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ラブプラス:「恋愛成就」のその後を描く「バカップル」の日々

ラブプラス・パッケージ
 昨日新型PCが届いたので早速換装作業に入りました。データ引き継ぎもだいたい終わりまして、これからは習熟期間というところでしょうか。Windows7には「転送ツール」というのがついていて、データの引っ越しが楽にできるのですが、旧PCが容量の都合でデータを変な形で保存していたので、都合3回も転送ツールを使うという不便な目に遭いました。
VALUESTAR G タイプ N
 これが新型機なんですが、やはり新品はいいですね。モニターが17型から21.5型になり、HDDは160ギガバイトからなんと3テラバイトへ。テラですよ、テラ。CPUもAMDのTurion64×2からintel COREi7に。デュアルコアからクアッドコアへ。双発から四発にパワーアップです。まだ新品だからかもしれませんが、段違いのパワーを見せています。

 例えるなら、ビランビーからビアレスに乗り換えたような。
ビランビー
ビランビー
ビアレス
ビアレス

もっともビランビーも中古ですっかりドラムロ並になってましたけど。
ドラムロ
ドラムロ

 え?さっぱり判らない?ではこれならどうでしょうか。一式戦闘機「隼」から四式戦闘機「疾風」に乗り換えたような。
一式戦闘機隼
一式戦闘機「隼」
四式戦闘機疾風
四式戦闘機「疾風」

 大方のさっぱり判らないなあという声をよそに、土曜日恒例、ギャルゲー紹介いってみよー!
勉強中の3人娘

 今日取り上げるのは「ラブプラス」です。

 「ラブプラス」は、2009年9月3日にコナミデジタルエンタテインメントからニンテンドーDS向けに発売された恋愛シミュレーションゲームです。キャッチコピー「国民的G・F(ガールフレンド) デビュー!!」。その後発展強化型の「ラブプラス+」、3DS用の「NEWラブプラス」も出ていますが、私は一作目しかプレーしていないので、「ラブプラス」中心で語っていきます。
ヒロイントリオ
 これまでに紹介した「ときめきメモリアル」「ときめきメモリアル2」など、恋愛シミュレーションゲームの多くは、恋人になることがゲームの目的でした。ときメモシリーズでは、二人で海に行こうが、二人でスキーに行こうが、バレンタインデーに本命チョコをもらってホワイトデーにお返しをしようが、正月に女の子が振り袖を着て初詣に誘ってこようが、夏祭りに浴衣の女の子と出かけて花火を見つめようが、ゲームとしては卒業式の日に告白を
受けるまでは、つきあっているとは解釈されていないのです。

 そうか、だから何人とデートしても平気なのか!と思わず膝を打ちたくなるところですが、最近はそういう「ハーレムプレイ」を否定するようなゲームも出ているので要注意(「アマガミ」とかね)です。

 ラブプラスにももちろん出会って親しくなる課程(「友達パート」という)は存在します。が、百日以内に告白を受けると晴れて恋人同士となります(百人以内に告白を受けないとバッドエンド)。じゃあそこで終わりかというとさにあらず。ヒロインがプレイヤーの「彼女(恋人)」になってからが、本当のゲームの始まりなのです。従来の恋愛シミュレーションゲームに近い「友達パート」のクリア後に移行する「恋人パート」では、DS本体の内蔵
時計と連動して、現実の時間や季節に合わせたリアルタイムの「恋愛生活」が体験できます。タッチパネルやマイクなどの機能を活かし、デート中にスキンシップを取る・ヒロインに話しかける・キスをする等のコミュニケーション機能もあります。時間は流れますが、年はとらないので、永遠の高校生バカップルとなることができます。昔の漫画の「750ライダー」みたいですね。

 登場ヒロインはたったの3人。恋愛シミュレーションとしては記録的な少なさです。3人しかいないので全員紹介するのも簡単ですが、一応若い順に紹介すると、
長髪チャイナ凜子
 一年生の小早川凜子。CVは丹下桜。木之元さくらの成長後の姿か?図書委員でツンデレ。家庭が複雑(やもめの父が再婚して、後妻と義理の弟ができ、環境の変化に適応できない)なので家に帰りたがらず、深夜でもコンビニやゲーセンにいます。イメージは猫。
高嶺愛花1 
 二年生の高嶺愛花。CVは早見沙織。当時現役高校生でした。メインヒロイン格で、テニス部所属。医者の娘で「文武両道」なお嬢様。やや世間知らずでちょっと「察してちゃん」な面があります。いじめられている訳ではありませんが、まさしく「高嶺の花」と見られていて、周囲から浮いて孤立気味です。イメージはウサギ。
ファミレス寧々さん
 三年生の姉ヶ崎寧々。CVはあの皆口裕子。ファミレスでのアルバイト先で出会う「年上の人」。おっとりしてますが、しっかり者で店長以下店のみんなに頼りにされていますが、実はそれが少し重荷になっているようです。イメージは狸(笑)。いいのかそれで?

 「友達モード」ではこの3人と知り合い、一番仲良くなった子から告白を受けて「恋人モード」に突入します。「友達モード」ではバッティングとかしやきもちイベントも発生しますが、「恋人モード」に入るとほかの2人は二度と登場してこないので、選んだ1人と安心していちゃつくことができます。

やり取り次第では、彼女の髪の型・色、服装から性格すら「あなた好み」に変化していきます。まさしく「俺色に染めてやるぜ」的征服感を味わえるとゲームだといえましょう。しかし、金髪とかは校則的にどうなんだろうか?あと、長い髪を短くするのはすぐできますが、ショートからロングになるにはさすがに時間がかかるようです。
金髪愛花
 姉ヶ崎寧々役の皆口裕子さんによると、「声の収録には1年以上掛かった」「とにかくセリフの数が膨大」「一回4時間ほどの密度の濃い収録を12–13回ほど定期的に行った。週2回行ったこともある」とのいうことです。よくしゃべるもんなあ…
赤毛ショート寧々さん
 グラフィックはDSなので決してよいとはいえないのですが、終始くねくねとよく動くので、あまり気になりません。この動きが女の子っぽくて評判になりました。お見せできないのが残念ですが、Youtubeなのでいくらでも見られますので。

 3人しかいないので、恒例のベスト5もできないのですが、私が最初に告白されたのは寧々さんでした。何しろ皆口ボイスなもので(笑)。
ダーク寧々?
 それでしばらくバカップル生活をしていたのですが、そのうち他のゲームをしたくなるじゃないですか。それで外してしばらくして再開したら、その間放置していたことになっているので、恨み言のようなメールは来ているわ、学校で出会うと恨めしそうな顔で見られるわ、関係修復が大変でした(これは寧々さんだけではなく、3人ともそうなりますが)。また、何かというと年上であることを気にするような発言や「お姉さんが…」といった世話焼きな発言があるのですが、次第にそういう発言が重荷になってきて…。小さな出来事が積み重なって心が変わっていくなんて、本当の恋愛みたいだ。

 ちなみに寧々さんは本来女子大生としてデザインされたらしく、薄化粧をしています。原設定では年上大学生=寧々、同年高校生=愛花、年下中学生=凜子と、現在よりずっと年齢差があった模様です。そう考えれば寧々さんの年齢に関する発言もうなずけるなあ。
ツインテール愛花
 それで、改めて最初からプレイして、今度は愛花を選んだのですが、設定上ため年ということもあって、性格変更に成功した(注)こともあって、寧々さん以上に楽しくバカップル生活を送ることができました。それで思ったのは、「早見沙織すげー!」です。高校生なのにこの演技力かよ。「沙織…恐ろしい子!」その後の大活躍ぶりは皆さんご存じのとおりで、悠木碧(鹿目まどか役など)と並んで若手実力派声優として将来を嘱望されています。

 そういえば2人でラジオもやってますね。私は一人でやっている「早見沙織のふり~すたいる」をニコニコ動画で毎週聞いているのですが、本当にしゃべりが上手です。またゲストが来た際には、ちゃんと相手を立てることができるし、何より礼儀正しい。育ちがいいんでしょうねえ。そういう品格が私も欲しかった。
ツインテール凜子
 最後に凜子ですが、さくらがやさぐれたような声(というかさくらの面影があまりない)丹下さんの声がちょっと当て外れで、実はつきあったことがありません。ファンの方には申し訳ないけど、新作で「吉川蘭子」(仮名)という新キャラと交代してもショックを受けないという…
中の人たち
 「中の人」たち。左から丹下桜(小早川凜子役)、早見沙織(高嶺愛花役)、皆口裕子(姉ヶ崎寧々役) 

 これからプレイしてみるという人は、3DS用のNEWラブプラスがイベントも多く、グラフィックも向上しており、立体感もあって良いと思われます。撮影もできるそうです。

髪型変更
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私の奴隷になりなさい:生き方の相違について考えさせられる

私の奴隷になりなさい
 
あと半年後に買いたかったパソコンが届きました。ブログを更新したら早速データ移送とセットアップだ!明日のブログは新型機で…になっているといいのですが。

 それでは今日の記事です。まどマギ考察はちょっとお休み。最近読んだ本が、私にインパクトを与えたので。その内容がというより、「魂の形」とか「生き方の相違」というものをつくづく考えさせられたのですよ。

 その本、「私の奴隷になりなさい」は覆面作家サタミシュウの2005年4月発表の作品です。本名では多数の作品を発表済みだということで、一説には直木賞作家重松清という噂も(真偽のほどはさだかではありませんが)。

 あらすじは、というと
 「出版社に転職した僕は、先輩の香奈に一目惚れし、『落とそう』と決意する。だが、まったく振り向いてくれずに困惑していたところ、突然彼女から『今夜、セックスしましょう』と誘われ、一夜を過ごす。その後も奇妙な関係が続いていたある日、僕は彼女の自宅で不審なビデオを発見してしまう。そこには衝撃の秘密が映し出されていた―。男と女の新たな関係性を説いたSM青春小説の誕生」

ということなんですが、この作品、途中までと全部読んだ時とで印象ががらりと変わります。冒頭から120頁位までは、「僕」(氏名不詳)が香奈(結婚して1年たたないが、夫は大阪に単身赴任している美人妻)を口説こうとして、飲食に誘いつつも相手にされないで悶々としているところから、なぜか香奈の態度が一変して関係を持ち(それも極めて不可解な形で)、「僕」のアパートに香奈が来てくれたり、香奈のマンションに招かりした末に、香奈が夫の元に行っている間に「僕」は“禁断のビデオ”を見てしまう…という流れになっています。

 基本ここまでは「官能小説かよ?」と思うような描写が延々と続きます。ここまでで辟易して読むのを中断してしまう人もいるかも知れません。特にビデオの内容は、完全に「ご主人様」(氏名不詳)と香奈のハードなSMプレイなので。もちろん「ご主人様」は夫ではありません。

 しかし、その後、香奈が「ご主人様」に宛てたメール(パソコンに残っている)を読みだすと、そこに至る香奈の心境が事細かに描かれていて、ビデオだけを見ると、弱みでも握られた香奈が「ご主人様」に無理やりに色々なことをさせられているかのように見えますが、実際にはそうではなく、自ら進んで奴隷を志願していたことが明らかになってきます。

 そして、「僕」への香奈の態度の変化、「僕」と香奈の関係、「僕」がビデオやメールを見ることも、全て「ご主人様」の想定通りだったことが判明します。

 「僕」は香奈と相思相愛になれるかと思っていましたが、実際には香奈の心は完全に「ご主人様」のものになっていて、入り込む隙もないことを思い知らされ、なんとか香奈から離れよう、諦めようとしますが、それでもどうしても好きで好きで仕方がない。そんな折に香奈から連絡があり、指定された店に行くと、「ご主人様」と香奈が待っていた…

 そこで「ご主人様」は「僕」に「ご主人様と奴隷」の道について語り聞かせてくれるのです。まああまり詳細を書いては(もうかなり書いてしまっていますが)面白みを減らしてしまうので、ここははしょりますが、要するに香奈と「ご主人様」の関係は、一見不倫でSMなんですが、そうではない。香奈は自らの意志で奴隷になり、「ご主人様」の調教を受けることで一層いい女になり、夫との関係や職場での人間関係も良好になった―と「ご主人様」は言うのです。もちろん「ご主人様」も香奈を堪能しているのですが、それよりも、夫や職場の人間にばれないように、しかしいい方向に変わっていけるように細心の注意を払い、様々な言い訳を考えてこれを伝えて―という風に、大いに苦労しているらしいのです。

 要するに、不倫っちゃあ不倫だけど、これはいい不倫なんだ。なぜなら香奈は以前より幸せになり、夫もその恩恵を受けて幸せになっている。不倫だと気付かなければ不倫はないも同然である。そのための努力は完璧にしてきた、ということです。

 そして「ご主人様」は最後のセックスの後、一年に及んだ香奈との主従関係を清算し、(これも最初から想定済み)あっさりと去っていきます。きっとまた新たな奴隷を探すのでしょう。残された香奈と「僕」―奴隷だった香奈は「僕」にこう言います。「私の奴隷になりなさい」

 「僕」は香奈の奴隷となり、また1年経って捨てられ…ということで、冒頭の別れて6年後の思いもかけない再会にループする訳です。ラストまで読むと、解説でリリー・フランキーが言っているように、“爽やかな匂いのするSM小説”という感想を抱けるようになります。途中で読むのをやめると“いやらしいドSM小説”なのでこの差は大きいです。そして奴隷→ご主人様という連鎖も興味深いものがあります。「僕」は奴隷をした後、「ご主人様」にはなっていないかのようなニュアンスですが…

 こういう男女の関係性というのもあり、なんでしょうね。そういう属性を持った者同士であれば。作中、「ご主人様」は「奴隷になるということは自由を奪われるということではない。隷属というのは、他のものに対して寛容になれるということなのだよ」と言っており、この言葉は本作品のエピグラフとしても使用されています。多分古代から近代まで存在した奴隷制度の中で「奴隷」とされた人々が聞いたらただではすまないセリフですが、ここでの奴隷はSMプレイの中での奴隷限定なのでしょう。

 それを踏まえたうえで、あえて言いたいのですが、ご主人様―奴隷という関係性に安住できる人々がいるのだ、それは一面の真理として理解することが可能ですが、その一方で支配―被支配という関係自体を受け付けない人々もいるのだ、ということも真理なのです。

 これはもうどちらがいい悪いの問題ではなく、魂の形が違うとか、属性が違うという問題なのですが、私自身は「ご主人様」も「奴隷」も不要なので、この人たちの関係性には入っていけないなあという感慨を持ちました。それはまさに魚が陸に上がって陸の世界を垣間見ることは可能でも、永住することはできないように、鳥が水に潜って水中の世界を覗くことは可能でも、滞在し続けることはできなように、です。

 中島みゆきが「狼になりたい」という歌を歌っていますが、私も狼になりたい。実際にはなれないけどなってみたいと願う人たちというのは、この主従関係には入っていけない人たちではないかな、と思います。重ねて言いますが、どちらがいい悪いということでなしに(実際、歌詞の内容は全然かっこよくないというか、むしろ全く恰好良くない市井の人々を描いています)。

http://www.youtube.com/watch?v=1Qsq7EBlRB4

 じゃあどういう魂の形なんだということについては、近日中に別途書かせてもらおうとして、もう一つこの作品に、というよりは、この作品に登場する「ご主人様」に言いたいのは、「いい不倫」なんてただの詭弁じゃないのか、ということです。まあ後継者たる「僕」に言って聞かせている場面なので、ある程度は仕方ないのかも知れませんが。

 不倫をするな、SMプレイをするな―そんなことを言いたいわけではありません。両者合意の上ならどうとでもすればいいのですが、「俺のやっているのはいい不倫」という言い訳はいらないと思うのです。不幸になろうがどん底に堕ちようが、とにかくやりたいからやりました、と言う方が潔くていい。

 話が唐突に変わるようで申し訳ありませんが、関連はあるのでご容赦願います。昔―1980年代からバブル前の頃でしょうか―ど外道マンガ「THEレイプマン」というのがありました。興味がある人はググってもらえばいろいろ概要が判ると思いますが、要するにこの作品世界において、主人公がやっているのは「いいレイプ」だということになっています。例えば―
あまり載せたくないけど…
例1:将来を嘱望される女子マラソンランナーが標的。彼女は恋愛をして、トレーニングをさぼりがちに。事態を憂慮したコーチはレイプマンにレイプを依頼。「奮起を促すための、起死回生のカンフル・レイプ」をして欲しいと。そこでレイプマン、レース中の彼女を拉致し、いきなりレイプします。散々蹂躙したその上、「おまえはランナーじゃない!! さかりのついたメスだ!!」と言葉責め。これで彼女はカーッとなり(そらなるわ)、脱兎のごとくレースに復帰。「メスじゃないわよ!!ランナーよ!!」と怒りの激走を見せます。そしてそんな彼女の雄姿を見守るコーチ。人知れず教え子の復活を喜ぶ彼の目には光るものが。

例2:某企業の優秀なキャリアウーマンが標的。会社の幹部は彼女を海外に行かせて更なる修行を積ませたいが、彼女は結婚を希望。会社幹部、レイプマンにレイプを依頼。「彼女(あれ)にはもっと大きくなってもらいたい!男と対等に勝負するために女を捨ててもらった!」空を飛ぶジャンボを背景に、腰に手をあてての仁王立ちの会社幹部。いかにも「いいことした」って感じで御満悦。

 この作品、レイプの依頼は様々ですが、原則的に「あの女を滅茶苦茶にしてくれ」といった犯罪依頼はありません。ストーリー中に描かれる様々な問題を、レイプによってポジティブに解決していくというのを身上にしています。つまりレイプで幸せになるのです。

 この漫画が傍から見ればトンデモであることは一目瞭然ですが…私は本作の「ご主人様」に言いたい。さあ「ご主人様」、あなたのやっている不倫とかSMがポジティブな結果をもたらすものだというのならば、レイプマンのやってるレイプだってポジティブな結果をもたらしているんだから当然認めるんだろうな、と。あなたは様々な努力をしていると言うが、レイプマンだって努力しているぞ。

 さらに言いたい。そんな「おためごかし」は不要なんじゃないですか。美人な若妻を誘惑して、不倫とSMを楽しみました。そしていい加減なところで、後くされないように別れて、今度また別な女を見つけますよ、でいいじゃないですか、と。

 この「ご主人様」、どうもこういう反社会的活動の傍らで、通常の結婚生活も社会生活も維持しているようなのです。公序良俗に反することをしながら、社会秩序は守るというその姿勢―まさに
範馬勇次郎さんの名言
 ダークサイドに行くなら徹底して行きましょうよ。行くとこまで行って燃え尽きましょうよ。「愛の流刑地」の主人公の方が潔くないですかね。きっとこの「ご主人様」からすれば破滅主義は噴飯ものなんでしょうけど。そんな中途半端な態度で偉そうに御託を並べるなと言いたいです。

 太陽なんか眩しくって 闇のほうが無限です
 太陽なんか眩しくって 闇のほうがす・て・き

 (_゚∀゚)o彡°ケイオス!ケイオス!アイワナケイオス!
 燃えよ混沌 無敵です

 さあ全てをぶち壊して闇に沈んでいきましょうよ。出来ないのなら、いっぱしにダークぶるんじゃねえよ!!

