強く儚い者たち:Coccoの誘惑か、忠告か

6月になりましたね。夏も近いということで、日本航空のハワイ・キャンペーンのCMソングになったこの歌を取り上げたいと思います。まあハワイは常夏なんですけどね。
強く儚い者たちは、1997年11月に発売されたCoccoのメジャー2枚目のシングルです。ですが…誠に残念ながら当時私はこの歌を聞いた記憶が全然ないんです。うーむ、なんでだろう。あ、あれか。真に護身が完成すればそもそもを危険に近づけないという渋川剛気先生の……って、いやいや合気柔術は完成させていませんよ。
そういう訳(?)で、この歌を聞いたのはわりと最近…っていうか、ずばり今年に入ってからなんですが、その癒し系のメロディーとは裏腹のダークな歌詞にマイッチングマチコ先生ですよ。
歌は、故郷に大切な恋人を残して苦難の果てに宝島に辿り着いた船乗りを魔女だか妖精だか魔性の女だかが誘惑しているような内容です。
繰り返し強調される「飛魚のアーチ」は何を意味しているのでしょうか。愚考するに、知らず知らずに、あるいは必然的に越えてしまった、後戻りのできない選択でしょうか。
例えば卒業とか、入学とか、転校とか、就職とか、結婚とか。我々の人生には常に何らかの選択を迫られる場面があります。その時我々は何かを得、何かを選ぶ訳ですが、それはとりもなおさず何かを捨て、何かを諦めるということです。そうした選択と放棄の繰り返しの中で、我々の心は以前と同じままでいられるでしょうか?いいえ、好むと好まざるとに関わらず、人の心は変わっていくのです。
特に、何度も愛を確かめ合って信頼して旅立ってきたにも関わらず、「だけど 飛魚のアーチをくぐって 宝島に着いた頃 あなたのお姫様は 誰かと腰を振ってるわ」と歌うフレーズは強烈です。NTRだNTRだ!そしてこれを「人は強いものよ とても強いものよ」と言ってしまうとは!「お姫様」の環境の変化への対応を称えているかのようです。
さて、この歌は「昔のことなど忘れて私と暮らしましょう」という誘惑の歌なのでしょうか。それとも真実を告げて目を覚まさせようとする忠告の歌なのでしょうか。
前者だとすると、誘惑に乗れば「宝島を目指して旅立った若者は、これまでの船乗りと同様、いくら待っても帰ってこなかった…」なんてナレーションとともに、夜の海原をじっと見つめる女の子の姿が浮かんできそうです。振り切って帰れば涙の再会と歓喜の抱擁が。
後者だとすると、それを信じで島に残る場合と、振り切って故郷に帰る場合の二通りがありそうです。島に残れば新たな生活が、故郷に帰れば極めて残酷な真実が待ち受けていることでしょう。
みなさんはどのような選択をしますか?
私は…宝島の女性と故郷に残してきた恋人を比較検討してですね…。
多分こんな外道にはこんな歌を歌ってくれる人はいないでしょうね。
この歌詞を作った時のCoccoはなんと20歳。弱冠20歳でなんというダークな詞を書くんだこの人は。人生を知りすぎてしまったかのような。人の倍の密度で生きてきたとでもいうのでしょうか。
そしてこの歌をキャンペーンソングにしたJALも凄い。宝島ってハワイのことですか?そしてアグネス・ラムが誘惑しに現れるのでしょうか(古い!)。少なくとも奥さんや恋人を残して旅立つことをためらわせる効果はあったので、カップル客は増えたかもしれませんが、見えないところで旅行自体をキャンセルするカップルもいたりして。
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