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「秒速5センチメートル」二次創作“トゥルー・エンド”:距離に負けない想い(第3回)

待ってる明里のもとに彼氏が来た

 台風一過で今日はやたら暑かったですね。

 私事ですが、明日は初めての経験をします。いい年しても初めてというのは緊張するものです。

 私自身の「男の戦い」やってみせます。どうか完遂し切る勇気を下さい。「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」帝王じゃないけど。

 それはさておき、二次創作小説の最終回です。「秒速5センチメートル」はとても素晴らしい作品ですが、ややきになるのが、「二人ともちょっと老成しすぎてない?」というところです。二人ともやたら諦めがいいんですよね。手のかからない子達というか。

 でももっとワガママというか、自己中なところがあるのが若さっものじゃないかと思うんですよ。そこで、「運命に抗う貴樹」(或いは「足搔く者・貴樹」)を書いてみたい、そしてそんな貴樹に応えてくれる明里を描きたいというのが拙作のコンセプトです。

 それでは「距離に負けない想い」(貴樹・明里トゥルー・エンド)第3回をどうぞ。


Part3 Crossing The Railway Track Together (TOKYO-SANGUBASI)

明里の左手
「さあ、桜子。有希子。出発するよ。」

「はーい。」

「待ってー、パパ。」

 昼食が入った大きなバックは肩に。両手は娘たちに取られて。僕は明里に声をかける。

「先に歩いてるからね。戸締りよろしく。」

 奥から聞こえる「はーい」という明るい声を背に、僕はまだ幼い娘達と歩き始める。
桜の花びらが手に

「咲いてるといいね、パパ。」

 桜子が両手で握った僕の左手をぶんぶんと振る。

「一杯咲いてるよ。桜が満開だ。」

「えー、桜が満開―?雪はー?雪はー?」

 僕の右手を負けずに振り回す有希子。

「うーん…もうすっかり春だからね。今日は桜だけかな。」

「えっへへへ。」

 桜子がなぜか自慢げに胸を張る。

「ずるーい、お姉ちゃんばっかり。」

 嬉しそうな姉と泣きそうな妹を交互に見やりながら、僕は話しかける。

「いやいや、ずるくないよ。みんなで一緒に見るんだから。有希子も、桜子も、ママも、パパもね。」

 軽やかな靴音が背後から近づいてくる。細みの身体のままの僕の愛しい人。

「それにほら、あの桜の花びら……ねぇ、なんだか、まるで雪みたいじゃない?」
笑顔の明里

「あ、ママー。」

「遅いよー、ママ。」

 僕達三人は一斉に振りむいて明里を迎える。

「はいはい。ごめんね……ホントにいい天気。」

「うん。絶好の花見日和だね。」

 明里と微笑みを交わす。幸せに満ち足りた笑顔。

「ねー、線路だよ。」

「せんろ、せんろー。」

 娘たちが小田急線の線路を指さす。

「お花いっぱいー。」

 桜子が言うとおり、線路を亘っていく春風に無数の桜の花が舞っている。

「ここでお花見るの?」

「見るのー?」

 無邪気な娘たちの問いかけに明里が優しく答える。

「もうちょっと先よ。線路を渡って、坂を昇ってからね。」

 娘達と荷物で一杯の僕。軽装の明里は僕をちらりと見て笑う。

「モテモテね、パパ。」

「これがホントのもてる男、なんて。いつまでかなあ。すぐに『お父さんとは歩きたくない!』なんて言われちゃったりして。ははは。」

 僕は勝手に想像して一人で少しへこむ。

「桜子、パパ好きだよー!」

「ゆっこも好きー!!」

 桜子と有希子が大きな声を上げる。

「おお、愛しの娘達よー。パパも桜子と有希子が大好きだよ。」

「わーい!!」

 歓声を上げる娘達とくすくす笑う明里。気を取り直した僕はみんなと一緒に線路にさしかかる。

「……」

 ふと明里から無言のプレッシャーを感じる。

「な、何?どうしたの?」

「別にー。」

 つんと顔を逸らす明里。

「ただ…私の手がさびしいから。どこか捕まるとこがないかしらって。」

「あははは…」
 
 苦笑して右腕を示す。

