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「秒速5センチメートル」二次創作“トゥルー・エンド”:距離に負けない想い(第2回)

種子島タイトル

 今日は台風列島直撃で参りましたね。皆さんご無事でしょうか。私はなんとか帰り着きました。

 そういえば、昨日からカレンダーをプラグインしてみました。前々から入れたいと思っていたのですが、どうやればいいのか判らなくて…。ブログ初心者なのでその他にもいろいろと不手際があろうかと思いますが、どうか生温かい目で見守っていただければ。

 今日で40回目。ラジオ体操なら皆勤賞ものなんですがね。それでは今夜も一人羞恥プレイともいわれる拙作を晒させていただきます。

 「距離に負けない想い」(貴樹・明里トゥルー・エンド)第2回


Part2 Standing at Dreaming glass hill Together (TANEGASHIMA)

 新学期が始まってすぐ、ポストに明里からの手紙が届いた。貴樹は急いで取り出すと自室に向かう。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 『遠野貴樹様 お元気ですか。逢いに来てくれて本当にありがとう。うれしかったです。高校生になった貴樹君が見られて、本当に良かった。私の記憶の中の貴樹君は、ずっと中学生のままだったから……』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 果てしなく広がる蒼穹。その北にぽつりと点のような機影が浮かぶと、みるみる大きくなっていった。やがて双発のプロペラ機に姿を変えたそれは、ジェット機よりも遥かに優雅に、ゆっくりと滑走路に舞い降りた。

 飛行機を降りた明里は手荷物を持って空港の出口に向かう。細くすらりと伸びた身体にまとう白いワンピースが可憐な小鳥を思わせる。

「明里!」

 高校の制服の白い半袖ワイシャツ姿の貴樹が手を激しく振る。明里がそちらに向かおうとするよりも素早く駆け寄り、荷物を奪い取るように持つ。

「ありがとう、貴樹君。元気だった?」

「本当に…本当に来たんだね、明里。まだ信じられないよ。」

 貴樹は眩しそうに明里を見つめると、目をしばたかせた。

「今日は部活だったの?」

 いたずらっぽい光を浮かべた瞳で明里が尋ねる。

「うん、夏季練習。終わってから急いで来たんだ。」

 貴樹は明里を促して空港を出る。扉を抜けると夏の強い日差しと暑さが二人に押し寄せてきた。

「ほら。こっちはすごき暑いだろう?」

「本当。でも東京とは違う、気持のいい暑さね。貴樹君はスクーターで来たの?」

「うん。でもカブは二人乗りできないんだ。とりあえず明里はタクシーに乗って。ホテルでまた合流しようよ。」

 貴樹はタクシー乗り場に向かい、運転手に行き先を行って明里を託すと、カブを置いた駐輪場に走った。
種子島

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 『……私も、貴樹君と同じです。あれから貯金していました。子供の頃からの貯金も合わせて、お小遣い目当てに親戚回りまでしちゃいました。本当、現金な子ですね。でも、どうしても貴樹君の住む島に行ってみたいです。』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 夕凪の海岸。西日を浴びながら砂浜を歩く二人の影が長い尾をひく。

