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「這いよれ!ニャル子さん」:本当は怖いクトゥルー神話

HPラヴクラフトの肖像画と被造物たち

 いよいよ7月も終わり、明日から8月ですね。

 「這いよれ!ニャル子さん」が終わってしばらく経ってしまいました。OPやEDの紹介をして、「まだ放映中だから」を言い訳に紹介を怠ってきましたが、8~10話あたりの盛り上がりに大いに期待したものの、その後若干尻すぼみというか、いい話に持って行こうという意図があったせいか、個人的にはやや残念な終わり方になったなという感じでした。そういいながら、2期やるなら絶対見ますけどね。まあニャル子さんの本体であるナイアーラトテップは千もの顕現を持つ無貌の邪神なので、ああいうキャラがいても不思議ではないんですけど。

 「ニャル子さん」の画期的な点は、「萌えクトゥルー」という全世界の誰もが思うも寄らなかったコンセプトを導入したところでしょう。きっとクトゥルー神話の創始者であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトも泉下で「その発想はなかったわ」と苦笑しているのではないでしょうか。従来はクトゥルー神話といえば「怖い」「不気味」という連想しかありませんでしたから。

 ラヴクラフトが創始した「クトゥルー神話」は、「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」と呼ばれる、SF的なホラー小説です。これは、無機質で無限に広がる宇宙においては、人類の価値観や希望には何の価値もなく、ただ意志疎通も理解も拒まれる「絶対的存在」の恐怖に晒されているのだという不安と孤独感を描いたもので、妖怪や幽霊といった人間の情念に基づいた恐怖とは決定的に異なる、宇宙空間や異次元などの、20世紀的な外世界からの恐怖を取り上げています。

 「クトゥルー神話」は、太古の昔に地球にやって来て支配していたが、現在は何らかの理由で地上から姿を消している、強大な力を持つ恐るべき異形のものども(旧支配者)が現代に蘇るというモチーフを主体としています。中でも、旧支配者の一柱であり、太平洋の底で眠っているという、タコやイカに似た頭部を持つというクトゥルフを描いた「クトゥルーの呼び声」が有名であるところから「クトゥルー神話」という名称になっていますが、クトゥルーはこの神話体系の中心という訳ではなく、最強の邪神という訳でもありません。…というか、肝心の「クトゥルーの呼び声」では、旧支配者ですらなく、あくまで旧支配者の姿をわずかに伺うことができる存在に過ぎないとされているんですが…

 ラヴクラフトの作品は、全体として神話世界を構成するには至っていませんでしたが、ラヴクラフトの死後、彼の小説世界はオーガスト・ダーレスにより、独自の善悪二元論的解釈や四元素的分類とともに体系化され、クトゥルー神話として発表されました。そのため、「クトゥルー神話」はダーレスが独自の見解を加え体系化した後の呼称であり、ラヴクラフトの作品群やその世界観を指す「原神話」や「ラヴクラフト神話(Lovecraft Mythos)」と区別する意味で、「ダーレス神話(Derleth Mythos)」と呼ぶ向きもあるようです。特にダーレスが持ち込まれたとされる、「旧神」「旧支配者」という善悪二元論的な対立関係には否定的な読者も多いといわれています。

 小難しい話はこれくらいにして、そろそろ「ニャル子さん」のキャラの本性について論ってみましょうか。

ニャル子

 まず主人公のニャル子さんことニャルラトホテプです。この表記はもはやニャル子さんしか連想しないので、あえてナイアーラトテップと呼びましょう。クトゥルー神話の邪神達は、様々な読み方をされます。これは人類には発音できないものを無理矢理呼んでいることから致し方ないのですが、例えばクトゥルーの綴りはCthulhuであり、クトゥルフ、ク・リトル・リトル、クルウルウ、クスルー、トゥールー、チューリュー、九頭龍などさまざまな表記がある。ナイアーラトテップも綴りはNyarlathotepで、ナイアーラソテップ、ナイアルラトホテップ、ニャルラトテップなどとも表記されます。

ナイアルラトホテプ

 クトゥルー神話においては旧支配者の一柱にして、アザトースを筆頭とする旧支配者に使役される外なる神のメッセンジャーでありながら、旧支配者の最強のものと同等の力を有する土の精であり、人間はもとより他の旧支配者達をも冷笑し続けているとされています。

 様々な別名を持っており、主なものは「這い寄る混沌 (Crawling Chaos)」の他、「無貌の神 (The Faceless God)」「夜(月)に吠ゆるもの (Howler in the Dark)」などです。

 顔がない故に千もの異なる顕現を持ち、特定の眷属を持たず、狂気と混乱をもたらすために自ら暗躍します。天敵であり唯一恐れるものは火の精と位置づけられる旧支配者のクトゥグアのみで、またノーデンスとも対立しています。この辺はアニメでも表現されていましたね。旧支配者の中で唯一幽閉を免れている、他の旧支配者と違い自ら人間と接触するなど、クトゥルフ神話において特異な地位を占める神性であり、クトゥルー神話におけるトリックスターとも言えます。

 次にニャル子ラブの百合邪神、クー子ことクトゥグアです。

クー子

 クトゥグアは旧支配者に分類される神で、顕現の際は「生ける炎」の姿をとります。地球から25光年離れたフォーマルハウトを住処にしているとされます。ナイアーラトテップの天敵であるとされ、かつて地球上に召喚された際にはクトゥグアはナイアーラトテップの地球上の拠点であるンガイの森を焼き尽くしています。

クトゥグア

 実はクトゥグアはラヴクラフトと関わりがなく、オーガスト・ダーレスの生み出した神性です。ダーレスはクトゥルフ神話の神性を四大元素に分類しましたが、火の属性が欠けていることを指摘されたことから作り出されたのがクトゥグアなのです。このため、火の属性の邪神は一番数が少なくなっています。

 その次はせっかく釘宮理恵を起用しながら実は男だという「残念キャラ」、ハス太です。

ハス太

クトゥルー神話において、ハスターは旧支配者の一員で、四大元素の「風(大気)」属性の首領とされます。別名としては「名状しがたきもの(The Unspeakable One)」「名づけざられしもの(Him Who is not to be Named)」「邪悪の皇太子(Prince of Evil)」などがあります。他にハストゥールという表記もあります。

ハスター

 四大元素の「水」の首領とされるクトゥルーとは対立しているといわれています。アニメではルーヒーとハス太の登場時のいざこざがこれを表現したものと思われます。ハスターの姿はなにしろ「名状しがたきもの」なので詳細は不明ですが、化身としては「黄衣の王」が有名です。黄衣の王は、ボロ布のような黄色い衣をまとい、蒼白い仮面を被った人物です。黄色い衣は布ではなく皮膚に類するものであるともいわれています。ハス太が黄色い髪で黄色い服を着ているのはここに由来しています。

黄衣の王

 次に國府田マリ子姉が起用されたルーヒー・ジストーンです。アニメではルーヒーはクトゥルヒ、つまりクトゥルーの女性形だということです。

ルーヒー・ジストーン

 クトゥルー神話においては旧支配者の一柱で、四大元素の「水」の首領とされま、「風」の首領であるハスターと対立するものとされています。

クトゥルー

一般には、タコに似た頭部、イカのような触腕を無数に生やした顔、巨大な鉤爪のある手足、ぬらぬらした鱗に覆われた山のように大きなゴム状の身体、背にはコウモリのような細い翼を持った姿をしているとされています。海底に沈んだ古代の石造都市ルルイエに封印されています。アニメにも登場したこのルルイエは、星辰が適切な位置に近づいたごくわずかの期間や地殻変動によって、海面に浮上し、ルルイエ(とそこに眠るクトゥルー)が浮上する時期には、クトゥルーの夢が外界へ漏れ、精神的なショックを世界的に及ぼすとされています。

 なお余談ですが、「水」属性の首領(ドン)とされている割に、ルルイエが水没したためにその活動を制限されているとも考えられ、水棲種族の「深きものども」から信奉されているとはいえ、クトゥルー自体に水や水棲の者を統べるといった要素は見られないのではないかという指摘もあります。

 この他のキャラですが、初期エピソードの敵キャラ・ノーデンスは、人間に対して比較的好意的な存在と解釈され、クトゥルー神話では旧支配者と対立し、彼らを封印した「旧神」(Elder Gods)の一柱とされることが多い存在です。白髪と灰色の髭をもつ老人の姿で現れ、貝殻の形をした戦車を操る、海の神のような性格を持っています。

ノーデンス(ニャル子版)

 また、幻夢境(ドリームランド)の地下に広がる暗黒世界「偉大なる深淵」を治めており、「偉大なる深淵の主」(Lord of the Great Abyss)とも、「大帝」とも呼ばれており、黒く痩せこけた顔のない魔物、夜鬼(ナイトゴーント)を召喚して使役するとされています。アニメでも使役していましたね。

ノーデンス

 ニャル子さんのペットのシャンタッ君は、シャンタク鳥です。

シャンタッ君

 このあたり、造形はオリジナルに近いことが窺えますね。

シャンタク鳥

 それから八坂真尋を度々脅かしたナイトゴーントです。

ナイトゴーント(ニャル子版)

 こちらもオリジナルにそっくり。

ナイトゴーント

 最後に暮井珠緒に憑依していたイス香です。これは「イースの偉大なる種族」と呼ばれる種族です。ニャル子さんの設定では旧支配者はみんな異星人ということになっていますが、実際には単体の存在であるのに対し、「イースの偉大なる種族」は原典でも異星人といっていい存在です。 

イス香=珠緒

 彼らはイースという滅亡しつつある銀河の彼方から、6億年前の地球に到来した実体を持たない精神生命体です。時間の秘密を極めた唯一の種族であるため、畏敬の念を込めて、大いなる種族と呼ばれています。別の生命体と精神を交換する能力をもち、種族の生命保存と知識の収集に活用している。精神を投影できる範囲は非常に広範で、時空を超えて別の銀河系や何億年もの未来や過去へ投影することもできます。

イースの偉大なる種族

 彼らの姿はこのようなものですが、精神生命体故にこれが彼らの本体というわけではなく、あくまで仮の姿といっていいでしょう。これは6億年前にオーストラリア大陸に生息していた巨大な円錘体生物と精神交換を行って地球に来訪した際の姿になります。この際、先住種族「盲目のもの」(flying polyp)を駆逐し、地下へ封じ込めて地球の支配者になりましたが、やがて未来から得た知識により、「盲目のもの」が再び地上へ侵攻することを知った彼らは、そのときが訪れる直前、現人類の次に栄えることになる「強壮な甲虫類」の肉体に転移し、逃亡します。その後、地球の終焉が近づくとさらに、水星の球根状植物に宿ることになるといいます。この辺り、時間の秘密を極めている種族らしい振る舞いといっていいでしょう。
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SFと私:あんなに一緒だったのに

 今日は何と日付変更とともに更新です。いろいろ事情がありまして…

 昔から趣味「読書」としてきました。つまりは趣味に見るべきものがない証です。読書なんて食事や呼吸みたいなものだから。趣味がピアノ演奏とか絵を描くとかならどんなに素晴らしいことか。せめて「小説を書く」なんてことが趣味にできたらいいのですが、なかなか趣味という域には達しません。燃えたぎるソウルの命じるままに書けるようになりたいものです。

 そんな無職の言い訳「職業家事手伝い」の如き、無趣味の代名詞「趣味読書」の私ですが、子供時代の読書傾向はSF一辺倒でした。小学校の図書室で本を借りるようになって、「コレッケ町のぼく」とか「大きい一年生と小さい二年生」とか呼んでいたんですが、じきに少年ものにSFに引っかかりまして、道を踏み外しましたが。南シナ海の無人島でロボットと暮らす「孤島ひとりぼっち」とか、他の星に移住する「遠くまで行く日」なんか印象深かったですね。他にもいろいろ読んだはずですがすっかり忘れてしまいました。その後は眉村卓や光瀬龍、筒井康隆のジュブナイルSFを経てSF街道へまっしぐらに墜ちていったものです。よい子のみんな、読書感想文の対象ににSFを選ぶと決して評価されないから注意しましょう。

 ちなみに中高生まではSFの申し子のようだった私も、高校生くらいからは司馬遼太郎や吉川英治などで「矯正」されるようになり、大学生以降はすっかり「更生」して、ミステリーや歴史小説などを読むようになってしまい、あまりSFを読まなくなってしまいました。この辺りが端的に表れているな、と思うのが、過去の日本SF大賞受賞作品を見たときです。

☆第1回(1980年) 堀晃 『太陽風交点』
 第2回(1981年) 井上ひさし 『吉里吉里人』
☆第3回(1982年) 山田正紀 『最後の敵』
☆第4回(1983年) 大友克洋 『童夢』
 第5回(1984年) 川又千秋 『幻詩狩り』
☆第6回(1985年) 小松左京 『首都消失』
 第7回(1986年) かんべむさし 『笑い宇宙の旅芸人』
☆第8回(1987年) 荒俣宏 『帝都物語』
☆第9回(1988年) 半村良 『岬一郎の抵抗』、横田順彌・會津信吾 『快男児・押川春浪』
☆第10回(1989年)夢枕獏 『上弦の月を喰べる獅子』
☆第11回(1990年)椎名誠 『アド・バード』
☆第12回(1991年)梶尾真治 『サラマンダー殲滅』
 第13回(1992年)筒井康隆 『朝のガスパール』
 第14回(1993年)柾悟郎 『ヴィーナス・シティ』
 第15回(1994年)大原まり子『戦争を演じた神々たち』、小谷真理 『女性状無意識』
 第16回(1995年)神林長平『言壷』
 第17回(1996年)金子修介 『ガメラ2 レギオン襲来』
☆第18回(1997年)宮部みゆき 『蒲生邸事件』、庵野秀明 『新世紀エヴァンゲリオン』
 第19回(1998年)瀬名秀明 『BRAIN VALLEY(上・下)』
 第20回(1999年)新井素子 『チグリスとユーフラテス』、特別賞 光瀬龍
 第21回(2000年)巽孝之 『日本SF論争史』

☆印は読んだ作品です。2000年までで10勝11敗。90年代初まではいいペースで、20回まででも半分読んでいるんですが、2000年以降はぱったりと…21世紀の受賞作品としては、先日ご紹介した「マルドゥック・スクランブル」が初めてでした。これとは別にSF大会参加者が選ぶ「星雲賞」というのもありますが、そちらも21世紀以降は読んでない作品ばかり。ジュブナイルSF(この言い方も懐かしい)ばかり読んでいた少年時代…なんだかずいぶんと遠くに来てしまった気がします。

お次はSF大会でファンが選出する星雲賞受賞作品です。こちらは一度受賞した作家の再受賞もありです。

☆第1回(1970年)筒井康隆『霊長類南へ』
☆第2回(1971年)小松左京『継ぐのは誰か?』
☆第3回(1972年)半村良 『石の血脈』
☆第4回(1973年)広瀬正『鏡の国のアリス』
☆第5回(1974年)小松左京『日本沈没』
☆第6回(1975年)筒井康隆『おれの血は他人の血』
☆第7回(1976年)筒井康隆『七瀬ふたたび』
 第8回(1977年)かんべむさし『サイコロ特攻隊』
☆第9回(1978年)山田正紀『地球・精神分析記録(エルド・アナリュシス)』
☆第10回(1979年)眉村卓『消滅の光輪』
☆第11回(1980年)山田正紀『宝石泥棒』
 第12回(1981年)川又千秋『火星人先史』
第13回(1982年)井上ひさし『吉里吉里人』
 第14回(1983年)小松左京『さよならジュピター』
☆第15回(1984年)神林長平『敵は海賊・海賊版』
☆第16回(1985年)神林長平『戦闘妖精・雪風』
 第17回(1986年)高千穂遙『ダーティペアの大逆転』
 第18回(1987年)神林長平『プリズム』
☆第19回(1988年)田中芳樹『銀河英雄伝説』
☆第20回(1989年)堀晃『バビロニア・ウェーブ』
☆第21回(1990年)夢枕獏『上弦の月を喰べる獅子』
 第22回(1991年)大原まり子『ハイブリッド・チャイルド』
 第23回(1992年)菅浩江『メルサスの少年』
 第24回(1993年)柾悟郎『ヴィーナス・シティ』
 第25回(1994年)谷甲州『終わりなき索敵』
 第26回(1995年)山田正紀『機神兵団』
☆第27回(1996年)眉村卓『引き潮のとき』
 第28回(1997年)森岡浩之『星界の紋章』
☆第29回(1998年)神林長平『敵は海賊・A級の敵』
 第30回(1999年)笹本祐一『彗星狩り』
☆第31回(2000年)神林長平『グッドラック、戦闘妖精・雪風』

こちらは回数が多いですが、2000年までで18勝13敗で勝ち越しています。アメリカではヒューゴー賞とネビュラ賞があり、選考方法からすると、星雲賞=ヒューゴー賞、日本SF大賞=ネビュラ賞という感じになるでしょうか。ヒューゴー賞とネビュラ賞を同時に受賞することを「ダブルクラウン」といって、「デューン 砂の惑星」「闇の左手」「リングワールド」「神々自身」など錚々たる作品が受賞していますが、日本SF大賞と星雲賞のダブルクラウンは「吉里吉里人」「ヴィーナス・シティ」それと2009年の「ハーモニー」の3作品だけですね。

アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女(その2):アイテム作製と会話あれこれ

ヒロイン3人娘
 
 はい、今日も暑いですね。大暑の次候「土潤溽暑」、土が湿って蒸暑くなるという時期なので当然かも知れませんが。そういえば27日は「土用の丑の日」でしたが、ウナギの漁獲量が急激に減少しているとかで、高値がついているようです。ウナギがなければアナゴを食べればいいじゃない?いやいやあの味にはちょっと太刀打ちできそうにないですよ。

 さて、昨日の続きで「アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女」の話を再開しましょう。

 このゲーム、「アトリエシリーズ」のガストが参加しているため、材料とレシピを集めることで、錬金術のように冒険に必要となる多種多様な武器や道具類を作り出すことができます。まさしく「アトリエシリーズ」の錬金術と同様のシステムですが、ゲーム内では「グラスメルク」と呼称されています。これはやり出すとドラクエのカジノ並に熱中してしまい、冒険がそっちのけになったり、材料収集や購入のための資金集めに仕方なく冒険に行くという本末転倒な状況が生まれたりします。

 まあそれもゲームの楽しみ方の一つなので全然問題ないのですが、グラスメルクをやっていると、パーティーにいるレーヴァテイルがコメントしてきたり、勝手に命名をすることがあって、そのやりとりが結構面白いです。特にオリカはネーミングセンスが天才的なので、大爆笑な命名をしてくれます。

 例えば…チェーンソーを武器としている仲間のために作った、音速で回転して物を切断するチェーンソーを、ライナーは「音速歯車」と命名しますが、オリカがいるとこんな会話が。

ライナー: 自分で作っておいてなんだけど、 凄い凶悪だよな、これ?
オリカ: そうだよね… 音速で回る歯車で物を切り裂くなんて、怖いよ。ていうか、この歯車少し大き過ぎない?
ライナー: まあ、これくらいにした方が強くて良いだろ?でもまあ、確かに凶悪だよな。少し柔らかい感じにしたほうがいいかな?
オリカ: 「クルクルズバズバ」ってのはどうかな?
ライナー: 可愛らしい名前だけど、実際に使った時の ギャップが天と地ほどあるよな…。

 一方、ミシャだとこんなです。

ライナー: 自分でも驚きなんだが、音速歯車完成だ。
ミシャ: うわぁ…名前に負けないくらい外見も怖いわね。
ライナー: 音速で回る歯車で相手をズタズタに切り裂くんだから、怖くて当然さ。
ミシャ: …やっぱりグロいよ。「グロテスク歯車」に改名しようよ。
ライナー: 使い手から文句言われるのは俺なんだからな。

 「クルクルズバズバ」に「グロテスク歯車」…レーヴァテイルのネーミングセンスには脱帽ですが、特にオリカは凄い。他にもあります。

 ライナー命名「銀の謳い手」というソードに対して、オリカ。

ライナー: よし、銀の謳い手の完成だ。とは言っても、銀で出来てるわけじゃないけどな。
オリカ: でも凄い綺麗だよ。本物の銀みたいだし、まるで鏡みたい!それはそうと、謳い手ってのがよくわからないんだよね。だってライナー、謳わないんでしょ?それに謳い手なんていわれると、私の存在価値が薄くなっちゃうような気がして嫌だな。
ライナー: そうか。じゃあ、オリカに名前を決めてもらおうかな?
オリカ: え!? わ、私が決めちゃっていいの?
ライナー: ああ、いいよ。オリカに任せた。
オリカ: うん…えっと、それじゃあね…。あ、思いついた!「ピカピカの剣!」
ライナー: へぇ、って、マジ!? ピカピカの剣って本気!?
オリカ: 違うよ。ピカピカの剣じゃなくて「ピカピカの剣!」だよ。
ライナー: …つ、作るのメチャクチャ苦労したのに…。

 ミシャの反応。

ミシャ: うわぁ、凄い綺麗な剣ね! まるで鏡みたい!
ライナー: そうだろ?だからかな、銀の謳い手って名前で呼ばれてるんだよ。
ミシャ: 謳い手? なんだかそれ、謳う役の私が嫉妬しちゃいそうな名前ね。
ライナー: 言われてみれば確かに。 何かあるなら変えても構わないよ。
ミシャ: そうね…「謳い手の守り」とかはどう? これを使って戦うって事は、私を護ることでもあるんだからね。

 これにはシュレリア様もコメントがあります。

シュレリア: あ…なんだか綺麗な剣ですね。
ライナー: へへ、作るの結構大変なんですよ。
シュレリア: これだけ綺麗なら仕方ないですね。さながら「白銀の騎士」ってところでしょうか?
ライナー: 惜しい、銀の謳い手です。でも白銀の方が高級っぽい感じがするかな…。
シュレリア: ただの銀っていうには勿体無い輝きですよね。

 「ピカピカの剣!」「謳い手の守り」「白銀の騎士」…やはりオリカのセンスは我々の斜め上をいっています。

そこにシビれるッあこがれるゥ!
 ディオをオリカに置き換えて下さい。

 このほか、「褐色ももひき」には(そんなものを作るライナーもライナーですが)

(オリカ編)
オリカ: 何もモモヒキなんか作らなくてもいいのに…。
ライナー: でもさ、寒いところとかではやっぱり あった方がいいと思ってさ。
オリカ: だからって、モモヒキだよ?なんかライナー、凄くジジ臭いよ…。
ライナー: い、言ってくれるなぁ…。 でもな、これでも普通の鎧なんかより全然防御力高いんだぞ?
オリカ: だけど嫌だな。ライナーがそんなジジ臭いものを履くの。
ライナー: そう言うなって…まあ、履かないオリカにはわからないと思うけどさ…。
オリカ: 履くわけ無いよ。こんな「オヤジパンツ」。
ライナー: …いや、まあ、否定はしないけどさ…。

(ミシャ編)
ライナー: よし、寒いところはこれで安心だ!
ミシャ: 安心だ!じゃないよ! そんなの履いたら、もうライナーに着いて行けないよ、私!
ライナー: そんなのって、そういう言い方ないだろ? これ、凄く暖かいし防御力だって…。
ミシャ: そういう問題じゃないの! モモヒキなんか履いたライナーはライナーじゃない!そんなオッサンパンツはライナーは履いちゃダメ! アル兄ぃにでもあげて!
ライナー: …ジャックの前では絶対に言うなよ。オッサンパンツって名前。
ミシャ: っていうか、そもそも名前が良くないのよ。せめて名前を変えて紛らわしましょ。
ライナー: 別に構わないけど…。なんて名前にするんだ?
ミシャ: えーと…「メンズネグリジェ」とか。

 「熱血Tシャツ」には

(オリカ編)
オリカ: これさ、ライナーが着るの?
ライナー: いや、まだ誰が着るかは決めてないけど…どうして?
オリカ: ん~、なんか子供が着るなら話はわかるけど、私達が着ても似合わないんじゃないかと思って…。それにこれ…今時こんなセンス流行らないよ。
ライナー: オリカからセンスについて説教されると、ショックも人一倍だな…。
オリカ: …「暑苦しいTシャツ」でいいよ。

(ミシャ編)
ライナー: よし、熱血Tシャツ完成!
ミシャ: 見た感じは普通のシャツね…って、これってただの布じゃない!?
ライナー: そりゃシャツだからな。金属でできてたら鎧になるだろ?
ミシャ: こんなシャツ作ってどうするの?これじゃ敵の攻撃防げないでしょ?
ライナー: そう思うだろ? だけどこのTシャツを甘く見ちゃダメだぞ。見た目はただのTシャツにしか見えないだろうが、実はそこらの鎧なんかよりは 頼りになるんだぞ。
ミシャ: こんな普通のTシャツなのに!?
ライナー: しかも炎の耐性、追加攻撃も可能だ。これぞまさに熱血の炎!!
ミシャ: …ライナー?
ライナー: これをみんなで着れば、怖いもの無しだ! 熱血の炎は無敵だ!!
ミシャ: はいはい、「ムンムンシャツ」に改名決定ね。あと、ライナーは着用禁止。

 「ブシドーアーマー」(見た目は鎧ではなく、江戸時代の和服。チョンマゲヅラ付き)

(オリカ編)
オリカ: うわぁ、見るからに武士道の塊りだね!
ライナー: えぇっ!? オリカ、これに武士道を感じられるのか!?
オリカ: 感じるも何も、見るからに武士道の塊りでしょ?それ以外に何も言えないよ。
ライナー: …そ、そうか?
オリカ: ちょんまげこそ武士道だよ。さすがは「ちょんまげスーツ」だね。
ライナー: 武士道に対しての間違いはもちろんだけど、勝手に名前を付けないでくれよ…。

(ミシャ編)
ライナー: どこがどう武士道かはわからないけど、とりあえず完成だ。
ミシャ: そう?私的には物凄い武士道の塊のようにしか見えないけど?
ライナー: …一体、これのどこに武士道を感じるんだよ?
ミシャ: ちょんまげで着物だからかな?
ライナー: 武士道ってそんなものなのかよ?
ミシャ: そんなものでしょ? それより、もっと武士道を全面的に押し出したような名前じゃないとダメよ。例えば、そう…「ブシドール」とか!
ライナー: …そんな武士道、あっていいのかよ?

(シュレリア編)
ライナー: ブシドーアーマー。ていうか、武士道ってわかります?
シュレリア: 聞いたことはあるんですけど、私は武士じゃないですから詳しいことは…。
ライナー: 俺も詳しくはわからないんですけど、少なくともこれは武士道じゃないですよね。
シュレリア: …あの、なんとなくですけど、この服は「大黒屋番頭」という気がします。
ライナー: それだ!! ピッタリですよ、その名前!