「ここなら何とか……駄目?」

 わざとらしく一層顔を逸らし、ご機嫌斜めな振りをしながら、明里は僕の右腕を抱える。
彼氏の傍らの明里

「仕方ないなあ。可愛い娘達に免じて今日はここで我慢しましょう。」

 偉そうに言う明里。僕としばらく顔を見合わせたあと、にこりと笑う。

「この子たちも好きな男の子ができて、いずれ離れていくわ。その時には…貴樹君はまた私の…」

「ああ、おじさんの僕でも良かったら。」

「平気よ。その時は私もおばさんだもの。」

 ぷっと同時に噴き出す二人。はらはらと絶え間なく舞い落ちる桜の花びら。僕達は線路を越えて行く。同じ方向に向かって。ずっと一緒に。

「…あの時さ。」

「え?」

 もの問い顔の明里に僕は語りかける。

「『来年も一緒に桜、見れるといいね』って、明里が言ったときさ。僕は明里と桜が見られなくなるなんて、思ってもいなかったよ。」

「私も…ずっと見れるんだって信じてた。」

「色々あったよね…あれから。こうして明里と、この子たちと、同じ桜が見れて…僕は本当に幸せ者だよ。」

 僕は明里に笑顔を向ける。でも明里は真剣な顔で僕を見つめている。
桜の花びらと明里

「どうしたの?」

「あなたが…あなたが私に逢いに来てくれて。あんなに遠くから逢いに来てくれて。それで、私はこうしていられるの。本当に良かった…。」

 明里の瞳が潤む。頬を一筋流れる涙。

「い、いや…明里こそ、種子島に来てくれたじゃない。あの時の嬉しさは忘れないよ。きっといつまでも。」

 僕にも明里の感動は伝わってきて、つい目が潤んでしまう。周囲の風景がぼやける。

「貴樹君と私に、距離に負けない勇気があって…本当に良かった。だって私…こんなに…こんなに幸せ。」

 両目からあふれる涙をぬぐおうともせずに、明里が囁く。

「あー、ママ泣いてるのー!?」

「パパ、ママを泣かせちゃ、めっ!」

 目ざとく明里の涙を見て騒ぎ出す娘達。

「違うのよ。パパは悪くないのよ。ママも平気だから、ね?」

 慌ててなだめる明里。

「さあさあ、これから坂を昇るよ。来週から桜子が通う小学校があるよ。」

 僕は娘達の気をそらそうと話題を変えてみる。

「わーい!桜子、早く学校行きたいー!」

「ゆっこもー!」

 僕の両手を離して、桜子と有希子が坂を駆けあがっていく。

「ちょ、ちょっと待って、二人とも。危ないわよー。」

 母親の顔に戻った明里が娘達を追いかけていく。苦笑した僕は少しだけ立ち止まって線路を振り返る。

 一瞬、線路の向こうにピンク色の傘を開いてくるりと身体を回す女の子の姿が見えた。
来年も一緒に桜見れるといいね

“貴樹君、来年も一緒に桜、見れるといいね。”

 声が聞こえる。

「…見られるよ、桜。ずっと、一緒にね。」

 僕は笑顔で少女に優しく話しかける。女の子はにっこりと笑って、静かに消えた。遠くから明里達が僕を呼ぶ声が聞こえる。

「…じゃあね。」

 踵を返した僕は、笑顔のまま歩を速めて坂道を昇っていく。
ラストシーンの貴樹

 幸せな一家が通り過ぎた後の踏切は、ほかに通る人もなく、明るい日差しの中、ただ桜の花びらだけが舞い踊っていた。

(第3話終了)

※ 娘達の名前は「秒速」のイメージである桜と雪から取っています。桜子は杉本桜子のイメージです。え?知りませんか?「同級生2」というゲームのキャラクターでして、こういう子です。
杉本桜子

 ゲームでは長期入院中で儚げな子ですが、退院後の健康を回復した彼女のイメージで。
 
 有希子は雪子ではあまりにもモロだということで、「岡田有希子」のイメージで。
岡田有希子

 もちろん自殺なんか考えていない頃のイメージで。

 もっとも二人とも小学校前の「女児」なので、将来像を示す意味はあまりないんですが(笑)。貴樹・明里はなにげにかなりの美男美女カップルなので、子供達も当然可愛いはずだと思います。

 ということで、自称“トゥルーエンド”はこれにて終了です。お読みいただきまして本当にありがとうございました。感想などいただける大変嬉しいです。



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