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ARIA(その3):未来に漕ぎ出す灯里の「別れと出会い」

新旧3大妖精(多分)
 
 冷たい雨の一日でしたね。五輪真弓の「恋人よ」のイントロくらい寒々とした感じでした。知らない人は、一度聞いてみて下さい。

 http://www.youtube.com/watch?v=LZyb38h8koM

ARIA10巻

 さて、勤労感謝の日ということで、日頃労働にいそしむ私も休ませていただきまして、例によって漫画喫茶へ行ってきました。そこしかないんかいっというツッコミが日本中から聞こえてくる気がしますが、ないんですよ(泣)。

草薙素子

 で、懸案だったARIAのラスト3巻を読み終わり、AQUAから通算全14巻を読了しました。テレビアニメ3期+OVAが制作されているほどの名作なので、今さら私なんぞが外野で騒いでもあまり意味はないかも知れませんが、そうしろと私のゴーストが囁くので(少佐はかっけーですよね)あえてやらせていただきます。

ARIA11巻

 既に前回読んだ9巻でテレサ・テンの歌ではないですが、そこはかとない「別れの予感」が示唆されてきました。愛用のゴンドラとの別れのエピソード(お別れ航海に出かけるアリシアの表情がいつになく悲しげだったのは、きっと灯里との別れを想ったからでしょう)とか、アリシア・晃・アテナもかつては合同練習で毎日会っていたけど、売れっ子の三大妖精になってからは顔を合わせることも難しくなっているという事実に「私たちもいずれ…」と顔を曇らせる灯里達のエピソードとか。

ARIA12巻

 10巻からはますますプリマ(一人前)になる日が近づいてきます。もちろんクリスマスとか「海との結婚」といったイベントは相変わらず華やかに描かれています。掲載時はカラーだったページも、単行本ではモノクロになってしまいますが、天野こずえの絵がすごいのは、白黒でもカラー以上の美しさを描いてみせるところでしょう。本当に凄いわこの人は。

アトラ(左)とあゆみ

 また、いつもの三人娘以外のシングル(半人前)のウンディーネも登場してきます。48話「トラゲット」は、灯里が会社の役に立ちたいということで、観光客よりも地元の人を運搬する渡し船「トラゲット」を漕ぎに行く話ですが、そこで姫屋のあゆみ、オレンジぷらねっとのアトラと杏というシングルとチームを組みます。例によって灯里はすぐに仲良くなってますが、大半のウンディーネがプリマを目指す中、あゆみはトラゲットを愛しており、トラゲット専門のウンディーネとしてシングルを貫くことを決めています。アトラと杏はプリマを目指していますが、その行動は対照的です。

杏

 杏は何度もプリマ昇格試験を受けては落ちると繰り返しており、前日も落ちた様子で落ち込んでいるますが、くじけずに何度でも試験を受けようと前向きの姿勢であるのに対しアトラは、半年前にプリマ昇格試験に落ちてからは、試験に落ちることで自分が全否定されるような気がして恐くて試験が受けられなくなっています。そしてプリマを諦めてあゆみと同じトラゲット専門のウンディーネを目指そうかと考えていることを吐露します。しかし、あゆみ、杏、灯里に諭され、励まされて、諦めず再挑戦することを決意します。

白い妖精(スノーホワイト)アリシア

 このエピソードは、「いつかプリマになりたい」と思っていた灯里が、プリマになることが現実的なことであることを自覚させる契機となっています。プリマになればアリシアとツインカムで会社をもり立てていけると単純に考えていた灯里ですが…

真紅の薔薇(クリムゾンローズ)晃

 52話「海との結婚」は、ヴェネツィアで行われていた同名の行事をネオヴェネツィアで再現するものですが、ウンディーネが総出演してゴンドラを操るという一層華やかなものとなっています。灯里、藍華、アリスの三人娘はもちろん、あゆみ、アトラ、杏もシングルとして登場して黒いゴンドラを漕ぎます。三大妖精は別格で、ガレー船団を引率しています。

