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悪魔の湖畔:笹沢左保の描く官能推理サスペンス

悪魔の湖畔
 
 こんばんは。暖房のない室内はちょっと肌寒い、そんな一日でした。冬の気配が近づいてますね。

 本日は久々にランキングを更新してしまいました。日記ジャンルで374120人中310位、サブジャンルの会社員・OLで37111人中60位です。これまでの最高ランクは8月16日の日記ジャンルで745118人中432位、サブジャンルの会社員・OL部門で62554人中71位でしたので、2ヶ月半ぶりの記録更新です。しかし…なんか分母が大分違っていますね。ほぼ半減しています。休眠ブログの大幅なリストラでもあったのでしょうか。

 なんにせよ、昨日はアクセスカウンター設置以来最多の333アクセスでした。それでこの順位ということは、カウンター未設置時代も含めて最多記録だということでしょう。世間の人気ブログは毎日数万単位のアクセスがあるんでしょうが、こんな場末の無名ブログがどうしたことでしょう。何の期待にも応えずにこれからも好き勝手やっていく所存ですが。

角川文庫版

 さて本日の本題です。今日は先日読んだ笹沢左保の「悪魔の湖畔」です。著者の笹沢左保は、テレビドラマ化されて大ヒットした「木枯し紋次郎」シリーズの原作者として知られ、推理小説・サスペンス小説・歴史書・恋愛論などのエッセイ等、380冊近くもの著書を残した多作の小説家です。

 笹沢佐保の特徴は、多作であるばかりでなく、実験的な試みを多くの作品で行っていることです。特に推理小説では、極端に登場人物を少なくしたり、会話文だけで書いたり、著者自身がたん手になったりと様々な手法を取っています。そうした独創的な工夫の内でも有名なのは、ミステリに官能小説の要素を取り入れた、官能サスペンスの分野を切り開いたことでしょう。特に有名なのは、「悪魔シリーズ」とされる一群です。

 ミステリーには官能描写はもとより、恋愛描写も不要であり、推理を標榜する以上は余計な夾雑物を排除してしかるべきという主張もあるそうです。そういう作品は「本格推理」と銘打たれた作品に多いようで、犯行の動機が痴情のもつれであったとしても、極めて淡々と語られることが多いようです。それはそれでありだと思うのですが、笹沢左保の「悪魔シリーズ」は濃厚な官能描写をストーリーに絡めることで推理小説としての効果を一層高めるという困難な手法の開発に取り組んだ意欲作と言えるでしょう。

 私は昔から普通の小説を読んでいて、突然官能描写が出てくると驚いた後に「ちょっと得した」という気分になったものです。少年時代にはSFに耽溺していたのですが、日本のSF小説がまた突然濡れ場が出てくることが多いのですよね。小松左京とか筒井康隆とか光瀬龍とか。何でも編集者に書かせられていた時代があったということですが、何となく嬉々として書いているような感じがしました。サービス精神旺盛だったのでしょうか。まあ眉村卓みたいにまず官能描写がないSF作家もいまして、安心してというか淡々とというか、そんな気分で読み進めたものです。

悪魔の部屋

 1981年に書かれた「悪魔シリーズ」第一作の「悪魔の部屋」は、確か図書館の書架で手にとって立ち読みしたのですが、濃厚な官能描写にびっくりした記憶があります。どれだけすごいかというと、1982年に中村れい子主演の日活ロマンポルノになってしまったほどです。

悪魔の部屋ビラ

悪魔の人質

 ちなみに1982年に書かれたシリーズ四作目の「悪魔の人質」も1983年に日活ロマンポルノになっています。「悪魔の部屋」は大企業の御曹司と結婚した新妻をホテルに監禁して一ヶ月以上に亘って陵辱するという話で、「悪魔の人質」は婚約者が自殺して心に負った深い傷を癒やしに別荘に来た女性が銀行強盗一味に押し入れられるという話しで、監禁・陵辱というポルノにもってこいのシチュエーションでした。まあ今回の本筋ではないので、興味のある方は小説なりビデオなりを見て下さい。

