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コミック版秒速5センチメートル(その8):映像版にはない最終話を読む

最終話扉絵
 
2月になりました。節分を前に今日は春を思わせるような暖かさでした。明日はさらに暖かいらしいですが、気温の落差が大きいと、暖かさが仇となって風邪を引いてしまいそうで怖いですね。

 さて、皆さんと一緒に精読してきたコミック版秒速5センチメートルもいよいよ最終話です。前回、踏切を去る貴樹の背中に手を振るチビ明里で映像版部分は終了しているわけですが、その分、漫画を書いた清家雪子の主張が最も強く表現されていると思われます。一つじっくり味わってみることにしましょう。←大学の講義っぽくないですか?

 それでは最終話「空と海の詩」です。扉絵はいかにも青く澄み渡っていそうな種子島の空と海です。大人になった花苗が手すりに座ってサーフィンをしている男を見つめています。どうやら「亮くん」というらしいです。ロンドンブーツ?

告られる花苗

 このロンブー、「花苗ちゃん、今彼氏いないんだって?よかったらオレとつきあってくんないかな」といきなり直球です。花苗、驚きで固まってます。そこへ大音量の携帯着信音。花苗、ゴングに救われました。どうやらお姉ちゃんからの助け船のようですが…

 場面は変わって病院。花苗のお姉ちゃんが臨月姿で頭を抱えています。どうやらお姉ちゃんの旦那が階段から落ちて足を怪我したようです。膝の皿を割って明日手術だとか。そしてナース服姿の花苗登場!しかしパンツルックなので全然色っぽくありません。ここは貴樹を悩殺するためにも可愛いワンピースの白衣でだな……花苗にそういうものを期待するほうが間違っているのでしょうか?

 お姉ちゃんに頼まれて旦那の荷物を取りに学校に来た花苗。中村教諭といっているので、お姉ちゃんは同僚の中村先生と結婚したということでしょう。応対するおばさん先生相手の花苗の会話内容で、これまでのプロフィールが垣間見えます。

①西之表で就職:沖縄の西表島のことではなく、種子島の北部にある西之表市のようです。
②一年間仕事の合間に勉強して、鹿児島の看護学校に入学。4年制の看護大学もありますが、おそらくここは3年間の看護専門学校なのでしょう。
③現在は南種子(みなみたね)病院で看護師として勤務。貴樹と同年齢であることを考えると看護師になって数年は経過していると思われます。

 荷物を受け取った花苗、懐かしさのあまり学校をみて回ります。高校時代の花苗自身の姿が目に浮かびます。窓に後頭部をこつんとぶつけて目をつぶる花苗。そして高校時代の友達であるサキちゃんとユッコと会う花苗。ユッコは2人の子持ち。ガキのケイオスっぷりにサキちゃんおかんむりです。サキちゃんはテレビの制作会社で働いているようです。花苗と同じで彼氏もなく仕事に追われているようで、花苗が独身仲間でいてくれて助かるなんて言っています。田舎は結婚しろ攻撃が厳しいんでしょうね。

 結婚も悪くないが、サキちゃんのように自立しているのも格好いいという花苗。自分の中途半端振りを嘆きます。どうやらサキちゃんのように仕事に生きているのではないようです。「あー典型的ななんとなく行き遅れだ」とサキちゃんに看破されています。

 家に帰れば帰ったで、出産を控えて実家に戻っているお姉ちゃんの2人の子供がケイオスケイオスで走り回っています。このせいでユッコのガキお子様には耐性ができていたようですね。花苗のお母さん(今やおばあさん)がキレてます。そのせいで花苗には結婚とか子供とか言わなくなっているようです。そこへまた携帯着信。

 ロンブーの呼び出しでした。夜に女を呼び出すとは大した男よ。ここ結構眺め良いよなんて原住民の花苗に言っていますが、ここは一巻終盤で貴樹と二人して座っていた丘ですよ。花苗が進路調査希望を紙飛行機にして投げたあの場所です。ロンブーは種子島に来て2年だそうです。島には満足しているというロンブーに対し、花苗は看護学校に入るために鹿児島に行ったけど、なじめなくて種子島に戻って就職したと言いますが、「この島に一生いるのかなあ 私にはなんの可能性もないのかなあ」と嘆いています。

 そして貴樹の話をロンブーにする花苗。「特に最近思い出すの…彼のこと」聞かされるロンブーはいい面の皮ですね。貴樹が島を出て行くとき、飛行機の時間を教えて貰って初めて告白しできたという花苗。「そいつのことまだ好きなの?」とまたもや直球のロンブー。「だってもう10年前だよ」と否定する花苗。そうかお前ももう28歳か…

 一転「でも…どうなんだろう」と考えなおす花苗。普通に恋愛しようとしてきたけどうまくいかなかったと言い出します。もしや花苗、君はまだ処…いやそんなはずは。だがしかし!

