水色のカチューシャ:今はもう遠いあなたへ…

今日は結構冷え込みましたね。秋の虫もこれでほぼ壊滅でしょうか。諸行無常です。
さて、こんな夜は小林千絵の「水色のカチューシャ」でも取り上げてみましょう。

小林千絵は1983年にアイドル歌手としてデビューしました。小林千絵について語る前に、ここでちょっと1980年代初期のアイドルの歴史を振り返って見ましょう。
1980年にあの松田聖子がデビューしました。同期はトシちゃんこと田原俊彦、「西城秀樹の妹」河合奈保子、「皇太子殿下のお気に入り」柏原芳恵、「タッチ」を歌った岩崎良美(岩崎宏美の妹)などがいました。錚々たる顔ぶれでした。

1981年には当時の超新星・マッチこと近藤真彦のデビューが決まっていたため、芸能事務所は各社とも賞取りレースは絶望的と思ったのか、有望株を温存しました。そのため女性アイドルは無名の人ばかりでほとんど記憶に残っていません。
1982年はジャニーズは本木雅弘や薬丸裕英の所属したシブがき隊をデビューさせます。一年間の雌伏に耐えた芸能事務所各社も決戦兵器を投入してきました。まず「♪伊代はまだ16だから~」の松本伊代が81年後半にデビューし、82年に入ってからは「歌姫」中森明菜、キョンキョン小泉今日子、薬丸裕英の嫁となった石川秀美、バイリンアイドルの先駆け早見優、子だくさんの堀ちえみ、歌舞伎俳優中村橋之助の嫁・三田寛子などなど。80年以上のアイドルの当たり年でした。

そして1983年、前年の反動が来たのか「不作の1983年組」と言われた年にデビューしたのが小林千絵です。ジャニーズ事務所は「たのきん」最後の1人野村義男を投入しますが、ソロでは不安だったのか「THE GOOD-BYE」というバンドを組ませました。その他のアイドルとしては、今でも生き残っている人で言うと

◇ 森尾由美(とっても可愛かったけど、歌は壊滅的でした。でも可愛いから許す。今なお可愛いという驚異のママドル)

◇ いとうまい子(当時は伊藤麻衣子。ミスマガジンコンテスト初代グランプリ。現在はバラエティータレントですね。「フクロにしなっ!!」は歴史に残る名言)

◇ 岩井小百合(「横浜銀蠅の妹」としてデビュー。銀蠅も今やすっかり過去の人ですね。83年組ではレコードが売れた方です)

◇ 松本明子(「電波少年」のあの人も昔はアイドルでした。しかしデビュー曲は「♂×♀×Kiss(オス・メス・キス)」……タイトルだけで「売れるかこんなん!」と思いますよね)
さて、「水色のカチューシャ」は1983年9月のリリースです。作詞作曲は谷山浩子。多分年末の賞レースに備えての決戦曲だったと思われます。YouTubeに歌がアップされているので聞いてみて下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=pElqh9dO2F4

この曲は隠れた名曲です。歌のモチーフは太田裕美の永遠の名曲「木綿のハンカチーフ」に似ていますが、男女の立ち位置が逆転しています。おそらく田舎で、幼馴染みの男女が仲良く成長していたのでしょう。友達以上恋人未満という関係でしょうか。彼の方が彼女が好きだったのだと思いますが、幼いことから一緒だったので却って意識して告白できないでいたとか。
彼女は歌を歌うのが上手で、歌手になりたいという夢を持っていました。彼の部屋(多分お隣同士とかで窓から行き来、と妄想)でも良く歌を聴かせてくれたのですが、高校卒業を前に公開オーディションに挑戦します。そして合格。彼は自宅のテレビで彼女の歌う姿を見守っていました。
当時は日曜日の午前中に「スター誕生!」(日本テレビ系)とか「君こそスターだ!」(フジテレビ系)なんて番組があったのです。もっとも小林千絵登場前の80年に「君スタ」は終わっており、「スタ誕」もこの曲のリリース直後に終了しているのですが。
そして彼女は芸能界デビューのため上京します。彼女の昔からの夢を知っていた彼は優しく送り出すことしたできませんでした。
華やかな芸能界での活動。そんな中で彼女には恋愛に関するゴシップも報じられます。相手はチャラい男性アイドルか若手俳優といったところでしょうか。芸能レポーターの追及を笑ってはぐらかす彼女の姿をテレビで見ている彼。嫉妬しないといえば嘘になります。ですが、彼には昔から彼女に関してはある意味「諦念」があったのです。いずれ彼女は彼の手の届かない処に行ってしまうだろうという予感と、いつも前を向いて進んでいこうとする、そんな彼女が好きという気持ちと。どうかどうか、大好きなあの人が幸せでありますように。彼の心情な「秒速5センチメートル」の遠野貴樹のようです。
一見華やかな芸能界であっても盛者必衰は世の習い。過ぎ去る時の中、アイドルとしての彼女は芸能界の表舞台から姿を消していきます。「やがて時は流れ、歌も恋も君を捨てた」-このフレーズが心に刺さります。今彼女はどこでどうしているのでしょう。その消息は彼の元には聞こえてきません。
彼の部屋の机の引き出しには、ある日彼女が忘れていった水色のカチューシャが今でも入っています。思い出したらいつでも鳥においで……彼は窓から夜空を仰いで彼女に呼びかけるのでした。
私の妄想も含めて内容を紹介しましたが、歌詞・曲ともとっても良い曲なんです。こういうのを「隠れた名曲」というのでしょう。私の妄想を読むと暗そうに思うかもしれませんが、メロディーはポップで決して暗くありません。しかし、事務所や彼女自身の希望とは裏腹に、この曲はあまり売れませんでした。小林千絵自身が「彼女」になる憂き目に…。

ですが彼女は今も関西方面でタレントとして活動しているようです。2002年に結婚、2003年には39歳で高年齢出産をしており、この歌になぞらえるならば、彼女はずいぶんと時間とかけて彼のところにカチューシャを取りに行って、ようやく結ばれたといったところでしょうか。
ところでこの歌の水色のカチューシャってどんな感じのでしょうかね。私が思うに

こんなシンプルなのじゃないかと思うのですが

こういうのもキュートでいいですね。ただ…

これはさすがにやりすぎでしょう(笑)。
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