 私が一番笑ったのは、レシピ名「派手な指輪」。ライナーはこれを「小姑の指輪」と命名します。ライナーのセンスもいかがなものかと思いますが…

(オリカ編)
ライナー: よし、小姑の指輪の完成だ。これをつければハーモニクス状態が長くなるぞ。
オリカ: …なんか、あまり付けたくないんだけど。
ライナー: ど、どうして!?
オリカ: だって、小姑だよ? 普通女の子に渡すようなものじゃないよ。もうちょっと渡すものの名前を考えて欲しいな…そんなの、女の子が喜ぶわけ 無いでしょ?
ライナー: そりゃ…そうか。ちょっと反省。じゃあ、どうしたらいいんだ?
オリカ: 「小姑さんの指輪」でどう? 小姑「さん」って辺りが結構可愛くなったと思うけど。
ライナー: そ、そんなモノでいいんかい!

(ミシャ編)
ライナー: よし出来た! ほらミシャ、小姑の指輪だぞ。
ミシャ: ほらって言われても、私、欲しくないよ。
ライナー: わかってる。名前だろう?だけどこれ、ハーモニクス状態を長くしてくれて…
ミシャ: だけど小姑でしょ? そんなの女の子が喜ぶと思う?小姑なんてのは鬼よりも怖いんだからね。名前を「ミシャへ愛の指輪」に変えてくれるならつけてあげる!

(シュレリア編)
シュレリア: …この指輪からやけに恐ろしいオーラが 漂っているのですが?
ライナー: そりゃそうですよ。 なんたって、「敗れた恋人の護り」に「最強のキバ」を混ぜたものですからね。
シュレリア: といいますか、最初に「敗れた恋人の護り」なんて作ったのは誰ですか。
ライナー: さ、さあ… 俺が作ったわけじゃないですからね…。どこかの職匠さんが毎晩夜なべして…
シュレリア: …なんか、「復讐の指輪」って名前の方が似合ってるんじゃないですか?
ライナー: なんだか呪われた道具と間違われそうですけどね…。

「ミシャへ愛の指輪」をオリカに付けさせたら、さらなる修羅場が発生しそうですが。「小姑の指輪」のあまりの不評ぶりに、ライナーはこれを材料としてさらなるグラスメルクに励み、「星屑の涙」というネックレスを作ります。

(オリカ編)
ライナー: ほら、これをつければ精神力が大幅にアップするぞ。
オリカ: うわぁ、綺麗なネックレスだね!
ライナー: そうだろ? みんな付けたがらない「あの指輪」をアレンジしたんだよ。これなら、別に嫌がらずに付けてくれるんじゃないかと思ってさ。
オリカ: そうだね。 じゃあ、名前は「お姑さんの首飾り」だね!
ライナー: なんでそうなるかな、ホントに…。

(ミシャ編)
ミシャ: 綺麗なネックレスね。
ライナー: ああ、星屑の涙って言ってな、評判の悪い「あの指輪」をアレンジしたものだ。
ミシャ: …あれが、こんな綺麗になっちゃったの?
ライナー: これくらいにしないとつけてくれないだろ? 俺も色々と考えてるんだよ。
ミシャ: ありがと。絶対こっちの方がいいよ。ねえねえ、私が身につけるなら「スタージュエリス」って呼んじゃダメ?
ライナー: まあ、いいんじゃないか?

(シュレリア編)
ライナー: 星屑の涙、出来上がりだ!
シュレリア: 綺麗なネックレスですね。是非身につけてみたいです。
ライナー: …え?
シュレリア: あ、何かまずいこと言いました?
ライナー: あ、い、いえ!そんなことは…ただ、材料を聞いても同じ事を言うかどうか、ちょっと試したいような試したくないような、そんな気分になっただけで…
シュレリア: ええっ! な、なんですかその思わせぶりな発言は!

 最後に、動画サイトで観られる「問題のシーン」といわれる場面です。第三世代のレーヴァテイルは延命剤を定期的に服用しないと20歳位で死んでしまうのですが、オリカがライナーに延命剤を入れて貰うところです。

 http://www.youtube.com/watch?v=um5Q-0qQgk0


……どう考えても「狙っている」としか思えない台詞とシチュですね。本作は12歳以上向けのCERO:B作品なので、決して妙なシーンではありません。しかし…絶対確信犯だな(笑)。

 ちなみにアルトネリコはシリーズ化しており、「アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩」「アルトネリコ3 世界終焉の引鉄は少女の詩が弾く」という続編も出ていますが、私は一作目しかやっていないので、ぜひやったことのある方は感想を聞かせていただきたいと思います。

 最後にレーヴァテイル3人娘に対抗?する脇役女性3キャラ。

脇役その1:スピカ
 
 一人目はスピカ。ほたる横丁で「猫飴」という飴を売っています。天然ボケの入った世間知らずな娘さんのようで、猫飴の売り子として毎日の生計を立てている……というのは表の顔で、裏の仕事は、様々な裏情報を高額で取引する情報屋であり、更に良質な「グラスノ結晶」のバイヤーでもあります。 超レアな情報やグラスノ結晶をどこからともなく仕入れ、そして高額で売ってくれます。冒険中しばしばお世話になります。

脇役その2:クレア

 二人目はクレア。空港都市ネモの酒場を切り盛りする女主人で、実はクラスBのレーヴァテイルです。ライナーやヒロイン達に優しく厳しく道を教えてくれるお姉さん的な存在で、オリカの憧れの人でもあります。クレアは酒場で歌を謳いながら働いていますが、その歌はレーヴァテイルがもつ力を発揮する癒しの歌でファンも多く、連日詩を聴きにお客が絶えません。クレアの信条は、庶民の為に歌を謳うことで、人を傷つける詩は謳いまぜん。

脇役その3:亜耶乃

 最後は亜耶乃。どうみても悪の組織の女幹部か女海賊といった雰囲気ですが、複合企業集団「天覇」の社長です。先代の社長より世襲で継いだはいいが、その仕事の退屈っぷりに辟易としています。書類、経理が苦手ですが、人との交渉ごとや交流は得意で、そういうときは誰よりもチャンスを逃しません。また、「天覇」に非があるクレームには、如何なる理由があろうと潔く謝罪し、己の責任を持って、その対応の指揮を執ります。そのため見かけによらずとても人望が厚く、当初は敵対していたライナー達とも親しくなります。








アルトネリコ 世界の世界の終わりで詩い続ける少女(その1):ナゾの「ムスメ調合RPG」

アルトネリコ

 先週の土曜日のあの涼しさは幻だったんでしょうか。暑い…暑すぎる…

 土曜日は部屋掃除をしてから運動に行くのが恒例なんです。といっても一駅先分往復するウォーキングなんですけど。なんだたったの一駅かよと鼻で笑った都会派のあなた。田舎の一駅は、地下鉄の一駅とは全然レベルが違うんですよ。終電で乗り越してしまって深夜タクシーに乗れば3000円くらいはかかっちゃうんだから。といって乗らないで突っ張って歩くと最悪遭難の可能性もあるという…田舎をなめてはいけません。

 まあ春秋などは気持ちよく風景を眺めたりしながら季節の移ろいを感じつつ叙情性豊かに歩けるんですが、こういう猛暑日はマイッチングですね。水に濡らした冷感タオルを首に巻き、額にも水に濡らしたヘッドバンド。2回位は水かスポーツドリンクを給水して2時間弱歩くのですが、もう途中でへろへろになって、家に戻ってシャワー浴びることだけを夢想しながらとぼとぼ歩くことになります。

 そんな訳で、ギャルゲーの土曜日ですが、今回はバテバテなので明日と2回にわけてお送りしたいと思います。で、今日ご紹介するのは「ムスメ調合RPG」と銘打った「アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女」です。「ムスメ調合」とは一体なんぞやという話ですが、コンシューマー機(PS2)用だし、12歳以上対象なので過度な期待はしないで下さい。とはいえ、本作は妙な表現や思わせぶりな表現が多いことで一時期話題にもなりました。
主要登場人物達
ライナー(中央)と愉快な仲間達。シュレリア様はいません…

 本作は2006年に発売されたガストとバンプレスト(現バンダイナムコゲームズ)が共同開発しました。ガストといえば「マリーのアトリエ」を始めとするいわゆる「アトリエシリーズ」で有名ですが、本作もこれが反映されていて、様々なアイテムや武器・防具を自ら開発していくことになります。

 舞台は地球とは異なる「アルシエル」と言う惑星です。アルトネリコとは巨大な塔のことで、古代の超文明が開発した巨大建造物です。過去の2回に亘る大災厄により、人類はこの塔とその周辺でしか生きていけなくなっています。空には「ブラストライン」というプラズマが充満した空域で覆われ、大地は粉砕されて「死の雲海」と呼ばれる分厚い雲の層が広がっており、生き残った人々はアルトネリコとその周辺でのみ、かろうじて生存できる状態にあります。雲海の果てに人間が生き残っている可能性もありますが、雲海を越えて探索することは困難なため、シリーズ1作目の本作では把握されていません。

 主人公はライナーといい、アルトネリコ上層部のプラティナ出身で、父親は行政官をしています。ライナーも後継を期待されていますが、自身は冒険を好み、アルトネリコの管理者であるシュレリアを守護する「エレミアの騎士」となります。そしてアルトネリコの危機に際して世界を救う冒険に挑むことになります。ヒロインからはモテモテですが、鈍感力に長けているせいであまり気付くことはありません(笑)。

 ヒロインはレーヴァテイルと呼ばれる種族です。見かけは人間と変わりませんし、婚姻も混血も可能ですが、詩を力に変える能力を持つ稀少種族です。過去に人造的に生み出された種族であり、基本的には女性しか存在せず、身体の表面には「インストールポイント」と呼ばれる紋章が刻まれています。詩魔法(うたまほう)と呼ばれる神秘の力を操ります(要するに魔法少女ということですな)。

 レーヴァテイルは、特別なレーヴァテイルであるレーヴァテイル・オリジン、純粋なレーヴァテイルである「β純血種(ベータじゅんけっしゅ)」、及び人間との混血である「第三世代」の3つに大別されます。レーヴァテイルとしての力はオリジン>β純血種>第三世代となります。

 オリジンは塔の管理者として作られた特別なレーヴァテイルで、通常状態では不老不死です。β純血種はオリジンのクローンで、不老で長寿命(150歳位)です。第三世代は人間とレーヴァテイルの混血で、人間として生まれた後にレーヴァテイルの能力が発現した者で、一般的にその能力は「β純血種」に劣り、人間と同様に成長し老化します。寿命は極端に短く、20年程度しかなく、延命剤を定期的に摂取しても40歳前後で死を迎えます。

ミシャとオリカ
右がオリカ、左がミシャです。

 一人目のヒロイン・オリカ(17歳)は第三世代のレーヴァテイルです。以前は明るい性格でしたが、数年前事件で両親を失ったことでトラウマを負い、人間不信に陥っています。レーヴァテイルのクラスはDで、能力が低いとされており、また自分でも力は無いと思い込んでいます。ライナーと出会って優しさに触れていくうちに徐々に本来の明るくエキセントリックな性格を取り戻していきます。可愛い顔をしていますが、思ったことをそのまま口に出すタイプで、またネーミングセンスは「天才的」です。レーヴァテイルのネーミングセンス自体が異色なので、これについては後編でぜひ取り上げさせていただきたいと思います。

 もう一人のヒロインは彌紗(ミシャ)。18歳ですが、事情により出会った時点では12歳程度にしか見えません。β純血種レーヴァテイルで、とても聡明で知性に富んだインテリですが、運動神経は皆無で、極度の高所恐怖症でもあります。性格は明るく強気です。
プラティナ出身でライナーの幼なじみですが、ライナーはこのことを忘れています。

 戦闘は、彼女らレーヴァテイルが後方で詩魔法を唱えている間、前衛のライナー達が敵を足止めして守るというスタイルで行われますが、彼女たちの魔法力を強化するために必要なのが、「ダイブ」です。

 「ダイブ」とは、レーヴァテイルの精神世界(コスモスフィア)に入り込んで干渉する行為で、レーヴァテイルにとっては自分の内面を曝け出すこととなるため、強い信頼関係で結ばれたパートナーにしか許さない行為です。ダイブによってパートナーがレーヴァテイルのコスモスフィアに干渉すると、コスモスフィア内部でのパートナーの行動により、レーヴァテイルが抱えている悩みや葛藤が昇華され、コスモスフィアのさらに深い階層へとダイブすることが出来るようになります(パラダイムシフト)。また、レーヴァテイルがコスモスフィア内部で詩魔法を紡ぐと、現実世界でもその詩魔法を使えるようになります。パラダイムシフトが発生してコスモスフィアの1つの階層が完了すると、その階層でレーヴァテイルが着ていたコスチュームを、現実世界でも着ることが出来るようになります。
 
コスモスフィアの階層はLV9までありますが、そこまで到達することは極めて困難で、一時代に数人いるか居ないかと言うレベルであり、それだけで英雄候補たり得る存在という事らしいですが、当然我らがライナーはLV9をクリアしていくわけです。先述の「ムスメ調合」とは、「ムスメ」であるレーヴァテイルの心の世界「コスモスフィア(精神世界)」に潜り込んだり、コスモスフィアで獲得した天使、巫女や魔女など様々なコスチュームをレーヴァテイルに着せることができることなどを表しているということです。

 それで、ゲームプレイ中、ヒロインをオリカにするかミシャにするかで悩み、やはり再プレイは必須だぜ、ということになるのですが、じゃあお前はどっちが好きなんだ、といわれれば、答えは簡単。「シュレリア様に決まっています!」

鳥の人

 これがシュレリア様です。「様」は、全キャラがそう呼んでいるので自然に言いたくなります。まるで鳥の人かノイエジールかという感じですが、これは装甲です。

シュレリア様

 「中の人」はこんな感じです。シュレリア様はアルトネリコの管理者を務めるレーヴァテイル・オリジンです。理性派で、個人的感情に流されないよう自分を律しています。塔と一心同体の存在であり、肉体は16歳の少女のまま739年の間生き続けています。

スクールガール・シュレリア

 甲冑装備中は威厳ある大人の女性のように見せかけていますが、甲冑を脱いでパーティ加入後は、公の場では決して見せることがなかった意外な一面を見せるようになります。例えば方向音痴で度々迷子になったり、戦闘中に転ぶなどドジっ娘だったり、うさぎが好きだったり。また甘えん坊で寂しがり屋な素の性格をのぞかせるようにもなり、実は以前からライナーにベタボレであることが判明したりします。

浴衣シュレリア

 アルトネリコ建設以来、739年もの長き時間を生きているというBBAオブBBAですが、実際には精神は「永遠の16歳」です。世界の存亡をその小さな体で必死に担っているシュレリア様を、支えてあげなくてなんために男に生まれてきたのかといいたくなるので、私のライナーはシュレリア様一択でしたよ。

 それでは明日は「アルトネリコ」の「問題のシーン」と「ネーミング問答あれこれ」について語っていきましょう。
 


「ペイント・ザ・スカイ~ザ・ベスト・オブ・エンヤ」:業師が贈る安息をあなたに

エンヤ ベスト盤
 
 連日の猛暑日。まさしく

あっついぜ~

の日々です。まあこの人たちの場合は暑さのせいというより、着込んだ耐火服のせいで暑いような気もしますが、気持ちはわかる。よーくわかる。みなさんくれぐれもご自愛下さい。水分塩分の補給を忘れずに。

 こう暑いと、昼寝も重要な休息。クーラーの効いた部屋でシエスタとしゃれ込みたいところですが、そんな時のBGMに持って来いなのがエンヤのベスト盤「ペイント・ザ・スカイ・ウィズ・スターズ」(Paint the sky with stars)です。

エンヤ

 エンヤはアイルランド人歌手で、1961年生まれの51歳。アイルランド人の祖先であるケルト音楽を下敷きにした独特のメロディは日本でも大変人気があり、CMやテレビ番組でも多用されています。特徴的なのが、メインボーカルやバックコーラスをエンヤ自身の声で多重録音し、ダイナミックで荘厳さに満ちた音を生み出していることです。エンヤ自身の声のコーラスと彼女自身が好む深いエコーが、終始一貫して深みと広がりのある音を生んでいます。

 エンヤは1980年代半ばから活動を開始し、日本では1988年の「オリノコ・フロウ」のヒットで知られるようになったということですが、遺憾ながら当時の私は、特にその存在を感知することなくぼんやりと生きており(多分曲を聴いたことくらいはあったけど、「これがエンヤ」とは認識していなかったと思います)、「ジョジョの奇妙な冒険」の第三部に「エンヤ婆」というのが登場したので、そういうミュージシャンがいるんだと漠然と思った程度でした。

ア・デイ・ウィザウト・レイン

 ところが1999年、思いも掛けずに海外勤務ということがあり、ろくな娯楽がないので音楽に飢え、通販で買ったCDの一つがこのエンヤのベスト盤だったんです。初めて聞いたときは「え?全部自分の声なの?」と非常に驚きました。そしてそのメロディーラインの美しさに惚れ惚れしました。エンヤ自身も美人ですが、声がなんとも素晴らしです。

 本作は日本では1997年に「ペイント・ザ・スカイ~ザ・ベスト・オブ・エンヤ」と題して発売され、日本だけで200万枚を売る大ヒットになっりました。私が買ったのはインターナショナル版ですが、日本版では、ボーナストラックとして、ゲール語版「きよしこの夜」が収録されているということで、日本版を買った方がお得なのでした。

アマランタイン

 本作は、それ以前にリリースした「ウォーターマーク」「シェパードムーン」「メモリー・オブ・ツリーズ」の3作のいいとこ取りをしたベスト盤ですが、その後も「ア・デイ・ウィズアウト・レイン」「アマランタイン」「雪と氷の旋律」の3作をリリースしています・ということは、25年以上の活動の中でオリジナルアルバムはたったの6作ということになりますね。独特の製作手法から1曲に費やす手間が多いことは想像に難くないですが、エンヤ自身も完璧主義者で、アルバム1枚を完成させるのに時間がかかっているようです。アイルランドの大滝詠一とでも呼びましょうか。また、アルバムリリース後は1年位休暇をとるそうです。ある意味うらやましい生活ですね。

 ソファに寝転んで、「オリノコ・フロウ」「カリビアン・ブルー」「ブック・オブ・デイズ」「エニウェア・イズ」「オンリー・イフ」…と続くラインナップを聞いていると、夢の世界が一気に近づいてきます。また仕事が終わった後でベッドに行く前にくつろいでいるときに聞くと、うたた寝してしまうこともしばしば。逆に朝一番に聞くとやる気がみるみる失せていきます。

雪と氷の旋律

 小野リサといい、鈴木重子といい、エンヤといい、私が外国暮らしをしていた頃に愛した音楽は、やる気の出なくなるものばかりなのでした。

女の子キャラを作ってみました


 暴れてますね、猛暑。せめて湿気がもう少し減ってくれれば…。みなさん、熱中症にはくれぐれもご注意を。

 話は変わりますが、このたび「キャラメイクファクトリー」というサイトが存在することを知りました。

 http://www15.atpages.jp/kisekae99/kisekae.html

 ここでは簡単にキャラメイキングができるんです。こんな風に。 
試作の女の子キャラ

 そこで、調子に乗って女の子キャラを何人か作ってみました。まずはこの子なんですけど…どうでしょうか?名前は由香里といいます。

由香里

 ちょっと上品なお嬢様を意識してみました。家はきっとお金持ちです。
 ついでなんでお友達も作ってみましょう。姫子さんです。

姫子

 おっとりしてて、由香里お嬢様とも気が合いそうです。

 絵心がなくても簡単にキャラが作れるって楽しいですね。今書こうかと思っている魔法少女ストーリーのキャラクターメイキングはここで賄えるのではないかという気がしてきましたよ。いろいろ試作してみましょう。

 今度はちょっとクールで知性派の聡美さんです。

聡美

 案外小生意気で猪突猛進かも知れませんね。最初に倒されるタイプとか(笑)。

 お次は不思議少女明日花さん。

明日花

 なにが不思議って、ガーターを使っているところとか。今時なかなかいない。頭のヘッドドレスといい、何を考えているのか判らない感じが個人的にはgoodです。ラスボスだったりして。

 いわゆる「レイプ目」もあります。綾波を目指して失敗したトラウマっ子の英里です。

英里

 男装させて執事喫茶ででも働かせてみたいですね。

 お次は甘えん坊の梨沙子。ゴロニャンされるとおじさんは財布をゆるめちゃう。

 梨沙子

 クールな巫女さん沙織。髪はアップにしてまとめているので、本当はロングです。戦いの中ではらりと髪がこぼれたり。

沙織

 これはいくらでも作れますね。みなさんも自分好みの女の子を作ってみてはどうでしょうか?なお、名前は適当に付けているだけなので、現実世界になにか心当たりがあったとしても、全くただの偶然ですから(笑)。

じょしらく:「けいおん!」と「らき☆すた」の狭間に?

じょしらく
 
 蒸し暑っ!今日は蒸し暑い!とうとう真夏が来やがりましたね。せめて湿気はもう少しなんとかならないものなのでしょうか。

 公約通り、夏季アニメ紹介の第二弾。本日もshobunoさんご推薦の「じょしらく」をご紹介します。

 「じょしらく」は「女子落語」の略称で、原作は「さよなら絶望先生」の久米田康治、作画はヤスという方により、2009年秋から連載中の同名のギャグ漫画のアニメ化作品です。

メインキャラ一覧

 作中しばしば「このアニメは女の子の可愛さをお楽しみ頂くため邪魔にならない程度の差し障りのない会話をお楽しみいただくアニメです。」との注釈が登場します(嘘をつけ!)。落語を演じている姿は「さげ」の部分のほんのちょっとだけで、大半は寄席の楽屋などで若手女子落語家達の会話が主体となっています。サザエさんのように3本立てとなっており、各話のタイトルは古典落語の演題のパロディです。雰囲気としては、(「けいおん!」+「らき☆すた」)÷2という感じでしょうか。京都アニメーション作製じゃないんですけどね。

 昨日紹介した「人類は衰退しました」が、固有名詞を極力使わない作品であったのに対し、「じょしらく」は本名は判明していないのですが、代わりに凄まじい芸名のオンパレードとなっています。登場人物の紹介がてらにその凄さを実感して下さい。

 まずは主役?の「防波亭手寅」。「ぼうはてい てとら」と読みます。

防波亭手寅のアイコン

もちろん連想されるのはこれですね↓

防波堤とテトラポッド

 周囲からはテトちゃんとか呼ばれてます。メンバーの中では一番常識人の雰囲気があります。ノリが良く、周囲に気配りしつつボケもツッコミも両方こなしています。名前の通りに皆の暴走を抑えたり、会話の繋ぎや転換役になることが多い。昔からの付き合いの丸京に言わせると、いかなる危機もさりげなく回避する強運を持っているそうで、そのためかかなり呑気でマイペースな面もあります。おみくじを引くと必ず大吉を引き当てるそうです。お前はティーラ・ブラウンか。

 続いて「波浪浮亭 木胡桃」。「はろうきてい きぐるみ」と読みます。

波浪浮亭木胡桃のアイコン

 なんて名前なんだ。これはもうこれしか…

キティちゃんの着ぐるみ

 キグちゃんとか呼ばれています。メンバー最年少らしく、最も少女的な雰囲気を持っています。 小柄な容姿と天真爛漫な物腰で、周囲から親しまれています。実際に可愛いものが好きなようですが、周囲からはそれを過剰に期待されていることもあり、期待に応えて一応可愛らしいことを言うものの、実は猫をかぶっており、心の中では舌打ちをして毒を吐くという黒い一面があり、計算された言動が見え隠れしています。

 次は「蕪羅亭 魔梨威」。「ぶらてい まりい」と読みます。

蕪羅亭魔梨威のアイコン

ヘルシーなカクテルかよ…(基本ウォッカ+トマトジュース)

ブラッディ・マリー

 羽織を着ているところからみて、「二つ目」になっていると見られます。年長者でもあるらしく、「マリーさん」と呼ばれています。リーダー格で、5人の中央にいることが多く主人公の立ち位置ですが、実際には主人公ではないという可哀想な役回りです。本作の進行兼ツッコミ役で江戸弁のような男っぽいしゃべり方をしており、二言目には「つまんねー事聞くなよ!」と叫んでいますが、実は徳島出身のようです。女性らしい仕種が苦手で、無理に内股にすると脚のバネが効いて飛び上がったり、傍にいる人を蹴り飛ばしてしまったりします。

 さてその次は「空流美遊亭 丸京」。名字長い!。「くうるびゆうてい がんきょう」と読みます。

空琉美遊亭丸京のアイコン

クールビューティーって…まあイメージ的には…

クールビューティー

 こんな感じでしょうか?どうでしょう。「がんきょう」は「眼鏡」とも掛けているようです。この人も羽織を着ているので「二つ目」のようです。周囲からは「ガンちゃん」と呼ばれています。名前通りにクールでゴスロリ趣味があり、私服は大抵ゴスロリ衣装で眼鏡をコンタクトに代えて外出しています。五人の中で最も落ち着いた雰囲気だが、怒った時は口と同時に手が出る過激な武闘派です。手寅とは幼なじみ。

 とりはこの方。「暗落亭 苦来」。「あんらくてい くくる」と読みます。

暗落亭苦来のアイコン

 連想すべき事物が見当たらないのですが、強いて言えば…

貞子
伽耶子

 怖ッ!名前の由来は「暗くて暗い」、「苦しみが来る」「(首を)括る」などでしょうか。縁起でもありませんね。性格は名の通りに暗めで、躁鬱質なのか情緒不安定気味です。想像力が非常に長けており、なんと想像妊娠を体現していました(その後都市伝説の「黄色い救急車」で運ばれていましたが)。

 中の人達はこんな感じです。皆さん美人揃いですね。もしや顔で選んだ?

「中の人」はみんな可愛い「じょしらく」

 私のお気に入りは苦来さんです。なんでって…中の人が後藤沙緒里だから…というのは冗談として、黒髪ロングが素敵じゃないですか。想像力高そうだし、時々無意味に「ぬるぬる」動くし。

 なお、女子落語家の皆さんですが、ここまで師匠や兄弟子との関わりとか、寄席での雑用(魔梨威と丸京は二つ目らしいのでもうやらないとしても、他の三人は前座なのだからいろいろ仕事があるはず)とかは一切描かれていません。高座をこなしたら楽屋でくつろいでますが、真打ちの師匠達はいざ知らず、こんなまったりできるんでしょうか。

 あと皆さん「~亭」と奇天烈な亭号を使っていますが、これってめいめい好き勝手につけていいんですかね?師匠が「三遊亭~」だったら「三遊亭」、「林家~」だったら「林家」を使わなければならない気がするんですが。業界詳しくないので、ご存じの方ご教示下さい。まあ「漫画・アニメだから」と言えばそれまでなんですが。時折写る他の落語家の名前も大笑いなのが多いですね。

 最後に、第三回に登場してさりげなくみんなの輪の中に入り込んでいたこのお方。

覆面落語家

この人も今後レギュラーになるんでしょうかね…

「じょしらく」しおり

人類は衰退しました:“シュール可愛い”理想の滅亡?