「素敵なところね。綺麗な海が見放題。」

「当たり前の風景だと思ってたけど…うん、そうだね。明里の言うとおり綺麗だね。」

 改めて周囲を見渡し、驚いたような表情を浮かべる貴樹。ふっと微笑む明里。視線を貴樹の顔から空に転じる。

「こんな遅い時間なのに。陽、まだ高いね。」

 鮮やかな花の模様が入ったピンクの水着を着た明里が、背を伸ばして真上を見上げ、大きく伸びをする。輝くような細く白い腕が一杯に伸びる。

「ここは岩舟からずっと西だからね。それに夏だし。」
渚の二人

 明里の綺麗な腋が視界に入って、思わずどぎまぎした貴樹が慌てて視線を逸らす。

「この島からロケットが飛び立つの?」

「うん。南に発射場があるんだ。今度は来年の秋頃かな。」

「そう。一度見てみたいな。…あ、一番星。」

 ようやく黄昏始めた西の空に、金色の星が輝く。

「金星だね。…ね、ねえ、明里。」

 改まった調子で貴樹が明里に向かい合う。

「本当に…本当に来てくれて、ありがとう。とても嬉しいよ。」

「私も嬉しい。貴樹君のところに来られて良かった…そうだ、言いたいことがあるって言ったの、覚えてる?」

「もちろん。4か月もお預けだよ。犬なら涎がだらだらだよ。」

 少し不満そうな貴樹の口調。ご飯を前にした犬の真似。明里は、貴樹の目の前にご飯を置くような素振りをして、少し噴き出しながら話を続ける。

「あの日…あの日ね、駅で貴樹君を待ちながら、手紙を書いたの。お別れの時に貴樹君に渡そうと思って。」

「そうなんだ。でも…」

「うん。渡さなかった。ううん、渡せなかったの。ごめんなさい。」

 うつむく明里。貴樹が両手を胸前で振る。

「いや、謝ることなんかないよ。僕も失くしていたし。それに…」

 不意に遠くを見つめるような貴樹の瞳。

「気持ちが変わったから。もし持っていても、渡さなかった。」

 明里が顔を上げる。

「うん。私の手紙も遠野君と同じだったみたい。本当は嫌だけど、もう逢えないから…さよならっていう。」

明里の瞳が黄昏を映して、金色に輝く。

「でも、少しだけでも想いを伝えなきゃって思って。それで『貴樹君は、きっとこの先は大丈夫だと
思う!絶対!』なんて言っちゃったの…」

「うん…。明里の方が心細かっただろうに。心配してくれてありがとう。」

「ううん、違う。違うのよ!」

 激しくかぶりを振る明里。肩が震える。嗚咽をこらえる明里。

「大丈夫じゃないのは…大丈夫じゃなきゃいけないのは、私だったの。貴樹君に手紙を出し始めたのも、学校が辛くて貴樹君にすがりたかったから。でも…でもね。」

 涙に濡れた明里の瞳。その表情が纏う思いがけない色香にうろたえる貴樹。

「もう…もう私は貴樹君なしで頑張らなきゃいけないって、決心したの。だから、『引っ越し間際まで心配かけてごめんなさい。私はもう平気だから気にしないで。貴樹君は貴樹君の心配だけしてね。』って言いたかったの。」

 うつむいて身体を震わせる明里。貴樹は静かに明里の身体を抱きしめる。触れ合う素肌が熱い。

「明里……僕は、全然大丈夫じゃなかったよ。あの日…あの時から。明里のことが忘れられなくて。引っ越してからも明里のことばかり考えてた。逢えないのがこんなに辛いなんて知らなかった。それで…」

 明里の身体を抱きしめたまま、耳元に囁く貴樹。

「一生懸命お金を貯めて、思い切って明里のところに行ったんだ。本当は怖かったよ。もう明里には恋人がいるんじゃないかとか、僕のことなんかもう忘れたんじゃないかって、不安ばかりだった。」
種子島2

 閉じた明里の目から涙がこぼれる。

「貴樹君。逢いに来てくれて……本当に嬉しかった。もし逢えなかったら…私…きっと…二人の距離にくじけてたと思う。」

「ああ…すっかり大人びた明里と再会して思った。もう離しちゃだめだ、離したら明里はどこかに行ってしまうって。勇気を出して、本当に良かったよ。」

 明里を抱きしめる貴樹の腕に一層力がこもる。少しきつかったが、明里にとってはむしろ快い感覚だった。目を閉じたままの明里は、流れる涙もそのままに、貴樹の囁きに頷き続けていたが、やがて身体を離し、貴樹と真正面に向き合うと、決意を込めて言った。