 はあはあ…まあ、「ご主人様」は40歳程度ということで、25歳前の「僕」相手には結構押し出しが効いたようなんですが、私にはというところでした。まあ対象の読者が若いんでしょうね、きっと。
き…きかぬ きかぬのだ!!
 いささか筆が走り過ぎたような気もします。別にこの作品をけなしている訳ではないので悪しからず。生き方の違いというものが歴然としてあるんだ、ということがはっきりわかって良かったとも思います。どうしてこの本を読んだのか……それは……いずれわかるわ(byメーテル)

魔法少女まどか☆マギカ考察:魔法の使者・キュゥべえ(その2)

劇場版まど☆マギ
 
 はい今日もこんばんは。ちょっとご存知でした、奥様!まどマギ劇場版ですってよ!私は今日初めて知りましたよ。ネタとしてはあったけど、本当にやるんだ。しかし、見にいくことができるのでしょうか…映画館にはおっさんを完全にはじく結界ができてそう。二期もやってくれないかな~。まどマギポータブルで描いた「マミの魔女化」とか「杏子の魔女化」とか、禁断の「ほむらの魔女化」とかを描いて、彼女たちの堕ちていく様をねちっこく描いて下さいよ…くっくっく。そしてそのたびに怯えまくるまどか。

 まあそれはさておき、さっそく昨日の続きをいってみましょう。キュゥべえ考察のその2です

4.なぜ女の子を契約対象とするのか?
流し眼キュゥべえ
 これはキュゥべえ自身が9話で

 「君たちの魂は、エントロピーを覆す、エネルギー源たりうるんだよ」
 
 「とりわけ最も効率がいいのは、第二次性徴期の少女の、希望と絶望の相転移だ」

 「ソウルジェムになった君たちの魂は、燃え尽きてグリーフシードへと変わるその瞬間に、膨大なエネルギーを発生させる。それを回収するのが、僕たち、インキュベーターの役割だ」

 と明確に述べています。しかしそれだけではなく、「3.」で考察したように、キュゥべえ自身、嘘をつくことができないために、契約に関して知性の高い相手に追及されると、それが極めて不利なものであることを看破されかねないという弱点を抱えています。これをカバーするために、知識や経験の足りない、年端のいかない女の子を丸めこんで契約させているという面もあるのではないでしょうか。

 人間の感覚では、子供相手になんと卑劣で悪辣な契約を結んでいることか言えますが、何しろキュゥべえは異星人から派遣されているので、我々とは違った倫理観を持っていてもおかしくありません。子供であっても虚偽を挟まない契約は有効とか自己責任とかなんとか。

 同じように、あるいはもっと軽はずみな第二次性徴期の少年はなぜ扱わないのか…それは純粋に効率性の問題なのかも知れません(笑)。

 やたら夢見がちな20過ぎの女性でも、エネルギー源としては適切な気がします(ほら腐女子とか貴腐人とか)。しかし、それらの人々はおそらく人生経験を積んでいるので、契約には慎重となり、キュゥべえとしても騙しきれない場合が多いのでしょう。でも長い長い歴史の中にはいるかも知れませんね、「魔法熟女」とか「魔法老女」とかが。卑弥呼とかクレオパトラとかは怪しい?

 ちなみにスピンオフ作品「魔法少女おりこ☆マギカ」というマンガでは、千歳ゆまという明らかに10歳まで達していない女児とキュゥべえが契約しています。どうしたんだ、第二次性徴期の少女という話は(笑)。まあ派生作品だから大目にみましょう。
おりこ☆マギカ表紙
 手前がまゆです。奥に杏子とマミ。だいぶタッチが違ってますが。

 またコミックアンソロジーでは、夢見がちのいかず後家・早乙女先生と契約するという話も。この先生、キュゥべえの残骸を食べるというびっくり行為に出て(結構おいしいらしい)、頭からキュゥべえみたいな耳が生えてきてキュゥべえを焦らせていました。
早乙女和子先生

5.回収したグリーフシードはどうするのか?
 
 キュゥべえは、6話でさやかが使用して真っ黒になったグリーフシードを体内に回収しています。その際、
 「もう、危険だね。これ以上の穢れを吸ったら、魔女が孵化するかもしれない」
 「大丈夫、貸して」
 「これでもう安全だ」
 「これもまた、僕の役目の一つだからね」
と発言しています。これだけ聞くと、キュゥべえはグリーフシードを無害化処理でもしているかのようです。
グリーフシードを回収するキュゥべえ
 しかし、思い出して下さい。キュゥべえの正式名称はインキュベーター、つまり孵卵器です。それはもちろん、魔法少女を魔女に孵化させるというところから由来している名称だと思われますが、魔女に孵化するのは魔法少女だけではなく、穢れのたまったグリーフシードも魔女に孵化するわけです。とすると、「魔女の孵卵器」であるキュゥべえとしては、回収したグリーフシードもやはり魔女に孵化させているのではないでしょうか。

 もちろん、倒したはずの魔女がまた出てきたら不審に思われる(まあ一匹二匹位なら使い魔が成長したとかいえば取りつくろえますが)ので、違う地域とか違う国に持って行って使用するのではないでしょうか。キュゥべえは同時期に多数が活動しているらしいので、情報交換と同時に回収したグリーフシードも交換している可能性があります。
「ほい、これお菓子の魔女。結構強いからね、気をつけて」
「ありがとう。お返しに銀の魔女だよ」
「お、これ見滝原にはまだ出てないや。早速使わせてもらうよ」
なんて会話をキュゥべえ同士でしてたりして。

 グリーフシードはそれ自体卵のようなものなので、自律的に動き回るとは考えにくいのですが、3話では病院の壁にグリーフシード(かの「お菓子の魔女」ことシャルロットのものです)が突き刺さっています。そしてキュゥべえの
「グリーフシードだ!孵化しかかってる!」
「マズいよ、早く逃げないと!もうすぐ結界が出来上がる!」
というセリフ。どう考えても出来過ぎじゃないですか?それとも使い魔が運んで置いていくんでしょうかね。そんな気のきいたことする連中には見えませんが…

6.キュゥべえにとっての「期待される魔法少女像」は?
怯えるまどか
 まず、魔女に負ける魔法少女は駄目です。おそらくキュゥべえサイドも、契約に当たって女の子の願いを叶える際には、それなりの初期投資を行っているものと思われます。そのため、魔女になる前に魔法少女に死なれてしまっては、投資分の回収が不可能になってしまいます。そういう意味では巴マミは、キュゥべえにとっては失敗作ということに。

 強い魔法少女は強い魔女になるようです。これは、10話でワルプルギスの夜を倒したまどかが凶悪な魔女になった際、キュゥべえが「今のまどかなら、おそらく十日かそこいらで、この星を壊滅させてしまうんじゃないかな?」と言っていることからも伺われます。地球が壊滅したらもうエネルギー回収は不可能になるわけですが、キュゥべえ曰く「僕らのエネルギー回収ノルマは、おおむね達成できた」とのことなので、超強力な魔女が生まれる際に生じるエネルギーで、宇宙の延命は必要十分なだけ達成できるということなのでしょう。故に、超強力な魔女になりうる鹿目まどかこそ、キュゥべえの理想の魔法少女ということになります。そりゃストーカーのごとく付け狙うわけです。

 魔女を倒し続ける魔法少女。つまり生前の巴マミや佐倉杏子はどうでしょうか。なかなか魔女になってくれないので、エネルギー回収がうまくいきませんね。しかし、彼女らから回収するグリーフシードは別の場所で有効利用できるし、特に巴マミは新たな魔法少女を勧誘する際の広告塔としても有効なので、様子をみながら気長に魔女化を待つのが吉のようです。

 すぐに魔女化する魔法少女はどうでしょう。本作では美樹さやかが代表例です。魔女になってくれればエネルギーが回収できるので安直でいいですが、問題は回収量ですね。さやかの場合は背負う因果が大したことなさそうなので、さほどの量にはなっていない気が。まあ、質より量ということで、さやか型魔法少女も大量に生産すればキュゥべえ的にはペイするのかも知れませんね。叶える願い=初期投資の額も大したことない気がしますし。

7.なぜ弁解しに来た、キュゥべえ!?
 9話。さやかの魔女化に傷心のまどか。ベッドに体育座りしています。その窓に影絵のように浮かび上がるキュゥべえさんの姿。一連の問答の後、
ま:「そんな風に思ってるなら、やっぱりあなた、私たちの敵なんだね」
キ:「これでも弁解に来たつもりだったんだよ?君たちの犠牲が、どれだけ素晴らしい物をもたらすか、理解して貰いたかったんだが、どうやら無理みたいだね」
ま:「当たり前でしょ?」
キュゥべえの言葉責めを受けるまどか

という会話があります。キュゥべえ…お前は何万年も女の子を口説き倒してきたくせに、お前の仕事を理解してもらうことが不可能だっていうことをまだ認識していないのか?

 いやいやそんな訳がありません。断言します。キュゥべえは無駄だとわかっていてあえてやってます。何故?可愛い女の子を言葉責めにして喜んでいるのです。そう、キュゥべえはドSなんです。一方怯え顔がやたらとさまになるまどかには、Mのオーラが漂っています。まさに相性ばっちり。キュゥべえからすると、まどかは貴重なエネルギーの大鉱脈であるととともに、さいはての未開惑星で働くうさを晴らすためのスケープゴートでもあったんです。思春期の女の子を選んでいるのも、実はいじめて遊ぶためだったりして。もちろん正体がばれないうちは我慢して媚びを売ったりしているわけですが、それもストレスになっているので、発散は容赦なく(笑)。

おかずを貰うキュゥべえ

魔法少女まどか☆マギカ考察:魔法の使者・キュゥべえ(その1)

キュゥべえ
 昨日に続いて「魔法少女まどか☆マギカ」を取り上げます。一丁、私の好きな考察を始めたいと思うのですが、「秒速5センチメートル」みたいなストックがないので、不定期連載ということで。すいませんがご了承下さい。

 第一回目は、この作品を特徴付ける最たるキャラの一人、敏腕営業マンこと「キュゥべえ」です。

1.キュゥべえは何者か?

 キュゥべえ自身は9話で

「僕たちの文明は、知的生命体の感情を、エネルギーに変換するテクノロジーを発明した」

「ところが生憎、当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかった」

「そこで、この宇宙の様々な異種族を調査し、君たち人類を見出したんだ」

と発言しています。この発言からすると、異星の知的生命体、いわゆる「宇宙人」(いまさらこの言い回しはないか。異星人でいいですかね)ということになると思います。

 しかし、キュゥべえ自身が異星人なのか、異星人が使役するロボットであるとか、インターフェース(「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門ユキのような存在)のような存在であるのかははっきりとは分かりません。

 11話ではこんなことを言っています。

「僕たちはね、有史以前から君たちの文明に干渉してきた」

「僕たちの文明では、感情という現象は、極めて稀な精神疾患でしかなかった」

 これらの言い方を聞く限りは、キュゥべえ=文明の担い手=異星人という気がしますが…。しかし危険な未開の惑星での勤務、しかも数万年にも亘るミッションに、異星人そのものが就任するのでしょうか?そもそも成り手がいるのか?

 また、8話では鹿目まどかに対して巧妙な営業をかけ、もう一歩で契約というところで暁美ほむらに撃たれてますが、すぐに別のキュゥべえが出てきます。ここから地球で活動するキュゥべえは多数いて、しかも記憶を共有していることが判ります。
誰もが「ざまあ!」と歓声を上げたシーン
 まるでエヴァンゲリオンの綾波レイみたいですが、綾波は一体ずつしか活動しないのに対し、どうもキュゥべえは世界各地で同時に多数展開で活動している気配があります。この作品世界では、魔法少女はそれほど特別な存在ではなく、各市町村に1人はいるというほどにポピュラーな存在(とは少し言い過ぎでしょうか)なので、敏腕営業マンも各地で活動していないと維持は無理でしょう。
綾波のクローン
 ということで、私の結論としては、キュゥべえは宇宙延命のためのエネルギー回収を目的として地球に派遣されたシステム(インキュベーター・システムとでも名付けましょうか)の端末なのではないかと思います。どこかにターミナルがあって、全てのキュゥべえを操作し、入手した情報を共有させているのかも知れません。

2.キュゥべえはなぜ笑うのか?
笑うキュゥべえ
 感情を持ち合わせないといいながら、初期のキュゥべえはいかにも可愛いマスコットキャラを演じていますし、笑いもしています。

 これは、彼の言葉とは裏腹に実際には感情を有しているということなのでしょうか?
 私にはそうは思えません。これは、数万年に亘って第二次性徴期の少女を相手に悪辣な営業を展開してきたキュゥべえが、その過程で効果的だということで取得した、感情表現に似せた形態反射なのではないでしょうか。

 まだその胡散くさい正体がまどか達にも視聴者にも(キュゥべえ役の加藤英美里にさえ)知られていない1~3話において、キュゥべえは後から見れば張り倒したくなるほどの媚へつらいぶりを見せています。お弁当のおかずを貰ったり、風呂にはいったり。これは、セーラームーンのルナとか、CCさくらのケルベロスといった、いわゆる「魔法少女もの」につきもののお伴のマスコットキャラのアクションを模倣したものといえるでしょう。

 そもそもキュゥべえの形態自体が、女の子に取り入りやすい形と模索した果てのデザインではないかという思われます。数万年前、地球にやってきた頃のキュゥべえは今とは違う形をしていたのかも知れません。第二次性徴期の少女への接触を念頭に、経験の蓄積により現在のデザインに「進化」していったのではないでしょうか。案外魔法少女もののアニメを見て研究してたりして。

3.キュゥべえは常に真実を語るのか?

 キュゥべえが明確に虚偽を語っているというシーンは本編にはありません。しかし、本来まどか達が知っておくべきことでも、それがキュゥべえにとって不利になる(契約が困難になるなど)場合、キュゥべえは質問されないことには一切答えないという態度を取る場合があります。

 契約に関するキュゥべえの言動には次のようなものがあります。

 「君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする」(6話)
 
 「僕は魔法少女になってくれって、きちんとお願いしたはずだよ?実際の姿がどういうものか、説 明を省略したけれど」(7話)

 「訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね。事実、あのマ ミでさえ最後まで気づかなかった」(7話)

 「僕たちはあくまで君たちの合意を前提に契約しているんだよ?それだけでも充分に良心的なはずなんだが」(9話)

 「騙すという行為自体、僕たちには理解できない。認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は、他者を憎悪するんだよね」(9話)

 「君たち人類の価値基準こそ、僕らは理解に苦しむなあ」(9話)

 ここから見えてくるのは、
① キュゥべえは積極的に嘘をつくことはない。
② 訊ねられたことについては真実を答える
③ 契約上不利になることについては、訊かれない限り自発的には語らない。その反面、契約に有利になる場合、訊かれなくても語る場合もある
④ 相手が誤解をしている場合も、それが有利なら解消はしない。嘘はつかなくても、誤解を助長する可能性のあるような言い回しをすることはある

ということで、冷静かつ聡明な人物を相手にした場合、キュゥべえはその目的や意図を余すところなく答えてしまう可能性が高いと言えます。そしてそれは契約上極めて不利であることもキュゥべえ自身は痛感していると思われます。おそらく長い歴史の中で散々痛い目にあってきたことでしょう。

以下明日に続きます。
キュゥべえどアップ

コネクト(ClariS):OP詐欺?でも実は超名曲

コネクト
 
 今日も快適な一日。快適すぎて降りる駅を間違えて家に帰るのが遅くなってしまいました。
 節子それ気候のせいとちがう、ただのボケや!でもくじけずがんばります。

 今夜ご紹介するのは「魔法少女まどか☆マギカ」のOP,「コネクト」です。歌っているのは女子中学生ユニットClariSです。

 「魔法少女まどか☆マギカ」は昨年の第15回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞しているほか、数々の賞を受賞しています。特にニュータイプアニメアワードでは、作品賞(テレビ放送作品)、キャラクター賞(女性:暁美ほむら)(マスコット:キュゥべえ)、主演女優賞(悠木碧:鹿目まどか役)、助演女優賞(斎藤千和:暁美ほむら役)、主題歌賞(コネクト)、劇伴賞、監督賞、シナリオ賞、キャラクターデザイン賞、撮影賞、美術賞、色彩設定賞、エフェクト賞と、ほとんど全ての賞を独占しています。

 原作のないオリジナル作品であること、あっと驚く展開、可愛いキャラの凄惨な運命、提示した謎を全て説明して、広げた大風呂敷を見事に畳んでみせる終盤、そして悲哀と静寂に満ちたようなラスト-間違いなく昨年のNo.1アニメであり、ここ数年でも出色の出来といえるでしょう。私個人的にはエヴァンゲリオン以来の衝撃でした。