悪魔の人質ビラ

 で、今回読んだ「悪魔の湖畔」はシリーズ二作目にあたり、一作目の「悪魔の部屋」と同じ1981年に執筆されました。内容は、Amazonの作品紹介によると

東京のホテルに勤める美穂子は婚約者の出張について北海道へ婚前旅行に出かけた。ところが、婚約者の留守中にオコタンペ湖を訪れた彼女は樹海で襲われ犯されてしまう。現場にはT・Tと記された懐中電灯が残されていた。一方、美穂子が襲われた現場近くの支笏湖畔では一カ月前に彼女と瓜二つの女性が暴行未遂の状態で絞殺されていた。しかも婚前旅行の二日前、鹿児島の池田湖畔でも殺人が―。美穂子の強姦と二つの湖畔殺人には関連があるのか!?揺れ動く女心と情事の底に潜む陥穽とを描いた官能ミステリー

となっています。こちらは上記二作品に比べると官能描写は控えめな方ですね。ヒロイン美穂子は何と妊娠してしまうのですが、婚前旅行中なので、胎児が婚約者の子なのか誰とも知れぬ暴行者の子なのか判りません。妊娠をひた隠しにしながら事件の真相を追う美穂子ですが、中盤で婚約者が不妊であることが判明します。また、美穂子の推理を助ける若名という医事評論家(兼画家兼登山家)の色男が現れ、婚約者と別れた美穂子はこの若名と恋愛関係に陥っていきます。

 アメリカにはレイプで妊娠してもそれは「神の思し召し」だと抜かす馬鹿野郎敬虔なキリスト教徒の政治家もいるようですが、それじゃレイプ自体が「神の思し召し」になってしまうことにならないのでしょうか?もちろん私はそうは思わないので、こういう場合は中絶して何がいけないかと思いますが、美穂子はなぜか妊娠3ヶ月になろうと4ヶ月目に入ろうとなかなか中絶しません。しないままに若名と深い仲になって、始めて官能の極地を味わったりしています。

 ネタバレは避けるべきなのでしょうが、本作はあまり推理に重きを置いていません。殺人犯は完全犯罪を狙っている訳ではなく、遺体にはアルファベトが2~3文字残されているのですが、その意味もすぐわかります。そして美穂子を襲った男(殺人犯とは別人)もわりと早い段階で検討がついてしまうのではないかと思います。まあ探偵役が素人の女性なので、そんなに凄いトリックなどがあったらすぐに迷宮入りしてしまうでしょうが。しかし殺人犯は終盤までわからなかったですね。意表を突かれました。私がヘッポコなだけ?

 ところで美穂子は、途中で兄嫁に妊娠を気付かれるのですが、兄嫁は産めといいます。知り合いに子どもが欲しいのにできなかった夫婦がいるので紹介するとまで。そして美穂子もその提案に心が傾くのですが…レイプで妊娠したので中絶するのならそれでもいいと思いますが、産むのならちゃんと自分で育てろよという気が。それとも生まれてくる子どもからすると、出生の秘密など完全に隠蔽して、子どものない夫婦の子として育った方が幸せなのでしょうか?でもいずれ戸籍でばれるよなあ…。いつの日か、美穂子は母として名乗りを上げ、父親のことも告げるのでしょうか。そっちの方が気になりますね。

 なお、悪魔シリーズはこの他

第三作「悪魔の関係」
悪魔の関係

第五作「悪魔の沈黙」
悪魔の沈黙

第六作「悪魔の誘惑」
悪魔の誘惑

があります。他にも

「悪魔の道連れ」
悪魔の道連れ

「悪魔の密会」
悪魔の密会

という作品があるのですが、文芸評論家の中島河太郎によると六作で完結しているのだということで、タイトルに「悪魔」とは付いていてもシリーズものではないのでしょう。
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