「私も、けじめをつけるね。聞いて、貴樹君。……好きです、貴樹君。ずっと前から。愛しています、貴樹君。これからもずっと…ずっと愛しています。」

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

『……ねえ、貴樹君。夏休みに逢いに行っていいですか?この前言えなかったことを、私もどうしても伝えたいです。貴樹君が私にしてくれたように、私も貴樹君を訪ねて。私も越えたいの。二人の距離を。』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 不思議な予感に目が覚める。まだ夜明け前だった。明里はベッドを静かに出ると、身支度を済ませ、そっとホテルを出た。ロビーにもフロントにも誰もいない。暗いアプローチを抜け、車道に出ると端近くを歩いていく。しばらく歩くと、道はやがて小高い丘の麓を通った。なだらかな丘の陰に、一台のカブが止まっている。明里の予感は確信に変わる。
夜明けをみつめる二人

 明里はゆっくりと丘を昇る。急ぐことはない。彼は必ずそこにいる。昇り切るった先、丘の頂上には貴樹が座っていた。貴樹は明里に気づくと、驚きもせずに穏やかな視線を向ける。

「……明里。来てくれたんだね。」

「貴樹君……私が来るの、知ってたの?」

 貴樹が苦笑して首を振る。

「まさか。でも何となく、予感がしたんだ。ここに来れば明里に逢えるような。ここね、時々来るんだ。夢に出てくる場所に似ているから。明里、こっちにおいでよ。」

 明里がそばに寄ると、貴樹はハンカチを広げて明里を座らせた。

「夢に出てくる、場所?」

 無邪気に問いかける明里。笑顔で優しく答える貴樹。

「うん。こっちに来てから時々見る夢。前に話したよね。地球じゃない星の草原で、明里らしい女の子と日の出を待っているっていう夢。ここは、とっても雰囲気が似ているんだ。」

 貴樹は立ち上がる。夜明け前の暗闇の中なのに、明里を見つめる貴樹の視線がとても優しいのが判った。

「前にも言ったけど、春に明里に逢いに行くって決めてから、夢は変わった。彼女は立ち上がって僕と一緒に朝日を浴びた。顔も見えるようになってはっきりとわかった。」

 その言葉につられるように、明里がゆっくりと立ち上がり、貴樹と向かい合う。その瞬間、海から朝日の先端が昇り始め、二人の顔を照らす。

「その女の子は明里だった。今、僕の目の前にいる明里そのものだった。」

「正夢…なのかな。私で良かった。」
朝日を浴びる明里

 恥ずかしげに微笑む明里。二人は見つめていた朝日から顔をそらし、同時に顔を向け合うと、微笑んだまま自然に近づく。寄り添い、軽く抱き合いながら、ゆっくりと唇を重ねていく。ますます輝きを強める朝日。涼しい朝風の中で抱き締め合う恋人達の時間。長い口づけの後、照れてややそっぽを向いた貴樹が決然とした口調で言う。

「明里。僕は東京の大学を受験する。再来年の春には東京に行くつもりだ。それまで……」

「私、待ってる。貴樹君を。私も東京の大学に行くわ。再来年の春には……」

「うん。二人で、またあの踏切を渡って桜を見よう。」

「あの踏切…。6年生の春に、『来年も一緒に桜、見れるといいね。』って言ったのに、叶わなかったね。」

「ああ…7年越しになったけど…これから叶えよう。必ず、必ず明里と一緒に見るよ。あの桜を。」

 二人はもう一度、強く抱擁しあった。

(第二回終了)

※ 余白の独り言
 夜明けの二人は、第二話「コスモナウト」にしばしば描かれる「貴樹の夢」の情景が正夢になったものと思っていただければと思います。目の前に巨大な惑星はありませんけど(笑)。あれがあるのでどこか異星の光景なんだなと思いますけど、一体どこなんでしょうね。シリウス星系第4惑星「アガルタ」(「ほしのこえ」に登場)とかね(笑)。
ロケットが分かつ明暗


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