 で、素晴らしい作品を支えた主題歌が「コネクト」な訳ですが、OPアニメが実はとっても詐欺的でした。あれだけ見ていると、「ドジっ娘魔法少女まどかの失敗譚+仲間に支えれての成長物語」としか見れません。
コネクトOP1
猛犬に襲われるまどか
コネクトOP2
変身!セクシーまどか
コネクトOP3
やばいモノを召喚してしまったまどか。クトゥルー系?
コネクトOP4
キュゥべえもあきれ気味。マミとさやかはどういう顔をしているんでしょうか。ですがこれはPSPの「まどか☆マギカポータブル」で「パニエロケット」という技になっています。何気に高威力!
コネクトOP5
失敗ばかりでめげた表情のまどか。「CCさくら」の木之元さくらと比べて濃厚なダメダメ感が(笑)
 
 (以下、ネタばれを含むので、見たい方だけドラッグしてみていただければと思います。)
 
 しかし、実は歌詞には深い意味が隠されていたことが、10話になってようやく判ります。10話では「コネクト」はEDで流れるのですが、そこで初めて、我々はこの歌が暁美ほむらの心情を歌っているのだということに気付かされるのです。

 交わした約束忘れないよ 目を閉じ確かめる
 押し寄せた闇 振り払って進むよ

 「魔法少女まどか☆マギカ」の10話というのは、そもそも12話しかないので「捨て回」など一切ないこの作品においても極めて重要な回で、これを見てから「コネクト」を聞くと、もうこの出だしから泣けてしまう訳です。

 空はきれいな青さでいつも待っててくれる だから怖くない
 もう何があっても挫けない

 もうね、暁美ほむらの気持ちが切ないです。しかもそれを当の鹿目まどかに一切理解してもらうことができないという辛さ。それだけに、最終回でアルティメットまどかに全てを理解してもらったほむらは本当に救済されたんだろうなと思います。

 その後の戦いにほむらは一切迷いがないですね。まるで世界が滅んでしまったかのような荒廃した大地で、ただ一人魔獣の群れに立ち向かうほむら。その背中からは天使のような白い翼が生えていたはずが、いつしか悪魔のような禍々しい黒い翼に変貌している。一体どれだけの業を背負ってしまったのか。それでも聞こえるまどかの「頑張って」の声に微笑んで凛々しく闘うほむらはまさに戦乙女です。

 (以上、ネタばれ終了)

 この歌を歌ったClariSは、クララとアリスの2人組で、当時は女子中学生だったそうですが、今年の3月に卒業したそうで、おそらく女子高生ユニットになっていることでしょう。中学生離れした歌唱力です。本名・出身地・生年月日などは非公開で、メディアでの実写での公開もなされていません。ジャケットや公式ウェブサイトなどには、イラストのみが使用されています。ちなみにクララがピンク、アリスがブルーだそうです。

ClariS.jpg

  この歌の前には「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」のOP「irony」を、今年に入ってからは「偽物語」のOP「ナイショの話」を歌っていて、どちらもヒットしています。元々は2009年頃からニコニコ動画で同人音楽ユニットとして活動していたそうで、「化物語」EDの「君の知らない物語」の「supercell」といい、ニコニコ動画は優れた才能を持つ素人を発掘する場としても機能していますね。

 Youtubeで聞けます。

 http://www.youtube.com/watch?v=vn4xZaGFdjs

 http://www.youtube.com/watch?v=IJ-CXEZd55s&feature=related
 
 
コネクトOP6

グラビア・アイドルご紹介(その2):才女・壇蜜さんのプロフとDVD

はだける壇蜜さん

 今日も涼しい一日。もういっそ七月も八月もこのままで…と思うのですが、そうや問屋が卸さないんでしょうね。

 ホイチョイ・プロダクションの「OTV」、本日届きました。定価850円で、買値は980円。プ、プレミアムがついてる!なんてこったい。こうなったらいずれブログのネタにしてやりましょう。 
 
 さて、今夜も壇蜜さん特集です。所属事務所(エクセルヒューマン・エージェンシー)のHPによると、スペックは次のとおりです。なお※は私のコメントです。

◇生年月日:1980年12月3日
※ 射手座ですね。黄金聖闘士ならアイオロス。すいません…私はふたご座です。本当にすいません…うちのサガがとんでもないことを…

◇サイズ:158-85-60-89cm S:23.0cm
※ 「ときめきメモリアル」のラスボスメインヒロイン藤崎詩織と身長・バストが一緒!きっとなかなか一緒に帰ってくれないことでしょう

◇出身地:秋田県
※ 美人の産地としてつとに有名。佐竹氏が茨城から転封させられたとき、領内の美人を根こそぎ秋田に連れて行ったからだという伝説の真相はいかに?

◇血液型:O型
※ みんなに血を与えられますね。「私の血です」と顔写真入りにすればプレミアムがつくこと請け合い。

◇趣味:日本舞踊・小説を書く・変T収集
※ 変Tって「変なTシャツ」のことだそうです。みんなで妙なTシャツを贈りましょう。気に入ったものは公式ブログ「黒髪の白拍子」で紹介してくれるかも。小説は、やはり「黒髪の白拍子」で「女子校という名の箱庭で」(略称「女子箱」)シリーズが読めます。探してみましょう。続編も書いて欲しいな

◇特技:背中で合掌・麻雀
※ 背中合掌はぜひ今度グラビアで。麻雀は一度お手合わせしてみたいです。このほか、「カマキリアタック」(カマキリを自在に操る)とか「ヒトデ手裏剣」(ヒトデを投げつけて泣かせる)という技も使うそうです。前世は「虫愛ずる姫君」?

◇資格:日本舞踊名取・英語教員免許・調理師免許
※ 英語ができて料理ができたら外国も全然苦じゃないですね。日本舞踊を教えれば生計も立てられそう。美人料理研究家・森崎友紀(32歳)という人がいますが、料理と美人度で対決してみるという企画はどうでしょうか。
森崎友紀

 それではここで発売DVDのご紹介をば。私は全部見てます。

1.デビュー作「花蜜」
花蜜
 2010年9月発売。冒頭、なんとなく機嫌悪そうな感じで演技しています。初めてだから多分緊張しているのかも知れませんね。途中に変なインタビューが入って、笑顔が見られます。何なんだ「なめこなめなめ」って。

 彼女の魅力はエロスとかフェロモンではなく笑顔だと思うのですが、それだけじゃイメージビデオにならないのでしょうかね。

 煽りは「OL、競泳水着、和服、親戚のお姉さんなど、超極小衣装アリのバラエティ豊かな出で立ちでしっとり悩殺」だそうです。

 日本舞踊の名取だけあって、和服の着こなしは流石の一言に尽きます。日本かぶれの外人は一撃必殺でしょう。

 なお、現在は生産終了しているようで、アマゾンでの中古価格にはすごいプレミアムが付いちゃってます。それを買っても壇蜜さんが儲かるわけでもないので、DMMなどで動画を購入したほうがいいと思います。

2.激嬢 妄想ふたり曼荼羅
激嬢 妄想ふたり曼荼羅
 2010年12月発売。神ユキさんというグラドルと共演しています。百合&SM。露出は他の作品に比べると控え目(他の作品が露出しすぎだとう気も)ですが、一番色っぽい作品ではないかと思います。

 私はイメージビデオは露出よりシチュエーションとか落差(ビッチが全裸になってるより、お姫様がパンチラするほうが驚く)だと思っているのですが、それを証明した一本といえるのではないでしょうか。

 煽りは「人気イメージシリーズ「激嬢」に、美しいお尻が堪らない神ユキと、ドMオーラを漂わせるインテリ系美女・壇蜜が登場。美しい肢体を絡ませて悶えるふたりのフェロモンに大興奮。禁断の緊縛シーンはエロ過ぎです!」とのことです。

 個人的にいい作品だと思うので、また共演を…と思ったら、神ユキさんは既に「AVの魔女」になられてしまったようです。壇蜜さんはそっちの方に行ってはいけない(笑)。

 なお、アマゾンでR18指定になっているのはやはりシチュエーションのせいでしょうか。緊縛とか首輪とかは中高生にはまだ早いのかな?

3.ニンフォマニア
ニンフォマニア
 2011年3月発売。ニンフォマニアって「女性の色情症」…。そうか壇蜜さんは魔女化すると「ニンフォの魔女」になるんだね。「ニンフォさん」と呼ばれたりして。

 パッケージがとても綺麗です。髪の先端付近のねじれっぷりが上品でGood!劇中ではピアノの先生とか野外とか鎖でつながれたりと様々なシチュを演じてます。ピアノ弾けるんですか?

 煽りは「透き通るような色白美肌、しなやかで艶かしい曲線、黒髪の似合う知的で神秘的な日本美人の壇蜜さんがギリギリまで魅せた最新作。上品で美しい顔立ちから溢れ出る激しいエロスは男の夢そのもの!日本男児必見の一枚!」だそうです。

 実は最初に見た壇蜜さんのDVDがこれです。同時にグラビア・アイドルであることを知ったという(笑)。知っている人のあられもない姿は、なんか見てはいけないものを見ているかのような気になったものです。でもやっぱり綺麗だな。パッケージは一糸纏わぬお姿ですが、なぜ見えないのだろう。

4.ニンフォマニア2
ニンフォマニア2
 2011年9月発売。1作目が大いに売れたので続編登場です。パッケージはノースリーブの白いタートルネックで前髪を上げていて「素敵な奥さん」風です。上品さに満ち満ちてて、いかにも「いいとこの若奥様」ですな。常盤貴子に似てる!あ、常盤さんは私の「天位女優」の一人です(誰も聞いていないか)。

 煽りは「しなやかで艶かしい肢体からフェロモンがあふれる和風美人・壇蜜のイメージ。透き通るような色白柔肌に黒髪が映える。上品で美しい彼女が魅せる、前作を遥かに上回る限界エロスを心ゆくまでご堪能ください。」とのことです。

 ニンフォマニア・シリーズではこれだけがアマゾンでR18指定になっています。パッケージの裏に「緊縛」とか「目隠し」とかSM要素があるからでしょうか。R18になると売り上げに響く、と壇蜜さんはご立腹でした。中高生に買わせたいんかい(笑)。

 劇中、氷を舐めたりシャンプーボトルを弄んだりして男の妄想を刺激します。また、「胸をもまれる姿」があって、最初見た時は私の胸が痛くなったのですが、「女性スタイリストの手」とのことです。見慣れると、物凄いおっさんが揉んでると妄想する方が興奮するんですが、やはり本人がたまりませんよね。

5.ニンフォマニア3
ニンフォマニア3
 2012年3月発売。2作目もべらぼうに売れたので第三弾登場。普通こんなにシリーズって続くもんなんでしょうか。

 煽りは「妖艶なフェロモンを放つ黒髪色白和風美人・壇蜜のイメージ。上品な美しさと知性を併せ持つ彼女が魅せる「妄想映像」。前2作を大幅に上回る官能的な極上エロスの世界へとアナタをご案内します。」とのことです。

 私もこれがシリーズ最高傑作だと思います。内容と反比例してパッケージは赤い長そでタートルネック。一作目から段々着て行く三段逆スライド方式。しかし良く見ると胸が…。

 今度は二人から胸を揉まれています。が、手が明らかに華奢なので許す(笑)。露出はますます過激になっているほか、後半の「温泉宿で迫られるシチュエーション」が最高です。

 「縛って…!」のあたりの演技が何とも真に迫っていて色っぽい。そんなだから「本当に縛られるのが好きそう」とか誤解されちゃうんだ。

 あと中盤のショッカー女幹部風のドSキャラが逆襲されてドMなお仕置きされるというシチュエーションも面白いです。

6.色情遊戯
色情遊戯
 2012年6月29日発売。カミングスーン!な最新作。英語から日本語になっても「色情」からは逃れられない壇蜜さん(笑)。

 煽りは「各社引っ張りだこ、グラビアではトップセールスを誇る壇蜜が過去最大の露出に!壇蜜独特の世界観、壇蜜しか表現できないエロスを撮りおろした作品。気品と知性が合わさった結晶、黒髪美人「壇蜜」をお届けします。」だそうです。

 8月には「色情遊戯2」が出るとか。ペースがいきなり急速に。しかし…ニンフォマニアの段階でもう露出は限界まで来ているのではないでしょうか。それ以上ってどういうことだ?個人的にはもっと出し惜しみして欲しいなあ。

7.各駅停車人妻紀行
各駅停車人妻紀行
 これはDVDではなくDMMの配信動画です。2011年9月配信開始。

 煽りは「こんな美人な奥さん、本当にイイの?とたじろいでしまう極上の人妻が登場!渋谷の雑踏から見つけ出しクルマでいちゃいちゃ。ホテルに入ってねっとりとHなプレイ!イクときのせつな顔がたまりません!」とのことです。

 DVDに比べると可愛らしい感じがするのは、髪型のせいでしょうか?ねつ造した「人妻」を演じています。旦那は名古屋に出張とか。その旦那役に立候補します(出てこないけど)。結婚指輪がいい感じ。なんか「秒速」の明里を連想してしまいます。

 ストリーミングなら400円。ダウンロードでも980円とお得なのでぜひ一見を。DMMのレビュー評価が異様に低いけど、メガネにセーラー服とか競泳水着とかコスプレチックです。実際にはとてもいい作品ですよ。

 特に後半の「怯え顔」がいいですが、会ったときにあんな顔されたらこっちが絶望に沈んじゃいますね。でもなんだかんだ言っても、清楚な服着て笑っている壇蜜さんが一番素敵だと思います。

 最後に特別付録。彼女が以前書いてくれた魔法少女「舞静香」です。
壇蜜さんの絵
 画像が良くないのは私の中古携帯で撮影したものだから(汗)。以前、私が「魔法少女まどか☆マギカ」にかぶれて妄想した「まど☆マギ」派生シリーズ「しずか☆マギカ」の主人公です。壇蜜さん、絵心もありますね。うらやましい限りです。「舞静香」の友達の「綾女(あやめ)」も書いてもらった気がするんだけど、手元にないので、今度もう一回書いて下さい!

笑顔の壇蜜さん
 ということで、決してエロ一色でない、マルチな才能を持った壇蜜さんの知られざる魅力がもっと人口に膾炙すればいいなと願いつつ、今宵はここまでにいたしとうございます(古っ)

 

グラビア・アイドルご紹介(その1):歩く「才色兼備」

愛猫アヤメさん


 今日はまるで5月のようにさわやかな気候でしたね。ランキングは気にしない、といいながら実は毎日チェックしております(笑)。先日、「日記」の「OL・会社員」部門で、約6万人中1730番という順位になっていました。始めたばかりのこんな僻地のブログが。まさに「秒速5センチメートル」さまさま。うーむ、そうなると一度くらいは上位1%(つまり600位くらい)に入ってみたいという気もしてきました。

 さあ、それでは勝負手を打ってみるとしましょうか。大仕事も一段落して久しぶりに気分がいいので、ここまで伏せていたことをいよいよ公表しましょう(大袈裟な)。

 実は私、なんとグラビア・アイドルの知り合いがいるんです。正確に言えば、知り合いがグラビアアイドルだったということになりますけど。知り合った時はその正体(笑)を知らなかったのですが、知り合う以前にそっちの方面に進まれておりました。

 今年はまさにブレイク中で、最近は「フライデー」などの週刊誌にもちょくちょく登場しています。先週は「プレイボーイ」と「SPA!」に登場していました。このところ「過激化」が進んでいて驚くようなセクシーショットを連発して度肝を抜いています。特に「SPA!」…一瞬「え?いいの?18禁じゃないの?」と思ったほど、一枚目と二枚目の写真の落差には驚愕しましたよ。

 DVDもこれまで5本リリースしてます。6本目は今週お目見えします。また、今年の1月からはBSジャパンで放映(金曜23:00~)している「ギルガメッシュLIGHT」にレギュラー出演しています。

 焦らさないで誰だか言え?でももうちょっとだけ続くんじゃ。

 では煽りコメントいってみましょう。

《グラップラー刃牙より徳川光成のお言葉》

「地上最強のグラビアアイドルを見たいかーッ!!」

観客「オーーーーー!!!!」

ワシもじゃみんな!!

《同じくグラップラー刃牙より中国拳法の老師のお言葉》

「この世で一番美しいグラビア・アイドルでございますか。

吉木りさ…

吉木りさ

原幹恵…

原幹恵

いろいろございますなァ…

ただ――たった一人だけというのなら、やはり……。

《ファイブスター物語より「聖院様」グリーン・ネイパーのお言葉》

紹介する気になったのは杉原杏璃の噂を聞いたからさ。

杉原杏璃

ボクはね…川村ゆきえまでが復活したことで

川村ゆきえ

世間があの二人を日本一美しいグラビア・アイドルと呼んでいるのがいやなんだ!

グリーン・ネイパー

この世で一番美しいグラビア・アイドルは……!こいつだ!!

