唯一愛してくれたチンピラが、大金の入手をめぐって暴力団組織の幹部に殺害されたことで復讐を決意し、幹部を殺して金を奪って逃げています。

 実は大企業のロリコン御曹司と暴力団幹部は昔からつるんでいた悪い仲間で、ユミは14才の時にやはり御曹司に弄ばれた経験があり、生かしておけないと殺害に向かったのですが、行ってみたら見ず知らずの響子が既に殺害していたという状況に遭遇したのでした。

 こうして殺人犯同士の女二人がなぜか道連れとなって逃避行を展開することになります。その間お互いの事情はほとんど知らないままで、上記の事情は終盤になってようやく一部知り合うのみです。

 「刹那に似てせつなく」は、従来の唯川恵作品とは一線を画した作品で、直木賞受賞に向かうターニングポイントとなっているのですが、反面従来のファンからは「いつもと違う」作品と捉えられたようです。私はこれが初顔合わせなので、これから別の作品を読むと別の意味で驚くことになるのかも知れません。

 とにかく登場する野郎共がクズばかりです。か弱い女性達を食い物にしている男が現実にはそんなに多くないことを願っているのですが、ロリコン御曹司とヤクザ幹部はともかく、その他の連中も本当にクズです。響子もユミもダメンズウォーカーなのではなかろうか。

刹那に似てせつなくPOP

 ユミはチンピラの子を妊娠していましたが、ヤクザ幹部に蹴られて流産し、藪医者の処置が劣悪だったせいでずっと具合が悪いまま。あげくに手引きしてくれるはずの元カレもユミが強奪してきた金を横取りして逃亡してしまいます。後半登場する響子の元不倫相手だけ、何となくいい人風に登場してきますが、結局妻との離婚→響子との再婚という計画を実現できず、それなのに響子を孕ませていたというド外道なので、現在バブルのつけを払ってリストラ要員となり、家庭も冷え冷えとして一人暮らしをしているとわかっても全然同情できません。

 生まれた境遇が悪すぎたユミはどうしようもなかったかなと思う反面、響子の方は別な生き方もできたはずなので、一方的に男だけを批判して済む話ではなく、彼女自身も責めを負うべきなのですが、それが娘可菜の死ではあまりにも過酷すぎるというものです。可菜には何の罪のない話だし。

 自分は逃げ切ろうとか考えていない響子は、若いユミだけでも密航で外国に逃亡させようとしますが、すでにユミの身体は…。ラストは非常に切ないです。せめて可菜を重ね合わせるようになったユミのために響子が犠牲になった方が救いがあったような気がします。

 むしろ物語が終わった後響子がどうなったのかに興味が湧きます。裁判で当然ロリコン御曹司の所行に触れていくことになるでしょうが、証拠となるPCの画像は響子が消してしまったらしいのです。PCのエキスパートなら本体さえ残っていれば復元できるのかも知れませんけどね。

刹那に似てせつなく単行本

 おそらく死刑はないと思うので、出所後元不倫相手は待っているのか、また彼はどのような境遇になっているのかなど、興味はつきませんが、本書の世界ではクズ男ばかりなので、「もう男なんか信じない!」という気持ちになっても不思議ではないような気がします。それでも男を求める女というもの救いがたい存在だな、なんて(あくまで本書においてのみの感想です)。

 
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