人類は衰退しました
 
 えー…またまた私事で大変恐縮なんですが…
 本日、FC2ブログの日記ジャンルのランキングが約78万人中2606位、うち会社員・OL部門で61390人中482位となっておりました。この前の土曜日、7月21日に今後の目標は500位以内と言っていたんですが…3日後に達成させていただくこととなりました。こんな僻地に訪れていただきまして本当にありがとうございます!

 次の目標は…会社員・OL部門で300位というということにさせて頂こうかと思います。上位0.5%…これは私ごときではそうそう到達しえない数字だと思いますが、夢を見させて下さい。あとはこの前も言いましたが、コメントをいただければ大変嬉しゅうございます。コメントしようにも昔のエロゲーなんか持ち出されてはどうしようもないだろうと思った方々、私が悪うございました。「そんな古いネタ知らんわーい」といったツッコミでも結構ですので、構って頂ければ幸いです。

 それでは本日の記事です。今日は「ニャル子さん」でも紹介しようと思っていたのですが、一旦後回しとして、今日明日で現在放映中の深夜アニメを紹介したいと思います。夏はぱっとしないなあと思っていたのですが、認識不足でした。大いに反省。

小説の表紙(1巻)

 今日はまず「人類は衰退しました」を取り上げます。これは田中ロミオのライトノベルを原作としており、原作は2007年から刊行されているようですが、私はついぞ存じませんでした。

 舞台は現在の人類が文明的にも人数的にも衰退してから数世紀が経った世界で、人類は既にゆるやかに滅亡に向かうことを自覚している「旧人類」となっており、新たな世界の主人として「妖精さん」と呼ばれる新人類が繁栄しつつあります。この「妖精さん」と交流するのが、旧人類の主人公である「わたし」です。

 え~このアニメの、というかきっと小説もなんでしょうけど、大きな特徴は、固有名詞が出てこないということです。主人公の女の子の一人称「わたし」の本名は不明です。やりにくいのでここではマイちゃんと仮称しておきます。ええ「わたし」だからです。え?それならアイちゃんでもいいだろう?

そのとおりでございます。

ですが、ここは「中の人」である中原麻衣ともかけているということでご了承願います。

マイちゃん

 で、マイちゃんは「クスノキの里」という集落で国連の調停官という役職に就いています。調停官というのは、旧人類と新人類である「妖精さん」のインターフェースの役割を果たしているようです。ちなみにマイちゃんのおじいさん(氏名不詳。マイちゃんは「おじいちゃん」と呼び、集落の人々は「先生」と呼ぶ)が「クスノキの里」の調停事務所長を勤めています。

おじいさんないし先生

 新人類と旧人類…SFだと世界の覇権を巡って激しく争いそうな両者ですが、この物語ではそういうことは一切ありません。旧人類は緩やかな滅亡の道を自覚しており、「妖精さん」たちは「一緒に居ったらいいに~」というスタンスなので、極めて穏やかな関係です。人類滅亡ものはSFの定番ですが、これほど平和な人類滅亡譚は私はこれまでに見たことがないです。半村良の「黄金伝説」がやや近いでしょうか?

妖精さん

 とはいっても、旧人類には計り知れないのが新人類の行動であって、何の事件も起きないと言うことはありません。特に「妖精さん」は好奇心旺盛で、旧人類の活動に興味津々みたいなので。そこで「妖精さん」が原因とみられる事件を調査して穏便に収束させるのが調停官の仕事のようです。

 ということで、現在4話まで放映したところなのですが、2話で1エピソードを構成という形のようです。1~2話では旧人類の食料など物資不足を憂える声を聞いた「妖精さん」が「妖精社」を立ち上げて食料などを配布する(というか勝手に店においていく)中、「加工済みチキン」が世界の覇権を狙って反乱を起こすという話。3~4話は過去の文明の遺産であるコピー機やMOを発見したことで巻き起こるBL同人誌(本作では「同類誌」と言ってました)ブームと、これに触発された「妖精さん」による漫画制作(生きている人間を使って漫画の連載を進めていく)をめぐる騒動が描かれています。どちらも極めてシュールで、センス・オブ・ワンダーという意味では紛れもないSFです。

加工済みチキン

 モノローグも含めて大半しゃべっているのはマイちゃんですが、「中の人」中原麻衣が旧人類の種としての衰退から来るているかのごとき脱力感を醸し出しながら演じています。中原さんは数多の主役ヒロインを演じてきた人で、ヒロイン役には定評があるので安心して聞いてられますし、マイちゃん自身もちょっとアンニュイ感があるものの、とても可愛いです。OPのダンスは「衰退ダンス」とか言われているようですが、みんなで踊れそうですね。

わたし

 マイちゃんについては「黒い」とか言われているようですが、私は全然そうは思いません。むしろこれくらいのつぶやきは当然でしょう。特に3~4話ではかつての同級生「Y」(CVは沢城みゆき)が婦女子の親玉となって活躍するのですが、芸達者な二人の掛け合いは素晴らしい出来映えでした。しかし現在の漫画界を風刺するかのような内容を、類縁ともいうべきアニメ界がやってしまって大丈夫なんでしょうかね?もちろん原作にあるからやらないわけにはいかないのでしょうけど。ネットでは特定の漫画家を揶揄しているとの声も。心当たりのある漫画家もいたりして(笑)。

Y.jpg

 あと「助手さん」という文字通りマイちゃんの助手が登場しますが、一切しゃべらない(マイちゃんが代弁する)ので「中の人」はいまぜん。「妖精さん」は4~5人の声優さんが演じています(おそらくその他のガヤ的登場人物も演じているとみられます)が、こちらも固有名詞が一切ないので、いつも同じ「妖精さん」なのか、毎回全然違う「妖精さん」なのかさっぱりわかりません。

助手さん

 こういうまったりとした終末を迎えるのなら、「日本は衰退しました」でもいいかなあなんて思ったりもしてしまいますが、生憎日本の周辺には「妖精さん」は居らず、それどころか……おっと危ない危ない、当ブログはノンポリ路線でした。

 とにかく“シュール可愛い”「人類は衰退しました」ワールド、未見の方はぜひ一度お試しあれ。

7巻表紙

 

Undying Love:私が初めて聞いたKOTOKOの曲

荒良木円

 暑さが戻ってきましたね。大暑を過ぎたのだから当然といえば当然でしょうけど。
 
 昨日、shobunoさんお勧めの「人類は衰退しました」と「じょしらく」を見たんですが、どっとも面白くてまいっちんぐマチコ先生でしたよ。流石はshobunoさん。上条恭介風に言うならば「shobunoさんはレアなアニメを見つける天才だね」というところです。この件はまた改めて記事にしたいと思いますが、この二本と「織田信奈の野望」で夏アニメの3本柱が完成ですよ。

 それでは本日の本題です。昨日「ALMA~ずっとそばに…」を取り上げさせていただきましたが、これに関連してOPを久々に聞いたら思いがけず名曲だったので、ご紹介させていただきます。
荒良木円2

 タイトルは「Undying Love」。歌っているのはKOTOKO。KOTOKOはアニソンやゲームソングで大変有名な方ですね。デビューが2000年で、「Undying Love」は2003年の作品なので、比較的初期の作品といっていいでしょうか。同時期に「Princess Bride!」という大変有名な曲があるので埋没してしまった感がありますが、「Undying Love」もとてもいい曲です。私はこの曲でKOTOKOを知りました。
KOTOKO.jpg
 
以下、歌詞です。
 
切なさ抱き締めて この想い胸に秘め
また逢える その日まで 忘れない 温もりを

幾千もの星が 夜を 過ぎた
遠い明日 夢を見続け

蒼い月見つめ
静かに 手を伸ばし触れたい
貴方を捜し いつまでも

Ah いつも いつも
待ち続ける 貴方の側で
永遠の誓い
あの空に届け

あの日の思い出は どこまでも 続く道
一瞬が 降り注ぐ 忘れない 煌めきを

悠久の 時が 二人わかつ
欲しいのは 切れない絆

遠い空の下
過ぎ去る 季節たちの声に
貴方を求め どこまでも

Ah ずっと ずっと
触れていたい あなたの肌に
遠く離れても
見守り続ける

蒼い月見つめ
静かに 手を伸ばし触れたい
貴方を捜し いつまでも

懐かしい風に
愛しさ 縛られ続けても
貴方に向かい 走り出す

Ah いつも いつも
待ち続ける 貴方の側で
永遠の誓い
あの空に届け
荒良木円3

「Ah いつも いつも」の部分が切なくてたまりませんね。ぜひYou tubeで聞いてみて下さい。

ゲーム・オープニングver.
http://www.youtube.com/watch?v=mwh0MN_O3Dg

高音質・フルver.
http://www.youtube.com/watch?v=EHPsqNgOG7s

前世の円(妖・蘭)

 歌詞を見ると、ヒロインの中でも前世から関わりのある荒良木円の想いを歌ったものであることがわかります。
 出逢うことのできない永遠の伴侶を待ち続けて転生を繰り返す円。出会いはいつもほんの一瞬。それでもわずかな幸せとぬくもりを求め、永遠とも言える時間の中、一人の男性を愛し続ける彼女は、ヒロイン達の中でも最も哀しいキャラといえるでしょう。

 一人称が「儂」なので、あまり人気はないかも知れませんが、前世の因縁を考えると、本当は主人公が一番幸せにして欲しい人なんですよ。…一番幸せに遠い人なんですけど……
刀を持った円

ALMA~ずっとそばに~(Complete Edition):忘れられるには惜しい名作

ALMA ~ずっとそばに…~ コンプリート・エディション
 
本日は昨日できなかった「ギャルゲーの日」を行います。昨日は上野ではじけまして、カラオケボックスで阿鼻叫喚でした。人に迷惑をかけているわけではないのですが、うかつに覗いたら「みーたーなー!」ということになって命の保証はありませんでしたよ。「太陽曰く燃えよカオス」が歌えて良かった。飲み物持ってくる店員さんと歌うタイミングをずらすという高等テクニックを使いましたが、二回目の時は不注意により「創聖のアクエリオン」を歌っている時に店員が来るという「羞恥プレイ」になってしまいました。しかし…
わたしは一向にかまわんッッ

 前回が「同級生」なら今回は「同級生2」かはたまた「下級生」かと予想された方もいらっしゃるかも知れませんが、意表をついて今回は「ALMA~ずっとそばに…~」です。本作は2003年に発売された18禁の恋愛アドベンチャーゲームです。2004年にイベントやCGを追加した「Complete Edition」が出ており、私がプレイしたのはこちらになります。ちょっと前に一世を風靡した「泣きゲー」の一種ですね。エロ重視ではなく、泣かせるストーリー展開が主軸となっています。
ALMA 初期版

 ストーリーですが、
 今から3年前、両親が交通事故でこの世を去った。主人公・十崎巧巳は3年前に交通事故に巻き込まれ、両親はこの世を去りましたが運良く一命を取り留め、それから妹の由衣と2人きりになりました。幼なじみや気の合う友人たちに囲まれながら、極々平穏な学園生活を送っていたそんなある日、一人の不思議な少女が転校してきますが、彼女は巧巳を知っているような素振りで近づいてきます。それが合図だったかのように、その日を境に、周囲の関係が変化していきます。
 側にいることが当然だと思っていた幼なじみ、気兼ねなく語り合える友達、恥ずかしがり屋の後輩、そしてなにより身近にいた妹。秘めていた気持ち、気づかなかった想い、忘れていた記憶・・・。全てを知った時、主人公の側にいるのは一体誰なのでしょう…。

という感じです。

 登場ヒロインは5人と少なめです。
ヒロイン勢揃い

◇ 御月香苗(みつき かなえ)
御月香苗

 十崎家の隣に住む幼なじみ。面倒見がよくいつも巧巳らのことを気にかけています。 託児所でバイトしていて、将来は保母さんになるのが夢です。料理が得意で学校の成績も優秀で、いかにも「夢の幼なじみ」といった風情です。プライベートでは眼鏡になっていますが、こっちもキュートです。
眼鏡っ子香苗

◇ 十崎由衣(とざき ゆい)
十崎由衣

 巧巳の妹で、メーカーのHPでは「生粋の妹」と表現されていました。性格はとことん明るく、家事全般を仕切っています。 運動神経がよく、兄と違って勉強も出来ます。料理も得意ですが時々妙な料理を出したりもします。
お料理由衣

◇ 麻宮梗(あさみや きょう)
麻宮梗

 巧巳や香苗たちのクラスメイトで中学時代からの大親友です。 スポーツが得意で、陸上部に所属して走り高跳びをしています。反面勉強は苦手です。ツンデレで気が強く、しばしば暴力をふるいますが、好きになった相手には尽くすタイプです。
ツンデレ梗

◇ 四堂鈴(しどう すず)
四堂鈴

 由衣のクラスメイトで、大親友です。性格は内気でおとなしいですがドジで、一度眠ると深い眠りにつき、朝はなかなか起きられず、遅刻してくることもあります。 実家は四堂神社で巫女をしており、時々お祓いのような行為を行うこともあります。 外見とは裏腹にスポーツが得意ですが、料理は下手で「殺人料理」と呼ばれるほどです。
巫女さん鈴

◇ 荒良木円(あららぎ まどか)
荒良木円

 巧巳たちの学園に転校してきた、どこか不思議な雰囲気をもっている少女。自分のことを「儂」と呼んだり、過去の事情について知っているような素振りを見せています。ストーリーの根幹に関わるキャラクターです。実は人外の存在…
黙考の円

 ヤロウどもは全て省略。だが後悔はしていない(笑)。

 古いゲームだし、XPまでしか対応していないので現在のPCでプレイできるのかも不明なので、ある程度ネタバレしてしまうと、主人公の幼なじみの御月香苗はは10年前の事故で死亡してしまいすが、主人公の強い願いにより、円が「咒」をかけましたが、「咒」は失敗し、肉体と幽体が分離してしまいました。「ドラクエ6」では、夢の世界の住人が現実の世界に来ると、不可視で接触もできませんが、「夢見のしずく」を使うとかりそめの体が与えるというイベントがありますが、まさに香苗も幽体にかりそめに物質化している状態にあります。本来の肉体は感情が欠落したまま、「カナエ」として病院に入院したままになっています。
幼い日の記憶

 そして主人公の巧巳も実は3年前の事故で死亡しているのですが、一人になることを恐れた由衣は兄の生存を強く望み、兄への恋心を隠し通すことを条件に荒良木円と兄の魂を蘇らす契約を結び、巧巳もまた香苗同様、幽体をかりそめに物質化させた状態でいます。

 そういう中でストーリーは進み、主人公・巧巳がどのヒロインを選択するかによりエピソードは大きく変わりますが、いずれのエピソードでも巧巳は幽体に戻ってしまって、相互に触れることができなくなるという状況が発生します。

 このゲームをやって驚いたのは、兄と妹のいわゆる「近親相姦」が描かれていることですが、そこに全く逃げ道がないことです。例えば妹だと思っていたけど実は血がつながっていない(「みゆき」など)とか、妹分だけど本当の妹ではない(「同級生2」など)とかいうゲームはあまたあると思いますが、由衣はガチです。ガチの妹ですが兄を本気で愛しています。契約を破ってしまうほどに…
由衣1

 この由衣が本当にいい子なので、これは辛かった。家事全般を喜んで引き受けているし、明るいし、本当にこういう妹がいれば嫁いらずだなあと思っていたら嫁にもなってしまうとは。
ヤロウ…タブー中のタブーに触れやがった…

そのシーンに至ったときの私の気持ちは、まさにこれでした。
由衣2

 なお、この由衣ルートでは、兄の完全な蘇生の日を前に契約を破ってしまったことのペナルティとして、「世界の理」は由衣が生きる事を許さず、由衣は失明し、手足が動かなくなり、感覚すら失って、翌日には死に至る事が明らかになります。同時に巧巳も幽体に戻ってしまい、目の見えない由衣に手を握ってとお願いされても握ってやることができない(そして、「どうして握ってくれないの…」と涙ながらに嘆かれる)という、刹那五月雨撃ち、もとい切なさ乱れ撃ちな状況になります。最終的には巧巳と円が新たな契約を交わすことで、日常は取り戻されますが、円自身が身代わりになって消えてしまうことが仄めかされています。
由衣3
 
 円自身が前世での巧巳とのエピソードが泣けるものなので、まさしく「何かを得るには何かを失わずにはいられない」という理の切なさが、ありおりはべりいまそかりです。
由衣4

 メインヒロインは御月香苗だと思いますが、この由衣ルートのインパクトが強すぎるので、完全に喰われてしまっている感じがします。あとは本筋からは一番遠い梗のツンデレっぷりが素敵です。
梗1

 この時代、まだ「ツンデレ」という言葉は一般的ではなかった気がしますが、思いっきり典型的なツンデレぶりを見せてくれます。

また巧巳の幽体化により、周囲の人々が巧巳の存在自体の記憶を失ってしまった際、あれだけ気の強い梗ががっくりと肩を落とし、「あんたのいない世界で生きてなんかいけない」と嘆き悲しむシーンは胸を打ちます。
梗2

 ヒロインが5人しかいないので恒例ベスト5はやりませんが、個人的にキャラが立ってたと思うのはこの二人でしょう。他の子も別に悪くはないのですが。特に香苗は一度ルートをクリアした後に、「カナエ」の登場によるトゥルーエンドがあるのでお世話にならざるを得ませんが、主人公の「最強幼なじみ」でありながら、「最強妹」がいたせいでねえ…まるで「三国志」の周瑜と諸葛孔明みたいです。
カナエ

 実は本作発売当初はコンピュータソフトウェア倫理機構の基準により、近親相姦の描写が禁止されていたことから、由衣とのHシーンは描かれていなかったようです。しかし、その後基準改訂が行われたことから、Complete Editionでは、由衣とのHシーンが追加された模様です。個人的には由衣はとてもいい子なので、ずっと妹のままでいて欲しかったと思うので、初期版を買えば良かったのかもしれません。しかし、由衣ルートは感動の嵐なので痛し痒しだなあ。あと、由衣を他の男に嫁がせるなんてありえない(笑)。
由衣5
梗3

告白:現代版「藪の中」?救いのないラストがむしろ爽快

告白
 またしても私事で恐縮ですが、7月5日にFC2ブログでの順位について書かせていただきまして、ずうずうしくも日記の会社員・OL部門で上位1%に入りたい旨を目標とさせていただいていたんですが、本日ランキングを見たら、日記全体で約78万人中3271位、会社員・OL部門で61390人中607位となっていました。これは…全体では0.5%以内、部門別でも1%以内に入っていますね。ということで、目標は達成しました!皆さん閲覧いただきありがとうございます。

 次の目標は…部門別で500位以内ということにしておきます。まあランクアップが目標ではないんですけど。あとはあれですね、コメントがいただきたい!人気ブログや芸能人のブログではコメントが何十、何百と来ていて、そりゃ返事もできないよというところにありますが、皆さんにお返事できるくらいの賑わいがあればいいなあと思います。特に偽装でない女性の方々のコメントがあればなあ……いやいや、殿方のコメントも心待ちにしておりますとも。

 さて、土曜日はギャルゲーの日、なのですが、本日はこれからshobunoさんたちとオフ会というか、飲み会があるので、番組を変更して湊かなえの「告白」を紹介したいと思います。楽しみにしていた方、どうもすいません。たぶん明日やるのでどうかご容赦を。

 「告白」は湊かなえのデビュー作で、2008年の作品です。図書館で借りてばかりの私にしては比較的当たらしい作品を借りることができたということですね。第6回(2009年)本屋大賞や「週刊文春ミステリーベスト10」1位に輝いている傑作ミステリーです。

 何よりも、松たか子主演で映画化されているのでご存じの方も多いと思います。私も映画のCMはよく見ました。

 内容は、Amazonで

 我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度である。

 と紹介されています。 驚いたのは、CMからの勝手なイメージで、私は松たか子がクラスの生徒達の前で真犯人を暴いていくのかと思っていたのですが、実際には犯人2人はすでに判明しており、連作短編の形で先生、委員長、犯人Bの母、犯人B,犯人A,そしてまた先生が語り手となって物語の真相の輪郭をなぞっていくのです。その過程で巻き起こる悲劇の数々。そう、事件は先生の娘の死に留まらず、相次ぐ死を伴っていくのです。
映画版「告白」

 あまり詳しいことを書いてネタバレになってはいけませんが、一つ言えることは、それぞれの登場人物の供述は、どれも全てが真実であるとは限らないということです。先生にしても、全てが真実であるかどうかは判然としていません。全部が正しいとすると、どうしても相反する部分が出てくるのです。ただ、誰がどんな虚構を述べているのかを深読みし過ぎると、どれもこれも嘘くさくなって、「そもそも先生の娘は死んでないんじゃないか」なんて飛躍まで起きかねませんね。ま、そういう読み方もありかも知れませんが。

 犯人A,Bは共にマザコンです。ただし、マザコンとしての在り方には決定的な差があるので、多分相互理解は不可能でしょう。Aはマザコンと言われると逆上するタイプで、Bは「うん、僕のママ素敵でしょう?」なんて自慢するタイプかな。好きになった男がマザコンばかりの委員長は中学生にして「だめんずウォーカー」か(笑)。

 この物語には誰にもハッピーエンドがありません。ラストは、自殺を図った犯人Aに対し、先生が壮絶な復讐をする形で幕を閉じていますが、この部分、先生は本当のことを言っているのかどうかははなはだ疑問を感じます。以下、ネタバレになるので、読みたい方だけ読んで下さい。


 先生は犯人Aの母親に会い、その会話内容は記述されていませんが、おそらく先生を怒らせる対応を取ったことは間違いありません。先生は犯人Aの仕掛けた爆弾を取り外しており、母親の研究室に仕掛け直し、自殺を図った犯人Aに自らの母親を爆殺させるという形で復讐したと言っています。そして「これが本当の復讐であり、あなたの更生の第一歩だと思いませんか?」と語る訳です。

 「本当の復讐」であることは間違いありません。犯人Aの最も大切なものを奪うということは、先生の最も大切なもの=娘を奪った犯人Aへの復讐としては理に叶っています。

 しかし、「更生への第一歩」というのは本気でいっていますか?皮肉で言っているのならいいのです。しかし本気で言っているとしたら先生の正気を疑います。犯人Aは13歳か14歳か判然としませんが、仮に逮捕されても死刑はありえません。いずれ出所してくるでしょうが、彼の胸に去来するものは、更生の誓いなどではなく、先生への殺意しかないのではないでしょうか。おそらく彼は半生を復讐のために生きることになるでしょう。犯人Aの性格からしてそれしかないと思うのですが。

 それともう一つ。先生が犯人Aの母親を間接的に爆殺するのはまあいいとして、「鉄筋の建物を半壊させるほど」だったという爆弾のの威力は、母親の命を奪うだけで済んでいるのかという問題です。そもそも研究室には学生など他の人間が居る可能性は十分にありますし、建物半壊なら、同じ建物に居合わせた人々だって無事で済むかどうかわかりません。つまり、被害が無辜の人々にも及んでいる可能性が極めて高いと思われるのです。先生、復讐のためとはいえそれはやり過ぎです。無差別テロリストと変わりません。もはや更生とか復讐とか言う単語を語る資格があるとも思えません。

 故に、先生のラストの台詞については、
 ① 虚構で、犯人Aの精神にダメージを与えるためについた嘘
 ② 本当のことで、先生は既に狂気に陥っている
のどちらかではないかと思われます。仮に本当のことで、正気で発言しているのだとすると、同情の余地のない魔女と化しているとしか思えません。




 余談ですが、松たか子は先生役にはまっていると思いますが、他に演じてもらうとすれば、天海祐希あたりはどうでしょうか。「女王の教室」で先生役もやっていますし。
女王の教室

あとは常盤貴子もいいですね。ちょっと美人すぎる?しかし演技力はバッチリです。この二人は松たか子よりもちょっと年上なのがネックですが、多分年齢差は乗り越えられるんじゃないかな。
常盤貴子

愛のひだりがわ:美少女は「盾」に事欠かない?

愛のひだりがわ

 今日はまたずいぶん涼しい一日でした。猛暑日の後ではひときわありがたいですね。私は夏が非常に苦手なので、もうあとはこの気候でいいのですが、これから夏休みの少年少女諸君は納得しないでしょうね。

 ということで(?)、本日はジュブナイル小説を紹介しようと思います。「愛のひだりがわ」、筆者は筒井康隆です。

 見ての通り、本書の文庫版のオビには「永遠の名作『時をかける少女』をついに超えた最高傑作!」の文字が躍っています。これは「時かけ」ファンとしては見逃せませんな。もっとも、「時をかける少女」は名作には違いありませんが、それを「永遠の名作」たらしめているのは、原田知世主演の映画だと思いますので、本書もぜひ素晴らしい美少女に主演させて映画化して欲しいものです。え?アニメ版?なにそれおいしいの?