3年前の壇蜜さん

 ということで、改めてご紹介しましょう。我が天位グラビア・アイドル壇蜜さんです。

  秋田県出身。御歳31歳。素敵な黒髪。どうです、三十路とは思えない美しさでしょう(私が自慢することじゃないけど)。顔立ちに溢れんばかりの気品と知性と透明感があります。肌もとても白くて綺麗です。

 ご本人の許可を得て、ブログ「黒髪の白拍子」から画像をお借りしています。壇蜜さんの自分撮り写真の数々をお楽しみください。

http://ameblo.jp/sizuka-ryu/

ドクロ柄の壇蜜さん

 もっとグラドルらしい画像が見たいという方は、「壇蜜」でググっていただければ、そりゃあもう山ほどセクシーショットが出てきますので。良ければ掲載誌やDVDを買って下さい。

 どうして知りあったのか……という点については一応秘密のヴェールに包ませていただきたい(笑)。ただ、誰にでも言えることかも知れませんが、グラビアアイドルというのは彼女の横顔の一つではあるけど、それが全てという訳ではないということです。色々な顔を持つ美女…ミステリアスで素敵ですね。

メイドの壇蜜さん

 ただ、今年はフライデー曰く「一躍トップアイドルの仲間入りを果たす」ということで、明らかにブレイク中です。また、今後はグラビア・アイドルのみならず、タレントとして、そして女優としての活動にも大きくシフトしていくような気がします。ああ、だんだん遠い人になっていくような。

 テレビや雑誌やDVDで彼女を見たことがある人は、「とにかくエロい」とか「ドM」とか「すさまじくいやらしい女」(「アサヒ芸能」のキャッチコピー。付けた奴ちょっと来い)とか「雌の扉」(「プレイボーイ」のキャッチコピー。お前もちょっと来い)などと言われているのをご存じかも知れません。ギルガメでも隅っこでほくそ笑んでたり、思いっきり催眠術にかけられて色々やらされたり、平然とバンジージャンプをしたり、変態仮面の如くパンツ被ったりと、色々と身体を張っています。

合法ロリの壇蜜さん

 しかし、それは彼女が演じている「壇蜜」がそういうキャラ付けをされているのであって、元々の「素顔」がそういう人だと言う訳ではないのです。まあ、それは全てのグラビア・アイドル、ひいては芸能人全般に言えることなのかも知れませんが。

クリスマスの壇蜜さん

 ですからグラビアにはフェロモンとかエロス全開で写っていますが、ケンシロウや孫悟空が戦闘時以外には「闘気」を噴き出していないように、彼女も普段からフェロモンやエロティックな雰囲気を醸し出している訳ではありません。リリーフランキーだかみうらじゅんだかがが「SPA!」で「街で見かけたら抱きつきたい」とコメントしていましたが、彼らは街で彼女とすれ違っても多分気がつかないのではないかと思います。

 先ほど紹介したブログ「黒髪の白拍子」は、芸能人としては異色のブログなので、ぜひ一度見てみて下さい。彼女の知性・ユーモア感覚が遺憾なく発揮されています。こっちのほうが彼女の素顔に迫っていると思います。

 また、教職免許(英語)、調理師免許、日本舞踊名取など、様々な資格を持っていて、才色兼備の人でもありま
す。ほら、字も綺麗でしょ?(私が自慢することじゃないですが)

壇蜜さんの字

 ちなみにこの辺りはウィキペディアにも記載されています。私が記事を書いた訳ではないのですが、最近やたらセクシー面ばかりが強調されているので、「そればっかりの人じゃないよ」ということを主張したい気持ちはわかります。もしかして書いたのは古くからのファンですか?

 各メディアでは、「アラサーデビューまでの経歴が謎」といった紹介をしていますが、要するに芸能界進出を考えたのが遅かっただけということです。昔から綺麗だっただろうから、大学在学中とか高校時代からスカウト→デビューなんて可能性も充分あったと思いますが、その時代にはご本人にそういう気がなかったようですね。

スクール水着にツインテールの壇蜜さん

 一部ファンは更なる露出を熱狂的に望み、AV行きを待望する声もあるようです。また、そういうオファーもやたらにあるそうですが、ご本人は「絶対行かない」と言っています。知り合いにAV女優がいるというのも稀有な……いやいや、私ももちろん行って欲しくないです。

「タイが曲がっていてよ」壇蜜さん

 壇蜜さんは、確か「ギルガメッショLIGHT」のインタビューかなんかで「芸能界のハムカツでありたい」という趣旨のことを言っていました。「黒髪の白拍子」にも書いています(本年6月1日付記事)。私もハムカツは好きなので大変結構なんですが、そろそろそういう「肉屋の片隅の定番メニュー」では済まない売れ方をするような気がしますよ。

 最後に一枚だけサービスショットを(笑)。

セクシーフィールド展開中の壇蜜さん

 明日も壇蜜さんで記事を書く気マンマンのユースフであった。

ネクストキング 恋の千年王国:モテ男が次期国王になる不条理

ネクストキング
 
「土曜日はギャルゲーの日」復活!復ッ活ッ!ギャルゲーの日!復活ッ!…(以下うるさいので省略)

 と言う訳で、今日紹介するのは「ネクストキング恋の千年王国」です。1997年にバンダイから発売されたプレイステーション・セガサターン用用ゲームソフトで、企画、脚本、監督は「俺の屍を越えて行け」などの特異なシナリオのゲーム作りに定評のある桝田省治です。発売時のキャッチフレーズは「愛は惜しみなく奪い合え!」。

 ハーブランド王国の王様(キングヘンリー)が、次期国王を決定するにあたり、「女にもてるヤツが、つぎの王になるんじゃ」と言ったことをきっかけに、4人の王子が有権者となった12人の女の子の気持ちをつかみ、王の座を奪いあうというゲームですが、実は王様になれるかどうかよりも、自分に投票してくれた女の子の一人に告白してOKを貰う方が重要なようです。もちろん王の座を射止めた上で告白が成功すれば、王妃様誕生となるわけですが。

 一人でプレイすると、3人の王子はCPUが担当しますが、4人までのマルチプレイも可能となっています。CPUは正直ぬるいのでまともにやればほぼ王様になれますが、マルチプレイは血で血を洗う凄まじい抗争になりがちです。

 ゲームの流れは一週間を一単位としており、月~水に城下町で女の子と出会って週末の冒険に誘い、木~日に王様が指定する場所にパートナーを伴って赴き、冒険することになります。このゲーム、移動も戦闘も全てサイコロを振って出た目によるので、下手をすると、出目が悪くて女の子に会って冒険の約束を取り付けることもままなりません。その場合はやり手ババアならぬ妹のアンゼリカが斡旋してくれるのですが、冒険場所によっては「ぜひ彼女と行きたい」と言う場合があり、例えば武術大会に参加するので武芸に優れたマレインか騎士のキャラウェイと行きたいのに、戦闘にとことん不向きなお嬢様のアニスを斡旋されたり、アンデットが多数出る場所なのでシスターのフェンネルと行きたいのに、お化け大嫌いのキャラウェイを斡旋されてしまうとか言う場合はとことん不利になります。

 冒険は、双六の要領でサイコロを振りながら進み(サイコロの目の範囲内では好きなマスに止まる事が出来る)、ゴール地点で通常ボスキャラとの対決となります。ボス戦がなく特定のアイテムを探索する週もあります。その冒険に関わる女の子と同行してボスを倒せば、イベントを見ることが出来、場合によっては告白成功の条件となっている場合もあります。冒険中にはモンスターを倒して同行の女の子に格好いいところを見せたり、プレゼント用の宝物を手に入れたり、他の王子に決闘を申し込んで相手の足を引っ張り合うことも可能で、勝てば相手の好感度を下げ、アイテムを一つ奪えます。モンスターとの戦いで傷ついた王子を襲って勝利するという汚い手を使っても、女の子は好感度があがるところは世知辛いというかなんというか。

 日曜日が終わると冒険は終了し、その週で一番活躍した王子が週間MVPに選ばれ、王様から気合のサイコロを1つ貰えます。また、MVPとは別に、王様の依頼を達成していれば特別な褒賞が貰える場合もあります。

 サイコロは移動の他にも、戦闘時の攻撃力、好感度上下の数値、修行の成否など、多数の要素の判定で使用します。とにかくこのゲームは何でもかんでもサイコロまかせです。数値が大幅に変化する場合などは大量のサイコロを振ることになり、好感度が下がる時はサイコロを振らずに「サイコロ○個分下がった」と表示され、実際にどれだけ下がったかは非表示となっています。

 満票を取る必要はありませんが、王様になりたければ、お目当ての女の子だけを冒険に誘っていてはだめで、ある程度まんべんなく他の女の子も誘って好感度を挙げて行かなければなりません。で、他の女の子と冒険しているときに、他の王子のお目当ての女ん子を連れて歩いているのを見たりすると、嫉妬の炎がめらめらと燃え上ったりします(NTR!NTR!)。そんな時はモンスターやボスキャラそっちのけで喧嘩を売って、勝てばライバル王子の好感度を大きく下げると共に、自分の好感度を上げることができて最高です。しかし負ければえらいことに…。それと、戦闘中はお目当ての女の子はライバル王子側についているので当然こちらを攻撃してくるというのも悔しいところです。だがそれがいい(笑)。 

 規定の日数(一人プレイだと一年)が過ぎると次期国王の投票となり、有権者の女の子が誰に投票するかは好感度で決まります。同票になった場合は13人目の投票者としてアンゼリカが投票に参加します。実は彼女は妹とは仮初の姿で、実は隣国の次期女王だったということがその時初めて明かされます。

 自分に投票してくれた女の子の中から告白相手を選ぶことになりますが、好感度が足りずに断られる場合もあります。また、一人用時は女の子ごとに結婚の条件が設定されており、それを達成しないと結婚できません。ただし、告白に失敗しても、他に結婚条件を満たしている女の子が居る場合は、王様が「慕ってくれる相手と結婚するのが一番じゃ」とか言って、相手を紹介してくれる事があります。

 なお、12人の女の子は皆いわくのある子ばかりで、人間じゃないのも何人か混じっています。王様はどうもあえて人外を選んでいる気がするのですが…。人間であっても呪いにかかっていたり、魔物に魅入られていたり、トラウマやコンプレックスに囚われていたりで、一筋縄な子は一人もいないといった感じです。一人プレイだと、普通にやれば6票位は簡単に取れるので、王位継承はまず確実ですが、多人数プレイの場合、先ほど述べた王子同士のバトルが多発します(CPUはあまり仕掛けてきません)。特にお目当ての女の子が被っている場合は血で血を洗う抗争が(笑)。

 それでは恒例、私の好きなキャラベスト5

第5位 コリアンダー
コリアンダー・ウェディングドレス
 通称「沈黙の歌姫」。20歳。宮廷楽士長の娘で、以前は国一番の美声を持つ歌い手でしたが、12年前にベトニー侯爵という吸血鬼に狙われ、身代わりとなったハープ演奏者だった母親が殺されて以来、ショックで声を出せなくなっています。そのため、普段はハープの音色で感情を表現しています。

 ゲームの展開次第ではべトニー侯爵を倒すことで彼女の声を取り戻すことができます。声は井上喜久子さんなので、ぜひその美声を聞くためにも頑張りましょう。ちなみに結婚するとオーケストラができるだけの子供が欲しいと言いますが、一体何人なんですか?

第4位 サフラン
サフラン・ウエディングドレス
 通称「恋の水先案内人」。15歳。駆け出しの占い師で、恋占いはよく当たると評判です。また全キャラの好感度の目安になる「サフランチェック」をやってくれます。声は丹下桜。ですがC.Cさくらに比べると今時の軽薄な少女のような無責任な言動が目立ちます。なにしろ挨拶がこんな感じで…

そろそろ来る頃だと思ってたわ、王子様。私はサフラン。
もうちょい早く来れば、この水晶玉にあなたの未来が映ってたのにぃ。
知りたいでしょ? でも教えたげなーい。
でもヒントは教えたげるぅ。

この選挙で選ばれちゃった王様には、
世界を新しい時代へ導くチャンスがありありって感じ。

その鍵を握るのが、有権者の女の子達ね。
12人の中に、とんでもないのが隠れてるみたーい。

なかでもチョー注意しなきゃなんないのは、
何でもなさそうな普通のコ。

何でもないコほど、思い詰めるとプッツンしちゃって、
シュラシュラ、パッパ シュラ パッパ

こーわーいーわーよー…。なーんて。
まっ、せいぜいお気をつけあそばせ、王子様。
人魚姫サフラン
 言っていることは正しいのですが、正体が人魚姫のお前が言うな(笑)。半漁人のニゲラ王子(ブサイク)に求婚されているようですが、それが嫌で地上にやってきたとかなんとか。

第3位 フェンネル
フェンネル・ウェディングドレス
 通称「ずっこけシスター」。17歳。パッケージイラストを見てもメインヒロイン格の女の子。国の教会に勤めるシスターで、明るく素直な性格ですが、オッチョコチョイで失敗ばかりしています。
 戦闘にはあまり向いていませんが、回復魔法が得意で聖職者のためアンデッド系モンスターにはやたらと強いです。孤児ですが、生まれにはとある秘密を持っていて…
翼の折れたフェンネル
 はい、ぶっちゃけ天使です。天界で魔族の将軍がクーデターを起こした際に、地上に逃げ延びた天界の王族の生き残りだということです。でも彼女はあっさり天界を捨て、主人公と生きることを選んじゃいます。

第2位 クミン
クミン・ウエデンングドレス
 通称「弱虫くのいち」。15歳。先代の国王に恩義があり、誠心誠意国に仕えていますが、敵に出会うとすぐに逃亡したがるなど実力が伴いません。声は私の好きな皆口裕子。もうその声でそばにいてくれるだけで充分と思いますが。
クミンの正体
この人も人外です。おっと三連続で人間じゃない。魔物で、しかもかなり強力です。彼女と会うと、ボスキャラのベトニー侯爵(吸血鬼)が「おや?どこかでお会いしましたかな?」、悪霊チャービルが「シャレになんないからおじさんには手加減しておくれよ」などと言ってきます。ドラゴンが相手となると、その恐るべき力の片りんを見せてくれます。

 また、結婚の時のセリフもちょっと怖い。どうやら人間界では主人公の寿命が来るまでいい奥さんを演じてくれるそうですが、死後は「あちらの国」に行くことになりそうです。「慣れればいいところ」らしいですが。永遠の命、確定ですかね。

第1位 キャラウェイ
キャラウェイ仮面
 通称「仮面の美女」。19歳。CV勝生真沙子。騎士団長の娘で本人も腕の良い騎士です。かつて父親が征伐した魔物・チャービルの呪いにより、醜い仮面を被って生まれました。なんという少女鉄火面伝説。実母はそれにショックを受けて発狂し、生後間もなく死去したとか。

 仮面はどんな方法でも外せず、周囲からも忌み嫌われて来た事で人生に絶望しています。戦闘力が高いので、冒険のパートナーには最適ですが、お化けが大嫌いなので、そっち系の敵の時は誘わないのが吉です。

 挨拶はこんな感じです。

いらっしゃい、王子様。
私は、ゴールデンロッド家の一人娘キャラウェイ。この醜いマスクはどうやっても外れません。
不愉快でしょうが、我慢してくださいませ。

それと私、ここ数年で三度ほど自殺未遂をした情緒不安定な女です。

ですから私などにおかまいなく、他のかわいい人たちを
相手にされた方が、良いかと存じます。

ただ、王子様の護衛の任をお命じくだされば、いつでも死んで見せますわ。
まあ、それもこんなマスクをつけた女じゃ、おイヤでしょうけどね。

しかし、チャービルを見事倒し、告白すると、呪いが解除されてマスクが取れます。その姿は…
キャラウェイ素顔
 全キャラ中一番の美人ではないでしょうか。まさに「仮面の美女」でした。
キャラウェイ・ウエディングドレス
自殺しないでよかったね。

番外 アンゼリカ
アンゼリカ・ウエディングドレス
 城に住んでいる快活な少女で、王子4人を「お兄ちゃん」と呼んでいます。ゲームの進行役を務めるマスコット的存在で、各パート終了後のデータセーブ時にも現われますが、一般的なゲームと違って「セーブしなくてもいいよね?」と聞いてくるのでボタンを連打しているとセーブせずに先に進む事になってしまいます。おいこら妹(笑)。

 ですが、正体は先ほど書いたとおり実際には隣国の王女です。アンゼリカは同点決勝の場合にしか投票に参加せず、自分に投票してくれないと告白もできないのでレアキャラといえます。しかし同点決勝の際には必ずプレイヤーに入れてくれるとか。

 彼女とは王位を継承する場合しか結婚できませんが、彼女は隣国の女王になるので、結婚すると連合王国誕生です。国力増大につき、周囲に侵略戦争を仕掛けてもいいかもしれませんね。

 声はなんと永遠の17歳。コリアンダーも演じていますが、あまりしゃべらないので二役となったのではないでしょうか。喜久子さんの妹キャラというのも珍しいので、ぜひ堪能して下さい。

今回は画像が見つかったので他のキャラもざっと紹介しましょう。

アニス(16歳)。通称「ミス・ワガママ」。CV天野由梨
アニス

カモミール(18歳)。通称「喬日の人体実験娘」。CV冬馬由美
カモミール

ジンジャー(13歳)。通称「かわいい守銭奴」。CV荒木香恵
ジンジャー

チコリ(16歳)。通称「秘宝コレクター」。CV高山みなみ
チコリ

ディル(21際)。通称「人間嫌いのディル」。CV篠原恵美
ディル・ウエディングドレス

マレイン(19歳)。通称「熱き肉弾」。CV潘恵子
マレイン

ローズマリー(22歳)。通称「踊る拡声器」。CV鶴ひろみ
ローズマリー

いやあ…声優が超豪華。

「見栄講座」:バブル前夜の「時代の証言者」か!?