天上の謳声(セイレーン)アテナ

 ヴェネツィアでの行事は、総督(ドーチェ)が指輪を海に投げ込むものでしたが、ネオヴェネツィアではゴンドラ協会の理事長が総督役を演じます。今回はグランマが総督役をしていました。そして、ウンディーネ達も一斉に指輪を海に投げ込みます。この指輪は近親者とか恋人から贈られた物がいいそうですが、藍華はおそらくノームのアルから貰ったのでしょう。アリスはウッディのエアバイクの部品(ナット)を指輪代わりにしていました。灯里はサラマンダーの暁がアリシアに贈りたかったものを、アリシアが既に貰っているという発言により譲られていました(というよりなぜか指から外れなくなっていましたが)。

黄昏の姫君(オレンジ・プリンセス)アリス

 このエピソードは、指輪はもう貰ってあるとの言葉に、男がいるのかアリシアさん!とNTR気分を味わった瞬間でした。暁もショックを受けていましたが、読者だってそうだ。アリシアさん素敵だからなあ。大半微笑んでいるし。稀に涙を流したり寂しそうな表情をすることはありましたが、原作では一度も怒ったことはありませんでした。灯里が失敗し続けるとしたら私の指導が至らないから、教えることは教わることというアリシアさんの言葉に身に沁みます。
薔薇の女王(ローゼン・クイーン)藍華

 春が来て、アリスはミドルスクールを卒業してウンディーネに専念出来るようになりますが、すぐに待っていたのはアテナによる昇格試験でした。AQUAで灯里が受けたときと同様、ピクニックに行こうと誘われて灯里と同じコースを漕ぐアリスは、合同練習の成果で苦手な接客や舟歌も克服して、見事に合格しますが、何とウンディーネ史上初となる二階級特進で一気にペアからプリマに昇格してしまいました。アテナから贈られた通り名は「黄昏の姫君」(オレンジ・プリンセス)でした。

遙かなる蒼(アクアマリン)灯里

 それを見て俄然やる気になった藍華を見て、晃は過去にアリシア・アテナにプリマ昇格を先を越された時の気持ちを思いだします。天稟のない者は天才にはないれないが、努力で秀才にはなれる。実はそれを晃に教えたのは幼い頃の藍華だったのですが、本人はすっかり忘れていました。アリスが昇格した直後の57話「薔薇の名前」で藍華は晃からプリマへの昇格試験を行う事を言い渡され、同時に通り名の候補の書かれた紙を渡されます。この辺り、ドベになったときの寂しさを味わわせたくないという晃の「親心」だったのかもしれません。試験のシーンは描写されていませんが無事に合格し、「薔薇の女王」(ローゼン・クイーン)という凄い通り名を貰います。まあ藍華は姫屋の跡取りなのでクイーンもむべなるかな、なのですが。

サンマルコ広場のウンディーネ

 そして58話、冒頭これからは二人で合同練習だねと言う灯里に、藍華は忙しくなるのでもう参加できないと伝えます。藍華は自分から灯里にプリマ昇格を伝えることが出来ず、灯里は手袋のない藍華の手に気付く形で昇格を知ることになりました。涙ぐむ藍華を素直に祝福する灯里。この人に嫉妬とか邪念があるなんて考えられないですね。まさに澄み切った水のごとし。

黄昏の三人娘

 アリスに続いて藍華のプリマ昇格を聞いたアリシアは、遂に決断を下します。灯里には既にプリマの実力はあったのです。さらにアリシアは、ゴンドラ協会入りを強く要請されていました。しかし、現役のプリマと協会の要職の兼任はさすがのアリシアでも物理的に不可能なので、協会に入るのなら現役を引退するつもりでいたのです。