 もっともこの本、出版は10年前の2002年なんです。例によって図書館で借りてきて読んでいるということで、まあ勘弁して下さい。みんなビンボが悪いんや。

 内容ですが、
 幼いとき犬にかまれ、左腕が不自由な小学六年生の少女・月岡愛。母を亡くして居場所を失った彼女は、仲良しの大型犬デンを連れて行方不明の父を探す旅に出た。暴力が支配する無法の世界で次々と事件に巻き込まれながら、不思議なご隠居さんや出会った仲間に助けられて危機を乗り越えていく愛。近未来の日本を舞台に、勇気と希望を失わずに生きる少女の成長を描く傑作ジュヴナイル。

 と紹介されています。主人公の名前が愛なんです。魔法少女ではないけど。愛の小学6年生から中学3年生までの旅と成長が描かれています。愛には特殊能力があって、イヌと会話ができます。というか、他の生物の意思も読み取れるようで、本書でもハマグリの「歌」を聞く場面が描かれています。

 父親が失踪して母親が過労死し、雇用主一家からは母親が苦労して貯めた金を全て横取りされ、一時は学校さえ行かせずにこき使われる愛。しかし学校に行けばいったでいじめっ子にさんざんいじめられる日々。愛は美少女で優等生なので、頭の悪い女の子や頭が良くて美人だけど、どちらも愛には一歩及ばない女の子にいじめられるのです。美少年のサトル(なんと髪の毛が空色)だけはさりげなく助けてくれますが。サトルに言わせると、愛と仲良くするのは「愛がいちばんきれいだから」で、女の子たちが愛をいじめるのは「きれいな子が見すぼらしい服を着ていると、すごくみじめに見えてしまうんだ。ブスがきたない服を着ているのは、あたりまえに見えるけど、それよりもずっと見すぼらしく見えてしまうんだ。だから愛はいじめられるんだよ」サトル先輩、批評がパネエですね(笑)。

 そして、雑誌の取材を受けたことを知った雇用主一家がその謝礼をも奪い取ろうとしたことをきっかけに、愛は父を探す旅にでることになります。愛は左腕が全く効かないというハンディキャップを背負っていますが、旅の途中、愛の左側には必ず誰かがいて守ってくれます。グレートデンだったり、金持ちの「ご隠居 」だったり、サトルだったり。父がいたらしい東京まで徒歩でたどり着くのです。

 旅の過程で愛は思慮深くなり、大人の階段を上っていきますが、おそらく近未来と思われる彼女を取り巻く環境は現在と比べても相当に過酷です。警察が機能せず、自警団や暴走族が幅をきかせていますし、愛自身、自警団に襲われたり、ロリコンにさらわれそうになったり、強盗に遭って有り金全部奪われたりと何度も危険な目に遭遇しています。まあ捨てる神あれば拾う神ありで、愛を助けてくれる人達もたくさんいて、世の中まだまだ捨てたもんじゃないなと思わせたりするのですが。

 東京に着いた愛は、父親と会うことはできませんでしたが、20数匹の犬を引き連れた「犬姫様」となって一世を風靡し、雑誌の取材を受けたり飲食店の警備を引き受けたりして、私立のいい中学校にも通うことができるようになります。そして、旅の間に出会った仲間達と共に、愛の金(本当はご隠居の金ですが)を奪った強盗達が経営する会社の乗っ取りを謀るのです。

 ラストは結構ビターです。会社乗っ取りは大成功し、愛もお金には困らなくなりますが、遂に見つけた父はどうしようもない状態に墜ちていました。愛は決別の言葉を静かに、しかし蕩々と述べて去りますが、その瞬間、愛は少女から大人になったのです。大人になるということは、子供時代の何かを失うことでもあります。愛は、イヌと会話ができなくったことに気付いて愕然とします。またサトルも空中浮遊ができたと言っていましたが、やはりそういう力は失い、また空色の髪の紺色になり、次第に黒髪に近づいています。

 でもまあ、賢く思慮深くなった愛の周囲にはいい仲間が集まっているので、美しくもたくましく成長していくことが予想されます。ただ、サトルと恋仲になるのかと思ったら、サトルは別の子と恋愛関係になっていました。つまり愛は失恋したわけですが、この辺、「秒速5センチメートル」に例えるならば、貴樹は花苗と出来て明里が振られるという逆バージョンになりますね。花苗大勝利。でも私はもちろん明里ファンなので、愛のひだりがわは私が守る!
花苗ついに勝つ!

 「マルドゥック・スクランブル」といい「愛のひだりがわ」といい、最近美少女成長譚に当たっています。幸い愛は誰の毒牙にかかるとこともありませんでしたが、もし旅に出なければ、ルーン=バロットのような目に遭っていた可能性が高いので、いいタイミングで旅に出たなという感じです。

 「時をかける少女」もそうですが、筒井康隆は女の子を描くのが上手いですね。でも原田知世が演じた芳本和子は特に美少女とは表現されていないのに対し、愛は登場人物が軒並み美少女だと言っている(みすぼらしい服装なのでよく見ないと気付かないようです)ので、きっと火田七瀬のような美人に成長することでしょうが、実写で映画化するなら、よほどの美少女を当ててくれないと困りますよ。せめて私が左翼を守りたくなるような子、久方ぶりに「天位」を与えたくなるような美少女女優をぜひお願いします。文庫の絵も、もっと可愛くはならんかったんかい(笑)。
愛のひだりがわ:単行本


マルドゥック・スクランブル:少女が本当の「人生」を獲得するまでの物語

マルドゥック・スクランブル1巻

 今日も暑かったですね。東京では今年最初の猛暑日でした。しかし夕方から涼しくなってきた気配が。快適に寝られたらいいのですが。

 さて、「魔法少女まどか☆マギカ」の考察も一段落つきました。好き勝手なこと書いておいてなんですが、さすがにずっと考察してるのはちょっと疲れました。これからはもうちょっと気楽にやりたいなーと思います。あれで気楽じゃなかったのか?と思われてしまいそうですが。

 今日は、先日読んでびっくりした「マルドゥック・スクランブル」をご紹介しましょう。作者は冲方丁(うぶかた とう)で1977年生まれで現在35歳。本作で2003年に第24回日本SF大賞を受賞しています。ということは、本作執筆時は25,6歳ということですか。天才とはこういう人を言うのでしょうか。
マルドゥック・スクランブル2巻

 まあ、それはさておき作品について語りましょう。

 あらすじは、
「少女娼婦バロットはショーギャンブラーにしてオクトーバー社の汚れ仕事を引き受けるシェルの計画により命を落としかけるが、シェルの犯罪を捜査する委任事件担当捜査官のイースターとウフコックに救出され、マルドゥック・スクランブル09法に基づく禁じられた科学技術の特別使用によって一命を取り留めた。そしてバロットはスクランブル09により高度な電子干渉(スナーク)能力を手に入れ、イースター、ウフコックと共にシェルの犯罪を追う。だがシェルも委任事件担当捜査官ボイルドを雇いバロットを追い詰めようとしていた……」
マルドゥック・スクランブル3巻

 というもので、堂々3巻(1.The First Compression 圧縮、2.The Second Combustion 燃焼、3.The Third Exhaust 排気)の大長編にもかかわらず、主要登場人物が少ないのが特徴です。あと、主要登場人物などの名前は卵がモチーフとなっています。例えば「バロット」は孵化直前に茹でられたアヒルの雛、「シェル」は卵殻、「イースター」はイースターエッグ(復活祭を祝うカラフルな卵)、「ウフコック」は煮え切らない卵、「ボイルド」はゆで卵、という具合です。

 主人公のルーン=バロットはまだ15歳で、名前も娼婦としての源氏名です。もちろん好きで娼婦をやっている訳ではなく、悲惨な家庭環境の中で転落していった「奈落の花」です。シェルに引き取られて専属娼婦となることで、一見幸せになりましたが、絶対に現在の自分の経歴を覗いてはいけないという約束を破ったことで、車の中に閉じ込められて焼き殺される(まさしくバロット!)ところでしたが、ドクター・イースターとウフコック・ペンティーノという「事件屋」(正式には委任事件担当捜査官)に救われて九死に一生を得ます。
ルーン=バロット

 物語は、バロットの「どうして私なの?」という疑問の答えを探す旅でもあります。バロットが命を救われたのは、「マルドゥック・スクランブル-09」という法令のおかげですが、これはマルドゥック市における人命保護を目的とした緊急法令「マルドゥック・スクランブル」の一つで、保護証人の人命保護のために委任事件担当捜査官および保護証人に禁じられた科学技術の使用を認める法律です。これによりバロットは全身に金属繊維による人工皮膚を移植され、それにより常人より遥かに優れた身体能力と体感覚、あらゆる電子機器を触れずに操作する能力を得ることになります。
シェル
 こちらは加害者のシェル。彼にも悲惨な過去はあるのですが…

 また、実の父親にレイプされるという悲惨な過去から、全ての感情を「殻」の中にに閉じ込めて「人形」になる術を学んでおり、娼婦としての仕事をする時にそうなる(そしてそういう「人形」が好きな男達がたくさんいるらしい)ことから、「殻の中の雛」=バロットという源氏名がつけられたようです

 ただし「マルドゥック・スクランブル-09」により禁じられた科学技術を使用する者は、常に自身の有用性を証明し続ける必要があり、社会から危険と認識されればいつでも廃棄処分を受ける可能性がある不安定で危険な立場でもあります。それが事件屋-委任事件担当捜査官です。委任事件担当捜査官は人間でないものであっても就任することが可能で、担当する事件に関係する場所、物品に関して非常に強大な権限を有しています。

 登場する事件屋は3人。2人がバロットの仲間で、1人が敵となります。
ウフコック

 まずウフコック・ペンティーノは禁じられた科学技術によって生まれた、人語を解する金色のネズミ型万能兵器です。体を複数の次元に分割しており、また亜空間に貯蔵してある物質を使って様々な兵器や道具に変化(ターン)することができます。匂いを元に人間の感情を読み取る能力を持っており、かつてはボイルドと組んで仕事をしていましたが、ある事件を契機に袂を分かちました。誠実で思慮深い性格の一方、生真面目に考え過ぎて悩む癖があり、名前と引っ掛けて「煮え切らない」と周囲から揶揄されることもあります。

ドクター・イースター
 ドクター・イースターはかつて宇宙戦略研究所(現在は"楽園"と呼ばれます)の研究者でしたが、戦争終結による研究所の廃棄が決定された際、ウフコック、ボイルド等と共に研究所を出てました。ちなみにバロットの人工皮膚はこの研究所で開発されたものです。まさにイースター・エッグの如く、髪はカオス理論に基づきまだらに染め、派手な色の白衣を着込み、多くのキーホルダーを付けているという容姿でしたが、バロットに嫌われたことから後に服装、髪型は改めました。
ボイルド

 敵であるディムズデイル・ボイルドは元エリート軍人で、戦争の激化により覚醒剤中毒となり味方を誤爆するという過去を持っています。その後宇宙戦略研究所で人工的に擬似重力を発生させる能力と、睡眠をまったく必要としない体を得ました。その後ウフコックと組んでいましたが、ある事件の解決方法を巡ってイースター、ウフコックと反目し、現在はオクトーバー社の下で委任事件の捜査に当たっています。今回の事件ではシェルに雇われバロットの抹殺を目論む。極めて巨大なリボルバー(64口径)を使用し、ターミネーターのようにタフで恐るべき殺人機械として、幾度となくバロットを窮地に追い込みます。

 物語はバロットの再生とその後の事件調査の過程で発生するガン・アクションとカジノにおける各種ゲームでの戦いが中心となっています。カジノで戦い?いや、その必然性はちゃんと描かれていますし、ポーカー、ルーレット、ブラックジャックと渡り歩くバロットと凄腕ディーラー達との戦いは、「ジョジョの奇妙な冒険」で時折描かれた「知能戦」を彷彿とさせる面白さです。正直、ブラックジャックがこんなにエキサイティングなゲームだとは思いも寄りませんでした。でも私はカジノはやめときます。才能なさそうだし。ウフコックがそばにいてくれれば別ですが。
マルドゥック・スクランブル圧縮

 アクションシーンも見所で、ボイルドとの死闘はもとより、バロット暗殺を命じられた、誘拐を生業とする臓器フェティシスト集団(畜産業者)との戦いも凄まじいです。

 バロットはこれらの戦いで、ウフコックを濫用する(殺戮を楽しむがごとく過剰に行う)という、かつてボイルドが犯したのと同じ過ちを犯してしまいますが、その結果ウフコックの身に起きたことを目の当たりにしたり、"楽園"での奇妙な人々やイルカとの出会い、さらにはカジノのディーラー達との戦いを通じて大きく成長していきます。悲惨な過去を引きずるバロットですが、少女が前向きに生きていこうとするのを見るのはいい感じです。女の子はそうじゃなきゃ。
マルドゥック・スクランブル燃焼

 一方、濫用によりウフコックを失ったボイルドは、同じ過ちを犯しながらウフコックがバロットの下を離れないことに嫉妬のような感情を持ち、再びウフコックを手に入れることに執着します。

 2010年から劇場アニメとして公開されているようで、今年9月に第3作が公開予定です。知らなかったなー。これは今後ぜひ見てみねば。バロットは林原めぐみが演じているようですが、彼女は声帯を失っているのですがどのように演じているのか注目されます。流行とか時代の先端とか全く関係なく、図書館で文庫を漁っている私が言っても説得力ないですけどね。
マルドゥック・スクランブル排気


魔法少女まどか☆マギカ考察:佐倉杏子(その2)

不敵に笑う杏子


 まどマギサイクルはいよいよクライマックス!遂に最終回です。あ、でもまた何か思いついたら書きますけどね(笑)。

3.杏子の武器は蛇轍槍なのか?(この項はギャグ含みです)
覇極流千峰塵!

 蛇轍槍……室町時代後期、希代の槍の達人といわれた辺見鉄山によって考案されたという。中国の十節根に改良を加えた、変幻自在の仕掛槍である。鉄山没後多くの武芸者達がこれを極めようとしたが、その操作性の難しさ故に修得しえた者はいないという。
(民明書房刊『戦国武芸者往来』より)
伊達臣人と蛇轍槍

 そう、「魁!男塾」に登場し、その圧倒的な強さで人気を博した元関東豪学連総長・伊達臣人の使用した槍と、杏子の槍はよく似ています。
伊達臣人

 魔法少女の能力・武器は、契約の際の願いに影響を受けるようです。ほむらの、「まどかとの出会いをやり直し、彼女に守られる人間から彼女を守る人間になりたい」という願いは、時間遡行・時間停止という能力を生み出し、マミの「助けて」という願いは、命を繋ぎ止めるものとしてのリボンを生み出しました(銃はリボンから作り出した後発的なものです)。杏子は、「父の話に人々が耳を傾けてくれるように」と願いました。ここから発生したのは幻惑魔法でしたが、家族の死をきっかけに潜在意識で本来の願いを否定する形となったために、能力を失ったと設定されています。ゲーム版では、一家心中以前にはマミと共闘しており、幻惑魔法は「ロッソ・ファンタズマ」と命名されています。このネーミング・センスはマミのもののような気がするので、命名者はマミかも知れませんね。
槍使い杏子

 「幽遊白書」で、邪眼を後天的に移植したために本来の能力を失った飛影は、改めて剣術を習得して己の戦技としました。本来の能力を封印した杏子も、覇極流槍術の習得を図ったのかも知れません。では同時に覇極流活殺拳も習得している可能性が。両拳による真剣白刃止めで、相手の拳を破壊し使えなくする覇極流拳止鄭(けんしてい) や、自己催眠による精神集中から、自らの持つ体能力を瞬間的に100%引き出す練活気挿法(れんかつきそうほう)の一種である覇極流 気張禱(きちょうとう) も使えるのかも知れません。覇極流超奥義宇呂惔瀦(うろやけぬま) はぜひ見たかった(笑)
飛影


4.なぜ杏子のソウルジェムは武器になるのか?
覇極流の使い手杏子

 9話で杏子はさやかの変貌した「人魚の魔女」と戦います。杏子は攻撃力は高いですが、まどかを守りながらさやかを説得しようという無謀な行動から積極的な攻勢に出られず、守勢に回っていますが、防御では意外なもろさをみせています。こういう戦いは杏子本来のものではありませんし、仕方がないとはいえ、最後はまどかをほむらに託し、こう言い残します。

「ただ一つだけ、守りたいものを最後まで守り通せばいい。ハハハ、何だかなぁ。アタシだって今までずっとそうしてきたはずだったのに。」

「行きな。コイツはアタシが引き受ける。心配すんなよさやか。一人ぼっちは……寂しいもんな。いいよ、一緒にいてやるよ。さやか」
ロッソ・ファンタズマ

 そして自らのソウルジェムを砕くことで自爆魔法を発動させ、「人魚の魔女」と共倒れとなります。この技はゲーム版では「浄罪の大炎」と名付けられており、「すべてのHPを犠牲にし、突進極大ダメージを与える」技であると解説されています。実際、ソウルジェムは単に砕けることで爆発するものではありません。それは10話でマミが杏子のソウルジェムを撃ち砕いたり、まどかがマミのソウルジェムを打ち砕いたシーンでもあきらかです。

 杏子はおそらく自分の魔法力を限界まで使って爆発エネルギーに変えてソウルジェムに蓄積し、槍を引き金としたのでしょう。ゲーム版の技は本編からの後付け解釈的なもので、杏子にしか使えないオリジナル技となっていますが、実際には死を覚悟した魔法少女なら使用可能な技であるような気がします。もっとも、ソウルジェムが何であるのかを知っていないと無理でしょうが。

5.おまけ
マミと共闘する杏子

 ゲーム版における杏子は、魔法少女5人中最強の基礎ステータスを誇る近接タイプのオールラウンダーとなっています。高威力・貫通の格闘攻撃に長け、相手を長時間、無力化できる状態異常「幻覚」も付与できます。また回避率が高く、状態異常耐性に優れ、加えて自動スキル「盗む」でアイテムを稼ぐことも出来ます。 反面、同じ格闘型のさやかと比較すると防御力も低いため被弾すると意外にダメージを受けてしまいます。

 外国絵師さんによる杏子の進化図です。一番ナチュラルに進化しているような。

杏子の進化

 えーずいぶん長らく続けてきましたが、「魔法少女まどか☆マギカ」考察シリーズはひとまずこれにて終了です。また何か思いついたら単発で再開する可能性もありますが、お付き合いいただきまことにありがとうございました。ブログ自体はまだまだ続きますので、まどマギファンの方々も今後もよろしかったら遊びに来て下さい。
凜々しいまどか

魔法少女まどか☆マギカ考察:佐倉杏子(その1)

杏子のソウルジェム
 
 私が持っているおもちゃのソウルジェム。貰い物ですけど。齋藤さん、いつもありがとう。

 関東では梅雨明け宣言。そしていきなりの猛暑。皆さん、熱中症には要注意です。外出しなくても脱水症状に気をつけて下さい。水分補給とドラクエのセーブはこまめに!うう…持ち金が半分に…あの時どうして教会に寄っておかなかったんだ…

ネロとパトラッシュと天使

 「パトラッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだか、とても眠いんだ…」
ああ、天使がやって来た…

 そこへ突如、松岡修造襲来!

やかましい修造

 「諦めんなよ!諦めんなよ、お前!! どうしてそこでやめるんだ、そこで!!もう少し頑張ってみろよ! ダメダメダメ!諦めたら!周りのこと思えよ、応援してる人たちのこと思ってみろって!あともうちょっとのところなんだから!」

 ネロもパトラッシュもおちおち寝てられません。あ、天使が空に帰って行く。
 私も頑張ろう。いや、ドラクエもですが、ブログも。

 そうそう、またちょっとテンプレートを替えてみました。いかがでしょうか。FC2は着せ替えが楽で楽しいなあ。

 それでは魔法少女個別考察の第五弾。今回は最後の魔法少女・佐倉杏子の考察です。

1.なぜさやかに執着するのか?

悪ぶる杏子

 マミの死後、見滝原を自分の縄張りにするために現れた魔法少女・佐倉杏子は好戦的な利己主義者で、他者のために戦ったマミを強く尊敬して、同じく「他者のためだけに魔法を使う」ことを正義と信じて行動するさやかとは相反する存在です。このため邂逅当初から二人は対立し、「殺し合い」を演じたわけですが、杏子にとってさやかは、「過去の自分自身の姿」でもありました。

「だから、キュゥべえに頼んだんだよ。みんなが親父の話を、真面目に聞いてくれますようにって。翌朝には、親父の教会は押しかける人でごった返していた。毎日おっかなくなるほどの勢いで信者は増えていった。アタシはアタシで、晴れて魔法少女の仲間入りさ。いくら親父の説法が正しくったって、それで魔女が退治できるわけじゃない。だからそこはアタシの出番だって、バカみたいに意気込んでいたよ。アタシと親父で、表と裏からこの世界を救うんだって」

「…でもね、ある時カラクリが親父にバレた。大勢の信者が、ただ信仰のためじゃなく、魔法の力で集まってきたんだと知った時、親父はブチ切れたよ。娘のアタシを、人の心を惑わす魔女だって罵った。笑っちゃうよね。アタシは毎晩、本物の魔女と戦い続けてたってのに。それで親父は壊れちまった」

「最後は惨めだったよ。酒に溺れて、頭がイカれて。とうとう家族を道連れに、無理心中さ。アタシ一人を、置き去りにしてね。アタシの祈りが、家族を壊しちまったんだ。他人の都合を知りもせず、勝手な願いごとをしたせいで、結局誰もが不幸になった」

さやかVS杏子
 
 7話で杏子が自ら語っているように、「他人を助けたい」という信念を有する聖職者の父の下で育った杏子は、教義に含まれない内容まで信者に説いたために信者や本部から見放された父の姿に心を痛め、「父の話に人々が耳を傾けてくれるように」という願いで魔法少女になりました。すなわち、さやか同様、自分の願いを他者の願いを叶えるために使っていたのです。契約は実現し、教会は人々で溢れかえり一時的には幸せを得ましたが、それが魔法によるものであることを知った父は酒浸りになった末に錯乱し、杏子のみを残して家族(母・妹)を道連れに無理心中をしてしまいました。こうして自分の善意が家族を破滅させたという後悔から「魔法は人のためにならない」という信念を持つに至り、以後は「魔法は自分のためだけに使う」という信条で行動していたのです。

 この杏子の過去のエピソードは、本編で人形劇のように描かれていましたが、ゲーム版でははっきりと父親や妹(モモ)の姿が示されていました。母親は病弱らしく登場しませんでした。困窮のあまり万引き行為を行って捕まったりという姿も描かれています。やむを得ない事情があるとはいえ、手癖の悪さは魔法少女になる前からあったのです。

杏子の父と妹

 コミック版では無理心中の凄惨な様子がはっきり描かれています。

 つまり杏子とさやかは似たもの同士であり、杏子は自らの過去に照らしてさやかの願いの不毛さと愚かさを痛切に実感していたのです。さやかへの反発は近親憎悪的なものであったとも言えるでしょう。もっともさやかには杏子自らが説明するまで理解できなかったので、なぜか自分に突っかかってくる厄介で性悪な魔法少女としてしか認識していなかったでしょうが。

コミックで描かれた惨劇

2.なぜ魔女に墜ちなかったのか?

 さやかは魔法少女の真相と、恭介を救う行為に己の利己的な願望が含まれていたことへの絶望から自暴自棄的な戦いを繰り広げた末に、自殺するかのように魔女に変貌していきました。杏子にしても、父のための願いは、一家無理心中というあまりにも無残な形で裏切られた訳で、この時点で絶望して魔女化してもおかくしないものでした。なぜ杏子はその後も相当期間に亘って魔法少女であり続けることができたのでしょうか。

リンゴをかじると歯茎から血が出ませんか?

 性格的なタフさというものはもちろんあったと思います。杏子は幼少期から相当苦労してた様子が伺われます。杏子自身は父を尊敬してた様子ですが、宗教家としての生き方と、娘の父としての生き方はうまく折り合いをつけられなかったようです。杏子の父は、ラジカルな思想を抱いた「改革者」であり、本来家族など持たずに一人で己の道をいくべき人だったのではないでしょうか。家庭人としての杏子の父は、己の理想を追うあまりに自分の家庭を放棄していたようです。父として健在であるにも関わらず、空腹のあまみ盗みを働く娘に何もしてやれないなど、「親失格」だと批判されたとしても、あながち的外れではないでしょう。世界を救うなどと広言しつつ、娘の教育さえまともに出来ていないという事実は、もはや「人格破綻者」の域だったかも知れません。しかも本人はそれが正しいと信じ切っているのでことさら質が悪いのです。こんな親の下で育てば、良くも悪くもタフでなければ生きていけません。

 一家心中を目の当たりにした杏子は、持ち前のタフさで絶望に墜ちる代わりに、「魔法は人のためにならない」という信念を持つに至り、以後は「魔法は自分のためだけに使う」という信条を持つことができました。これが杏子を魔女化から救ったといえるでしょう。また登場時、杏子はことさらに悪人風に振る舞っていました。悪人としての振る舞いが、絶望を発散させ心の平静を保つことに一役買っていたということもできるでしょう。

ポッキーが岩鬼みたいな杏子

 しかし、反発を覚えながらもさやかと関わっていく中で、かつての純粋だった自分を思い出すこともままあったのではないでしょうか。悪人として振る舞っていても、その本質は悪人ではなかった杏子は、精神安定のためとはいえ、「悪の魔法少女」を演じている自分自身が実のところは好きではなかったのではないでしょうか。故に、過去の自分自身でもあるさやかを救うことは、自らを救うことに他ならなかったといえると思います。そうであれば、さやかへの執着ぶりも納得がいくというものです。もしさやかを救うことができれば、杏子は自分自身の心を救うこともできたかも知れません。また見捨てたとしたら、その無力感が真の絶望をもたらしていた可能性があります。

 ゲーム版では魔女化した杏子は、「武旦(うーだん)の魔女」と呼ばれてます。ゲーム版の魔女図鑑では

武旦の魔女

 武旦の魔女。その性質は自棄。霧の中を虚ろな足どりで永遠にさまよい続ける魔女。いつも傍らにいる馬が何だったのか魔女にはもう思い出せない。

と解説されています。ちなみに武旦とは、京劇(中国の古典劇)において活劇シーンを演じる武芸に長けた女性役者のことだそうで、端的に言えば武器を手にチャンバラするアクション女優ということでしょう。
 

魔法少女まどか☆マギカ考察:美樹さやか(その2)

ホストを見つめるさやか
 
 来ましたね、猛暑。夏だから当然とはいえ、節電が叫ばれる昨今、エアコンの使用がためらわれてしまいます。そんな訳で冒頭、凍り付くようなさやかの視線で少しでも涼を取っていただければと(笑)。

 それでは美樹さやかの考察の後編、行ってみましょう。

3.なぜ魔法少女になったりならなかったりするのか?
傷つくさやか

 10話を見ると、一周目(ほむら未契約時)ではマミとまどかが魔法少女で、二周目はマミ・まどか・ほむらが魔法少女となっていて、さやかと杏子の姿はありません。3周目(マミ狂乱時)でようやく5人が魔法少女として登場してきますが、4周目(ほむらが一人で戦う決意を固める)では契約したかどうかの描写がありません。

 さやかには、上条恭介の怪我を治したいという願いがあり、それは各周回においても変わらないと思われるのですが、なぜさやかは魔法少女になったりならなかっったりするのでしょうか。

 11話で、暁美ほむらが時間遡行を行っていることに気付いたキュゥべえはこう言っています。

「同じ理由と目的で、何度も時間を遡るうちに、君は幾つもの並行世界を、螺旋状に束ねてしまったんだろう――鹿目まどかの存在を中心軸にしてね。その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら、彼女の、あの途方もない魔力係数にも納得がいく。君が繰り返してきた時間――その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、鹿目まどかに繋がってしまったんだ。あらゆる出来事の元凶としてね。お手柄だよ、ほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」
凜々しいさやか

 このキュゥべえ仮説により、平凡な少女のはずのまどかが異様に強力な潜在能力を持っていたり、その敵であるワルプルギスの夜がも強力になっていった理由が明確になるのですが、「まどかの存在が中心軸」となっている以上、その影響は彼女の周辺人物にも及んでいるとみていいでしょう。

 本編では、魔法少女になりうる資質は、キュゥべえが見えるかどうかで判明します。キュゥべえのテレパシーが聞こえるかどうかも
基準の一つかも知れませんが、1話ではさやかとまどかにキュゥべえは見えていますが、キュゥべえのテレパシーが聞こえたのはまどかだけでした。キュゥべえは二人に魔法少女の資質があると言っているので、テレパシーを察知するのは、十分条件ではあっても必要条件ではないのかも知れません。あるいはさやかとまどかの資質の差とも解釈できるかもしれません。
「ずっと前から 私 上條恭介くんのことお慕いしてましたの」

 さやかは、当初は魔法少女の資質を持たない少女だった可能性があります。それにもかかわらず、ほむらが時間遡行を行って、平行世界の因果線がまどかに連結され、まどかがより強力な資質を有するに至る過程で、親友としてその周辺にいたさやかも影響を被ったことが考えられます。つまりさやかは、10話3周目にして初めて魔法少女としての資質を有し、契約に至った可能性があるのです。

 一方、まどかのもう一人の友達である志築仁美は、最低5周目である本編においても魔法少女の資質がありません。キュゥべえも完全に無視しています。彼女については、さやかと比較するとややまどかとの距離が遠い感じがしますし、魔法少女としての資質がそもそも小さい可能性がありますが、仮にほむらが時間遡行を繰り返し続ければ、いずれはその影響を受けて魔法少女としての資質を得る二至ったかもしれません。魔法少女仁美の願いは、やはり上条恭介なのでしょうか?