見栄講座



 いやー個人的な話ですいませんが、一段落つきました。来週に持ち越しにならずに本当に良かった。枕を高くして眠れますよ。

 ところで今朝の雨はすさまじかったですね。道が川のようになっていて、ホントくじけて家に帰ろうかと思いました。重大な仕事があったのでそういう訳にはいかなかったのですが、おかげで靴が一日中びしょびしょでしたよ。

 さて、今夜ご紹介する「見栄講座 ミーハーのための戦略と展開」はホイチョイ・プロダクションが1983年に出版した処女作です。
 ホイチョイといえば、ビッグコミック・スピリッツで連載していた「気まぐれコンセプト」が思い浮かびますが、なんと調べてみたら今なお連載中のようです。1981年連載開始というから、もう30年以上連載している訳ですね。何気にすごい長寿漫画。サザエさんの後番組にどうだろうか。バブルの頃は読んでいたのですが、バブルに踊りまくる広告マンばかりを描いていたような気がするので、バブル崩壊とともに連載も終わっているとばかり思っていました。

 バブルといえば、いわゆるバブル景気は1987年から始まるとされますが、「見栄講座」はその4年まの作品ながら、既にその前兆を感じさせる作品でもあります。

 その内容はといえば、「とにかく女の子にもてるにはどうしたらいいか」という目的を第一に、
① テニスやスキーといったスポーツでは上級者がモテる
② 下手でも上級者のふりをすればモテる
③ 上級者のふりをする=見栄を張るにはどうすればいいか
という論法の下、上級者のする行動・ファッション・くせなどを事細かに解説しています。
見栄オートバイ

 そして見栄の張り方はスポーツにとどまらず、見栄フランス料理(フランス料理店で常連のふりをするにはどうすればいいか)、見栄軽井沢(軽井沢の別荘族のふりをするにはどうすればいいか)、見栄海外旅行(海外一人旅の達人のふりをするにはどうすればいいか)など、多岐にわたっています。

 内容の一例を上げると、「見栄キャリア・ウーマン」では、「料理・掃除・洗濯は大の苦手、おまけに極めつけのブスというあなたでも、バリバリのキャリア・ウーマンのふりさえすれば、その実体は神秘のベールに覆われ、ミーハーな男の目をくらませて、そこそこのレベルと結婚ができます。」としたうえで、キャリア・ウーマンのふりをするために必要な、キャリア・ウーマンの定義、ファッション、オフィスでの行動、生活、ナイトライフ、性、読書傾向などについて細かく解説しています。
見栄シティーボーイ

 例えば定義については、キャリア・ウーマンはオフィスで人目を気にせず堂々とタバコが吸え、自分の名刺(角が丸くないヤツ)を持っていなければならず、東大・早稲田・津田塾・立教のどれかを卒業していなくてはいけないとしています。他の三校はともかく、なぜ立教?ミッション系は華やかなイメージがあるんですが…

 そしてファッションはとにかく男っぽく、手帳は何でもいいからびっしり予定を書き込め、港区のマンションに生活感なく住めなどと指南しています。

 本当にこの本のとおりにすべきなのか、という点ですが、あとがきによれば「『見栄』のノウハウをこと細かに教えるようなふりをして、その実、実際にそれを実行しているミーハーたちを徹底的に糾弾する」という趣向だそうです。本来その道の上級者・達人というものは、長く苦しい練習や辛い経験を経てそうなっていくものですが、この本の登場した80年代前半において、すでに「上手そうに見られたいということばかり考えている」連中が跋扈していたことを、ホイチョイは憂いていたのでしょうか。

 しかしこの本、ベストセラーになりましたが、実際にはミーハーの糾弾・撲滅に役だった訳ではなく、見栄を張りたくてもそのノウハウを知らなかった「ミーハー予備軍」に、どうすれば見栄を張れるのかを教授してしまうという、逆説的効果を絶大に生みだしたのでした。そしてバブル景気が到来。

 正直、バブル時代の浮かれた人々の見栄の張り方の一部には、この本の影響があったんではないかとさえ思われます。言い過ぎかな?

 出版されて30年近く経って改めて読んでみても、面白く読めるし、バブル前夜という時代を写す鏡みたいなところもあって、ある意味貴重な本のような気もします。ですが、さすがに30年前の風俗、今から見ると笑ってしまう部分も多々あります。

 例えば「見栄フランス料理」では、食前酒には日本では誰も頼まないキールを注文すると店の人が大変喜ぶとしていますが、今時キールなんか子供でも知ってそうです。また、ワインの注文は難しいので、オールマイティーなボージョレーを頼むといい、特に12月初旬頃に「ヌーボーある?」と聞くと大変な尊敬を得られると書いてありますが、これは(笑)。今時口説きたい女の子をビストロにつれて行って、解禁日以外にボジョレー・ヌーボーなんか注文したら失笑されてしまうこと請け合いです。

 ところでホイチョイプロダクション、何かと言えば「女の子にモテるには…」ということを強調しがちなところがありますね。バブル真っ盛りの1990年に制作したテレビ番組「カノッサの屈辱」は傑作番組でしたが、なにかというと「男女の生殖活動云々」というフレーズが出てきて閉口しました。若人にとっては重大な関心事かもしれないけど、そればっかりというのも格調に欠けるなあと。

 なお、見栄講座の成功に気を良くしたのか、二匹目のドジョウを狙ってテレビ番組を解説した「OTV」という本を1985年に出版したのですが、これは売れなかったようです。個人的には読んでみたいので、アマゾンで探してみようかな…

プラチナ(坂本真綾):男子禁制美少女ソング

プラチナ


 決戦は木曜日、ということで個人的印象で「大きなヤマ」を越えてまいりました。今後もこの「ヤマ」は登る必要があるようですが、未体験と既体験はだいぶ違います。もう今日ほどのプレッシャーは感じないでしょう。何を言っているのかさっぱりでしょうから、この話はさておき。

 「秒速」ウィークというか、旬間でしたが、これは昨日でひとまず終了です。今日からまた通常運転で。でも通常運転って何がやねんという感じですが。

 本日取り上げるのはアニソンの「プラチナ」です。
 「プラチナ」は「カードキャプターさくら」(以下「C.Cさくら」)の第3期OPです。歌っているのは人気声優坂本真綾。ただし、アニメ本編には登場していませんね。
坂本真綾

 「C.Cさくら」は小学4年生時代が第1期、5年生の1学期が第2期、2~3学期が第3期となって、OPがそれぞれ変わっています。どれも出来のいい曲ですが、特にプラチナはアニソン史上でも屈指の名曲ではないかと思います。

 OPアニメと共に鑑賞してみて下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=UQjCFvaNwJQ

 主人公のさくらが、小学4年生と5年生で決定的に違うのは、子供から少女の入口にさしかかっているという点でしょうか。
杖にまたがるさくら

例えば、第1期OPでは、さくらは杖に魔女が箒にまたがるように、無邪気に翼を生やした杖にまたがっています。つまりこの頃のさくらは女の子(女児)ではあってもまだ少女ではないと言えましょう。憧れはあってもまだ恋を知らない時代とでも申しましょうか。

ところが第3期OPでは、さくらは急に大人びて、憂いにもにた表情を浮かべています。
憂い顔のさくら

相変わらず空は飛びますが、もう無邪気に杖にまたがったりはせず、天使のように背中から翼を囃しています。少女の憂い、それは恋にしくはなし。恋を知り、男を意識して、さくらは思春期の入口にはいったと言えましょう。
翼で飛ぶさくら

「プラチナ」は歌詞と曲のマッチングが絶妙です。これだけ聞いたらアニソンとは思えません。歌詞の内容も、まさに子供から少女の階段に入った女の子に似つかわしいものとなっています。

“私の世界 夢と恋と不安で出来ている”

まさにこれから垣間見る世界への憧れと不安を言い表していますね。

“空に向かう木々のようにあなたを まっすぐ見つめてる”

一度くらいそういう目にあって見たいものですよ。

“信じるそれだけで 越えられないものはない”
“「思い」が全てを変えてゆくよ”
“限界のない可能性がここにある この手に”

まさに無限の可能性の秘めているこの時代の少女を謳いあげるのにふさわしい歌詞ですね。中学生まではいけるかな?高校生になったらもう本気で信じるのは無理じゃないでしょうか。

特に“限界のない可能性がここにある この手に It's gonna be your world”の部分の転調は劇的で素晴らしい。どうしてこんな美しいメロディーを作れるんでしょうか。作曲した菅野よう子は天使なのか。

実はアニメの方は、全部見た訳ではなく、数話見たのと総集編を見ただけなんですが、特徴的なのは、
① 登場人物に不細工がいない=特にさくらの友達は皆可愛いです
② 悪人が出てこない=対立や齟齬は生じることはありますが、基本善人同士
③ 大人はみんな「大人らしい」行動をする=つまり、子供からみて、大人ならこうして欲しいという行動を取る。アダルトチルドレン?何それおいしいの?

といったところでしょうか。女生徒と教師の恋愛感情とか、教育実習生と中学生の交際とかいう、物凄いシチュエーションも登場してくるんですが、この作品世界では、誰も問題視していないので、きっと純粋にプラトニックなんでしょう。
撫子さん

あとさくらのお母さん(撫子:声は私の大好きな皆口裕子だ!)は27歳で他界していますが、お嬢様育ちでお父さんと16歳で駆け落ちして結婚したようです。保護者の許しは得たのだろうか、それともさくらの兄を身ごもって「出来ちゃった結婚」を強行したのでしょうか。ともかく撫子を溺愛していた母方の曾祖父は溺愛していた孫娘を奪い取られた(NTRだNTR!)ことを根に持っていたようですが、ひ孫であるさくらと出会って評価を改めています。この人は大金持ちらしいので、さくらの将来も安泰ですね。でもさくらの祖父祖母などは登場してきません。もしや短命の家系なのか。

さくらみたいな女の子がいたら本当に溺愛してしまいそうですが、いずれよその男に持っていかれてしまうと思うと、そのまま成長しないで欲しいなんて思ってしまいそうです。小学生のままで凍結しておきたいですね。でも成長すればやはりそれなりに美少女になっていくんでしょう。

それでは、最後に。

坂本真綾が歌っている映像です。
http://www.dailymotion.com/video/x6813j_yyyy-yyyy_people

こちらは声のみですが、さくら役を演じや丹下桜ヴァージョンです。
http://www.youtube.com/watch?v=7IKiNANcqfo&feature=related

ああ、本日の記事のタイトルですが、この歌はとてもいい歌なんですが、野郎が歌うとぶち壊しになるので、ぜひ女性に歌ってほしいなということです。これを上手に歌うときっと男子受けすること請け合いですよ。

カードキャプターさくら




「秒速5センチメートル」二次創作“トゥルー・エンド”:距離に負けない想い(第3回)

待ってる明里のもとに彼氏が来た

 台風一過で今日はやたら暑かったですね。

 私事ですが、明日は初めての経験をします。いい年しても初めてというのは緊張するものです。

 私自身の「男の戦い」やってみせます。どうか完遂し切る勇気を下さい。「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」帝王じゃないけど。

 それはさておき、二次創作小説の最終回です。「秒速5センチメートル」はとても素晴らしい作品ですが、ややきになるのが、「二人ともちょっと老成しすぎてない?」というところです。二人ともやたら諦めがいいんですよね。手のかからない子達というか。

 でももっとワガママというか、自己中なところがあるのが若さっものじゃないかと思うんですよ。そこで、「運命に抗う貴樹」(或いは「足搔く者・貴樹」)を書いてみたい、そしてそんな貴樹に応えてくれる明里を描きたいというのが拙作のコンセプトです。

 それでは「距離に負けない想い」(貴樹・明里トゥルー・エンド)第3回をどうぞ。


Part3 Crossing The Railway Track Together (TOKYO-SANGUBASI)

明里の左手
「さあ、桜子。有希子。出発するよ。」

「はーい。」

「待ってー、パパ。」

 昼食が入った大きなバックは肩に。両手は娘たちに取られて。僕は明里に声をかける。

「先に歩いてるからね。戸締りよろしく。」

 奥から聞こえる「はーい」という明るい声を背に、僕はまだ幼い娘達と歩き始める。
桜の花びらが手に

「咲いてるといいね、パパ。」

 桜子が両手で握った僕の左手をぶんぶんと振る。

「一杯咲いてるよ。桜が満開だ。」

「えー、桜が満開―?雪はー?雪はー?」

 僕の右手を負けずに振り回す有希子。

「うーん…もうすっかり春だからね。今日は桜だけかな。」

「えっへへへ。」

 桜子がなぜか自慢げに胸を張る。

「ずるーい、お姉ちゃんばっかり。」

 嬉しそうな姉と泣きそうな妹を交互に見やりながら、僕は話しかける。

「いやいや、ずるくないよ。みんなで一緒に見るんだから。有希子も、桜子も、ママも、パパもね。」

 軽やかな靴音が背後から近づいてくる。細みの身体のままの僕の愛しい人。

「それにほら、あの桜の花びら……ねぇ、なんだか、まるで雪みたいじゃない?」
笑顔の明里

「あ、ママー。」

「遅いよー、ママ。」

 僕達三人は一斉に振りむいて明里を迎える。

「はいはい。ごめんね……ホントにいい天気。」

「うん。絶好の花見日和だね。」

 明里と微笑みを交わす。幸せに満ち足りた笑顔。

「ねー、線路だよ。」

「せんろ、せんろー。」

 娘たちが小田急線の線路を指さす。

「お花いっぱいー。」

 桜子が言うとおり、線路を亘っていく春風に無数の桜の花が舞っている。

「ここでお花見るの?」

「見るのー?」

 無邪気な娘たちの問いかけに明里が優しく答える。

「もうちょっと先よ。線路を渡って、坂を昇ってからね。」

 娘達と荷物で一杯の僕。軽装の明里は僕をちらりと見て笑う。

「モテモテね、パパ。」

「これがホントのもてる男、なんて。いつまでかなあ。すぐに『お父さんとは歩きたくない!』なんて言われちゃったりして。ははは。」

 僕は勝手に想像して一人で少しへこむ。

「桜子、パパ好きだよー!」

「ゆっこも好きー!!」

 桜子と有希子が大きな声を上げる。

「おお、愛しの娘達よー。パパも桜子と有希子が大好きだよ。」

「わーい!!」

 歓声を上げる娘達とくすくす笑う明里。気を取り直した僕はみんなと一緒に線路にさしかかる。

「……」

 ふと明里から無言のプレッシャーを感じる。

「な、何?どうしたの?」

「別にー。」

 つんと顔を逸らす明里。

「ただ…私の手がさびしいから。どこか捕まるとこがないかしらって。」

「あははは…」
 
 苦笑して右腕を示す。

「ここなら何とか……駄目?」

 わざとらしく一層顔を逸らし、ご機嫌斜めな振りをしながら、明里は僕の右腕を抱える。
彼氏の傍らの明里

「仕方ないなあ。可愛い娘達に免じて今日はここで我慢しましょう。」

 偉そうに言う明里。僕としばらく顔を見合わせたあと、にこりと笑う。

「この子たちも好きな男の子ができて、いずれ離れていくわ。その時には…貴樹君はまた私の…」

「ああ、おじさんの僕でも良かったら。」

「平気よ。その時は私もおばさんだもの。」

 ぷっと同時に噴き出す二人。はらはらと絶え間なく舞い落ちる桜の花びら。僕達は線路を越えて行く。同じ方向に向かって。ずっと一緒に。

「…あの時さ。」

「え?」

 もの問い顔の明里に僕は語りかける。

「『来年も一緒に桜、見れるといいね』って、明里が言ったときさ。僕は明里と桜が見られなくなるなんて、思ってもいなかったよ。」

「私も…ずっと見れるんだって信じてた。」

「色々あったよね…あれから。こうして明里と、この子たちと、同じ桜が見れて…僕は本当に幸せ者だよ。」

 僕は明里に笑顔を向ける。でも明里は真剣な顔で僕を見つめている。
桜の花びらと明里

「どうしたの?」

「あなたが…あなたが私に逢いに来てくれて。あんなに遠くから逢いに来てくれて。それで、私はこうしていられるの。本当に良かった…。」

 明里の瞳が潤む。頬を一筋流れる涙。

「い、いや…明里こそ、種子島に来てくれたじゃない。あの時の嬉しさは忘れないよ。きっといつまでも。」

 僕にも明里の感動は伝わってきて、つい目が潤んでしまう。周囲の風景がぼやける。

「貴樹君と私に、距離に負けない勇気があって…本当に良かった。だって私…こんなに…こんなに幸せ。」

 両目からあふれる涙をぬぐおうともせずに、明里が囁く。

「あー、ママ泣いてるのー!?」

「パパ、ママを泣かせちゃ、めっ!」

 目ざとく明里の涙を見て騒ぎ出す娘達。

「違うのよ。パパは悪くないのよ。ママも平気だから、ね?」

 慌ててなだめる明里。

「さあさあ、これから坂を昇るよ。来週から桜子が通う小学校があるよ。」

 僕は娘達の気をそらそうと話題を変えてみる。

「わーい!桜子、早く学校行きたいー!」

「ゆっこもー!」

 僕の両手を離して、桜子と有希子が坂を駆けあがっていく。

「ちょ、ちょっと待って、二人とも。危ないわよー。」

 母親の顔に戻った明里が娘達を追いかけていく。苦笑した僕は少しだけ立ち止まって線路を振り返る。

 一瞬、線路の向こうにピンク色の傘を開いてくるりと身体を回す女の子の姿が見えた。
来年も一緒に桜見れるといいね

“貴樹君、来年も一緒に桜、見れるといいね。”

 声が聞こえる。

「…見られるよ、桜。ずっと、一緒にね。」

 僕は笑顔で少女に優しく話しかける。女の子はにっこりと笑って、静かに消えた。遠くから明里達が僕を呼ぶ声が聞こえる。

「…じゃあね。」

 踵を返した僕は、笑顔のまま歩を速めて坂道を昇っていく。
ラストシーンの貴樹

 幸せな一家が通り過ぎた後の踏切は、ほかに通る人もなく、明るい日差しの中、ただ桜の花びらだけが舞い踊っていた。

(第3話終了)

※ 娘達の名前は「秒速」のイメージである桜と雪から取っています。桜子は杉本桜子のイメージです。え?知りませんか?「同級生2」というゲームのキャラクターでして、こういう子です。
杉本桜子

 ゲームでは長期入院中で儚げな子ですが、退院後の健康を回復した彼女のイメージで。
 
 有希子は雪子ではあまりにもモロだということで、「岡田有希子」のイメージで。
岡田有希子

 もちろん自殺なんか考えていない頃のイメージで。

 もっとも二人とも小学校前の「女児」なので、将来像を示す意味はあまりないんですが(笑)。貴樹・明里はなにげにかなりの美男美女カップルなので、子供達も当然可愛いはずだと思います。

 ということで、自称“トゥルーエンド”はこれにて終了です。お読みいただきまして本当にありがとうございました。感想などいただける大変嬉しいです。



「秒速5センチメートル」二次創作“トゥルー・エンド”:距離に負けない想い(第2回)

種子島タイトル

 今日は台風列島直撃で参りましたね。皆さんご無事でしょうか。私はなんとか帰り着きました。

 そういえば、昨日からカレンダーをプラグインしてみました。前々から入れたいと思っていたのですが、どうやればいいのか判らなくて…。ブログ初心者なのでその他にもいろいろと不手際があろうかと思いますが、どうか生温かい目で見守っていただければ。

 今日で40回目。ラジオ体操なら皆勤賞ものなんですがね。それでは今夜も一人羞恥プレイともいわれる拙作を晒させていただきます。

 「距離に負けない想い」(貴樹・明里トゥルー・エンド)第2回


Part2 Standing at Dreaming glass hill Together (TANEGASHIMA)