 その後、貴樹のように全部の感情が向かうことはなく、「心に波立たないで平和だけどこれでいいのかなって不安だけがずっとある」と告白する花苗。君も呪縛に囚われているのか。

 一方ロンブー。花苗の可愛いところが好きだと三度直球。花苗の告白を聞いて、「なんて真面目で不器用で誠実なんだろうますます可愛いーと思う」と言っています。こいつ見かけによらず切れ者ですね。「花苗ちゃんを縛るものなんて花苗ちゃん自身以外ないよ」と呪縛の本質を言い当てています。「あれこれ考えるの置いといてとりあえず付き合ってみようよ。それでやっぱりダメだったならそう言ってくれればいいからさ」四発目のストレートに花苗もグラッときました。花苗、陥落か!?しかし「少し時間もらってもいいかな。少しだけ」とかろうじて逃げます。

 そうこうするうちにお姉ちゃんの第三子誕生。甥っ子達とカブを散歩させていると、スーパーカブに乗った高校生達が通り過ぎます。「カブー 最近ね あの頃のことばかり思い出すんだ」とカブに相談しています。そしてサーフィンする花苗。上はビキニで下は…なんていうのか、短いのだけどビキニではなくあまり色っぽくないショートパンツのようなのを着てます。上下ビキニでサーフィンしないところはさすがに花苗クオリティー。

捨てきれない貴樹への想い

 海から上がってきた花苗。お姉ちゃんの前でいきなり泣き出します。「お姉ちゃん 私 どうしていいかわかんない。」話を聞いて「東京言って遠野くん探して会ってきなさいよ」とお姉ちゃん。遠野くんは手に入れられない望みの象徴なんでしょうと喝破します。花苗の周囲は鋭い人ばかりですね。

「手に入れられないのに諦めきれなくて現実的な幸せを邪魔するなら、近くまで行って正体を見てくるのが一番なんじゃない」

「いい年だけどあんたはまだまだ自由なんだから冒険できるうちにしてきなさい。答えを出すのはそれからでいいじゃない」

 このお姉ちゃんの存在って花苗にとっては実に大きくて頼りになりますね。貴樹にもこういう存在がいたならば彼の運命もあるいは変わっていたのかも。

 さて飛行機を乗り継いで東京にやってきた花苗。人の多さに呆然としています。頼みの綱の貴樹の会社に電話すると既に退職しているとの無情な知らせ。彷徨っているうちにかつて貴樹が小学生時代に通っていたあの通学路付近にたどりつきます。公園に座って噴水を見ているとお姉ちゃんから連絡が。貴樹の実家の電話番号がわかったそうです。今実家は長野だとか。また引っ越していたのか遠野家(笑)。お父さんはなんの仕事しているんでしょうかね。

大人になった花苗

 いきなりロンブーに電話する花苗。東京に圧倒されてやはり種子島の空が好きだと言います。「どんな遠い存在も本当に求めていれば繋がれるんだってわかったの。」

 これはもうOKの流れだと確信して返事を促すロンブー。しかし待っていたのは「ごめんなさい!」

ギャラクティカ・マグナム

 ギャラクティカ・マグナム一閃!ここまで優勢に試合を進めてきたロンブーが一発で吹き飛びます。「早く帰っておいで」と再選を狙うロンブー。引き際はいいヤツですね。電話を切って静かに目を閉じる花苗。「遠野くん 遠野くんはたどり着けた?」と問いかけます。

思いがけないランデブー

 花苗の座る公園のベンチのそばを通りかかる足。背中を向けて去って行こうとする姿に気付いた花苗の表情が変わります。思わず立ち上がる花苗。

気付いて立ち上がる花苗

 ラストは東京の空。木々の上に雲が広がっています。種子島がいいっていうけど、東京の空だってすてたものじゃないでしょうと言わんばかりです。

 思うに、10年を経てちゃんと恋愛ができなかったのは、貴樹への想いを引き摺ってきた花苗自身の呪縛でしょうが、最近になって急に貴樹のことが強く思い出されるようになったのは、貴樹が呪縛から解放されたことが影響しているのではないでしょうか。

 シンクロニシティってやつですか。もちろん私自身はそんなオカルト信じませんが、フィクションだからそういうことがあってもいいでしょう。

 ところでラスト、足の持ち主ははっきり描かれていないのですが、これはもう貴樹以外はありえないでしょう。思わぬ再会の後、二人はどうなるんでしょうか。

 ① やはり花苗は貴樹のタイプじゃありません。貧相ボディーに貴樹の食指は動かないのです。しょせん花苗は友達にはいいけど恋人にはなれないタイプです。改めて振られて踏ん切りのついた花苗はロンブーの元へ戻るのでした(花苗はこの後ロンブーがおいしくいただきました)。

 ② すでに二人を縛るものは何もなく、再会を共に歓び、花苗は改めて告白。今度は貴樹に断る理由はありません。とりあえず花苗は種子島に戻りますが、すぐに東京に引っ越してくるでしょう。看護師はなにしろつぶしが効きますからね。貴樹と住む東京、それは種子島なんか目じゃないパラダイスだぜよ。

 ③ 再会に驚き、喜んだのもつかの間、種子島に帰らなければならない花苗。住所や電話番号やメアドを交換して、種子島と東京で文通開始。だが次第に時間と距離に負けて……(同じ事の繰り返しかよ!)

 漫画を書いた清家雪子的には②のようですが、貴樹の付き合ってきた女の子4人と花苗って共通点がないんですよね…。貴樹が明里の面影のある女性に惹かれてきたせいかも知れません(♪いつでも 捜しているよ どっかに 君の破片を♪)。花苗は純情可憐で本当にいい娘だけど、どうにも花苗には明里的な要素がないような気がします。呪縛は解かれたとはいえ、好きな女性のタイプまで変わるのかどうかが鍵ですね。

 個人的にはこんなに慕ってくれるのなら花苗でいいじゃないかと思いますが、コミックを全て読んで思うのは、明里-「祐一さん」、貴樹-花苗と結ばれると、水野さんが独りぼっちになってしまうのですよね。ギャルゲー的トゥルーエンドを目指すなら、明里-「祐一さん」、貴樹ー水野さん、花苗-「亮くん」がいいのかなとも思うのですが。これなら誰もあぶれないし。

 ということで、長らく続けてきましたコミック版秒速5センチメートルの精読もここまでです。お付き合いいただきましてありがとうございました。

 さて、次回から何をしましょうかね。おや、この本は……?

ほしのこえ

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