4.最後まで救いがないのはなぜか?
狂想曲

 魔法少女になれば必ず魔女になってしまうさやか。まさに「どうあがいても絶望」な訳ですが、そういうシステムをそもそも破壊して更新してしまったまどかの築き上げた「新世界」においてはどうかといえば、12話で

杏子「ん…さやかは?オイ、さやかはどうした?」
マミ「行ってしまったわ…円環の理に導かれて。美樹さん…さっきのあの一撃に、全ての力を使ってしまったのね」
杏子「バカ野郎…惚れた男のためだからって、自分が消えちまってどうするんだよ…。バカ…やっと友達になれたのに」
マミ「それが魔法少女の運命よ。この力を手に入れた時からわかっていたはずでしょう。希望を求めた因果が、この世に呪いをもたらす前に、私達はああやって、消え去るしかないのよ」

ということで、魔女にはならないものの、世界から消滅してしまっています。これについてまどかは、さやかと一緒に上条恭介の演奏を聴きながら、こう言っています。
演奏を聴くさやかとまどか

まどか「さやかちゃんを救うには、何もかもなかったことにするしかなくて。そしたら、この未来も消えてなくなっちゃうの。でも、それはたぶん、さやかちゃんが望む形じゃないんだろうなって。さやかちゃんが祈ったことも、そのためにがんばってきたことも、とっても大切で、絶対、無意味じゃなかったと思うの。だから」
さやか「…うん。これでいいよ。そうだよ。私はただ、もう一度、アイツの演奏が聴きたかっただけなんだ。あのヴァイオリンを、もっともっと大勢の人に聴いてほしかった。それを思い出せただけで、十分だよ。もう何の後悔もない。まあ、そりゃ…ちょっぴり悔しいけどさ。仁美じゃ仕方ないや。恭介にはもったいないくらいいい子だし…幸せになって…くれるよね」

…つまり、「神のごとき存在になった」まどかをして、さやかの運命は手の施しようのないものであったといえます。他人のために祈るという行為自体が極めてリスキーなのか、さやかの願いだけが特殊なのかは判然としませんが。
コンサート会場のさやか

 このシーンを救いがないと解釈するべきかどうかにはやや疑問があります。アンデルセンの童話の人魚姫は王子を殺すことができず、泡となって消えますが、その後空気の精となって天国へ昇っていったとされています。さやかもまどかに導かれて行く以上、その先に絶望しかないということはないでしょう。天国に行くなり、まどかが管轄する別の世界(別の時間軸)に転生するなりしていると考えるのが適当と思われます。上条恭介が事故に遭わない世界にでも連れて行って、平凡でも幸せに暮らしているといいですね。

 ところでキュゥべえは12話で

「まどか。これで君の人生は――始まりも、終わりもなくなった。この世界に生きた証も、その記憶も、もう何処にも残されていない。君という存在は、一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果ててしまった。もう誰も君を認識できないし、君もまた、誰にも干渉できない。君はこの宇宙の一員では、なくなった」

と言っていますが、ほむらに赤いリボンを渡したり、さやかを導いたり、戦い続けるほむらに「がんばって」と囁いたり、結構いろいろとしていますね、まどかは。


5.余談

 魔法少女の家族は本編ではほとんで描かれていません。マミとほむらの家族は一切登場しませんし、杏子の家族は「人形劇」です。さやかの両親についても、葬式まで描かれているのに登場してきません。このあたりは、家族との交流がしっかり描かれているまどかと対照的で、魔法少女になることの孤独を示したものとも解釈できますが、実はさやかがヴァイオリンを演奏する恭介を初めて見た、そして一目惚れしたというシーンで、さやかの両側に両親らしい姿があります。
さやかと両親?

 なかなかすてきなご両親のようです。こんな二人を残して死んでしまうなんて、親不孝者め。ちなみにゲーム版だと、杏子の父親や妹も登場しています。またマミの両親も事故に遭う前の車に同乗していることが判明していますが、その姿はほとんど見ることができません。ただ、マミは何かというと「パパ、ママ…」と呼びかけているので、きっとマミにとって良い両親だったのでしょう。

 最後にさやかの「進化」イラストです。
さやかの進化

肩の装甲が強そうですね。ファイヤーエムブレムで傭兵がクラスチェンジして勇者になったみたいです。

 というところで、美樹さやかの考察もこの辺でお開きとしたいと思います。きっとまどかに導かれた別の世界でも剣を振るって凜々しく戦っていることでしょう。
 そして力尽きては再び「円環の理」により…

凜々しいさやか


魔法少女まどか☆マギカ考察:美樹さやか(その1)

さやかとキュゥべえ
 

 魔法少女個別考察の第四弾。今回は悲劇の魔法少女・美樹さやかの考察です。

1.なぜ魔女に墜ちるのか?
さやかとまどか

まどかの親友であるさやかですが、その性格は対照的です。さやかは活発で正義感が強く、物事を自らの力で解決していこうとする行動力を持っています。比較的受動的なまどかに対して、能動的と言っていいでしょう。その反面、思い込みが激しく意地っ張りで、「~でなければならない」「~であってはいけない」などと、自分で自分を追い詰めてしまう傾向があります。また、一見ボーイッシュなイメージですが、内面は乙女という二面性を持っており、幼馴染である上条恭介に一途な片想いをしています。

 実は誰かに恋愛感情を持っている魔法少女は、本編ではさやかただ一人です。まどかはまだ「恋に恋する」といったねんねのように描かれていますし、マミ、ほむら、杏子にしても過去であってさえ誰かに恋をしていた様子が見受けられません。スピンオフ作品の「おりこ☆マギカ」や「かずみ☆マギカ」においても、やはり恋愛を云々している魔法少女はこれまでのところ見受けられないことから、魔法少女の大半は自分自身に関心が向いているように見受けられます。

 4話においてさやかは、事故で指に治療不可能な怪我を負ったことによってバイオリニストになる夢を絶たれて自暴自棄になった恭介を救うため、キュゥべえと契約を交わして魔法少女となります。3話においてさやかは、自分の願いを他者の願いを叶えるために使うことの危うさを指摘されていたにも関わらず、です。
笑うさやか

さやか「ねえ、マミさん。願い事って自分の為の事柄でなきゃダメなのかな?」
マミ「え?」
さやか「例えば、例えばの話なんだけどさ、私なんかより余程困っている人が居て、その人の為に願い事をするのは…」
まどか「それって上条君のこと?」
さやか「たた、例え話だって言ってるじゃんか!」
キュゥべえ「別に契約者自身が願い事の対象になる必然性はないんだけどね。前例も無い訳じゃないし」
マミ「でもあまり関心できた話じゃないわ。他人の願いを叶えるのなら、なおのこと自分の望みをはっきりさせておかないと。美樹さん、あなたは彼に夢を叶えてほしいの?それとも、彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」
まどか「マミさん…」
マミ「同じようでも全然違うことよ。これ」
さやか「その言い方は…ちょっと酷いと思う」
マミ「ごめんね。でも今のうちに言っておかないと。そこを履き違えたまま先に進んだら、あなたきっと後悔するから」
さやか「…そうだね。私の考えが甘かった。ゴメン」
マミ「やっぱり、難しい事柄よね。焦って決めるべきではないわ」

 上記の会話があり、また3話ラストでのマミの凄惨な死を目の当たりにして魔法少女になることの恐怖を実感したにも関わらず、上条恭介の嘆きを目の当たりにして契約をしないではいられなかったさやか。

 4話冒頭、さやかは自問自答しています。
(何で私じゃなくて、恭介なの?もしも私の願い事で、恭介の体が治ったとして、それを恭介はどう思うの?ありがとうって言われて、それだけ?それとも、それ以上のことを言って欲しいの?)

 この疑問に明確な答えを出すことができないまま、契約したさやかは、「後悔なんかあるわけない」と強がりますが、自分自身を瞞着したつけは、確実にさやかの精神を蝕んでいくことになるのです…

 魔法少女となったさやかは、他者のために戦い戦死したマミを強く尊敬しており、同じく「他者のためだけに魔法を使う」ことを正義と信じて行動します。そういう意味では、キュゥべえは「マミ広告塔」戦略を取っていたとするならば、それに真っ先にひっかかったともいえるでしょう。一方、あからさまに利己的な姿勢を示す杏子に対して反感を抱き、マミを見殺しにしたという誤解からほむらのことも嫌っています。

 当初は戦うことへの自信に溢れていますが、4話以降本性を表し始めるキュゥべえにより、契約で人間ではないものに変質していた事実を知らされ(「ゾンビ」になったと表現しています)て衝撃を受け、さらに親友の志築仁美の上条恭介への恋慕を知らされたことを契機に、人間ではなくなってしまった自分は恭介と結ばれることができないと思い詰め、その後はまどかや杏子の言葉にも耳を貸さずに無謀な戦いを続けていきます。その結果急速にソウルジェムに穢れを溜め込み、信念も見失った末に「わたしって、ほんとバカ」という言葉を最後に魔女へと変貌してしまうのです。
あたしって、ほんとバカ

 さやかが変貌した魔女は、公式HPにおいて「人魚も魔女」とされています。同HPの「魔女図鑑」において、
「人魚の魔女。その性質は恋慕。在りし日の感動を夢見ながらコンサートホールごと移動する魔女。回る運命は思い出だけを乗せてもう未来へは転がらない。もう何も届かない。もう何も知ることなどない。今はただ手下達の演奏を邪魔する存在を許さない」
と説明されています。
9話の人魚の魔女

 ちなみに「人魚の魔女」は10話の過去のエピソードにも登場しますが、「魔女図鑑」では
「人魚の魔女。その性質は恋慕。ギターが鳴り響くコンサートホールの中で 在りし日の感動を夢見続ける魔女。繰り返す時間の中で僅かな違いこそあれど、運命の車輪は冷徹に回る。。」
とやや異なる説明がなされています
10話の人魚の魔女

 なお、「人魚の魔女」の使い魔は明確に異なっており、9話に出てくる指揮者と楽団員のような使い魔については
「人魚の魔女の手下。その役割は演奏。魔女のために音楽を奏で続ける虚ろな楽団。その音を長く聞き続けた者は魂を抜き取られてしまう。この楽団は魔女のためだけに存在し、魔女には楽団が全て」
と説明されており、10話に出てくる志築仁美のカリカチュアのような使い魔は、
「人魚の魔女の手下。その役割はバックダンサー。 魔女の後ろで陽気に踊り続けるだけの存在」
と説明されています。こちらは明らかに悪い待遇を受けており、車輪による魔女の攻撃に巻き込まれて殺戮されています。その姿が仁美に似ているので、魔法少女を攻撃するのが目的なのか、使い魔を殺すのが目的なのかわからないほどです
仁美のような使い魔

 「人魚の魔女」は、アンデルセンの童話「人魚姫」をモチーフにしていることは明らかです。

 15歳の誕生日に海面に上がって「外の世界」を見た人魚姫は、嵐に遭い難破した船から溺死寸前の王子を救い出し、王子に恋心を抱きます。人魚は人間の前に姿を現してはいけないという掟があるのですが、人魚姫はどうしても自分が王子を救ったという事を伝えたかったので、海の魔女を訪れ、美しい声と引き換えに尻尾を人間の足に変える飲み薬を貰います。その際、「もし王子が他の娘と結婚するような事になれば、姫は海の泡となって消えてしまう」と警告を受けます。更に歩く度に千のナイフで刺されるような痛みを感じる事になることも。

 王子と一緒にお城で暮らせるようになった人魚姫でしたが、声を失った人魚姫は王子を救った出来事を話す事が出来ず、王子は人魚姫が命の恩人である事に気付きません。そのうちに事実は捻じ曲がり、王子は偶然浜を通りかかった娘を命の恩人と勘違いしてしまいます。やがて王子と娘との結婚が決まり、悲嘆に暮れる人魚姫の前に現れた姫の姉たちが、髪と引き換えに海の魔女に貰った短剣を差し出し、王子の流した血で人魚の姿に戻れるという魔女の伝言を伝えますが、愛する王子を殺す事の出来ない人魚姫は自らの死を選び、海に身を投げて泡に姿を変え、空気の精となって天国へ昇っていく…
さやかの魔女化

 どこまでも純粋に王子を愛しながらも、決して報われる事がなかった人魚姫の悲しい恋の物語は、失恋を繰り返し、ついには生涯を独身で通したアンデルセンの、苦い思いが投影されていると言われていますが、人魚姫とさやかを比較すると、

人魚姫
 ◇ 魔女と契約して人間になる(代わりに声を失う)
 ◇ 王子を助けたのは自分だと明かせず、王子は別の人間と結婚する
 ◇ 失恋して泡となって消える

さやか
  キュゥべえと契約して恭介を助ける(代わりに人間でなくなる)
 ◇ 恭介を助けたのは自分だと明かせず、恭介は仁美と仲良くなる
 ◇ 失恋して魔女となる

といった共通点が浮かび上がります。まさにさやかは、自身の純粋な恋心故に魔女に墜ちてしまったといえるでしょう。ほむらはさやかについて「魔法少女に向いていない」と評していますが、魔女に墜ちやすいことを指して言っているのならばまさに正鵠を射ています。もっとも、魔法少女には何が何でも魔女化して貰いたいキュゥべえから見れば、さやかこそ魔法少女に向いている子であると言えますが。

 なお、「人魚の魔女」は、剣を持っているほか、飛び道具として多数の車輪を放って攻撃してきますが、この車輪はタロットカードなどに登場する「運命の輪」(Wheel of fortune)を暗示したものではないかと思われます。逆位置の意味は「情勢の急激な悪化、別れ、すれ違い、降格、アクシデントの到来」…まさしくさやか。
 また鉄道の車輪だとすると、定められたレールの上を進むしかない車輪は、恭介とは決して交わることなく平行線のまま、というさやかの運命を示唆したものと解釈することもできるかも知れません。


2.上条恭介と結ばれる余地はなかったか?
さやかと恭介

 さやかが人魚姫の運命を背負っているのであれば、もう議論の余地なく悲恋で終わるしかないと思われますが、ゲーム版では選択次第で違う運命も描かれています。結論から言えば、恭介と相思相愛になることは可能なのですが…

 まず上条恭介の怪我は現在の医療では治療不可能だとされていますが、志築仁美の尽力で、米国に天才的な医者がいることがわかり、渡米して手術を受けることで治癒するようです。渡米費用や手術代はもちろん高額になると思われますが、仁美の家は裕福なので、全面的な協力が得られれば大丈夫でしょう。

 ただしこの場合、さやかは魔法少女になる必要はありませんが、仁美は名実ともに「恭介を助けた娘」となるわけで、「本当は自分が助けた」という根拠もなしに、仁美を押しのけてさやかが恭介と結ばれるのは、さやかの性格からしてもそうとう困難ではないかと思われます(ゲーム版ではいろいろあって恭介と結ばれるさやかも描かれていますが)。
仁美と恭介

 それこそ「ゾンビになった」などと嘆いていないで、「私が助けたんだ」という事実を明確に告げてしまうというのも一つの手だと思われます。ですが、「恩に着ろ」と「私を好きになれ」はイコールではありません。恭介はあるいは一生恩に着るかも知れませんが、それが即恋愛に結びつくかどうかは不明としかいいようがありません。さやかが恩を押しつけるような振る舞いをするならば、それはむしろ逆効果となりうるかも知れません。この辺り、シチュエーションは違うのですが「スチュワーデス物語」の片平なぎさと風間杜夫の関係を彷彿とさせます。つまり、恩とか責任で縛っても、恋心までは得られないのです。さやかは性格的にそういうことをする子には見えませんが。

 また、念願叶って実際に交際が始まったとして、二人は幸せになるのでしょうか?恭介は芸術家気質が大変強い少年です。ヴァイオリンの天才だそうですが、「音楽命」という感じで、演奏できなければ自分になんの価値もないとさえ考えている節があります。そんな彼がヴァイオリンよりもさやかを優先するということがあるのでしょうか?

 天才芸術家を献身的に支える-このイメージは仁美にこそふさわしい感じがしますが、さやかだとどうでしょう。どうしても「私を見て」と迫ってしまうような感じがするのですが。さやかに「上条恭介」が好きなのか、「ヴァイオリンを演奏する恭介」が好きなのか、よく考えて貰いたいところです。そういうところをおろそかにして感情で突っ走ってしまう、本編を見ているとさやかにはそういう傾向がある気がするので、短期的に見ると交際も恋愛もあるのでしょうが、長期的にみると最終的には別れてしまいそうな気がします。ま、まだ中学生なので別に結婚とか意識しなくてもいいのですが。
抜け殻さやか

同級生:後のギャルゲーに大きな影響を与えた先駆的作品

同級生
 いやー夜半の豪雨から一転して暑くなりましたね。もう梅雨明けでしょうか。

 土曜日はギャルゲーの日。今日ご紹介するのは「同級生」です。
「同級生」は、1992年12月17日にエルフから発売された18禁の恋愛アドベンチャーゲームです。当初はパソコン用ゲームでしたが、その後PCエンジンやセガサターンなどのコンシューマー機にも、移植されました。

 ゲームを作成したエルフは、かつて「東のエルフ、西のアリスソフト」と謳われたエロゲーの老舗ブランドですが、この「同級生」の大ヒットが躍進を支えたと言っても過言ではないでしょう。また「同級生」のキャラクター造形の美しさや性格設定などは、後発のギャルゲーにも大きな影響を与えたものと思われ、後に多くのゲーム原画家を生み出すきっかけにもなったということです。

 私がプレイしたのはPCエンジン版で、これは1995年11月発売なので、「ときめきメモリアル」より後のプレイとなりましたが、前述のように発売自体は1992年と「ときメモ」より先行しています。そのため、当時すでにエロゲーの名作として知られており、PCエンジンでもプレイできるというこよで喜び勇んで買った記憶があります。当然描写は抑えめになっていましたが。
不人気ヒロイン舞
 ゲームシステムは、一見したところ2Dのフィールドを見下ろす型のRPGのようで、町内マップを自由に移動しながらゲームを進めていきます。またシミュレーションゲームのように時間の概念があり、建物などに入ったりイベントが発生することで時間が経過し、女の子との遭遇は特定の時間帯でないと発生しません。深夜でも徘徊できますが、そんな時間に女の子は出歩いていないのです。

 こうしたプレイヤーに極めて大きな自由度を与え、実在の町中を自由に行動してナンパを行ったり、バカを行ったりする気分を味わうことができるゲームシステムは、本作以前にはほとんど知られていませんでしたので斬新な印象でしたが、逆にどうすれば女の子と会えるのかが最初はよくわからず、慣れるまでは孤独に町をうろついているだけで日々が過ぎていく感じでした。

 夏休みの前半部分をナンパ資金調達のバイトに明け暮れた主人公(卓郎)が、8月10日から8月31日までの間に街や学園をナンパして回るのが基本的なシナリオですが、話が進むにつれ、各ヒロインが持つ悩みやコンプレックスといった問題に主人公が向き合っていくという恋愛ドラマや青春ドラマが待っていて、ヒロインに好かれていく過程が描かれていきます。
斎藤家の美人姉妹
 ちなみにこの卓郎は、先負学園(さきまけがくえん)3年生で、両親の仕事の都合で親元を離れ、一人暮らしをしています。勉強はやればできるのに嫌いなため、成績は悪く、学園で様々なトラブルを巻き起こしたり伝説を作ってきた破天荒な性格で、無類の女好きかつナンパ師という設定です。腕っ節が強い上に決断力に富み、人を身分や肩書きでなく本質で見ることもできるため、次第に知り合ったヒロイン達を惹き付けていくという、うらやましい奴です。

 ヒロインはなんと14人もいますが、「同級生」というタイトルの割に、同級生の女の子よりも年上の女性が多いところが特徴的です。後発の「下級生」も、タイトルの割に下級生は多くありませんでした。画像があるので、私的ベスト5の後に一応全員紹介します。

 では恒例の私的ベスト5です。

第5位:桜木 舞
桜木舞

年齢:18歳 身長:158cm スリーサイズ:83/56/86(cm)
 本作のメインヒロイン。水泳部所属。各種の稽古事が忙しく、部には滅多に顔を出さない。良家のお嬢様で学園のマドンナ的存在ですが、本人はそう見られることに抵抗を感じているようです。残念ながらファンの人気は今一つでしたが、メインヒロインにおける赤やピンク系のロングストレートヘア、才色兼備という特徴は「ときめきメモリアル」の藤崎詩織らに継承されていったと言えましょう。

 個人的にお嬢様は好きなのですが、舞はお嬢様過ぎるので、変に卓郎が絡まない方が幸せに暮らせそうで、ちょっかいを出すのがためらわれる気がしました。ベスト5に入っている「同級生」はこの人だけです(笑)。PCエンジン版の声は國府田マリ子さんでした。

第4位:斎藤 真子
斎藤真子

年齢:23歳 身長:167cm スリーサイズ:89/61/90
 先負学園の校医です。23で校医って…養護教諭くらいならなあ。まあゲームなので大目に見て下さい(笑)。見たとおりとても日本人とは思えないお姿です。常にブラウスとタイトスカートの上に白衣を羽織り、妖艶な笑みを絶やしません。マリリン・モンローにちょっと似ていますが、インテリです。包容力のある人柄からも学園生には絶大な人気があり、相談に訪れる者は男女を問わず後を絶ちません。

 妹に実家(薬局)の店員をやっている亜子がいて美人姉妹として知られていますが、対照的な姿をしています。亜子は真子先生にコンプレックスを抱えているようですが、真子先生は亜子のことを常に気遣っていて、亜子を傷つけるようなことをすると怒りますが、美人が怒るとすごく怖いです。やはり先生はいい…

第3位:芹沢 よしこ
芹沢よしこ

年齢:25歳 身長:164cm スリーサイズ:85/60/87
 先負学園の倫理社会科教師で主人公のクラス担任です。細い銀縁眼鏡と緑のスーツ姿から受ける印象そのままに、性格は極めて堅物で恋愛より仕事一筋のキャリアウーマンです。奔放な卓郎はいつも叱られてばかりですが、主人公の将来を本気で心配してくれる数少ない人であることから、次第に理解を深めてゆくことになります。 卓郎が学園の女の子達に人気があることを知っており、彼女達の変化については些細なことも見逃しません。

 PCエンジン版の声は「永遠の17歳」井上喜久子さんでした。相互理解が進んだ後の先生の態度の違いにはびっくりしました。「過度な露出は好みませんが、下着は女性の嗜みですからね」ということだそうです。「よしこ先生」というと「ど根性ガエル」を連想するのは私だけでしょうか。

第2位:正樹 夏子
正樹夏子

年齢:21歳 身長:166cm スリーサイズ:85/58/86
 先負駅前のブティックで店員としてアルバイトに励みながら、デザイン系の専門学校に通っている専門学校生です。矢吹町のマンションに一人暮らしという生活環境や、端麗な顔立ちと腰まで届くほど長いワンレングスの艶やかな黒髪は、バブル期の典型的な女子大生や専門学校生を彷彿とさせます。しかし見かけとは裏腹に普段の性格は古風で落ち着いており、芯の強い所もあります。
 
 この人はどちらかというと脇役ヒロインなのですが、とにかくルックスが好きです。黒髪ロングはいいですね。あと派手な顔立ちの割に真面目な性格もgoodです。逆は嫌ですが…

第1位:真行司 麗子
真行寺麗子

年齢:25歳 身長:163cm スリーサイズ:83/60/85
 卓郎のアパートの隣家に住む人妻さんです。性格は極めておっとり系で、常に着物姿でいます。夫は日本華道の家元を務めており、ほとんど帰宅しない状態なので、自宅で孤独に過ごしており、日常の買い物くらいしか外出することがありません。庭を掃き掃除している時は、自室の窓を開けた主人公と目線が合うこともしばしばです。

 この人とはいわゆる「不倫関係」ということになり、まさしく将来のない「一夏の恋」ということになります。てっきり30歳位にはなっているのかと思っていたら、なんと25歳。よしこ先生と同い年でした。この落ち着きは人妻ならではということでしょうか。高校生の分際で年上はもとより、人妻まで籠絡するとはどういうことだ、卓郎…

 そのほか、こんな人達がいます。
◇ 同級生
田中美沙
田中美沙

通称「陸上部のバンビちゃん」。男勝りかつ勝気な性格でガサツそうですが、実は純情でひたむきな所があり、いわゆるツンデレの元祖です。桜木舞の不人気に対し、彼女がメインヒロイン的人気を博しました。

黒川さとみ
黒川さとみ

私服ですが同級生。卓郎とは中学生の時からの腐れ縁で、何でも言い合える悪友的な友人です。

鈴木美穂
鈴木美穂

卓郎のことが好きな、引っ込み思案で赤面症の女の子。容姿が幼く、極めて幼児体形です。美沙とは親友。駆け出しの頃の丹下桜さんが演じていました。

仁科くるみ
仁科くるみ

卓郎の悪友・坂上一哉の彼女です。厳格な両親に育てられ、純粋で恋愛にも奥手です。清らかな恋愛関係を築きたいと思っているため、早く男女の関係になりたい一哉と疎遠になりつつあります。彼女とのエンディングでは、その二面性に驚かされます。魔性の女の覚醒ですね。

◇ 年上の人
斎藤亜子
斎藤亜子

先負駅前にある薬局兼実家の「蓬莱堂」の店員で真子先生の妹。姉に劣らない美人で、来客を中心に美人姉妹との評判も高いにも関わらず、姉とは正反対の控え目で気弱、子供っぽいと見られることにコンプレックスを抱いています。男性恐怖症に近い感じですが、好きになったら全てを捧げて尽くすタイプで、ヤキモチ焼きです。美沙とは別タイプのツンデレといえるでしょう。

田町ひろみ
田町ひろみ

先負町で主人公宅の近所にある会社「藤田製作所」のOLです。明朗快活な性格をしているが、コスプレイヤーかつオタクだった過去がコンプレックスになっていて、普通の恋人のような白昼堂々のデートをしてみたいという願望を持っています。

佐久間ちはる
佐久間ちはる

家事手伝い兼フリーターです。面識は皆無で、先負駅前の路上で卓郎がナンパすることで知り合います。水商売のアルバイト経験を持っている上に少し意地っ張りで、主人公の1歳年上でしかないにもかかわらずやたらとお姉さんぶるが、本質は家庭的で、一旦惚れた後は尽くすタイプです。

草薙やよい
草薙やよい

看護婦さんです。口数の少ないお淑やかな性格はナイチンゲールに例えられるほどです。ほぼ全ヒロインを攻略しないと名前を知ることすらできず、最も難易度の高い「隠しヒロイン」です。

成瀬かおり
成瀬かおり

キャバクラ嬢ということですが、作中描写はピンロン嬢そのものです。源氏名はレイラ。化粧は派手で一見下品な好き者にも見えますが、内面は普通の女性とあまり変わりません。

最後に、ゲームのOPとEDが名曲なのでご紹介しておきます。良かったら一度聞いてみて下さい。

OP:夏色のシンデレラ
http://www.youtube.com/watch?v=QzDnwZHDPB0&feature=related

ED:MEMORY
http://www.youtube.com/watch?v=KPeTNcytLnw
お嬢様のサービスカット

装甲魔法少女まどか☆ボトムズ(その2)

 今週号のFRIDAYに壇蜜さんのグラビアが掲載されています。FRIDAYのグラビアは気品があって大変よろしいです。「日本で一番美しい31歳」というキャッチコピーもgoodですよ。宜しかったらご覧になってみて下さい。それにつけても「すさまじくいやらしい女」のキャッチコピーを延々続けるアサヒ芸能はまったく(怒)。すさまじく気に入らないので、FRIDAYは買うけどアサヒ芸能は買わん。

 それはともかく、壇蜜さんのグラビアの直前は杉原杏璃。この人も可愛いですね。しかも30歳。「金メダルおっぱい」というキャッチコピーはややどうかと思いますが、強力なライバルですね。事務所も強いし。負けるな壇蜜、追いつけ追い越せ一歩抜け!