 新学期が始まってすぐ、ポストに明里からの手紙が届いた。貴樹は急いで取り出すと自室に向かう。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 『遠野貴樹様 お元気ですか。逢いに来てくれて本当にありがとう。うれしかったです。高校生になった貴樹君が見られて、本当に良かった。私の記憶の中の貴樹君は、ずっと中学生のままだったから……』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 果てしなく広がる蒼穹。その北にぽつりと点のような機影が浮かぶと、みるみる大きくなっていった。やがて双発のプロペラ機に姿を変えたそれは、ジェット機よりも遥かに優雅に、ゆっくりと滑走路に舞い降りた。

 飛行機を降りた明里は手荷物を持って空港の出口に向かう。細くすらりと伸びた身体にまとう白いワンピースが可憐な小鳥を思わせる。

「明里!」

 高校の制服の白い半袖ワイシャツ姿の貴樹が手を激しく振る。明里がそちらに向かおうとするよりも素早く駆け寄り、荷物を奪い取るように持つ。

「ありがとう、貴樹君。元気だった?」

「本当に…本当に来たんだね、明里。まだ信じられないよ。」

 貴樹は眩しそうに明里を見つめると、目をしばたかせた。

「今日は部活だったの?」

 いたずらっぽい光を浮かべた瞳で明里が尋ねる。

「うん、夏季練習。終わってから急いで来たんだ。」

 貴樹は明里を促して空港を出る。扉を抜けると夏の強い日差しと暑さが二人に押し寄せてきた。

「ほら。こっちはすごき暑いだろう?」

「本当。でも東京とは違う、気持のいい暑さね。貴樹君はスクーターで来たの?」

「うん。でもカブは二人乗りできないんだ。とりあえず明里はタクシーに乗って。ホテルでまた合流しようよ。」

 貴樹はタクシー乗り場に向かい、運転手に行き先を行って明里を託すと、カブを置いた駐輪場に走った。
種子島

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 『……私も、貴樹君と同じです。あれから貯金していました。子供の頃からの貯金も合わせて、お小遣い目当てに親戚回りまでしちゃいました。本当、現金な子ですね。でも、どうしても貴樹君の住む島に行ってみたいです。』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 夕凪の海岸。西日を浴びながら砂浜を歩く二人の影が長い尾をひく。

「素敵なところね。綺麗な海が見放題。」

「当たり前の風景だと思ってたけど…うん、そうだね。明里の言うとおり綺麗だね。」

 改めて周囲を見渡し、驚いたような表情を浮かべる貴樹。ふっと微笑む明里。視線を貴樹の顔から空に転じる。

「こんな遅い時間なのに。陽、まだ高いね。」

 鮮やかな花の模様が入ったピンクの水着を着た明里が、背を伸ばして真上を見上げ、大きく伸びをする。輝くような細く白い腕が一杯に伸びる。

「ここは岩舟からずっと西だからね。それに夏だし。」
渚の二人

 明里の綺麗な腋が視界に入って、思わずどぎまぎした貴樹が慌てて視線を逸らす。

「この島からロケットが飛び立つの?」

「うん。南に発射場があるんだ。今度は来年の秋頃かな。」

「そう。一度見てみたいな。…あ、一番星。」

 ようやく黄昏始めた西の空に、金色の星が輝く。

「金星だね。…ね、ねえ、明里。」

 改まった調子で貴樹が明里に向かい合う。

「本当に…本当に来てくれて、ありがとう。とても嬉しいよ。」

「私も嬉しい。貴樹君のところに来られて良かった…そうだ、言いたいことがあるって言ったの、覚えてる?」

「もちろん。4か月もお預けだよ。犬なら涎がだらだらだよ。」

 少し不満そうな貴樹の口調。ご飯を前にした犬の真似。明里は、貴樹の目の前にご飯を置くような素振りをして、少し噴き出しながら話を続ける。

「あの日…あの日ね、駅で貴樹君を待ちながら、手紙を書いたの。お別れの時に貴樹君に渡そうと思って。」

「そうなんだ。でも…」

「うん。渡さなかった。ううん、渡せなかったの。ごめんなさい。」

 うつむく明里。貴樹が両手を胸前で振る。

「いや、謝ることなんかないよ。僕も失くしていたし。それに…」

 不意に遠くを見つめるような貴樹の瞳。

「気持ちが変わったから。もし持っていても、渡さなかった。」

 明里が顔を上げる。

「うん。私の手紙も遠野君と同じだったみたい。本当は嫌だけど、もう逢えないから…さよならっていう。」

明里の瞳が黄昏を映して、金色に輝く。

「でも、少しだけでも想いを伝えなきゃって思って。それで『貴樹君は、きっとこの先は大丈夫だと
思う!絶対!』なんて言っちゃったの…」

「うん…。明里の方が心細かっただろうに。心配してくれてありがとう。」

「ううん、違う。違うのよ!」

 激しくかぶりを振る明里。肩が震える。嗚咽をこらえる明里。

「大丈夫じゃないのは…大丈夫じゃなきゃいけないのは、私だったの。貴樹君に手紙を出し始めたのも、学校が辛くて貴樹君にすがりたかったから。でも…でもね。」

 涙に濡れた明里の瞳。その表情が纏う思いがけない色香にうろたえる貴樹。

「もう…もう私は貴樹君なしで頑張らなきゃいけないって、決心したの。だから、『引っ越し間際まで心配かけてごめんなさい。私はもう平気だから気にしないで。貴樹君は貴樹君の心配だけしてね。』って言いたかったの。」

 うつむいて身体を震わせる明里。貴樹は静かに明里の身体を抱きしめる。触れ合う素肌が熱い。

「明里……僕は、全然大丈夫じゃなかったよ。あの日…あの時から。明里のことが忘れられなくて。引っ越してからも明里のことばかり考えてた。逢えないのがこんなに辛いなんて知らなかった。それで…」

 明里の身体を抱きしめたまま、耳元に囁く貴樹。

「一生懸命お金を貯めて、思い切って明里のところに行ったんだ。本当は怖かったよ。もう明里には恋人がいるんじゃないかとか、僕のことなんかもう忘れたんじゃないかって、不安ばかりだった。」
種子島2

 閉じた明里の目から涙がこぼれる。

「貴樹君。逢いに来てくれて……本当に嬉しかった。もし逢えなかったら…私…きっと…二人の距離にくじけてたと思う。」

「ああ…すっかり大人びた明里と再会して思った。もう離しちゃだめだ、離したら明里はどこかに行ってしまうって。勇気を出して、本当に良かったよ。」

 明里を抱きしめる貴樹の腕に一層力がこもる。少しきつかったが、明里にとってはむしろ快い感覚だった。目を閉じたままの明里は、流れる涙もそのままに、貴樹の囁きに頷き続けていたが、やがて身体を離し、貴樹と真正面に向き合うと、決意を込めて言った。

「私も、けじめをつけるね。聞いて、貴樹君。……好きです、貴樹君。ずっと前から。愛しています、貴樹君。これからもずっと…ずっと愛しています。」

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

『……ねえ、貴樹君。夏休みに逢いに行っていいですか?この前言えなかったことを、私もどうしても伝えたいです。貴樹君が私にしてくれたように、私も貴樹君を訪ねて。私も越えたいの。二人の距離を。』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 不思議な予感に目が覚める。まだ夜明け前だった。明里はベッドを静かに出ると、身支度を済ませ、そっとホテルを出た。ロビーにもフロントにも誰もいない。暗いアプローチを抜け、車道に出ると端近くを歩いていく。しばらく歩くと、道はやがて小高い丘の麓を通った。なだらかな丘の陰に、一台のカブが止まっている。明里の予感は確信に変わる。
夜明けをみつめる二人

 明里はゆっくりと丘を昇る。急ぐことはない。彼は必ずそこにいる。昇り切るった先、丘の頂上には貴樹が座っていた。貴樹は明里に気づくと、驚きもせずに穏やかな視線を向ける。

「……明里。来てくれたんだね。」

「貴樹君……私が来るの、知ってたの?」

 貴樹が苦笑して首を振る。

「まさか。でも何となく、予感がしたんだ。ここに来れば明里に逢えるような。ここね、時々来るんだ。夢に出てくる場所に似ているから。明里、こっちにおいでよ。」

 明里がそばに寄ると、貴樹はハンカチを広げて明里を座らせた。

「夢に出てくる、場所?」

 無邪気に問いかける明里。笑顔で優しく答える貴樹。

「うん。こっちに来てから時々見る夢。前に話したよね。地球じゃない星の草原で、明里らしい女の子と日の出を待っているっていう夢。ここは、とっても雰囲気が似ているんだ。」

 貴樹は立ち上がる。夜明け前の暗闇の中なのに、明里を見つめる貴樹の視線がとても優しいのが判った。

「前にも言ったけど、春に明里に逢いに行くって決めてから、夢は変わった。彼女は立ち上がって僕と一緒に朝日を浴びた。顔も見えるようになってはっきりとわかった。」

 その言葉につられるように、明里がゆっくりと立ち上がり、貴樹と向かい合う。その瞬間、海から朝日の先端が昇り始め、二人の顔を照らす。

「その女の子は明里だった。今、僕の目の前にいる明里そのものだった。」

「正夢…なのかな。私で良かった。」
朝日を浴びる明里

 恥ずかしげに微笑む明里。二人は見つめていた朝日から顔をそらし、同時に顔を向け合うと、微笑んだまま自然に近づく。寄り添い、軽く抱き合いながら、ゆっくりと唇を重ねていく。ますます輝きを強める朝日。涼しい朝風の中で抱き締め合う恋人達の時間。長い口づけの後、照れてややそっぽを向いた貴樹が決然とした口調で言う。

「明里。僕は東京の大学を受験する。再来年の春には東京に行くつもりだ。それまで……」

「私、待ってる。貴樹君を。私も東京の大学に行くわ。再来年の春には……」

「うん。二人で、またあの踏切を渡って桜を見よう。」

「あの踏切…。6年生の春に、『来年も一緒に桜、見れるといいね。』って言ったのに、叶わなかったね。」

「ああ…7年越しになったけど…これから叶えよう。必ず、必ず明里と一緒に見るよ。あの桜を。」

 二人はもう一度、強く抱擁しあった。

(第二回終了)

※ 余白の独り言
 夜明けの二人は、第二話「コスモナウト」にしばしば描かれる「貴樹の夢」の情景が正夢になったものと思っていただければと思います。目の前に巨大な惑星はありませんけど(笑)。あれがあるのでどこか異星の光景なんだなと思いますけど、一体どこなんでしょうね。シリウス星系第4惑星「アガルタ」(「ほしのこえ」に登場)とかね(笑)。
ロケットが分かつ明暗


「秒速5センチメートル」二次創作“トゥルー・エンド”:「距離に負けない想い」(第1回)

桜のタイトル
 

 一応このブログは「日記」のカテゴリーなのですが、あんまり身辺雑記は書くつもりがありません。格別面白いことがないということと、「表」と「裏」は区別したいなあという気持ちで。

 ただ、今夜は聞いて下さい。今年初めて「G]を見たんです。よりによって特大のヤツを。洗面台にいたので、覆わずシンクに落として水責めにしてみましたが、平然としていたので、プッシュすると泡が出る液体せっけんを試してみたところ、絶大な効果があり、「G」のせん滅に成功しました。泡で倒されるなんて、お前はヴリトラか!
ヴリトラ

 あと、特にランキングで上位に入って人気ブロガーになろうとか、アフィリエイト広告で儲けてみようとかは今のところ考えていないのですが、「秒速」の考察を続けていたところランキングが上がっていました。マイナーだから人気ないかなあ、でもこれがやりたくてブログ始めたんだしなあなどと思っていたのですが、皆さん実は結構お好きなんですね(笑)。

 さあ、「秒速5センチメートル」の結末にどうしても納得が行かないという同志諸君、私のゴーストがそうしろと囁くのでSSを書いてみましたよ。宜しかったら読んでみてはくださいませんかな?(全3回)

桜のタイトル

「距離に負けない想い」(貴樹・明里トゥルー・エンド)第1回


 粉雪の舞い散る岩舟町。寒い2月の夕暮れ。帰宅した明里を一通の手紙が待っていた。「篠原明里様」と書かれた懐かしい文字。明里は鞄を玄関に放り出すと、手紙を両手で胸に抱き、自室への階段を駆け上った。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

『前略 明里、お元気ですか?ずいぶんご無沙汰しています。今日は折り入ってお願いがあります。実は……』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

Part1 Seeing The Cherry Blossoms Together (IWAHUNE)
岩舟駅の明里

 4月の初め。来週は始業式。もうすぐ2年生だ。昼前の土曜日の岩船駅はうららかな日差しにつつまれていた。風はまだ冷たい。明里はセーラー服で人気のない待合室に座っていた。ストーブに乗った小さい盥から湯気が昇っている。

「3年ぶり…」

 思わず洩れる独り言。時刻表を見つめる。もうすぐ小山からの列車が到着する。

(私のこと…わかるかしら?)

 読んでいた文庫本を閉じる。カポーティの「草の竪琴」。顔を上げ、軽く頭を振って肩にかかった髪を払う。そこには、優しい目をした、聡明そうな娘がいた。

(彼も…変ったかな。背、また伸びたかな。)

 小学生の頃はあまり変わらない背丈だった。中学生になって再会した時は、彼の方が高かった。さらに3年…。少年と少女が変貌するには十分な時間。

「間もなく3番線に両毛線上り高崎行きの列車が到着します。ご乗車のお客様は…」

 駅のアナウンスが彼の電車の到着を告げる。明里は傍らのバスケットはそのままに、ホームに向かう。

「明里!」

「貴樹君!」

 列車のドアが開き、貴樹が降りた瞬間、同時に叫ぶ2人。明里と貴樹はホームを駆け寄る。

「明里、久しぶり。綺麗になったね。」

「貴樹君こそ。背が伸びて、大人っぽくなったわ。」

 見つめあう二人。視線が絡み合う。こみ上げる甘酸っぱい記憶。雪の夜の出来事。明里はそっと貴樹の胸にもたれかかる。意外なほど熱い胸板に頬が触れる。両腕にそっと背中が包み込まれる。壊れ物を扱うような優しさ。
水溜りの桜の花びら

「私って、すぐわかった?」

「もちろん。」

 しばしの沈黙の抱擁の後、はっと分別を取り戻して、二人は照れながらぎこちなく離れる。

「……私しかいないものね。」

 愚問だと、ちらっと舌を出し、くすっと笑う明里。

「ううん。きっと女の子が百人いてもすぐに判ったよ。」

 真顔で反論する貴樹。二人はホームから改札を出る。待合室に置いたままのバスケットはさりげなく貴樹が持ち、駅舎を出る。

「どうして?」

「うん…笑われるかもしれないけど…」

 頬を掻きながら貴樹が言い淀む。降り注ぐ日差しの明るさに目を細める。

「笑わないよ。言って。」

 貴樹の顔を覗き込む明里。

「あのさ…向こうで、明里の夢を見たんだ。その明里にそっくりだったから。」

「夢に私が…。不思議ね。」

「うん、なぜか女の子と二人で草原で夜明けを待っているんだ。何度も見るんだけど、女の子は影になってずっと顔が見えなかったんだ。何となく明里じゃないかって気はしてたんだけど。でも、この前明里から返事を貰ったでしょう?その後見た夢では顔がはっきり見えるようになって。それが本当に明里にそっくりなんだよ。」

「そう……本当は、夢の私の方が綺麗で、がっかりしたんじゃない?」

 悪戯っぽい表情を浮かべた明里が貴樹をからかう。

「そんなことないよ。本当にそっくりなんだって。」

 からかいを真に受けて、貴樹は少し口をとがらせる。

「それより、僕のこともすぐに判った?」

「うん。一人しか降りなかったから。」

 こいつ、と手を軽く振り上げて見せる貴樹に、きゃっと悲鳴を上げて腕で頭をかばう明里。

「貴樹君は背も伸びて、ずいぶん逞しくなったね。けど、優しい瞳は昔のままだもの。すぐに判ったよ。」

 明里に真顔で言われて、照れる貴樹。

「そ、そうかな…あはは。まだまだ大人っぽくなってないのかもね。」

「貴樹君は大人になってもきっとその瞳のままだよ。ずっと変わらないで欲しいな。」

(私を守ってくれたあの頃の瞳のままで…)

 明里は祈るような気持ちで貴樹の瞳を見つめた。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 『……僕は今度の春休みにまた岩舟町に行こうと思っています。この前は桜の花が見られなかったから、今度はぜひ見れるといいな。明里、また逢ってくれますか?』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
kiss.jpg

 3年前に雪を被った桜の木の前で初めての口づけを交わした。貴樹と明里は、寄り添って思い出の桜の木に向かう。バスケット中にはお弁当とほうじ茶。

「明里。制服ってことは、今日は学校なの?」

「ううん。来週から。貴樹君に、高校生になった私を見せたかったから。」

 くるりと一回転して見せる明里。短いスカートが軽やかに翻る。

「どうかな。セーラー服なんて、ちょっと古めかしい?」

 ぽーと見とれていた貴樹が首を激しく振る。

「そ、そんなことないよ。素敵だと思う。僕の高校の制服とは全然違うし、新鮮だよ。その…明里に良く似合ってるし。」

「あ…ありがとう。お上手ね。貴樹君はいつも優しいね。種子島でモテモテでしょう?彼女とかできた?」

 貴樹の言葉に上気した頬。照れ隠しに冷やかす明里。

「そ、そんな訳ないよ。明里こそ…どうなの?好きな人とか…」

「わ、私は…他の男の子には…その…興味ないから。」

 ほっとため息をつく二人。あまりのタイミングの一致にお互いに噴き出してしまう。

「それにしても種子島から栃木はずいぶん遠いでしょう?」

「うん。昨日は東京の叔母さんの家に泊めてもらって。朝イチで来たんだ。」

「それに…お金だってずいぶん…」

 貴樹を案じる明里。少し不安げに表情を曇らせる。

「うん。正直中学生の僕じゃどうにもならなかったな。でも…」

 貴樹は空を見上げる。強いまなざし。

「僕は…僕は、どうしても明里に逢いたかった。お年玉も小遣いも節約して…高校に入ってからは休暇中にバイトしたり。それでも少し足りなくて、叔母さんに助けてもらっちゃった。『出世払いでいいわよ。』だって。参っちゃうよね。」

