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別れの予感:テレサ・テンで一番好きな歌

テレサ・テン
 
 今日は183回目の記事になります。なんだその中途半端な回数は、とお思いになられるかも知れませんが、閏年の今年は一年が366日、183回目というのはちょうどその半年分ということになります。いやー半年やって来たんですねえ。長いような短いような。ここまで皆勤賞でよくやった!誰も褒めてくれないから自分で自分を褒めちゃったりして。

 とりあえずは100回続けようとか思っていたこのブログも、気がつけば半年。次は一周年を目指していきたいと思いますが、ちょっとだけお断りを。今後も基本的には毎日更新を目指しますが、仕事などで忙しい場合は無理をせず、お休みしてしまう日もあるかも知れません。もし毎日見てくれている奇特な方がいらっしゃたらどうかご容赦願います。

 さて、本日は久々に音楽の話題でも。今日はテレサ・テンの「別れの予感」です。

別れの予感

 テレサ・テン、中国語では鄧麗君(デン・リージュン)をご存知でしょうか。若い人には馴染みがないかも知れませんが、1970年代から90年代にかけて日本のみならず、台湾・香港・マカオを含む中華文化圏全域で広く人気を博した歌手です。別名「アジアの歌姫」。

チャイナドレスのテレサ・テン

 1953年に台湾で生まれたテレサは、73年に来日してセカンドシングルの「空港」が大ヒットして、レコード大賞新人賞を受賞するなど活躍しましたが、インドネシアのパスポートで来日しようとしたことで国外退去処分を受けてしまいました。

空港

 84年に再来日が許可されると、「つぐない」「愛人」「時の流れに身をまかせ」などが大ヒットし、84年から86年にかけては有線大賞を3年連続で受賞しています。1995年に惜しくも42才という若さで亡くなりましたが、台湾では国葬が執り行われ、世界からファンが駆けつけたそうです。富と名声は有り余るほどに手に入れましたが、最後まで独身生活を送ったそうです。

若い頃のテレサ・テン

 テレサ・テンの日本での絶頂期は、再来日した84年から87年頃まででしょうか。このバブル前夜の頃のテレサ・テンの歌は、通称「オヤジ殺し」と言われ、男受けを狙う女子大生やOLが好んで歌いました。なぜ男(特に中年以降の)に受けるかというと、歌詞が男側からたまらないような「尽くす女」「忍ぶ女」を切々と歌い上げるからです。

 例えば「つぐない」は、おそらく年下の男性と恋愛して同棲していた女性の歌ですが

つぐない

 愛をつぐなえば 別れになるけど
 こんな女でも 忘れないでね

 過去に縛られ 暮らすことより
 わたしより可愛い人 探すことよ
  

 彼女は彼と別れ、住み慣れた町を去って行きます。違う男と浮気でしょうか?いえいえ

 お酒飲むのもひとり 夢を見るのもひとり

 と、彼女の行方は孤独に満ちています。私が思うに、年がかなり離れたカップルで、仲良く暮らしていたのでしょう。年下の彼は彼女に依存して甘えていたかも知れません。あるいはヒモみたいになっていたのかも。ある日彼女は思うのです。「この人はこのままじゃダメになる」と。そして彼の幸せのために涙を呑んで身を引いて、去って行くのです。彼の成長のため、愛を振り切ってあえて去って行く女。彼を男にしてくれた女。大人です。

 また「愛人」はタイトル通り不倫の歌ですが

愛人

 あなたが好きだから それでいいのよ
 たとえ一緒に街を 歩けなくても

 この部屋にいつも 帰ってくれたら
 わたしは待つ身の 女でいいの


と、とても健気で、かつ男にとって実に都合のいい女を歌い上げています。

 尽くして 泣きぬれて そして愛されて
 明日がふたりを こわさぬように


 決して奥さんと別れてとか言わなそうな女性ですね。これだて尽くしてくれるなら愛人も悪くないなあとおっさん達は思ったはずです。そんな女性はテレサ・テンの歌の中くらいにしかいないのですがね(笑)

 最大のヒット曲「時の流れに身をまかせ」では

時の流れに身をまかせ

 あなたの色に 染められ
 一度の人生それさえ 捨てることもかまわない
 だからお願い そばに置いてね
 いまはあなたしか 愛せない


ですよ。もう一歩間違えれば「ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れない」状態です。

ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れない

 まあテレサ・テンの歌に出てくる女性は絶対ヤンデレではないと思いますが。だってそれじゃあ「男に都合のいい女」になりませんからね。

 一方奥さんの側の歌もあります。「スキャンダル」という歌ですが、これもまた実に男にとって都合のいい奥さんです。なにしろ

スキャンダル

 スキャンダルなら 男の勲章
 迷子にならずに 帰ってきてね
 お酒もいいの 噂もいいの
 私のことを忘れていないなら

 
と言い切ってますから。こんな空よりも広い心の、海よりも深い懐の奥さんがいればと妄想したおじさん達がこぞって聞いたんですよ、テレサ・テンの曲を。そして男受けがやたらいいことに気付いた女性がカラオケで歌って見せて貢がせたりおごらせたりしていたと。こういう歌を歌ったからといって、決して歌のような性格な訳ではないのに、男は馬鹿だからころっと騙されたりしたことでしょう。