キリコ・キュゥべー
 俺の名はキリコ・キュゥーベー(笑)このキュゥべえは営業ダメダメな感じがしますね。

 こんなパロディまで続編を作るなと言う声が聞こえてきそうですが、昨日途中までやったので最後までやらないわけにはいきません。今日もユースフと地獄に付き合ってもらう。

第7話予告
7話用

愛を見たのが幻想なのか。
心の渇きが幻想を生むのか。
戦いの果てに理想を見るのが幻想に過ぎないことは、
魔法少女の誰もが知っている。
だが、恭介の瞳の光が、唇の震えが幻だとしたら。
そんなはずはない。
ならば、この世の全ては幻想に過ぎぬ。
では、目の前にいる女は何だ。

次回「本当の自分と向き合えますか」
劇的なる仁美が、牙をむく。


第8話予告
8話用

魔法少女は、戦場に何を求める。
杏子は、ただその日の糧のため、槍を振るう。
マミは、理想のために己の手を血潮に染める。
また、ほむらは、実りなき希望のために、硝煙と死臭にまみれる。
雨は汚れた大地をみそぎ、流れとなり、川となって常に大海をめざす。

次回「あたしって、ほんとバカ」
さやかは流れに逆らい、そして力尽きて魔女になる。


第9話予告
9話用

崩れ去る信義、裏切られる愛、断ち切られる絆。
そのとき、呻きを伴って魔女となるさやか。
人は、何故。
理想も愛も牙を飲み、涙を隠している。
血塗られた過去を、見通せぬ明日を、切り開くのは力のみか。
次回「そんなの、あたしが許さない」。

キュゥべえは、まどかに向かう折れた針。


第10話予告
10話用

この、果てし無く繰り返す時間が、まどかのためにあるとしたら。
今日のほむらが、明日のまどかのためにあるとしたら。
まどかはほむらの隣にあるはずだ。
この時間軸はもう充分に見た、充分に。
たとえ次の時間軸が禁断の地であろうとも。

次回「もう誰にも頼らない」。
だが、今日のまどかが、昨日のほむらのためにあるのだとしたら。


第11話予告
11話用

死にかけた宇宙が呼んでいる。
全魔女少女を魔女にしても、我にエネルギーを与えるべし。
我は与えん、無限なる力を。
我は伝えん、契約の愉悦を。
異形なるキュゥべえの壮大な誘惑。
人たるほむらの壮絶なる決意。
いま見滝原に、最後の戦いが始まる。

次回「最後に残った道しるべ」。
全てを得るか、地獄に落ちるか。


第12話予告
最終回

一人の女と、一人の女が、銀河の闇を星となって流れた。
一瞬のその光の中に、キュゥべえが見たものは、愛、戦い、運命。
いま、全てが終わり、駆け抜ける悲しみ。
いま、全てが始まり、きらめきの中に魔獣が生まれる。

最終回「わたしの、最高の友達」。
遙かな時に、全てを掛けて。

というところでお遊びはここまでといたしたいと思います。ボトムズは1年間放送したので4クール52話もあって、他にも使いたい予告があったんですが。いずれボトムズも取り上げないといけませんね。

魔法少女達


 

装甲魔法少女まどか☆ボトムズ(その1)


ボトムズ
 本日はちょっと趣向を変えまして、パロディです。「装甲騎兵ボトムズ」という1983年のアニメが、ハードかつダークで「魔法少女まどか☆まぎか」と合うという話があるので、一丁合わせてみます。若い人はついていけないかもしれませんが、それでもやっちゃうところがユースフクオリティー(笑)。
 ということで、「装甲魔法少女まどか☆ボトムズ」の次回予告集です。銀河万丈さん(ギレン総帥役や何でも鑑定団のナレーションでおなじみ)の声を脳内再生していただければと思います。

新番組予告
1話用
見滝原町をまっぷたつに分けた、巴マミと佐倉杏子の二人の魔法少女が砲火を交えて○年。佐倉杏子が町を去り、ようやく見滝原に平和の燭光が見え始めた頃。辺境の鹿目家の娘・まどかの夢の中で物語は始まった。

「装甲魔法少女まどか☆ボトムズ」
お楽しみに。


第2話予告
2話用
ほむらの手を逃れたまどかを待っていたのは、また地獄だった。
結界の中に住み着いた魔女と使い魔。
キュゥべえが生み出したソドムの街。
悪徳と野心、頽廃と混沌とをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、
ここは見滝原町。

次回「それはとっても嬉しいなって」
来週もまどかと地獄に付き合ってもらう。


第3話予告 
3話用
食う魔女と食われる人間、そのおこぼれを狙う使い魔。
牙を持たぬ者は生きてゆかれぬ暴力の街。
あらゆる魔法少女が武装する見滝原町。
ここはキュゥべえが産み落とした惑星地球のソドムの市。
マミの躰に染みついた硝煙の臭いに惹かれて、
危険な奴らが集まってくる。

次回「もう何も怖くない」
まどかが飲むマミの紅茶は、苦い。


第4話予告
4話用
ファウストは、メフィスト・フェレスに心を売って明日を得た。
マクベスは、三人の魔女の予言にのって、地獄に落ちた。
さやかは恭介の治療に、己の運命を占う。
ここ、見滝原の町で明日を買うのに必要なのは、ソウルジェムと少々の魔法。

次回「奇跡も、魔法も、あるんだよ」。
キュゥべえの契約には、死の臭い。


第5話予告 
5話用
魔法少女が走る、跳ぶ、吼える。
魔女が唸り、使い魔が弾ける。
さやかの腕が秘密の扉をこじ開ける。
炎の向こうに待ち受ける、ゆらめく影は何だ。
いま、解きあかされる、キュゥべえの謀略。
いま、その正体を見せる契約の真実。

次回「後悔なんて、あるわけない」
さやか、杏子を撃て。


第6話予告
6話用
何もかもが、炎の中に沈んだ。
微笑みかけた友情も、芽生え欠けた愛も、秘密も。
そして、あらゆる悪徳も同じだ。
全てが振り出しにもどった。
魔法少女は死んだ魂をソウルジェムに包んで、泥濘と、硝煙の結界に向かった。

次回 「こんなの絶対おかしいよ」
魔法少女は、誰も愛を見ない。

魔法少女まどか☆マギカ考察:巴マミ(その3)


 今日はすっかり夏という日差しでしたね。もう梅雨明けかな、という感じですが、まだまだ最後の反撃がありそうですね。昨日からバスクリンのクールシャワーを使っています。これは去年斎藤さんから貰ったもの。一年経って初使用。去年は爽快バブシャワーのエクストラクールを使っていたのでした。

 それではマミさんの考察の最終回いってみましょう。

孤独のマミさん

5.キュゥべえはマミをどうして放置していたのか?

 キュゥべえの考察の記事(6月28日)において、私はキュゥべえに期待される魔法少女について、

「強い魔法少女は強い魔女になるようです。これは、10話でワルプルギスの夜を倒したまどかが凶悪な魔女になった際、キュゥべえは「今のまどかなら、おそらく十日かそこいらで、この星を壊滅させてしまうんじゃないかな?」と言っています。地球が壊滅したらもうエネルギー回収は不可能になるわけですが、キュゥべえ曰く「僕らのエネルギー回収ノルマは、おおむね達成できた」なので、超強力な魔女を生み出す際に生じるエネルギーで、延命は十分達成できるということなのでしょう。故に、超強力な魔女になりうる鹿目まどかこそ、キュゥべえの理想の魔法少女ということになります。そりゃストーカーのごとく付け狙うわけです。」

と考察しました。この他、魔女には負けないけれど、なるべく早期に魔女化するもキュゥべえにとっては「いい子」でしょう。大きく育てる投資型と、即金日銭的な魔法少女の組み合わせがベストだといえるのではないでしょうか。

まどかにすがるマミさん

 キュゥべえは宇宙の延命のために、エントロピーを凌駕するエネルギーを求めて地球にやって来ました。そして最も効率の良いエネルギー源として、思春期の少女をターゲットにした訳ですが、具体的にはソウルジェムがグリーフシードに変わる際に発生するエネルギーを回収しているようです。

 そのため、ソウルジェムがグリーフシードに変わることなく生涯を終える、すなわち魔女に敗北して死亡する魔法少女は、キュゥべえにとってはまさに骨折り損のくたびれ儲け以外の何者でもありません。例え何十もの魔女を倒したエース格の魔法少女であっても、魔女化しなければキュゥべえにとっては無意味のはずなのです。逆に、魔女化してくれるのならば魔女を一体も倒さなくても何ら問題はありません。

 そういう意味では、3話であえなく魔女に倒されたマミは、キュゥべえにとって思惑外れでしかありません。なぜキュゥべえは、マミの魔女化を促進することもせず、2年に亘って放置していたのでしょうか。考えられる仮説としては、

ティロ・フィナーレ

① 魔女化の積極的促進が禁じられている

② マミの性格からして、真実を知ると自殺してしまう可能性が高いため、うかつに手を出せなかった

③ キュゥべえ自身が、マミのような魔法少女は珍しいと捉えていることから、サンプルケースとして要観察対象としていた

④ より多くの魔法少女と契約するための広告塔としてマミを利用

おめかしの魔女

 まず①ですが、キュゥべえの母星には、彼らなりの倫理感があることは確実です。それは、3話でまどかに対し「僕の立場で急かすわけにはいかないしね。助言するのもルール違反だし」と言っていたり、「まどか言葉責め」のシーンにおいても

「僕たちはあくまで君たちの合意を前提に契約しているんだよ?それだけでも充分に良心的なはずなんだが」(9話)

「寧ろ僕らは、人類が家畜を扱うよりも、ずっと君たちに対して譲歩しているよ?曲がりなりにも、知的生命体と認めた上で交渉しているんだしね」(11話)

と言っています。もちろん我々から見れば説明が不十分だとか、保護者の同意のない未成年者との契約は無効ではないかとか、いろいろ突っ込みどころはあるのですが、何しろ異星の知性体なので、契約に関する概念を地球側と完全に一致させるほうが無理なのかも知れません。そういう訳で、あくまでもキュゥべえサイドの一方的なルールにより禁止されている可能性は否定できません。

まどか風使い魔

②については、実際10話で「無理心中」を図っていることから、杞憂ではないことは明らかです。うかつに手が出せないままに、経験を積んでますます強くなってしまったマミに、実はキュゥべえは困っていたのかもしれません。

③数万年に亘って魔法少女と歩んできたというキュゥべえですが、彼をして「珍しい」と言わせたマミ。その行く末がどうなるかについては、今後の契約に寄与させるためにもぜひ知っておきたかったと思われます。仮に魔法少女の適性があっても、このタイプは魔女になる前に死んでしまうので契約しない方がいいとか。そういえば、キュゥべえはマミの元には足繁く通っていた雰囲気があります。ソウルジェムの穢れを吸い込んだグリーフシードを回収するために、キュゥべいえは魔法少女の下を富山の薬売りよろしく巡回していたと思われますが、マミはグリーフシードの有無にかかわらず戦うので、戦闘頻度に比べてグリーフシード獲得率は高くないと考えられ、キュゥべえはしょっちゅう顔を出す必然性はなかったと思われますが、要観察対象になっていたとしたら、頻繁にやってくることも頷けます。

杏子風使い魔

④はやや後付け的な仮説ですが、実際まどかとさやかはマミに憧れて魔法少女なる決意を固めていることから、「広告塔」としてのマミは優秀だったといえます。そしてまどかの魔女化を実現できれば、キュゥべえにとってのマミの「犬死に」すら安いものと言えましょう。特にまどかを「発見」してからは、まどか獲得のため、マミによりヒロイックに振る舞うことをけしかけていた可能性もあると思います。

 実際にはこれらの仮説が複数当てはまっている可能性があるのではないでしょうか。ゲーム版では、キュゥべえはいかに魔法少女を魔女にするかという視点から働き掛けを行っており、その鬼畜外道ぶりを我々に知らしめてくれるのですが、プレイヤーがそのキュゥべえになっているという点が悩ましいです。涙を呑んでマミを魔女にしましたが、その見ていて辛いものがありました。魔女名は「おめかしの魔女」、性格は「おもてなし」で、使い魔はまどか風と杏子風の二種類(杏子風は逃げないようにリボンで縛ってあるというところが泣かせます)。

6.おまけ

魔女化寸前のマミ

 まどかは本編において、「普通の少女」→「魔法少女」→「アルティメット形態」と二段進化しましたが、他の魔法少女もしうるのではないかということで、想像図が描かれていました。外国人の作品のようですが、ここでご紹介します。

まどかの進化

 まず、まどか。こちらは本編を踏襲しています。

ほむらの進化

 次はほむら。お姫様っぽくなっています。戦えるのでしょうか?露出の低さは、さすが理解しているなあという感じですね(笑)。

マミの進化

 そしてマミ。色っぽさが爆発しています。魔法少女としての進化というより、女として成熟しているかのような(笑)。一見看護婦さんのようにも見えますね。注射器ならぬライフルを抱えていますが。

 そんなわけでマミの考察は終了です。まどかは娘にしたい子ですが、マミはお姉さんに欲しいですね。この人ならきっと弟を虐待しなさそう。そういう意味ではさやかや杏子はヤバそう(笑)。あるいはマミさんは嫁にか。浮気とかな絶対許さなそうですで、絶望顔で迫ってきそうですが。「死ぬしかないじゃない!あなたも、私も!」とか言って。それでも、マミ一筋ならばノープロブレムですよ。

どや顔マミさん 
 


魔法少女まどか☆マギカ考察:巴マミ(その2)


 だんだん夏らしく暑くなってきましたね。今年はPCが落ちる心配をしなくていいかと思うと一安心ですが、何年か経てばまた…
ドラゴンクエスト6
 そういえばDS版のドラゴンクエスト6を買ったんですよ。4までは結構覚えているし、5はPS2でもDSでもやったのですが、6は16年ぶりです。いや~全然覚えてないや。移植で変わった要素もあるかも知れないけど、6以降って覚えてないエピソードが多い気がします。年取ってプレイするとダメですねえ。新鮮な気持ちでプレイできていいっちゃいいんですけど。

 さ、前振りはこれくらいにして、マミさん考察のその2です。今回はあの死亡シーンに焦点を当ててみました。

3.なぜ「お菓子の魔女」に敗北したのか?
お菓子の魔女
 結論から言えば油断したため。そして油断を招いたのはまどかなので、一言で言えば「まどかのせいで負けた」ということに(笑)。

 3話で魔女の結界を進む際のまどかとマミの会話です。

まどか「マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃないです」
マミ「…そうね。そうなんだよね。本当に、これから私と一緒に戦ってくれるの?傍にいてくれるの?」
まどか「はい、私なんかでよかったら」
マミ「参ったなぁ。まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのになぁ。やっぱり私ダメな子だ」
まどか「マミさん」

 心から願っていた仲間が出来ることを知ったマミのはしゃぎっぷりは、冷静な彼女に似ないものでした。
迫るお菓子の魔女

「オッケー、わかったわ。今日という今日は速攻で片付けるわよ」
「体が軽い。こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて。もう何も怖くない。私、一人ぼっちじゃないもの」

 使い魔を殲滅していくマミは、いつにもまして華麗に戦います。そして登場した魔女はまた普段以上に弱そうというか可愛らしいものでした。油断は最高潮に達します。もはやマミには戦いの後のパーティーの絵しか浮かんでいなかったのではないでしょうか。そのマミの油断ぶりは戦闘における以下の現象に現れています。

① お菓子の魔女を狙う銃弾があまり命中していない

② 普段以上の大口径砲から放ったティロ・フィナーレが魔女の体に小穴しか開けていない

 ①については、対象が小さいことと、そもそも銃撃のダメージよりも銃弾の穿った穴から出てくる拘束のための糸(細いリボンと思われます)の発生の方が重要なので、重大なミスとまでは言えないのですが、②は極めてまずい状況です。そもそもティロ・フィナーレは大口径砲により巨弾を発射して魔女にとどめを刺す技であるにも関わらず、この場合に限っては、なぜか小さな魔女の体に小さな穴しか開けていません。本来なら魔女の身長ほどもある弾丸が命中し、魔女を消し飛ばしていなければならないはずなのにです。
いただきマミさん
 ここで仮説として提唱したいのが、「ティロ・フィナーレ」不発説です。私は、マミは大口径砲の発生には成功しましたが、まどかを得られる喜びのあまり性急になり、戦闘に集中できなかったため、巨弾の生成に失敗したか、巨弾を命中まで維持することができなかったものと考えます。それ故に、その後の魔女の反撃を招いてしまったと。

 経験豊かなマミのこと、本来なら弱そうな外見に惑わされずに、冷静沈着に戦闘を行ったと思われます。そしてその場合、お菓子の魔女にも勝利することは十分可能だったはずです。スピンオフ作品ですが、「魔法少女おりこ☆マギカ」においては、マミはお菓子の魔女を倒しています。
シャルロッテを倒すマミ
 上記の台詞からも、本編ではマミは油断していたのであろうことが推測されます。そして油断を招いたのは(もちろん悪気は全くありませんが)まどかなのです。

4.ソウルジェムが具現化した魂であることを知っていたら勝てたのか?
いただきマミさん
 3話の例のシーンですが、マミはシャルロッテに頭を丸かじりされ、変身が解けて制服姿に戻っています。これはマミの死亡を示唆した表現で間違いないでしょう。10話でマミに撃たれた杏子もソウルジェムが砕かれた瞬間に変身が解けていますし、ワルプルギスに敗死したマミやまどかも制服姿に戻っていますから。

 その一方で、キュゥべえは6話でこんなことを言っています。

「心臓が破れても、ありったけの血を抜かれても、その身体は魔力で修理すれば、すぐまた動くようになる。ソウルジェムさえ砕かれない限り、君たちは無敵だよ。弱点だらけの人体よりも、余程戦いでは有利じゃないか」
たかがメインカメラをやられただけだ!
 すなわちキュゥべえは、ソウルジェムさえ砕かれなければ死ぬことはないのだと明言しているのです。ではなぜマミは死んだのでしょうか。ソウルジェムもシャルロッテの牙で砕かれていたのなら、死は必然です。残念なことに変身後のマミのソウルジェムは頭部にあるので、頭をかじられたときに同時に砕かれていた可能性はあります。

 しかし、3話の描写を見ると、頭を食いちぎられたマミの体は下に落下し、さらにそれを追いかけたシャルロッテにむさぼり食われています。マミのソウルジェムは髪飾りになっているので、頭部のかなり上の方にあります。マミが頭を一口で丸かじりされているのなら、ソウルジェム自体は健在である可能性もあると思うのですが。

 機動戦士ガンダムの最終回で、ガンダムはシャアの乗るジオングの攻撃で頭部を失いますが、「まだだ、たかがメインカメラをやられただけだ!」と叫んで有名なラストシューティングを行います。
ラストシューティング
 マミも、ソウルジェムが健在ならば上空のシャルロッテにラストシューティングすることができたのでしょうか?マミがソウルジェムの秘密を知っていたならばその余地はあったかもしれません。しかし、マミは死ぬ間際まで魔法少女の正義を疑っていませんでしたから、ソウルジェムの秘密も全く考えたことがなかったと見て良いでしょう。

 7話で、キュゥべえはさやかにこう言っています。

「君が杏子との戦いで最後まで立っていられたのは、強過ぎる苦痛がセーブされていたからさ。君の意識が肉体と直結していないからこそ可能なことだ。おかげで君は、あの戦闘を生き延びることができた。慣れてくれば、完全に痛みを遮断することもできるよ」
マミさんラストシューティング
 実際、マミも2話で薔薇園の魔女と戦った際に、壁に叩き付けられていますが、大きなダメージは負っていませんし、戦闘を継続しています。もしマミが痛覚を完全に遮断する術を知っていたならば、魔法で新しい頭を生やすなりして戦闘を継続することも不可能ではなかったかも知れません(なんかアンパンマンみたいでそんなマミは見たくありませんが)。しかし、頭ないし首を食いちぎられる痛みは、ある程度軽減されていたとしても通常耐えられるものではないのでしょう。ソウルジェムを砕かれていなくても、それだけでショック死するに十分だったと考えられますし、マミ自身にも「魔法少女は首をもがれてもなお生きている」なんて認識はなかったはずです。

 故に、ソウルジェムを砕かれていなかったとしても、マミは魔法少女の本質を知らないがために敗死したといっていいでしょう。もっとも知ったとしたら、それはそれで潔癖なマミのこと、やはり自身の魔女化を防ぐために死を選んでしまうような気がしますが…
可愛いマミさん

魔法少女まどか☆マギカ考察:巴マミ(その1)

ウインクマミさん

 今日は60回目のブログ記事になります。2ヶ月かあ…結構続いたものです。
 
 さて、今日も今日とて魔法少女個別考察を続行します。第三弾は、お待たせしました魅惑のナイスバディ、みんな大好き、マミさんこと巴マミです。マミさんに限っては私のえこひいきにより、その3まである予定です。

1.なぜ「華麗な魔法少女」なのか?

 初登場の1話にて、魔女の結界に迷い込んだまどかとさやかに迫る使い魔たち。そこに登場したマミは、華麗に変身し、召喚した無数のマスケットを斉射するという派手な大技で敵を一掃します。また、2話では魔法少女体験コースを主催し、薔薇園の魔女相手に必殺技ティロ・フィナーレで勝利した上で、優雅に紅茶を飲んでいます。これを「砲火後ティータイム」と呼ぶとか。「けいおん!」かっ(笑)

斉射!

 また、変身シーンも他のどの魔法少女よりも華麗です。マミの変身も戦闘も、明らかに「他人の目」を意識していると思われます。マミは無意識に、自分自身を「魔法少女の広告塔」としているのではないでしょうか。

 これまで見滝原町の平和を孤独に守ってきたマミは、まどかとさやかがキュゥべえに選ばれた「魔法少女候補」であることを知っても、積極的には契約することを勧めていません。

マミさん変身シーン

 2話冒頭で魔女退治への同行を勧めて、「魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめてみればいいわ。そのうえで、危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか、じっくり考えてみるべきだと思うの」

 この発言は、マミ自身が交通事故で瀕死の重傷を負う(同乗していた両親は死亡)という、選択の余地がない状態で契約したという事実(ゲーム版で描かれています)も、きちんとした願いをもって契約するべきだという意識を高めているのかも知れません。

 また3話では、「無理して格好つけてるだけで、怖くてもつらくても、誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり。いいものじゃないわよ、魔法少女なんて」 と言っており、魔法少女稼業が決して楽なものではないことを明言しています。

リボンを使うマミさん

 しかし、PSPのゲームソフト「魔法少女まどか☆マギカポータブル」(以下、「ゲーム版」とします)では、マミの心情が詳細に描かれており、マミはまどかとさやかに魔法少女になってもらって、一緒に戦うことを切望していたことが明示されています。

 マミは自己中心的な性格ではなく、世のため人のために魔女と戦うという、魔法少女としては異例の存在でした。キュゥべえが4話で「確かにマミみたいなタイプは珍しかった。普通はちゃんと損得を考えるよ」と言っていますが、おそらくグリーフシードも積極的に入手しようとはしていなかった模様です。2話でグリーフシードを入手した際に、「運がよければ、時々魔女が持ち歩いてることがあるの」と発言していることからみて、マミは人に仇なす魔女や使い魔は発見次第片っ端から殲滅していたと考えてよいでしょう。

 その性格故に、マミは苦労することがわかりきっている魔法少女を積極的に勧めることはしませんでした。しかし、仲間になって欲しいという心の奥底の欲求は、こんなのを見せられたから誰だって憧れてしまうに違いないという理想的な魔法少女像を自ら演じて見せるという行動に駆り立てたのではないでしょうか。
 3話までのマミの戦いぶりは、見る者をして魔法少女になるしかないと決意させるほど華麗でした。それは仲間が欲しいという密かな願いの反映であるとみて良いでしょう。また、利己的な魔法少女とは共に戦うことはできないので、自分と同じポリシーを持った魔法少女になって欲しいという欲求もあったと見られます。既にまどかとさやかは大きな影響を受けていましたし、マミの死後ですが、さやかはマミの遺志を過剰に受け継ぐような魔法少女になっています。

マスケット銃乱射

2.「豆腐メンタル」なのか?