「うふふ、素敵な叔母様ね。しっかり出世しないと。」

 歩む先に桜の木が見えてくる。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

『……どうしても明里に言わなくちゃいけないことがあります。直接逢って言わなきゃいけないことが。明里も忙しいかもしれないけど、もし逢ってくれるなら……』

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「やっぱりまだ早かったね。」

 蕾も硬いままの桜の木の前で貴樹が残念そうに首をかしげる。

「うん…なるべく遅めにって今日にして貰ったんだけど。ごめんね。今年はいつもより少し寒くて。」

 明里が申し訳なさそうに言う。二人で桜の木を巡って花を探す。

「仕方ないよね。東京もまだ咲き始めだったし。」

「種子島は?もう咲いた?」

「うん、3月半ばにね。あっちの桜は卒業式も待ってくれないよ。」

「ふーん…少し寂しいね。……あっ見て!」

 明里が腕を伸ばす。細く綺麗な指の示す先の小枝に、小さな花が二つ寄り添うように咲いている。

「……僕たちみたいだね。」

「……私たちみたいじゃない?」

 同時に言って、顔を見合わせ、微笑む二人。
桜の木の前の二人

「ねえ、手紙のことだけど…」

 両手を後ろに組んで、くるりと身体を回転。少し顔を近づけて、おねだりするように明里が言う。

「ああ、明里に言いたいことだね。聞いてくれる?」

 改まった表情になる貴樹。その思いがけなく深刻な表情にどきりとする。なぜか頬が熱く染まる。

「う…うん。聞かせて。」

 桜の木の傍にあるベンチに腰掛ける。少し冷たい春風の中、見つめあう。

「あの日ね…。僕、明里に手紙を書いてたんだ。短い手紙だけど。でも、小山駅で風に飛ばされてしまって。」

「まあ。」

「列車は遅れるし、手紙はなくすし、本当に泣きたくなった。涙をこらえるのに苦労したよ。」

「大変だったね。あの時の貴樹君を慰めてあげられたらいいのに。私、全然気づかなくて。ごめんね。」

「いや、当然だよ。あんな時間まで明里が待っててくれて本当に嬉しかった。でもさ、列車の中ではもう帰ってて欲しいって思ってた。」

「どうして?」

「明里は身体が弱かったし、あんな夜遅くまで寒いところにいたら大変だと思って。」

 貴樹の想いやりに明里は満面の笑みを浮かべる。

「優しいね、貴樹君は。うん、貴樹君は昔から本当に私に優しかったよね。」

(だから好きになったんだ。いつのまにか…)

 明里は心の中で呟く。

「いや、そんなこと……。転校するって電話のとき、泣いてる明里に何も言ってあげられなくて。」

 あの日、悲しむ明里にもっと優しくできたら…。取り返しのつかない後悔が今も貴樹の胸を突き刺している。

「…でさ、手紙は本当に短かったし、言えばよかったんだ、直接。でも…言えなかった。」

「どうして?」

「……」

 貴樹は明里から目をそらし、桜の木を見上げる。遠い視線。しばしの沈黙。

「あの夜、この桜の木の前でさ、明里と、その…」

「あ、うん…。そうね…。」
 
 二人で顔を赤らめ、うつむき、口ごもる。もう3年経ったのに、あの口づけを思い出すと胸が高鳴る。

「あの時さ……生まれて初めての強い喜びと、深い哀しみを感じたんだ。ああ、明里は今僕だけのものだっていう喜びと、ああ、この瞬間が過ぎたら明里とは二度と逢えなくなるっていう哀しみと。」

 顔を真っ赤にしながらも、意を決した貴樹が語り続ける。

「あの時、僕は明里にお別れを言うべきだった。手紙もそういう内容だったんだ。『明里に恥じない人間になりたい。好きでした。』って。」

 はっとした表情で顔を上げる明里。顔色が少し青ざめる。

「じゃ、じゃあ…貴樹君が言いたいことって…その…」

「待って明里!そうじゃない。あの日、確かにお別れを言いにここに来た。でも言わなかった。いや、言えなくなったんだ。僕の中に、全然違う気持ちが湧きあがったから。僕が言いたいのはその新しい気持ちなんだよ。」

 顔の前で両手をぶんぶんと振って貴樹はまくしたてた。

「じゃ…じゃあ、言って。貴樹君の新しい気持ちを。」

 少し落ち着きを取り戻した明里。顔を俯きかせながら促す。不思議な予感。胸のときめきが止まらない。

「うん…恥ずかしいけど。あの時は恥ずかしくて言えなかったけど、今度こそ言わなきゃ。」

 貴樹がつっと両手を突き出して明里の両手を握る。暖かい血潮がかようのを感じる。

「明里……好きだ。絶対離したくない。」

 ベンチで明里のお弁当を食べ、灯ともし頃に駅に戻る。それからの二人は俯きがち加減であまり会話もなく、穏やかな沈黙の中にいた。つながれたままの熱い二人の指は、貴樹が列車に乗るまで離れなかった。

「明里。その…返事を…くれないかな?」
新宿の桜

 ホームに列車が滑り込んできたとき、貴樹がぽつりと言った。覚悟はできているという声で。

「うん…手紙、書くね。」

 にっこり笑ってはぐらかす明里。

「明里……」

「私だって、貴樹君に言いたいことがあるの。でも、また今度、ね。」

「今度って…明里…」

 ベルが鳴る。思わず下車しようとする貴樹を明里が制する。

「私、貴樹君に逢いに行くの。その時に…ね?」

 重たげなドアが閉まる。もの問いたげな貴樹の瞳に、明里は謎めいた、だが最高の笑顔を見せて手を
振った。がたんとひと揺れして列車が動き出す。

(第1回終了)


※ 余白の独り言
 
 明里には「葛飾の叔母さん」がいるようですが、貴樹の「叔母さん」は私の創作です。イメージとしては「魔法少女まどか☆マギカ」のまどかママ(鹿目詢子)。
鹿目詢子

 「直に告るだけの根性もねぇ男はダメだ」と厳しいことを言う人ですが、きっと告る勇気を出した甥っ子には優しいんじゃないかと思います。まどかもタツヤも優しい従兄弟の貴樹がきっと大好きなことでしょう。

「秒速5センチメートル」考察(その7):終わりに/付録

闇夜の鳥達 


 一週間に亘って長々と語らせていただきました「秒速」考察もとうとう最終回です。ここまでお付き合いいただき本当にお疲れ様でした。そしてありがとうございました。
  それでは、「秒速5センチメートル」の考察その7です。 

 7.終わりに
 私の「“理想の恋”理想の恋呪縛説」は、大林宣彦監督、原田知世主演の映画「時をかける少女」の冒頭字幕に想を得ています。そこにはこう書かれていました。

         ひとが現実よりも、
         
        理想の愛を知ったとき、
        
        それは、ひとにとって、

         幸福なのだろうか? 
          不幸なのだろうか?

原田知世 

 映画の中で、知世さんは本来あり得ないはずの「未来人との恋愛」を経験してしまいます(それが彼女にとっての「理想の恋」なのです)。未来人は未来に帰るにあたって、彼女の記憶を消してしまいますが、「理想の恋」をしたという記憶だけは残り、未来の彼女(30代?)は幼馴染の誘いもあっさり断り続けており、高校の実験室でラベンダーの匂いを嗅いだ影響なのか、大学の薬学部に残っても研究を続けています。
  この映画は傑作だと思います。私は同時上映の薬師丸ひろ子映画(確か松田優作と共演した「探偵物語」)を目当てに行ったのですが、この映画ですっかり原田知世ファンに鞍替えしてしまいました。もっともその後の映画はこれに比べるとどうも……

 もちろん作品の鑑賞の仕方や感想は人それぞれなので、いろいろな考え方があっていいのは当然のことです。私の解釈が絶対正しいなんて夢にも思っていませんが、まあこういう解釈もありかな、と思っていただければ幸いです。

弓を射る貴樹 

 8.付録

 「秒速5センチメートル」は短いですが極めて密度の濃い作品です。なお残る謎(?)が我々の前に立ちはだかっています。以下の「謎」に独自の解釈をしてみましたが、皆さんはどう思いますか?

坂道を走る 

 ① 二人の親の職業は? 
  二人とも「転勤族」の子供だったということですが、明里さんは岩舟市、貴樹君は種子島に転居して以降引っ越しはありません。一体ご両親はどういう職業の人なんでしょうか。

 貴樹君のお父さんは(登場しないけど)ロケット関係の仕事なのかなという気もします。第二話で打ち上げてたロケットに関係しているのではないでしょうか。それで貴樹君も理系の道へ。第三話で打ち上げた宇宙船が搭載してたらしい宇宙探査機の記事を立ち読みしてますが、あれも「親父の探査機だ…」みたいな気持があったのでは。明里さんの両親は第三話でちらりと登場していますが、さすがにあれでは職業不詳(笑)。しかしあれ以降もずっと岩舟に住んでいるということは、脱サラして農業とかでしょうかね。

電車の貴樹 

 ② 無断外泊の「けじめ」は?

 
 これはまずい。絶対まずいですよ。特に明里さん。中学生の女の子が一晩帰ってこないなんて。家には連絡したんでしょうか。連絡したって普通「帰ってこい」って言われるだけだろうから、無断外泊っぽいですよね。不純異性交遊というより、犯罪に巻き込まれたんじゃないかって心配するでしょうね、親御さんは。朝帰りして家に戻った明里さんを待っているのはパトカーと警官の群れだったりして。
  貴樹君だって無断外泊はやばいよ。「女に会いに行って一晩一緒に過ごした。」なんて正直に言ったら藪蛇だ。「テヘペロ」で済むものか。
 (コミック版を読んでの追記)
 この辺りの疑問について、置き手紙(貴樹)、お弁当作りを手伝ってもらってそれとなく理解してもらっている(明里)というフォローが入ってました。とはいえ帰宅後は二人とも叱られたんでしょうね。それとも二人とも普段の素行は良さそうだから、大丈夫だったかな?

 ③ そ、その「隣の男」は誰だ!?
  第三話、山崎まさよしの歌のバックの断片的記憶描写ですが、貴樹君と花苗さんの描写の後、後姿ですが、明里さんと高校生の男の描写があります。貴樹君もそうですが、明里さんもポストを気にしてて、この辺り文通の終焉期ということを匂わせているようにも思いますが、さてこの後姿の男は明里さんの何なんでしょうか。

ポストを見る明里と野郎A 

 がっしりした体格で、スポーツバックを背負ってややガニ股気味のようです。素直に解釈すれば「当時の明里さんの彼」ということになるのかも知れませんが、ちょっと待って欲しい。文通終焉の頃だとしても、二人ともまだ「決定的に切れた」とまでは思っていないんじゃないでしょうか。それなのにいきなり乗り換えるなんて、明里さんはそんなビッチじゃない(断言)。 
  また、貴樹君と花苗さんだって傍目に見れば「彼氏彼女」な訳ですが、実際には違います。ということで、私の解釈では、「下校で一緒になった同級生ないし同じ部活の人」。彼は当然気があるけど、明里さんは…といったとこではないでしょうか。明里さん実は彼に「ぞっこんラブ」とかだと、貴樹君に代わってこっちが涙目だ。

花苗と貴樹・ポストの前 

 ④ なぜあの踏切に? 
 第三話冒頭及びラストシーンで二人がすれ違う踏切ですが、二人はなぜあの日あの時にあの思い出の踏切に来たのでしょうか。貴樹君は…自宅での仕事に疲れ、ふと見ると満開の桜。気晴らしに散歩にでも行くかと外出すると、足は自然にあの踏切に…というところでしょうか。ということは、会社辞めてからかもしれないけど、昔住んでいたあたりに戻ってきているんでしょうかね。

踏切の貴樹
 

 明里さんは…マンションのベランダで桜の花を手に受けて部屋に戻るシーンが描写されていますね。くー幸せそうな表情だ。ということは、新婚さんのスィートホームはやはり昔住んでいた辺りということなのでしょうか。なお、このシーンの明里さんの服装は線路での服装と同一のようです。ちょっとした買い物か用事で出かけたのでしょうか。もし旦那と一緒に出掛けていたらどうなっていたのだろう。貴樹君いきなり「通り魔」に変身とか。もっとも、あの日は平日な感じがしますね。貴樹君は仕事の合間に出てきた感じだし。

踏切の明里
 

二人ともあの線路の近辺に住んでいるのなら、今後も出会うことがちょくちょくあったりして。 

 (コミック版を読んでの追記)
 
 明里さんの旦那は会社らしいのでやはり平日ですね。貴樹君はアニメではフリープログラマーみたいだけど、コミック版では宇宙開発に関係があるらしいような小さな会社に入っています。

♯追記
 秒速病患者さん達との対話の中で、ラストシーンの踏切は“想い出の踏切”とは別モノであることが判明しました。小田急線沿線には違いないし、そんなに遠い場所ではないと思いますが。

④ 明里さんの部活は? 
  妙に細かい話ですが、明里さんの中学校での部活は何でしょうね。手紙の中で早朝に登校することがあるということを言っているので運動部なのかも知れませんが、私の一押しは放送部。朝の放送をするために早出をしているのです。もちろん明里さんはアナウンサーです。根拠はありません。でも放送部。絶対。放送部なら、それはとってもうれしいなって。

コミック第1巻 

(コミック版を読んでの追記) 
 極めて遺憾ながら、明里さん曰く、バスケット部に入ったのだそうです。貴樹君も言ってますが、本当に意外だなあ。フィジカル・コンタクトきつそう。文学少女なのに大丈夫なのだろうか。バドミントン部とか卓球部くらいがいいのでは?でもハードにやる気があるなら、いっそテニス部がいいと思います。明里さん、「岩船の高嶺愛花」の二つ名は君のものだ!

テニスをする高嶺愛花 

 ⑤ なぜ中学から電車通学を?
  栃木県に転校して地元の中学校に通う明里さん。通常中学校って、徒歩圏内か、せいぜい自転車通学程度ですよね。なぜ明里さんは電車通学なのでしょう。いくら岩舟町が小さい町だといっても中学校くらいはあるはずでは。高校ならまあわかるのですが……。ここで大胆な解釈を。

電車を待つ明里 

ア 当初岩舟町の中学校に転入(というより小学校卒業後に引っ越して入学式から行っているはずので、入学でいいのかな)。

イ ひどいいじめに遭遇。耐えられず一学期中ないし夏休みの間に転校。(とりあえずいじめた奴ちょっと来い)
 ウ そのため域外通学となり、電車を利用。 
  こういうことなら、電車通学もありかとは思うのですが…。そして、二学期に入って貴樹に手紙を出したのも、新しい学校でまた一からやり直さなければならないという辛い状況から、思わず救いを求めたということで……。しかし友達をなかなか作れないタイプではあっても、いじめの対象となるという感じでもないのですがね、明里さんは。性質の悪い女子グループにでも遭遇したのかな。都会的な感じが妬まれたとか、スケ番が片想いしている男子が明里さんににちょっかいを出したので逆恨みされたとか。

コミック第2巻 

 ⑥ 「明里」と「花苗」の名前の由来は? 
 
 ここまで来るとただ因縁つけてるだけのようですが、なぜヒロイン達はこの名前なのかについてちょっと考えてみましょう。第二話では、虚空をめざす探査機を載せたロケット発射のシーンが印象的ですが、実は、「あかり」という人工衛星があります。以下ウィキペディアより抜粋です。
  “あかり (第21号科学衛星ASTRO-F) とは、日本の宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部(旧宇宙科学研究所)が開発した赤外線天文衛星である。別名はIRIS (InfraRed Imaging Surveyor)。2006年2月22日にM-Vロケット8号機によって内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた。”

人工衛星「あかり」 

 そして「かなえ」ですが、こちらは該当する人工衛星や探査機はないのですが、気になるものがありまして…。それは「のぞみ」です。またもやウィキペディアより抜粋。
 “のぞみ(第18号科学衛星:計画名PLANET-B)は、宇宙科学研究所 (ISAS) によって打ち上げられた日本初の火星探査機。1998年(平成10年)7月4日午前3時26分(日本時間)に、M-Vロケット3号機により打ち上げられた。小中学校の教科書に取り上げられるなど広く国民の期待を集め、火星へ約1,000 kmまで接近したものの、最終的には火星周回軌道への投入を断念した。”

 火星探査機「のぞみ」 

 全然関係ないじゃないか?まあもう少し話を聞いてください。この「のぞみ」が成功していたら、ヒロインの名前に使用した可能性はあると思うのですが、失敗したので適当ではないと考えたのかも知れません。貴樹への片想いは叶わなかったという意味では「澄田希美」なんて名前も悪くはない気がしますが。
  ここで、昔なつかしい「わらべ」を思い出して下さい。「欽ちゃんのどこまでやるの!?」(略して「欽どこ」)に出ていた三人娘です。「めだかの兄妹」はヒットしましたね。「もしも明日が…。」なんてのも歌ってました。その「わらべ」、三人姉妹という設定で、上から「のぞみ」「かなえ」「たまえ」という名前で、「希望叶え給え」という語呂合わせになっていたのです。ということで、「のぞみ」が駄目なら「かなえ」にならざるを得ないということで…。

わらべ:左からのぞみ・かなえ・たまえ 

 実際、「のぞみ」をやってた高部知子では「花苗」のイメージとはかけ離れすぎており、「かなえ」の倉沢淳美の方がまだしもという気がします。いや、別に「わらべ」から無理にキャスティングする必然性はないんですけどね。
  ということで、私は人工衛星・宇宙探査機から名付けた説を唱えます。まず誰からも支持されないであろう異端の説ですが、オリジナリティだけは十分ではないでしょうか。
  以上で考察駄文は終了です。なお、明日からは私のゴーストがそうしろと囁くので書いた、「ぼくのかんがえたとぅるーえんど」を掲載させていただきます。ま、一応二次創作ということになりますか。宜しかったら御一読のほどを…

♯ 再掲載した考察(その6)はhttps://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-1759.html#comment2004
にあります。

「秒速5センチメートル」考察(その5):「雪の一夜」

岩舟の夜明け
  

 はい、今夜も始まります。いよいよ佳境の「秒速5センチメートル」の考察その5です。 

 5.「雪の一夜」について 

  それでは第一話「桜花抄」のクライマックスシーンである「雪の一夜」について考察してみましょう。もう逢えないから最後に逢いに行くという、本来それはさほど劇的なイベントにはなりえないものでした。もし貴樹君が予定通り7時に到着したとしましょう。たぶん貴樹君は9時か10時の電車で(大負けに負けても最終電車で)帰ったことでしょうから、「雪の一夜」は発生しません。また、明里さんは「渡さなかった手紙」を書いていません。あの手紙は貴樹君を待っている間に書いたものなのですから当然です。渡さない手紙なら別にどうでもいい?いやいやそんなことはありません。

動け両毛線! 