遙かなる蒼

 灯里がプリマになれば、アリシアはARIAカンパニーを任せて引退して協会入りが可能になるわけですが、それは同時に灯里の成長を見守り、灯里と過ごす日々の終了も意味します。灯里にプリマになれる実力があると知りながら、ARIAカンパニーでの日々を失いたくはない、灯里と離れたくないという気持ちが、灯里のプリマ昇格を先延ばしにしていたのです。

ARIAカンパニー全従業員

 こうした胸の裡を告げるアリシアは、灯里を抱きしめて涙をこぼします。そして「私のわがまま」だったと言っています。しかしもちろんそこには悪意があったわけではなく、アリシアとの日々がずっと続くと信じていた灯里もまったく同じ気持ちでいたのです。しかし諸行無常、時は絶え間なく流れていきます。灯里だけをプリマにしない訳にはいかないのです。

アリシアファンクラブ

 試験、そして合格。灯里は58話のタイトルでもある「遙かなる蒼(アクアマリン)」の通り名をアリシアから授けられます。そしてARIAカンパニーの経営権を譲られ、一人で会社を運営していきます。一人目覚めた朝、寝室から降りた灯里が見た過去の幻影(アリシアや藍華、アリス、晃、アテナが揃って楽しく談笑している)を見た灯里は、窓のシャッターを開けられません。開ければ幸せだった時代が消えてしまう気がして。このシーンは本当に胸に迫ります。

水着回!

 しかし、そこは楽しみを見つける天才である灯里、「あの頃は楽しかったではなく、あの頃も楽しかった」「楽しいと感じている現在が一番楽しい」というこれまでに学んだ気持ちを思いだして、前に進んでいきます。そしてみんなのエピソードが語られます。

灯里とアリシア

 アリシアは引退とともに結婚し、ゴンドラ協会の要職に就きました。時間があるとグランマとARIAカンパニーを訪ねてくれるそうで、灯里はそれを楽しみにしています。

鳩と三大妖精

 アテナはオペラ歌手として舞台デビューしました。晃はアリシアの引退で「水の3大妖精」解消後、名実ともに現役最高のプリマウンディーネとして君臨しています。

灯里とアイ

 藍華は新設された姫屋の支店の支店長とプリマを兼任し、多忙ながら充実した日々を送っており、貫禄もついてきたということです。アリスは特進というネームバリューもあってか、プリマ昇格半年後で早くも個人売り上げでアテナと並んでいるということです。

ARIAの新人アイ

 そして、後ろ髪を伸ばしてポニーテールにし、さらに長くなった前髪サイドをポニーテールと一緒に纏める髪型になった大人の灯里は、弟子となるアイを迎えます。このアイは、アニメ版で灯里がメールを送っていたアイの成長した姿です。アニメの設定を漫画が取り入れるという面白い形になっていますね。

アイを見つめる灯里

 アイの食事を見つめる灯里の表情は、かつて灯里を見つめていたアリシアの表情そのものです。初期の頃、灯里は会社の役に立てないと感じていましたが、アリシアは灯里がいるだけで幸せでした。それを灯里も実感したことでしょう。

灯里を見つめるアリシア

 なお、折に触れ灯里はパソコンでメールを送っていましたが、どうやらメールではなくブログだったんじゃないかという描写が最終回にありました。猫の妖精(ケットシー)まで閲覧しているし(笑)。現役ウンディーネのブログなんて大人気なんじゃないでしょうか。

三組の師弟コンビ

 最終巻である12巻のAmazonのカスタマーレビューは凄いことになっています。58件のレビューが全部5つ星です。これだけ心が洗われるようなエピソードを紡ぎ続けてきた天野こずえは本当に凄い漫画家だと思います。読む度に心が浄化されますが、そこは俗人の悲しさ、ただ生活するだけで悲しさだけでなく、穢れもそこここに積もっていくのです。読んだ直後は澄み切った心になるのですが……これってスーパー賢者タイムみたいなものなのでしょうか?悲しき凡俗を嗤って下さい。そしてぜひご一読を。絶対損はさせません。

ARIAメインキャスト総登場


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