 しかし、ここまではなんと前振りなんです。私がテレサ・テンの歌で一番好きなのは「別れの予感」です。この曲は1987年6月にリリースされて、第21回全日本有線放送大賞·グランプリ(上半期)、第21回全日本有線放送大賞·優秀スター賞(年間)などを獲得しています。テレサ・テンは有線放送の女王的存在だったのですが、当時のおじさん達はレコードを買って家で聞くより、バーなどで有線放送をリクエストして聞くことが多かったのでしょう。

 この曲は演歌っぽくなくて、どちらかというと現在のJ-POPに近い曲調である気がします。作詞は、「都合のいい女」を書かせたら世界一ではないかという荒木とよひさ!

世界一ィィィ!

「つぐない」「愛人」「時の流れに身をまかせ」は全部この人の作品です。まあまずは聞いてみて下さい。

 http://www.youtube.com/watch?v=uVWgw_v9dTM&feature=related

別れの予感を歌うテレサ・テン

 この歌では「あなた」と女性の関係は明確ではありません。必ずしも不倫ではないのかなという気がします。というのは、

 もう少し奇麗なら 心配はしないけど
 わたしのことだけを 見つめていて欲しいから


 というフレーズがあるからです。大人の恋愛をしている女性が、本当に彼を好きになっているのだけど、彼の気持ちが今ひとつ不明瞭で不安を抱えているというところでしょうか。

 泣き出してしまいそう 痛いほど好きだから

 身体からこの心 取り出してくれるなら
 あなたに見せたいの この胸の想いを

 海よりも まだ深く 空よりも まだ青く
 あなたをこれ以上 愛するなんて わたしには出来ない

 
 もうこんなに愛されているのなら、ちゃんと応えてやれよと背中をドツキ倒したくなるような愛され方をしています。 こんなに愛しているのにどこに「別れの予感」が?という気もしますが、「あなたに触れていても悲しくなる理由を教えて」と歌っています。実際の歌詞は倒置法を駆使しているので

 教えて 悲しくなる その理由(わけ) 
 あなたに触れていても 信じること それだけだから


となっています。“亢竜(こうりょう)悔(く)いあり”という言葉あります。出展は「易経」だそうですが、天に昇りつめた竜は、あとは下るだけになるので悔いがあることから、栄達を極めた者は、必ず衰えるというたとえです。この歌詞の場合、ヒロインはこれ以上は愛せないというほど愛を極めてしまったので、後は愛が衰えていくばかりという状態であるといえます。その状態を指して愛の極みの中に愛が衰えゆく兆し、すなわち「別れの予感」が隠れているのだとしているのでしょう。深いですね。

 テレサ・テンの歌声は実にか弱そうで優しそうで健気で透き通っていて、それでいて歌詞を全部本当に理解しているのかという疑念を微かに持たせるようなところもあって、それらを全部ひっくるめて最高です。
 
 「別れの予感」はいろいろな歌手がカバーしています。その一端をここに。聞き比べてみるのも一興ですよ。
 
 岩崎宏美版

別れの予感を歌う岩崎宏美

 http://www.youtube.com/watch?v=MgEu4Od7Z7A
 ちょっと声が出ずらそうですが、流石に上手い!

 中森明菜版

別れの予感を歌う中森明菜

 http://www.youtube.com/watch?v=HXa-HoItAlo&feature=related
 大分違う歌い方ですが、この人独自の世界をつくってます

 香西かおり版

別れの予感を歌う香西かおり

 http://www.youtube.com/watch?v=iDilSGYif3E
 テレサ・テンに近い感じで歌ってます。笑顔が可愛らしい

 小柳ルミ子版

別れの予感を歌う小柳ルミ子

 http://www.youtube.com/watch?v=Ue03eeIOjyI
 アレンジがかなり変わっています 

 桂銀淑版

別れの予感を歌う桂銀淑

 http://www.youtube.com/watch?v=XIa8ohLgHQY
 声がハスキーでだいぶ雰囲気が違いますね

 最後に再びオリジナル版(1989年)
 http://www.youtube.com/watch?v=hCc4eczUcIc
 やはりなんだかんだいっても本人が一番でしょうかね。
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