 10話で待望の再登場を果たしたマミですが、これは過去の時間軸の話でした。基本マミの「優しくて頼りになるお姉さん」キャラは終始一貫していますが、1周目と2周目ではワルプルギスの夜に敗れて死亡したと見られます。3周目では、さやかが魔女化したことを目の当たりにして動揺魔法少女達、というシーンの後、有名な「マミ狂乱」シーンが来ます。ほむらを拘束して杏子のソウルジェムを撃って殺害、ほむらに銃口を向けて「ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない!あなたも、私も…!」と涙ながらに叫びます。

いわゆる「絶望顔」のマミさん

 マミは長い間魔法少女をしていた(契約時に中学校の制服だったことから、一年生時に契約し、およそ2年が経過しているとみられます)にも関わらず、魔法少女の真実に一切気づかずにきています。杏子もおよそ同程度の時間魔法少女として過ごしていますが、ゲーム版で描かれたように、契約の契機となった願いは既に裏切られており、綺麗事では魔法少女はやっていけないことに気づいており、極めてシニカルな見方をするようになっています。

 これは契約の際の願いの差かも知れません。マミの願いは「助けて」というもので、つまり自分自身の命を繋ぎ止めることを願った、言い換えれば、自分自身のために祈っています。これは他人のために祈った他の魔法少女とは明らかに異質です。余談ですがゲーム版では、この「命を繋ぎ止める」という願いから、リボンを使った技が発生しており、近接戦闘しかできないことを憂慮して工夫した結果、マスケット銃をリボンで作ることを学んだ(複雑な構造の銃は作れなかったと言っています)ということになっていました。

 つまり、皮肉なことに自分自身の願いを叶えて魔法少女になったマミは、杏子やさやかのように、他人のために願いを叶えて他人に裏切られるという経験をすることがなく、純粋に他人のために戦うことができたということでしょう。

にらむマミさん

 そのマミが、遂に魔法少女の真実に気付かされたのが、「マミ狂乱」のシーンです。しかし、マミは本当に狂っているのでしょうか?マミの行動は極めて論理的です。まずほむらを拘束して時間停止を妨げ、次いで経験と戦闘力でマミと匹敵する杏子のソウルジェムを砕いて殺害しています。既にキュゥべえからソウルジェムこそが魂の座であることは知らされているのでしょう。それから「ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない」という台詞。これも「魔法少女が必ず魔女になるのなら、その前に死ぬしかない」という理屈であり、魔女と戦い人々を守ることを天命と捉えているマミらしい言葉です。

 また、11話のほむらでみられるように、魔法少女は絶望感に捕らわれると急速にソウルジェムに穢れがたまっていきますが、この際のマミのソウルジェムにはそいいった兆候は示されていません。ということは、マミは激情には駆られつつも、極めてロジカルは行動を取っているといえます。惜しいのは、「魔法少女皆殺し」を実行するのであれば、杏子を殺した後に銃口を向けるべきはまどかであったという点ですが、まどかの項で考察したように、マミはまどかの本性を誤解していたか気付いていなかったと思われるので、天然の殺し屋という訳ではないマミとしては致し方なかったかと思われます。

もう独りぼっちじゃない

 おそらくマミは、まどかはどうしていいかわからずおろおろしているか、泣きじゃくっているだけだと考えていたのでしょう。或いは、一倍懐いていたまどかには、もっと言葉をかけたかったのかも知れません。マミはまどかの「漢」らしい果断な行動によりソウルジェムを砕かれて死亡しますが、マミも中学生の女の子、まどかの本質を見抜けなかったうかつさを批判するのは酷でしょう。

 というわけで、マミの「狂乱」は己のアイデンティティが完全否定されたことにより惹起されましたが、その目的はこれ以上魔女を生み出さないということであり、行動順もロジカルでした。故に、特別メンタルが弱いとは言えないでしょう。むしろ「一人ぼっちで泣いてばかり」であったにも関わらず、一人で見滝原町を守ってきた事実は賞賛に値すると思われます。

砲火後ティータイム

魔法少女まどか☆マギカ考察:暁美ほむら(その2)

睨み付けるほむら

 
「魔法少女まどか☆マギカ」のスピンオフ小説を考え始めたところです。まだ設定を考えているところですが、壇蜜さんの描いてくれた「舞静香」を主人公にしようと思ってます。夏の間に一本書けたらいいなあと思っていますが、どうなることやら。

 それでは、間に変な魔法少女(笑)が挟まってしまいましたが、ほむほむこと、暁美ほむらの考察の続きです。

3.ワルプルギスの夜のデータの謎

ほむらの自室

 ほむらの自室というか、自宅には額縁に入った様々な絵が無数にかけられています。どうやらワルプルギスの夜に関するデータのようですが、ほむらはこれらをどこから入手したのでしょうか。

 確かにほむらは毎回ワルプルギスの夜に遭遇しています。傍観していた場合もあれば、戦ったこともあります。また、8話でほむらと杏子がワルプルギスの夜について話し合っている際に、ほむらはワルプルギスの夜の出現範囲を想定し、その根拠を「統計」だと行っています。

 10話で描かれた過去のエピソードから、ほむらは少なくとも4回は時間を遡行していることがわかります。つまり今次の時間軸は5回目となるのですが、実際にはもっと多い可能性があります。

 「ひぐらしのなく頃に」というアニメにおいて、ほむらと同様に時間を遡行しては運命を変えようとしている古手梨花というキャラクターがいます。彼女は小学6年生程度の容姿ですが、自らを「100年の魔女」と称しています。これは、殺害される運命を逃れるために時間を遡行するという行為を繰り返してきたことを指しての呼称とみられますが、過去の事例と比較して、「これが起きた場合は必ず~になる」とか「これはこれまでにない事例だ」などと考察するなどしていることから、本編で語られている以上に遡行を繰り返していることが示唆されています。

古手梨花

 ほむらについても、10話で描かれたのは過去の重要なエピソードのみ(発端、魔法少女の魔女を知る、まどかとの涙の誓い、前回の戦い)で、実際にはさらに多くの遡行を行っていたと考えれば、「統計」という発言にも説得力が出てきます。もっとも杏子には告げていませんが。

 また、ほむらが激情のあまりまどかを抱きしめた際、額縁の中身がほむらの顔などに変わっています。ということは、額縁の内容はほむらの魔法により表示されているもので、実際に収集した資料を飾っているのではない可能性もありますね。

ほむらの心を写す額縁

4.武器収納・操作の謎

武器を展開したほむら

 11話でワルプルギスの夜に立ち向かうほむらは、むちゃくちゃな数の武器をそろえています。画面中で確認できただけで、

○ RPG-7&M136 AT4(対戦車ロケット・対戦車砲)

RPG7.jpg
AT4.jpg

○ M29/L16/M252(迫撃砲)

迫撃砲

○ 起爆装置(建築物を倒壊させてぶつけるのに使用)

起爆装置

○ タンクローリー(当然ガソリン満載のはず)

タンクローリー

○ 88式地対艦誘導弾

地対鑑誘導弾

○ C4高性能プラスティック爆弾(クレイモア地雷説もあり)

爆弾

○ 89式小銃(自動小銃)

89式小銃

このほか劇中で

○ IWIデザートイーグル(自動拳銃)

デザートイーグル

○ ベレッタM92(自動拳銃)

ベレッタM92

○ レミントンM870(散弾銃)

レミントン

○ FN Minimi M249(軽機関銃)

軽機関銃

などを入手ないし使用しています。これらの武器をどのように調達したのでしょうか。

 本編では、自作・暴力団事務所への侵入・軍事基地への侵入を行っています。時間が止められるとはいえ、なかなかにスリリングです。しかし、武器の前までやって来るのはいいのとして、どうやって運んだのでしょうか。

 画面の描写では、ほむらは武器を盾から出しています。どうやら盾は収納庫を兼ねているようです。それにしても、銃やロケット砲くらいはともかく、地対艦誘導弾とかタンクローリーとかワルプルギスの夜の周囲に置かれた無数の起爆装置は一体どのように収納し、また展開したのでしょうか。ほむらの盾は、時間を止めるばかりではなく、どんな巨大なものでも収納し、任意の場所に敷設することも可能な能力を持っているとしか思えません。とすると、ほむらは時間ばかりでなく、限定的とはいえ空間も操ることが可能な能力を持っているといえるでしょう。

 11話でほむらが時間遡行者であることを見破ったキュゥべえは、こう言っています。

「君が時間を巻き戻してきた理由はただ一つ――鹿目まどかの安否だ」
「同じ理由と目的で、何度も時間を遡るうちに、君は幾つもの並行世界を、螺旋状に束ねてしまったんだろう――鹿目まどかの存在を中心軸にしてね」
「その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら、彼女の、あの途方もない魔力係数にも納得がいく」
「君が繰り返してきた時間――その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、鹿目まどかに繋がってしまったんだ。あらゆる出来事の元凶としてね」
「お手柄だよ、ほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

磔まどか

 つまり、ほむらが時間遡行を繰り返すことで、すべての因果の中心にまどかが据えられてしまったことをキュゥべえは指摘しているのですが、影響はそのごく周辺の存在にも作用していると解釈するべきでしょう。つまり、ほむらとワルプルギスの夜です。

 ほむらについては、時間の停止期間の延長や、盾への武器の収納力や展開力などが強化されてきたと思われますし、ほむら自身の基礎体力も向上しています。そしてワルプルギスの夜についても、その攻撃力と防御力が次第に向上しているとみられます。つまり、ほむらが強くなった分だけワルプルギスの夜も強くなっているのです。いつまで経ってもほむら一人で倒すのは不可能なワルプルギスの夜、そういう存在にしてしまったのもほむら自身のであると言えると思います。

 ただ、タンクローリーは乗ってるだけで操作し、対艦ミサイルは乗ってるだけで発射し、C4爆弾は突如出現して爆発しているようにも見えます。まるで「Fate/Zero」に登場するバーサーカーの宝具「騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)」(およそ武器と認識する万物を支配下に置く)でも借りてきたかのようです。

バーサーカー

 そういえばまどマギの脚本を書いた虚淵さんは、「Fate/Zero」の原作者…

追いかけるほむら
 

魔法少女アイ:エロゲーだけどダークな雰囲気は「まどマギ」に近い?

魔法少女アイDVD壱plus弐
 
 気温はあまり高くはないのですが、湿度が高くて動くと汗をかく、そんなうっとうしい日ですがお元気でしょうか。

 今日は暁美ほむら考察のその2を…と思っていましたが、おっと忘れるところでしたよ。「土曜日はギャルゲーの日」じゃあーりませんか。今後はともかく、今回は初志貫徹(?)ということで、「魔法少女」つながりで「魔法少女アイ」を取り上げたいと思います。

 「魔法少女アイ」は2001年6月発売の18禁アドベンチャーゲームです。続編の「魔法少女アイ2」は2002年9月に発売されており、私がプレイしたのは2003年12月に発売された「魔法少女アイDVD壱plus弐」でした。エロゲーですが、ブログの品格(そんなのあったんかい)を損なわないよう、エッチな話は控えめでいきます。期待していた方々、どうもすいません。

 内容は、高校生の主人公の住む町における、異界からやってきた魔法少女と妖魔「ゆらぎ」の戦いを、ダークな雰囲気の中で描いた作品です。「魔法少女」とはいうものの、戦闘は基本的に武器による直接打撃を中心とした肉弾戦であり、「ゆらぎ」は基本触手の化け物なので、エロゲーとしては「触手凌辱モノ」ということになります。

 「ダークでシリアスな、ダークファンタジーともいうべきストーリーは、「魔法少女まどか☆マギカ」とも共通する雰囲気を醸し出しています。そういえばまどマギの魔法少女達も武器の使用を中心として、ベギラマとかメテオとかいった、いかにも魔法という魔法は使わないですね。

 この作品では異界は「あちら側」「向こう側」と呼ばれており、詳細は判明していませんが、完全な階級分業社会のようで、戦士(魔法少女の正式名称は魔法戦士です)は幼少期から厳しく訓練されています。主人公とはいえ野郎はどうでもいいとして、魔法少女達を紹介しましょう。なお適当な絵がないため、フィギュアの画像で失礼。

加賀野愛(アイ)
魔法少女アイ1

 本作のヒロインで、主人公の前に突如現れた、異界の魔法戦士です。感情を押し殺しており、他者を受け入れない頑なさを持っています。幼少期から戦士としての厳しい訓練を受けて育てられてきたため、敵である「ゆらぎ」に対しては一切の妥協を許さない、残酷ともいえる徹底的な戦い方を貫きます。その一方で女性らしい部分を隠しており、ファンシーで可愛いものや、甘いものに目がないという面も持ち合わせています。スレンダーな体格で胸が小さいことを気にしている。
魔法少女アイ2
 異界においては下級に位置する戦士であるため、真の名前は持たず、「加賀野愛」は人間世界での偽名です。雷の魔法を得意としていますが、基本的には刃のついたロッドでぶっ叩く戦い方をします。

凜(リン)
魔法少女リン
 「2」から登場。「ゆらぎ」討伐のため、異界から新たに派遣されてきた魔法戦士です。明るい性格をしていますが、戦士としてエリートコースを歩んできた(「星の子」と呼ばれています)ため、高いプライドを持っています。下級戦士ながら実戦で着実に成果をあげているアイに対し、自分に実戦経験の無いことに焦燥感を感じています。アイよりも、さらに細身で貧乳です。

 炎の魔法を得意としていますが、やはり基本は剣による白兵戦です。

愛(メグ)
魔法戦士メグ
 アイの先輩に当たる魔法戦士です。温厚で面倒見の良い性格とは裏腹に、比類なき絶大な戦闘力を有しているため、異界では「鬼神」「舞姫」「アンチェイン」と呼ばれていた恐るべき魔法戦士です。何とアイの初体験の相手でもあるが、男性と付き合っていた過去もあり、真正レズビアンではないそうです。「2」では加賀野愛と名乗っているので、漢字テキストではアイとメグがわかりにくですが、見れば一目瞭然の巨乳ぶりです。

 美人ですが、正直「魔法少女メグ」と呼ぶのはやや痛いお年頃です。正式名称は「魔法戦士」なので、「魔法戦士メグ」には何の文句もありませんが。風の魔法を得意としており、槍を自在に操ります。

 これら魔法戦士達が戦う(そして陵辱されたりする)敵「ゆらぎ」ですが、正体がよくわかりません。戦士を派遣してくるくらいなので、異界から来たのかもしれませんが、まどマギと違い、魔法少女がゆらぎになるわけではありませんが、なり得る場合もあるようです。基本負の感情を持った人に憑依するという感じですが、正体はほぼ触手。実に様々な種類の触手が出てきます(むしろ同じ触手が出てこない)。エロゲーなのでこの触手があんなことやこんなことをするのですが、詳細はすべて割愛!

 そうだ、忘れていました。魔法少女ではありませんが、私の好きなキャラはこの人です。
 
宮広 美景(みやひろ みかげ)
宮広美景
 主人公のクラスメイト。病気で1年間休学していたため、実際の年齢は主人公より1歳年上です。年上のせいか落ち着きがあり、清楚で気品のある美人で、なおかつ頭脳明晰で心優しいという完璧な女性ですが、なぜか周囲からは浮いていて、友達がいません。主人公の憧れの君ですが、彼女もなぜか主人公に好意的です。

 実は自身の隠された性癖に苦しんでいます。なんとニンフォマニアなのです。壇蜜さんが3本も出したDVDもニンフォマニアでしたが、壇蜜さんの素性はDVDでの演技とまったく逆なのに対し、美景は普段清楚なのに発作的に淫乱になります。そんな彼女の哀しい姿を見ても変わらない好意を持ち続け、救ってあげたいと思う主人公、お前は男だ(まあそういうルートを選択できるということですが)。
大学生になった美景
 「美景」ルートでは、彼女は「ゆらぎ」になってしまうのですが、主人公と相思相愛になったことで力のコントロールができるようになり、魔法少女の殲滅対象から見逃してもらえます。

 「2」では大学生として登場。主人公は浪人ですが、変わらない好意を寄せてくれます。ニンフォさんでなければ非の打ち所のない人なんですが。

 主人公はさえない男なんですが、なぜか周囲の女性にもてるという怪奇現象を発生させており、しかもそれに気づかないという朴念仁ぶりを発揮してくれます。その一方で、周辺の男達は片っ端から「ゆらぎ」になっては殲滅されていくというハーレムぶりです。

 実は「2」の後、「参」がだいぶ時間が経った2008年に出たのですが、これがエロゲー史上屈指の出来(悪い意味で)となり、そのすさまじい出来で伝説になってしまいました。運営会社が変わったとかいろいろごたごたがあったようなのですが、「1」「2」の頃は評価が高かったのに…。
 
 ストーリーですが、ざっとだけ言いますと、
「1」:主人公が住む街では、続発する猟奇的殺人事件が頻発していた。そんなある日、謎の少女・加賀野愛が主人公の前に現れる。愛は謎の妖魔「ゆらぎ」を倒すべく、異界から派遣された魔法戦士だった。主人公は、魔法少女とゆらぎの戦いに巻き込まれていく。

「2」:前作の猟奇的殺人事件から数年が経った。浪人生の主人公は、都会に出て予備校に通っているが、加賀野愛によって、記憶を封じられたことで、「何か大事なことを忘れた」ような、曖昧な日常を送っていた。そんなある日、主人公は予備校から帰宅途中、化け物と戦う不思議な少女・リンを目撃する。その光景にデジャヴを引き起こして立ち尽くすが、リンに気付かれてしまい、記憶操作の魔法をかけられるが、全く効かなかったため、リンは主人公を監視すべく自宅に押しかけてくる。こうして、主人公とリンの奇妙な共同生活が始まるのだった。

やってませんが、ついでですから。
「参」:「2」ラストでメグが連れ去られ、リンも姿を消した。アイと主人公は2人の消息を追うも、行方は杳として知れないままだった。1年が経ったある日のこと。予備校時代からの友人の紫(ゆかり)と再会する。その出会いが事態を動かす発端となっていく。

 これだけではなんだかよくわかりませんが、詳細はプレイしてのお楽しみということで。触手ものなので人を選ぶとは思いますが、「2」まではダークな雰囲気が中々いいです。もう10年前のゲームになりますし、絵にかなりクセがあるのですが、もし興味があったら。ただし古いゲームなので「1」「2」はXPまで、やらないでしょうけど「参」はvistaまでとなっておりますのでご注意を。

 魔法少女の衣装や武器は、「まどマギ」に出てきてもあまり違和感ない気がします。もしや「まどマギ」に影響を与えて…いるわけないですね、ハイ(笑)。


魔法少女まどか☆マギカ考察:暁美ほむら(その1)

スカートに星が

 アルティメットまどかフィギュア、アマゾンで1万908円だそうです。定価は1万4800円。全高約330ミリ。宣伝文句は、

「大ヒットアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の最終回にて、主人公『鹿目まどか』が自身の願いを叶えて魔法少女になった姿『アルティメットまどか』を1/8スケールサイズで立体化。なびく髪、深遠な宇宙を内包するドレス、透き通った羽、花の蕾をイメージさせる魔法の弓といった印象的な姿を大胆かつ繊細に再現しました。台座は矢を放つ際に宇宙空間に出現する魔法陣をあしらった仕様となっています。」

後ろ姿はまさに花嫁

とのことです。しかし「対象性別:男の子」ってのが(笑)。元男の子ではダメっすか。女の子だって欲しい人は欲しいと思うのですが……
 
 それはさておき、とりあえずまどかさんの考察は一段落したので、今回はまどかの最高の友達、「コネクト」の真の歌い手である暁美ほむらを考察してみたいと思います。

1.なぜ転校してきたのか?

ほむほむ1

 10話冒頭、転校してきた魔法少女になる前のほむらについて、早乙女先生はこう述べています。

「あけみさんは心臓の病気でずっと入院していたの。久しぶりの学校だから、色々と戸惑うことも多いでしょう。みんな助けてあげてね」

 また、体育でへばったほむらを見て、クラスメートはこう囁いています。

女子A「準備体操だけで貧血ってヤバイよね」
女子B「半年もずっと寝てたんじゃ仕方ないんじゃない?」

 ということで、別の学校に通っていたほむらは、半年間入院した後、見滝原中学校に転校してきたことが窺えます。普通は退院後は元の学校に戻ればいいようなものですが、なぜほむらはわざわざ転校したのでしょうか。

 「まどかとの涙の誓い」後であれば、ほむらが意地でも転校してくる理由はわかるのですが、最初の転校の理由は自らの意思とは違うところにあるように思われます。

ほむほむ2

 ずばり、鍵は未来的な見滝原町(ずっと市だと思ってましたが、町だそうです)にあるように想われます。公式サイト(http://www.madoka-magica.com/tv/special/keyword/mitakiharacho.html)によれば、見滝原町は「物語の舞台となる地方都市。近年になって急速に開発が進み、近代的な建築物が続々と建てられている。」ということです。

 ということは、病院も先進的設備の整った近代的なものができていてもおかしくありません。見滝原中学校も極めて未来的な設備を持っていますし。ほむらは元々県内の他の町村に居住していたが、心臓の病気で入院治療が必要となり、最適と思われる見滝原町の病院に入院し、退院後も同じ病院で検査などを受けるのに便利なよう、見滝原町に越してきたと考えるのが妥当ではないでしょうか。

2.奇妙な自宅

 見滝原町のほむらの自宅です。

ほむホーム

 三叉路の中央にあるという、極めて不思議な場所に建てられています。この建物がすべて自宅なのでしょうか。11話でまどから訪ねてきたシーンを見ると
① 表札が「暁美ほむら」

表札

② まどかが廊下らしい通路に立っている(ほむらはドアを開いてますが、まるでのぞき窓から見たような感じ)

訪ねてきたまどか

 こうしたことから、この建物はアパートかマンションであり、ほむらはその一室を自分名義で借りていると解釈できます。ということは、家族と住んでいるのではなく、一人暮らしということになりますが、これも1.で見たように、入院していた病院での検査などで便利なように用意された仮の宿だとすれば不自然とはいえないでしょう。

 とはいえほむらはまだ中学生。保護者が必要な気はします。普通はお母さんあたり付き添うのではないでしょうか。ところで、ほむらの家はわざわざ違う町の病院に入院させたり、アパートを用意したりと、結構裕福そうな感じをさせますが、家族の影が一切感じられません。

 これはほむらに限ったことではなく、マミは両親が事故死、杏子は家族が全員死亡していることが確認されており、おそらく親は健在なはずのさやかですら、全く本編には登場していません。要するに、家族が登場しているのはまどかだけなのです。これは、まどかの普通の生活ぶりと、魔法少女の非日常性を際立たせるための演出なのかも知れません。ほむらについても、片親ないし両親がなんらかの理由で既に故人になっている可能性はあると思われます。ただし、財産的には恵まれており、管財人ないし後見人がちゃんといて入院とか転校の手続きの面倒などはみてくれているのでしょうか。

ほむらの自室

 しかし…このやらたと広い室内はどうしたことでしょうか。ワンルームだとしても広大ですね。ほむらの実家はよほどの金持ちなのか、それとも見滝原町の賃貸相場が激安なのか。

クールなほむら

 以下、次回に続きます。

魔法少女まどか☆マギカ考察:鹿目まどか(その2)

笑顔のまどか
 
 え~私事で恐縮ですが、私が使わせてもらっているFC2ブログ、日記は約78万人が利用しており、会社員・OL部門はそのうち約6.1万にの利用となっているところ、今日ランキングを見たら、それぞれ4864位と939位になっておりました。日記部門では遂に上位1%に食い込んでしまいました。さらに会社員・OL部門でも念願の3桁に。

 ランキング上位を目指すことがブログを始めた目的ではありませんが、見ていただける人がいるということは大変励みになります。これからもよろしくお願いします。ずうずうしくも次の目標は会社員・OL部門で上位1%(つまり600位くらい)としたいと思います。

 痛感しますね。「魔法少女まどか☆マギカ」はやっぱり人気あるなあと。私も大好きな作品なので、今後もちまちまと考察を続けたいと思います。興味のある方はぜひおつきあい下さい。

 こんなすごい作品に関われるとしたらなんと素晴らしいことでしょうか。ベタ塗り(ないわそんな仕事)でもいいから参加したかったですね。もっとも全然違う業界の人間なのでどだい無理なんですが(笑)。 

レイプ目まどか

 昨日は知らないおっさんにいろいろと探られて怯えてレイプ目になっていたまどかさんですが、すっかり打ち解けたようで今日は笑顔です。大丈夫、怖いことしないからね。

 それでは昨日の続き、鹿目まどか考察その2です。

(3) なぜほむらと仲が良いか?

12話のまどか

 10話でみられるように、過去の時間軸において、常にまどかはほむらと良好な関係を維持しています。本編を見る限り、ほむらは5回以上時間軸をシフトしていますが、まどかと比較的疎遠なのは今次と、前回だけです。前回の時間軸においては、ほむらが一人ですべての魔女を倒すことを決意し、眼鏡をはずしており、それまでとの相違を明確に表しています。それ以前、つまり眼鏡をかけたほむらは常にまどかと仲が良いようです。

 最初の時間軸において、まどかはほむらを助けており、颯爽としたまどかにほむらが憧れているような描写があります。それの姿は、まさにマミに助けられ、マミに憧れている1~3話のまどかそのものです。そもそも初対面の時から、まどかはほむらに親切です。

ま「ごめんね。みんな悪気はないんだけど、転校生なんて珍しいから、はしゃいじゃって」
ほ「いえ、その…ありがとうございます」
ま「そんな緊張しなくていいよ、クラスメイトなんだから」
ま「私、鹿目まどか。まどかって呼んで」
ほ「え?そんな…」
ま「いいって。だから、私もほむらちゃんって呼んでいいかな?」
ほ「私、その…あんまり名前で呼ばれたことって、無くて…。すごく、変な名前だし…」
ま「えー?そんなことないよ。何かさ、燃え上がれーって感じでカッコいいと思うなぁ」
ほ「名前負け、してます」
ま「うん?そんなのもったいないよ。せっかく素敵な名前なんだから、ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ」

 これは一週目の会話ですが、2週目においても「委員長の魔女」のとどめをほむらが刺した際、まどかはほむらに抱きついて「すごい、すごいよほむらちゃん」と我が子とのように喜んでいます。

ほむらに抱きつくまどか

 故に、ほむらがまどかに接近するのはよくわかるのですが、まどかの方にもほむらを特別な存在だとみなしている節があります。マミが絶望して仲間を殺そうとした際、まどかはほむらを助けるために躊躇なくマミを殺害しています。まどかにとってのマミは、ほむらにとってのまどかと同じように憧れの存在であるにも関わらず、です。これはまどかにとって、ほむら>マミである明瞭な証拠と言えましょう。

 眼鏡のほむらは、魔法少女になる前のまどか同様、自分に自信を持てず、萎縮して卑屈になっている存在です。まどかからすると、かつての自分を見ているかのような感覚になっているものと思われます。まどかのほむらに対する親切は、かつての自分自身に対する慰藉なのかも知れません。まあ、単純に相性の問題と言うだけなのかも知れませんが、「まどかは私の嫁になるのだ~」なんてさやかに抱きつかれていたまどかは、さやかにそういうことをしているシーンがないんですよね…

(4) まどか究極形態はなぜウェディングドレス?

12話のまどか2

 12話にほんの少しだけ登場し、自らのソウルジェムを射るまどかは、瞳が金色で、髪の身長くらいまで伸びているほか、純白のドレスを纏っています。その姿はまるで花嫁のようです。また、年齢も上がっているように見えます。

 まどかはすべての魔女を消すために宇宙の法則を書き換え、それと同時に人としての存在を失ってしまいます。これに関して、キュゥべえは次のように言っています。

「まどか。これで君の人生は――始まりも、終わりもなくなった。この世界に生きた証も、その記憶も、もう何処にも残されていない。君という存在は、一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果ててしまった。もう誰も君を認識できないし、君もまた、誰にも干渉できない。君はこの宇宙の一員では、なくなった」

 これに対し、ほむらは「これがまどかの望んだ結末だって言うの?こんな終わり方で、まどかは報われるの!?冗談じゃないわ!!。これじゃ、死ぬよりも…もっとひどい…ひどい…」と嘆き悲しんでいます。

 まどかは「これからの私はね、いつでもどこにでもいるの。だから見えなくても聞こえなくても、私はほむらちゃんの傍にいるよ」と言っていますが、ほむらは、もはやまどかの手を握ることも抱きしめることも、会話を交わすことすらできないのです。

 こうして魔法少女中もっとも過酷な運命を選んだまどか、自分を犠牲にして他の魔法少女に救済を与えたまどか、14歳のみそらで恋も知らずに消えていくまどかに対し、せめてひとときだけでも美しいウェディングドレスを着せてやりたいという、大宇宙の意思ないしは制作スタッフの手向けなのでしょうか。

 また、こういう考え方もありかと思います。ヴェネツィア共和国のドージェ(元首)は、毎年「海との結婚」という儀式を執り行っていました。これは、海運こそがヴェネツィア共和国の繁栄の礎であったことの象徴だとされます。ドージェは、「おまえと結婚する、海よ。永遠におまえがわたしのものであるように」と言って、公式座乗船から結婚指輪をアドリア海に投げ入れたといいます。まどかは、魔女のいない宇宙を新たに生み出したといえますが、まどかのウェディングドレスは、その新しい宇宙との結婚(永遠に魔女が生まれないように)を意味しているのかも知れません。

アルティメットまどかフィギュア

 11月に発売予定といわれる1/8スケールのアルティメットまどかと呼ばれる最終形態のまどかのフィギュアです。なんと神々しくも美しい。フィギュアを飾る趣味はない私ですが、これはちょっと欲しいかも。

アルティメットまどか2

 まさしくハートを射貫かれました。

魔法少女まどか☆マギカ考察:鹿目まどか(その1)

怯えまどか1

  ここのところ、私のブログは合間合間にいろいろな話題を挟みながらも、「魔法少女まどか☆マギカ」サイクルに入っているといえます。「秒速5センチメートル」サイクルは一気にやれたんですが。しかし「~サイクル」って表現、「宇宙英雄ペリー・ローダン」シリーズみたいで格好いいなあ。まだやってるのかな、あのシリーズ。今も全巻読んでいる人っているのでしょうか。

 それはさておき、魔法少女の個別考察シリーズを開始したいと思います。まずは「ただの少女」のまま終盤まで突き進んだ「看板に偽りあり」の主人公・鹿目まどかさんについてです。

(1) まどかの本質は?

怯えまどか2

 まどかといえば「怯え顔」が印象的です。その劇中での性格は、いかにも女の子らしいといった感じで、優しく友達思いで涙もろい反面、優柔不断で決断力がない、そして怒るということを知らないという感じだったように見受けられます。とすると、専業主夫のお父さんとバリキャリのお母さんの娘としては、お父さん似の性格ということになるのでしょうか。

 しかし、まどかは本当に優柔不断で決断力が欠如しているのでしょうか?実は決断に富んでいるのだということが判明するシーンがあります。10話の過去の時間軸で、さやかが魔女化して、一同が魔法少女の末路が魔女であることを知ったシーンです。この際、絶望した巴マミはまず暁美ほむらを拘束し、佐倉杏子を不意打ちで射殺してから、銃口をほむらに向けます。しかしあわやというところで、まどかの弓がマミを射殺し、ほむらは九死に一生を得ます。
 
 この時のマミの行動ロジックは、①厄介な時間操作をするほむらをまず拘束する ②自分に匹敵する戦闘力の杏子を殺す-の順になっていたと思われ、錯乱状態のようでいて流石はマミさんと唸らされますが、その後銃口を向けるべきは、拘束に成功していつでも料理できるほむらではなく、なおフリー状態のまどかであるべきと思われるのに、マミはなぜか先にほむらを殺そうとしています。

 マミはなぜまどかに銃口を向けなかったのでしょうか。一番自分を慕ってくれているまどかを殺すのは忍びなかったのかも知れませんが、どうせ怯えてすくみ上がって泣くばかりのまどかには有効な反撃などできない、とマミがたかをくくっていた可能性もあると思います。そういう認識は、冒頭書いたように、作品を見ている我々も共有しがちな部分なので、なおさらまどかの「マミ瞬殺」シーンは意外に思えるのです。

 しかし、まどかは「やるときはやる子」であり、「やればできる子」でもあるのです。例えば4話では、魔女に操られる人々のまっただ中で、ただ一人で「混ぜるな危険」の洗剤容器を投げ捨てていますし、6話では、さやかのソウルジェムを奪い取って投げ捨てています。キュゥべえすら予測できなかったこのアクションを、時間軸が違ったために、不幸にしてマミは知らなかった(この時間軸ではさやかが魔女化するまで魔法少女の秘密が判明していなかったと見られます)ために、判断を誤ったといえますが、それだけ普段のまどかの「猫かぶり」っぷりが巧みだったともいえます。お母さんも案外少女時代はこんなだったのかも。

(2) なぜ自己評価が低いのか

キュゥべえさんキター!!

 まどかは傍目に見てとってもいい子です。ぜひ娘にしたい。ですが、まどか自身は自分にかなり辛い評価をしています。3話でまどかは次のように言っています。

「私って鈍くさいし、何の取り柄もないし。だからマミさんみたいにカッコよくて素敵な人になれたら、それだけで十分に幸せなんだけど」

「私って、昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか何もなくて。きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま迷惑ばかりかけていくのかなって。それが嫌でしょうがなかったんです」

「こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって、胸を張って生きていけたら、それが一番の夢だから」

 こうした言動から窺えるまどかの自己評価の低さは一体どうしたことでしょうか。まどかは両親からそれは愛されて育ったとみられますし、両親がまどかの性格を否定するような言動をしたとも思えません。お母さんの現在の姿をみれば、まどかはいわば「醜いアヒルの子」なのであって、成長すれば同じくらい能力の高い女性になる可能性が高いと思われますし、仮にそうでなかったとしても、誰からも愛される子であることには違いないと思われるのですが。

 さやかが一話で「相変わらずまどかのママはカッコいいなあ。美人だしバリキャリだし」と言っています。お母さんはまどかの自慢であり、まどかの周辺の女子全般の憧れの的となっていると思われます。

 まどかはお母さんの生き方に憧れ、目標とするとともにさらにその先に行くことを望み、しかしながら現状それが出来そうにない自分の能力に絶望しているかのようです。これには、母親が外で働き父親が主夫を担当するという家庭環境が影響している可能性があります。まどかの家庭環境では、「男女の役割」にとらわれない考え方が育まれていると思われますが、お母さんの生き様を自分の生き様と重ねあわせたいと願い、それが出来ない現在の自分の無力を嘆いている-つまり、まどかが卑屈なのは、目標としたいお母さんがあまりにもヒロイックであるということに起因するのではないでしょうか。仮に鹿目家が通常の家庭(父親が仕事、母親が家事育児)であった場合、まどかはここまで苦悩しなかったものと考えられます。

 つまり、まどかはお母さんから深く愛されていますが、母親が偉大だと思えば思うほど、その存在は巨大な壁となってまどかの前に立ちはだかっており、なまじ関係が至極良好なだけに反発もできないでいるとみられるのです。

 11話でまどかは、避難所を出ようしてお母さんに咎められ、「強い母親」と対峙するような形で対話しています。このシーンこそ、まどかが初めて目標であった母親を乗り越えていく様子を描いたものであり、魔法少女になる確固たる決意を固めた場面であるといえるのではないでしょうか。

体育座りまどか

敵は海賊・海賊版:海賊王・匋冥に見る魂の形

敵は海賊・海賊版

「這いよれ!ニャル子さん」が終わってしまって以来、本当につまらない世の中になってしまいましたね。いや、そんなにすごい作品ではないけれど、OPとEDを聞けないと寂しくて。二期希望。OPとEDはそのままでいいんだけど、やはりそういう訳にはいかないでしょうから、思いっきりケイオスケイオスなのをよろしくお願いします。

 さあ、ようやく「敵は海賊・海賊版」を読み終わりましたので、満を持して今夜紹介します。

 「敵は海賊・海賊版」は神林長平の1983年の作品で、「敵は海賊」シリーズの長編第一弾です。「敵は海賊」シリーズと「戦闘妖精・雪風」シリーズは、神林長平の二大人気シリーズですが、巻数でいえば現状7対3で圧倒的に「敵は海賊」シリーズの勝ちです。基本シリアスな「雪風」シリーズに対し、「敵は海賊」はコメディシーンが多いので書きやすいのかもしれません。

 宇宙への入植が進んだ遙かな未来。火星や土星の衛星タイタンにも人が住み、他星系の人間・生物とも共存する時代。人類の活動範囲の拡大に従い凶悪な星間犯罪も増加しており、それら犯罪者は「海賊」と呼ばれていた。それに対抗するための治安組織として存在するのが広域宇宙警察監査機構・対宇宙海賊課、通称「海賊課」です。

 海賊課は警察の一部署でありながら、極めて強力な強制捜査権を有する超法規的機関で、他の警察機構や軍隊、星系の支配者すらも意に介しません。各刑事は「インターセプター」と呼ばれる装置を身につけ、あらゆる組織のコンピューターへの介入が許可されており、海賊の即時射殺も認められています。しかしながら、多大な被害を与えながらも巧妙に社会に潜り込んで中々尻尾を出さない海賊に対し、「海賊を殲滅するためならなんでもあり」的な行動を大っぴらに行って、一般に被害を及ぼすことも少なくない海賊課は、ときに海賊と同一視されて市民や軍からは嫌われています。

 そんな中、物語は太陽圏の海賊課(本部は火星の衛星ダイモス)に所属する一級刑事ラテルとアプロの凸凹コンビと、伝説の海賊王・匋冥(ヨウメイ)を中心に展開されます。

 「敵は海賊・海賊版」は、シリーズ初長編にして、最も派手で複雑なストーリーが展開されます。スペースオペラ、平行宇宙、ドッペルゲンガー、神と悪魔、天使と魔女、聖戦士と魔鬼、魔銃フリーザーと聖銃ブラスターが入り乱れます。

 「敵は海賊」の名のとおり、主人公は海賊課の刑事コンビです。ラウル・ラテル・サトルは、海賊課一級刑事。宇宙を放浪しながら交易をするキャラバンで育ちますが、そのキャラバンが海賊に襲われ、家族が皆殺しされたため、海賊の殲滅に執念を燃やしています。巨大なレイガンを片手で操り、射撃の腕は海賊課随一で、かの海賊王・匋冥と撃ち合っても生還した唯一の男です。なおラテルとアプロは海賊課で最も優秀であり、かつ最も損害請求の多いチームです。かつて本気で愛した女が海賊だったことがトラウマになっています。

 アプロはラテルとコンビを組む海賊課一級刑事で、黒猫型の異星人です。海賊課内でも最強の殺傷能力を持つ金の首輪型インターセプターをつけており、人間のある時点の感情を凍結する特技を持っています。大食漢で口に入るものならなんでも食べてしまうが、一番の好物は海賊だと言っています。普段の食欲は殺戮欲求の代替とも。肉より魂や意識を食べると言われており、その悪魔的な本性はシリーズが進む毎に明らかになっていきます。アプロの種族には性が6種類もあり、アプロの性別は中間性の1つだということですが、故郷の星に帰ったら王様になって王妃に食われなくてはいけないらしく、太陽圏に留まっています。

 この二人と、海賊課所属の対コンピューターフリゲート艦のラジェンドラ(全長約300m、外見は鏃型、船体色は黒色)が、いわゆる「ラテル・チーム」を構成しています。ラジェンドラは超高度知性体で感情を持っており、アプロとしょっちゅう口喧嘩している。通常兵装の他、CDSと呼ばれる発射した範囲に存在するすべての光電子回路を搭載したコンピュータを破壊する兵器を備えています。

 このチームの最大の標的である匋冥・シャローム・ツザッキィは、太陽圏の海賊の頂点に立つ男です。既に伝説化されており、海賊たちでさえ実在を知っている者はほとんどいません。表の世界においても政財界の重鎮ヨーム・ツサキという顔を持ち、表と裏の世界を思い通りに操る、太陽圏の影の支配者と言えるほどの絶大な力を持っています。無用な争いを好まず普段は宇宙最強と言われる攻撃型宇宙空母のカーリー・ドゥルガーで宇宙を放浪していますが、邪魔をするものや自らを縛ろうとするものは容赦なく抹殺する冷徹な男でもあります。フリーザーと呼ばれる冷凍粉砕銃を愛用し、自らの良心を切り離した存在である有機ロボットの白猫クラーラがいます。

 さて、そもそも本書を紹介しようと思った切っ掛けは、「私の奴隷になりなさい」を読んだことにあります。「私の奴隷になりなさい」には、隷属と支配という関係の中で「真の自分」を見いだすことのできる人々がいることが、やや過激に描かれています。こういう人々の心の形を「香奈」型と仮定すると(他の登場人物は氏名不詳であるため)、その対極の存在が匋冥ということになります。

 匋冥はごく普通の平和な家庭に生まれ育ちましたが、幼い頃に姉を殺し、少年期に教師と父親を殺し、青年期に母親を殺し、捕まりそうになって一般市民を巻き添えに警官を殺し、海賊に入って仲間の海賊を殺して海賊船を手に入れたという、すさまじい過去を持っています。

 その信条は「おれに命令できるものはおれだけだ。おれを支配しようとする力には、手段を選ばず対抗し、必ず打ち砕いてやる」というものです。どんな束縛も受けないというのは普通の人間には絶対不可能ですが、匋冥の過去は、すべて束縛を逃れるための行動であり、現在の「太陽圏の影の支配者」という地位もその課程で獲得したものといえます。「不羈」-匋冥を一言で語るならこの一言でしょう。

 匋冥は、「海賊版」で自分を操ろうとする恐るべき存在を知り、これを粉砕するために行動します。その過程で助けを求めてきたのがランサス星系の王女付首席女官シャルファフィン・シャルファフィア(長いので以後「シャル」と呼びます)です。ランサス星系人は血が青いため、ガミラス星人のような顔色(それほど青くはないけど)をしていますが、ヒューマノイド型の生命はみんな魅了されてしまうほどの美貌を持っています。

 匋冥もですが、シャルの造形がまた素晴らしいです。圧倒的な美人でありながら、決して性を売り物にしません。というか、売り物になるのだという認識がそもそもないのかもしれませんし、信じられないことに自分が美人だという自覚もないのかも知れません。母親と二代に亘って王宮に仕え、母は現女王を護って死亡し、自信は王女を護るために死をも厭いません。そのシャルが、匋冥に失踪した王女の捜索を依頼する際に、対価として払えるのは自分の生命だけだと言って、依頼の遂行を要望して自らに銃口を向けて引き金を引くほどの決意を持っています。

 その後の冒険の過程で、匋冥はシャルに惹かれ、シャルもま匋冥に惹かれます。要するに二人の精神は完全に相思相愛になる訳ですが、何者にも縛られたくない匋冥は、自分の心がシャルに惹かれるが、「女に心を支配される」と感じて容認できず、シャルは自分自身よりも王家の安泰を第一にしているので、匋冥に惹かれながらも使命を忘れてついて行こうとはしません。

 結果、匋冥は自分のものになることを拒否するシャルを、涙を浮かべて射殺します。そしてその後、このような感慨を持ちます。

“-おれはシャルファフィンを射った。あのときの気持ちは母を射ったときとはちがう。射ったあと自分の気持ちがどうなるかを知りつつ、引金をひいたのだ。海賊の恥だ。引金があんなに重く感じられるとは。傷が痛む……この痛みはしかし肉体のものだろうか?シャルファフィンめ……死んでなおおれの心を支配するのか。逃れようがない。時間だけだろう、この痛みを薄れさせるのは。”

 ここに「香奈」型に対して「匋冥」型という心の形があるとすれば、シャルもまた「匋冥」型の心を持つ人です。二人の生き方は全く異なりますが、それはあえて魂の形を図形に例えるならば、台形と平行四辺形は形は大きく異なりますが、四角形であることには違いありません。共に決して三角形ではありえないのです。

 ここまで長々と説明してきて、さて自分の魂はどちらの形か?と自問するならば(決して二種類しかないという訳ではありませんが)、これはもう「匋冥」型としかいいようがありません。それはもちろん超人ならぬ身、あらゆる束縛から逃れることは最初からできっこありませんが、束縛・支配・拘束・隷属に本能的に拒否反応を示すという点では匋冥にこそシンパシーを感じます。匋冥が海賊王になったのは、それだけの能力があったからということもありますが、私なんぞは嫌々でも受け入れている支配や束縛を、匋冥は自分が生きていくためには、それらを断ち切るしかなかったのだといえましょう。

 その生き様は、決して楽ではありません。というより、愛する者をこの手で殺さざるを得ないという苦痛に満ちたものだといえますが、それでも狼になりたい私は、匋冥にあこがれてしまう訳です。「この手の中に抱かれたものは すべて消えゆくさだめなのさ」などと第一シーズンのルパン三世のEDを口ずさんだりして。

 もっとも、本作の主要登場人物の多くは、ラテルもアプロも、やはり本質的に不羈の魂を持つ「匋冥」型のキャラだといえます。海賊と海賊課は対極的存在ですが、傍から見れば区別がつかないくらい似ているのかも知れませんね。

 という訳で、魂の形の話はこれにて一件落着です。同じ魂の形を持つ人々よ、生きづらい世の中ですが、なんとか生きていきましょう。

 なお、第二作「敵は海賊 猫たちの饗宴」はOVA化されていますが、そこに描かれるラテルやアプロや、ましてや匋冥は全然気に入らないキャラデザインなのであえて掲載しませんでした。シャルやメイシアが出てこなくて良かった…



魔法少女まどか☆マギカ考察:魔法少女そとの周辺

魔法少女達
 
 こんばんは。今夜は「私の奴隷になりなさい」紹介の流れで「敵は海賊・海賊版」を紹介しようと思ったのですが、ちょっと読み返しているつもりがぐんぐん引き込まれてしまったので、読了まで少々お待ちください。誰も待ってないか(笑)。

 そういう訳で今夜は、「魔法少女まどか☆マギカ」考察です。まどか達見滝原の魔法少女達についても個別に考察したいのですが、今回は魔法少女全般とその周辺の謎についてです。

(1) グリーフシードの処分方法は?

 ソウルジェムの穢れを除去するのに必須のグリーフシードですが、キュゥべえは穢れを溜め込むと魔女が孵化すると言って、回収しています。通常の魔法少女はキュゥべえに任せるとして、ほむらのようにキュゥべえと敵対する魔法少女はグリーフシードをどのように処分しているのでしょうか。

① 物理的に破壊
 グリーフシードの原型であるソウルジェムは、マミのマスケット銃、まどかの弓矢、ほむらの拳銃で破壊できることが劇中明らかになっています。グリーフシードも同様に破壊可能なら、キュゥべえに渡すまでもありません。

② 盾の中に仕舞う
 ほむら限定ですが、その他の武器類同様、盾の中にグリーフシードを仕舞っておけるかも知れません。もしかすると盾内では時間も停止しているかも。「穢れたグリーフシードは仕舞っちゃおうねえ」…“しまっちゃうおじさん”か、ほむらは(笑)

しまっちゃうおじさん

③ やはりキュゥべえに…
 村八分同様、普段は没交渉であっても、ことグリーフシードの処分となると双方の利害が一致するのでキュゥべえの回収に任せている。ほむらはキュゥべえを殺してますが(少なくとも2回以上)、それでもキュゥべえは懲りずにほむらの周辺に出没しているので、「せっかく来たんだから持って行ってよ」なんてちゃっかり頼んでたりして。

(2) 変身しないで使える魔法

 作中、変身しなくても魔法を使っているシーンがあります。

① 落下制御:マミさんが電灯から降りるのに使用(3話)
② 拘束魔法:マミさんがほむらを縛るのに使用(3話)
③ 物質の強化:杏子が双眼鏡を強化するのに使用(5話)
④ 武器の召還 :杏子が槍を出してキュゥべえに突きつける(8話)
⑤ 治癒:ほむらが視力改善(10話)。
⑥ テレパシー(各話)
⑦ 魔力探知(各話)

 これだけ使えると、むしろ変身しないと使えない魔法は一体なんなんだと言いたくなりますね。もしかすると変身の効果は防御力の強化程度しかないのかも。ほむらは変身しないと盾を装備しないので、彼女は盾から武器を出せないのかも知れませんね。

(3) 魔女になる原因
 ソウルジェムが真っ黒に穢れるとグリーフシードに変わり、そこから魔女が孵化します。ではなぜソウルジェムが穢れるのかといえば、魔力を使うからだと説明されていますが、さやかが魔女化する8話において、キュゥべえが興味深いことを言っています。

 「美樹さやかの消耗が予想以上に早い。魔力を使うだけでなく、彼女自身が呪いを生み始めた」

 つまり、魔力を使用すればソウルジェムが穢れるのはもとより、「呪いを生む」という行為でもソウルジェムが穢れるということになっているようです。では「呪いを生む」とは?これを説明しているらしのは、9話のキュゥべえの「まどか言葉責め」シーンです。

 「君たちの魂は、エントロピーを覆す、エネルギー源たりうるんだよ。とりわけ最も効率がいいのは、第二次性徴期の少女の、希望と絶望の相転移だ。ソウルジェムになった君たちの魂は、燃え尽きてグリーフシードへと変わるその瞬間に、膨大なエネルギーを発生させる」

また、2話では

 「願いから産まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから産まれた存在なんだ。魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を蒔き散らす」

と言っています。つまり、希望を抱いて魔法少女になったのに、絶望を感じるようになるということ自体が、魔女への道になるものだと思われます。「呪いを生む」とは、魔法少女になったことを後悔し、希望を失っていくという負の感情を表しているのでしょう。そして絶望に満たされた瞬間に魔女になると。

(4) 魔女になるまでの時間

 さやかは魔女になる前に、杏子とかなりの会話を行っています(8話)。まどかについては、ワルプルギスの夜を倒すや否や魔女になったかのような描写があるほか、ほむらと会話をして、魔女になる前にソウルジェムを砕くよう頼んでいる描写もあります(共に10話)。この差はどこに由来するのでしょうか。

 10話で、魔女化したまどかを見ながら、キュゥべえはほむらにこう言っています。

 「彼女は最強の魔法少女として、最大の敵を倒してしまったんだ。もちろん後は、最悪の魔女になるしかない。」

 この時のまどかは、ほむらがワルプルギスの夜に負けそうなのを見て契約し、ワルプルギスの夜を一撃で倒したようですが、問答無用で魔女になってしまったようです。この発言では、どうしてまどかが即効魔女化するのかの説明になっていません。あまりにも強力な魔法攻撃は、ソウルジェムのキャパシティーを超えてしまい、一気に真っ黒に穢れてしまうのでしょうか。

 その前の時間線では、ほむらとまどかでワルプルギスの夜を倒したものの、二人とも倒れ伏し、魔女になるのを待つばかりとなっていますが、結構会話をする時間が残っていました。どのような戦いぶりだったのかは全く描かれていませんが、例えば二人で協力しながらちまちまとダメージを与えた上で倒したような場合は、魔女化に時間がかかるのでしょうか。そういえばさやかも特別な必殺技というのは使っていませんでした。

 また、まどかは魔女化の兆しを見せると苦しみ出しますが、これはさやかには見られなかった現象です。なぜまどかは魔女化の際に苦しんだのか、これは全くの謎ですが、別の時間線では魔女化システムそのものを破壊する女神になりうる存在なのに、この世界では逆に魔女になってしまう、ということへの「抵抗」とか「拒否反応」のようなものが働くのでしょうか。

(5) まどかが救済した魔法少女達

 12話に登場した、まどかが救って回った魔法少女達を考察してみます。

① チベット風魔法少女

チベット風魔法少女

 少女の周囲にはカラフルな5色の旗があり、チベット仏教寺院でよく見られる「タルチョ」と思われます。また、少女の服装はチベットの民族衣装と思われます。右手に数珠を持っており、チベット仏教徒と見られます。

② サバンナ風魔法少女

ステップ風魔法少女

 アフリカ系でしょうか。黒褐色、赤毛の少女で金飾の首輪をしています。ソウルジェムは二の腕の金腕輪に配されているようです。

③ バイキング風魔法少女

バイキング風魔法少女

 波打ち際に倒れています。折れた斧と双角の兜からバイキングが連想されます。 ソウルジェムは額についています。

④ 熊耳風魔法少女

熊耳未来風魔法少女

 クマ耳を頭部につけ、熊のぬいぐるみを抱えています。周囲が明らかに未来都市の描写となっているため、未来の魔法少女であると思われます。

⑤ お姫様風魔法少女

お姫様風魔法少女

 火山で倒れています。服装がお姫様風で、胸にソウルジェムがあります。時代とかはちょっと不明ですね。

⑥ 中東風魔法少女

中東風魔法少女

  荒廃した市街地の戦場にいます。背景に見えるのは大砲の砲身でしょうか。紺色のヒジャーブに白の胴着、カーキ色のズボンを着ており、イスラム圏、おそらく中東地域で実際に生じている戦争・内戦がモチーフになっていると思われます。時代は現代ということになるでしょうか。

⑦ 邪馬台国風魔法少女

台与風魔法少女

 炎の中にいます。白いハチマキに巫女風の衣装を着ています。11話でキュゥべえがまどかを再度言葉責めしていますが、「中には、歴史に転機をもたらし、社会を新しいステージへと導いた娘もいた」と説明する際に、イメージとしてクレオパトラ、卑弥呼、ジャンヌ・ダルクといった歴史上の人物の姿が登場しているので、卑弥呼ではないかと思われます。ただし、卑弥呼は70歳位まで生きていた可能性があるので、それでは魔法BBAになってしまう(笑)。その後継者である台与なのかも知れません。

⑧ エジプト風魔法少女

クレオパトラ風魔法少女

 金の冠に金の首胸飾、セパレートの白布衣装。これは明らかにクレオパトラでしょう。クレオパトラも40歳位まで生存しているのでかなりのBBAになってますが、美しさは健在だったのでしょう。ある意味美魔女という魔女になったとも…

⑨ 火刑魔法少女

ジャンヌダルク風魔法少女

 まさに火刑にされる直前。ベリーショート(切られた?)で木に縛り付けられて、足元には薪がいっぱい。明らかにジャンヌ・ダルクでしょう。

⑩ 貨物車の魔法少女

アンネ・フランク風魔法少女

 画面奥に軍人とおぼしき人物が2人。おそらくは隠れ家を発見されて収容所に移送されるアンネ・フランクの姿ではないかと思われます。

(6) 魔法少女のシルエット

魔法少女達のシルエット

 中央の5人は見滝原の5人娘ですが、その周囲にもずらりの魔法少女が。これまで倒してきた魔女達の、魔法少女時代の姿なのでしょうか。マミの左隣には「侵略!イカ娘」がいるとの指摘も(笑)。
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