 待っている間に、明里さんははっきり自覚したのですよ。貴樹君なしで生きていかなければならない時が来たということを。まさに「君はダンデライオン 本当の孤独を今まで知らないの とても幸せな寂しさを抱いて これから歩けない 私はもうあなたなしで」(松任谷由美「ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ」より)ということです。それは明里さんにとって痛みを伴う成長の瞬間だったのです。

 ということを踏まえて「電車が遅れなかった場合」をシミュレーションしてみましょう。明里さんと貴樹君はお弁当を食べながら語らいますが、お弁当もほうじ茶も、貴樹君にはさほどのものではありません(作ってきてくれた気持ちは嬉しいし、彼は優しいから「おいしい」と言うに決まってますが)。現在や今後の生活について語る貴樹君に対し、手紙を書いていないことから総括ができていない明里さんは過去の思い出ばかりを語ります。貴樹君抜きの明里さんの現在の生活なんて空虚なので語るべきことはないし、この先のことなんて思い浮かびもしません。

待合室の明里 

 将来への不安ばかりを口にする明里さんに対し、「不安なのは僕だって同じなんだよ。」と思いながらも口には出さない心優しき貴樹君。もしかすると、やや辟易しているかも知れません。明里さんの不安は解消されることもなく、いよいよお別れの時がやってきます。電車のドアが閉まる寸前、貴樹君はそっと手紙を渡します。「明里。さようなら。」貴樹君が去ってしまったホームで手紙を読む明里さん。みるみる滲んでいく文字。ぽたぽたと手紙に落ちる涙。そう、明里さんは貴樹君の手紙で今回の再会が本当の別離であることを知ったのです。ひとしきり泣いた後、「私も強くならなきゃいけないんだわ。」誰もいないホームで呟く明里さん。少女が一歩大人の階段を昇った瞬間。

 ……とまあこんなところでしょうか。最終的には明里さんは「渡せなかった手紙」を書いた段階の精神にまで昇ることができました。二人ともに小学校時代の心温まる思い出を心に抱いて、明日からは未来志向で生きていくことでしょう。明里さんはほぼ本編のとおり生きていきます。一方貴樹君は種子島で花苗さんといい感じになっていきます。ちゃんと見ていれば素敵な女の子が自分を好いてくれていることなんてすぐ判りますよね。

お弁当を食べる二人 

 貴樹君は大学に行くために島を離れますが、「迎えに行くよ」という約束の言葉を胸に花苗さんは元気に暮らしています(もちろん長期休暇ごとに貴樹君は帰ってきて、愛を育み続けるのです)。そして4年後の春、就職の決まった貴樹君のプロポーズを受け、二人は東京で新しい暮らしを送るために機上の人となったのでした。うわあ、みんなハッピーじゃないか。めでたし、めでたし。これぞ「秒速5センチメートル」トゥルーエンドだ!

 しかしながら実際には発生してしまった「ワルプルギスの夜」ならぬ「雪の一夜」。これは何を二人にもたらしたのでしょうか。まず貴樹君ですが、電車が大幅に遅れます。なんと4時間以上も。私も長距離通勤だから判るのですが、近郊電車はほんとにやばいときはやばいです。私の住んでいるところではあまり雪ということはないのですが、風とか雨でも平気で数時間送れます。初めて行く場所に、初めて乗った電車があれでは泣きたくなるのはもっともです。よく泣かなかったよ貴樹君。ドアの開閉ボタンに気づかなかったのは仕方がない。おじさんも怒ってないから気にするな。

貴樹を抱きしめる明里 

 それはともあれ、この遅れに遅れた電車の中で貴樹君の明里さんへの想いは募りに募っていきます。彼の責任ではないのですが、約束の時間に遅れることは明里さんへの罪悪感に直結しますから。そう、携帯さえあれば…しかし時代が違います。当然二人とも持っていないので連絡すらできません。「明里…どうか…もう…家に…帰っていてくれればいいのに。」この祈りにもいた呟きは彼の真心そのものだったはずです。そして駅にたどり着いたときに明里さんが本当に帰っていたとしても、貴樹君は怒らなかったと思います。逢えないのは残念にしても、明里さんの身体が弱かったことはよく知っているので、無理して欲しくないと本気で思っていたはずなので、むしろほっとしたんじゃないでしょうか。それから駅を追い出されて、一人「八甲田山」(笑)。あ、翌朝電話したら逢えるかもね。

  なかば諦めつつ、他にどうしようもないからたどり着いた岩舟駅で、貴樹君は天使を見てしまうことになりました。私にも覚えがあるのですが、大幅に遅くなってもういる訳ないと諦めながらも行ってみたら待っていてくれた、というシチュエーションはたまりませんよね。大して好きでない相手だとしても一気に愛情が燃え上ってしまうような。私の場合はウィーンでね……いやいやそんなことはどうでもいい。そんなわけでお別れのためにやってきた貴樹君でしたが、状況に翻弄され、逆に恋慕の心に火がついて燃え上ってしまったのです。

別れの朝の明里 

 一方明里さんですが、こちらは待ち時間に手紙を書いて、前述の心境にたどり着きました。2時間程度の遅れだったらまだ貴樹君は帰れるわけだし、手紙も渡したことでしょう。しかしなにしろ4時間以上です。もう逢えないかもしれないという不安を抱えながらじっと待つ明里さん。その不安はいかばかりだったことでしょう。駅員さんは親切そうだったから、「遅れるけど到着するよ」くらいのことは教えてくれたかも知れませんが。

 別れの場だということは自覚した明里さんでしたが、強い不安の下、焦らしに焦らした後にようやく現れた貴樹君(手練手管じゃないんですけどね)を見て、激情が溢れないわけがありません。二人はこれが別れの場だということをきちんと認識していたにも関わらず、運命のいたずらに翻弄された結果、再会の瞬間にこれまで感じたことのないような激しく強い「恋愛」をしてしまったのです。こんなにも明里が(貴樹君が)愛おしいなんて。まさに「瞬間、心重ねて」です。

貴樹を見送る明里 

 そして初めての口づけ。手紙に書いた「好き」を遥かに上回った、まさに「愛してる」の瞬間でした。図らずも燃え上った二人の愛の炎は、ここに一瞬の「理想の恋」を現出してしまったのです。結婚した明里さんも、旦那さんとの恋愛の中でこれほど劇的な状況は発生しなかったのではないでしょうか。まあ、その代わりもっと穏やかで心の温まるような時間を持ったことでしょうけどね。けっ。

 そして納屋での一夜。あの二人に限って不埒なことはしていないとは思いますが(「やっちゃいました、てへっ」ていう話だったら、もう翆玉のリ・マージョン(注)やって異世界にでも飛んで行っちゃえって思うよ)、二人にとってそれは、大人の「一夜の契り」に限りなく近いものだったのではないかと思います。この上なく愛し人との二人だけのゼロ距離な時間。ここまでを「理想の恋」に含めていいでしょう。様々な偶然を積み重ねて「理想の恋」は生まれ、儚くも美しく輝き、そして朝二人が目覚めた時、完全に、そして永遠に去っていってしまったのです。

夜道の二人 

(注)2006年のアニメ「シムーン」の用語。シムーンとは「神の乗機」と呼ばれる飛行艇で、遺跡から発掘したオーバーテクノロジーの産物です。リ・マージョンとはシムーンの放つ光の航跡によって空中に特定の図形(紋章)を描く行為及びそうして描かれた紋章のことを指します。

 描き出された紋章には攻撃・防御などの様々な効果がありますが、「翠玉のリ・マージョン」は 伝説のリ・マージョンとされ、「本当の効果」は充分に判っていませんでしたが、シムーンに時空を超えさせる効果があることが劇中で判明しました。

シムーン 

↑右上の変なのが飛行艇シムーン

(コミック版を読んでの追記)
 「雪の一夜」については一巻でもう少し詳細に描かれています。泊った納屋内の様子とか、明里さんのコートの下はなんと制服でしたという事実とか。家に帰ってお弁当作ったんだから私服に着替えているほうが自然な気もしますが、もしかして制服姿を見せたかった?靴も靴下も濡れちゃったようです。当然ですが「やっちゃって」はいないようで一安心。

♯再掲した考察(その6)はhttps://nocturnetsukubane.blog.fc2.com/blog-entry-1759.html#comment2004
にあります。

「秒速5センチメートル」考察(その4):渡せなかった手紙

コスモナウト

 ニャル子さんは相変わらず面白いですね。今回登場のイースの偉大なる種族は、旧支配者ではないんですが、時間の秘密を完全に解明した精神生命体という、ある意味旧支配者よりもすごい存在です。過去の地球では古のもの(これも旧支配者ではない種族)とかクトゥルーとかと小競り合いをしていたとか。

 それはさておき「秒速5センチメートル」の考察その4です。今回はやや長文です。

4.「渡せなかった手紙」について

渡せなかった手紙

 明里さんと貴樹君はそれぞれお互いあての手紙を用意していましたが、結局どちらも渡せませんでした。その内容は映像ではほとんどわかりません。明里さんの手紙に「きっと大丈夫」とあるのが見える程度です。それなら別れ際に伝えているからいいわけですが、風に飛ばされた貴樹君の手紙は仕方がないとして、なぜ明里さんは手紙を渡さなかったのでしょうか。小説版「秒速5センチメートル」には手紙の内容がはっきり描かれているので、とりあえず読んでみましょう。まず明里さんの手紙から。

貴樹くんへ
お元気ですか?
今日がこんな大雪になるなんて、約束した時には思ってもみませんでしたね。
電車が遅れているようです。だから私は、貴樹くんを待ってる間にこれを書くことにします。

目の前にストーブがあるので、ここは暖かいです。
そして私のカバンの中にはいつもびんせんが入っているんです。いつでも手紙が書けるように。
この手紙をあとで貴樹くんに渡そうと思っています。
だからあんまり早く着いちゃったら困るな。どうか急がないで、ゆっくり来てくださいね。

今日会うのはとても久しぶりですよね。なんと十一ヶ月ぶりです。
だから私は実は、すこし緊張してます。
会ってもお互いに気づかなかったらどうしょう、なんて思っています。
でもここは東京にくらべればとても小さな駅だから、
分からないなんてことはありえないんだけど。
でも、学生服を着た貴樹くんもサッカー部に入った貴樹くんも、
どんなにがんばって想像してもそれは知らない人みたいに思えます。

ええと、何を書けばいいいんだろう。
うん、そうだ、まずお礼から。
今までちゃんと伝えられなかった気持ちを書きます。

私が小学四年生で東京に転校していったときに、
貴樹くんがいてくれて本当に良かったと思っています。友達になれて嬉しかったです。
貴樹くんがいなければ、私にとって学校はもっとずっとつらい場所になっていたいと思います。

だから私は、貴樹くんと離れて転校なんて、
本当にぜんぜんしたくなかったのです。
貴樹くんと同じ中学校に行って、一緒に大人になりたかったのです。
それは私がずっと願っていたことでした。
今はここの中学にもなんとか慣れましたが、(だからあまり心配しないでください)
それでも「貴樹くんがいてくれたらどんなに良かっただろう」と思うことが、
一日に何度もあるんです。

そしてもうすぐ、
貴樹くんはもっとずっと遠くに引っ越してしまうことも、私はとても悲しいです。
今までは東京と栃木に離れてはいても、
「でも私にはいざとなれば貴樹くんがいるんだから」ってずっと思っていました。
電車に乗っていけばすぐに会えるんだから、と。
でも今度の九州のむこうだなんて、ちょっと遠すぎます。

私はこれからは、一人でもちゃんとやっていけるようにしなくてはいけません。
そんなことが本当に出来るのか、私にはちょっと自信がないんですけど。
でも、そうしなければならないんです。
私も貴樹くんも。そうですよね?

それから、これだけは言っておかなければなりません。
私が今日言葉で伝えたいと思っていうることですが、
でも言えなかったときのために、手紙に書いてしまいます。

私は貴樹くんのことが好きです。

いつ好きになったのかもう覚えていません。
とても自然に、いつの間にか、好きになっていました。
初めて会ったときから、貴樹くんは強くて優しい男の子でした。
私のことを、貴樹くんはいつも守ってくれました。

貴樹くん、あなたはきっと大丈夫。
どんなことがあっても、貴樹くんは絶対に立派で優しい大人になると思います。
貴樹くんがこの先どんなに遠くに行ってしまっても、
私はずっと絶対に好きです。

どうか どうか、それを覚えていてください。


 次に、飛ばされてしまった貴樹君の手紙です。

貴樹の手紙

大人になるということが具体的にはどういうことなのか、
僕にはまだよくわかりません。

でも、いつかずっと先にどこかで偶然に明里に会ったとしても、
恥ずかしくないような人間になっていたいと僕は思います。

そのことを僕は明里に約束したいです。

明里のことが、ずっと好きでした。

どうか どうか元気で。

さようなら。


 二週間かけて書いてたったこれだけかよという突っ込みはこの際置いといて、分量には大きな相違がありますが、完全に両想いですね。それが叶わないのだからこちらも辛いんですよねえ。

 さて、この手紙から何が読み取れるでしょうか。まず明里さんの手紙ですが、駅の待合室で貴樹君を待ちながら書いたものです。鞄の中にはいつも便箋が入っているという記述に要注意です。半年前に始まった二人の文通ですが、他に文通をしている相手がいるとも思えないので、貴樹君専用と思われます。栃木の中学校に溶け込めないままの明里さんは、貴樹君に手紙を書くことで何とか孤独になりがちの日々をやり過ごしていたのではないでしょうか。

明里の手紙

 ではなぜ明里さんはそんなにも新しい環境に溶け込めなかったのでしょうか。彼女の手紙には貴樹君への感謝が綴られています。引っ込み思案で内気な幼少時代の明里さんは、本人が言うように、もし彼がいなかったらきっと辛い小学生時代を送っていたことでしょう。貴樹君はまさしく明里さんにとっての救世主でした。しかし、あまりにも救われすぎたとも言えます。二人はまるで一心同体のようです。前に二人の趣味嗜好は一致していたと書きましたが、案外明里さんが貴樹君の趣味に合わせていったという側面もあるのではないかと思います。明里さんは完全に貴樹君に依存していました。彼女にとって、貴樹君との関係が全てであった時期があるといえます。好きになるのは当然でしょう。

明里の手紙を読む

 大人になっていくためには、そんな関係はいつまでも続けていてはいけないし、続かないだろうということを我々は知っています。傷つきながら、辛抱しながら周囲と折り合いをつけていく、それが普通の子供のあり様でしょう。しかし、我々にも明里さんにとっての貴樹君のような「理想的なコミュニケーション相手」、別の言い方をすれば「安易な逃げ道」が存在したとしたら、それでも彼女と違う道を行けるでしょうか?私ならば決して行けないでしょう。どっぷりと「二人の関係」(いやらしい意味ではないですよ)に浸りきってしまった小学生の明里さんを責めることは誰にもできないのではないでしょうか。

 貴樹君の凶悪なまでの優しさ(しかも彼はまだ優しさが足りないとさえ考えている。タカキ…恐ろしい子!)と、それをためらうことなく享受して楽しい日々を送ってきた明里さん。これからもずっと続くものと思っていたそうした日々を、引っ越しにより一気に失ったことは、当然ながら明里さんの精神にとって大きな痛手となりました。彼女はなかなかその痛手から立ち直るこができず、「失われた半身」である貴樹君に救いを求めることとなったのです。さらに、その矢先に判明した「貴樹君が逢うことすらも出来ない遠くに行ってしまう」という危機的な事態は、彼女にとってさらなる大きな衝撃であったことは疑う余地はありません。

 一方貴樹君は、中一時代を見てわかるように、明里さんを失った後でも、部活で汗を流し、先輩からも信頼されるなど、周囲と良好なコミュニケーションを築けています。それは引っ越していないということもあるでしょうが、むしろ貴樹君自身の性格に依るところが大きいのではないかと思われます。貴樹君の手紙を見て下さい。「好きでした」と過去形で書いていますし、内容も明らかに「別れの手紙」です。

小学校の図書カード

 Mr.Childrenの“innocent world”という歌に「日の当たる坂道を昇るその前に またどこかで会えるといいな その時は笑って」という一節がありますが、まさにそんな感じではないですか。第一話の描写からみて、いつもそばにいた明里さんがいなくなるということは、貴樹君にとっても大きな痛手だったと思われますが、彼はそれを克服していました。いや、克服したと信じていたというべきでしょうか。第二話第三話を見れば彼が過去を引きずっているのは明白ですから。

 しかし諸君、待っていただきたい。私はあの雪の日以前の時点では貴樹君は「明里さんとの日々」を克服していたと思うのです。それではどうしてあんなに喪失感一杯になって彷徨うようになったのか。その原因こそがあの「雪の一夜」だったわけです。私の弟(違う)、諸君が愛してくれた遠野貴樹は死んだ!何故だ!

ギレン総帥

 手紙の考察を続けましょう。貴樹君の引っ越しに衝撃を受けた明里さんですが、それは彼女が精神的に大きな成長を遂げるための大きな転機となったのです。

 「私はこれからは、一人でもちゃんとやっていけるようにしなくてはいけません。そんなことが本当に出来るのか、私にはちょっと自信がないんですけど。でも、そうしなければならないんです。私も貴樹くんも。そうですよね?」彼女の手紙のこの一節には、幼いながらも凛々しく気高い彼女の決意が感じられます。うーん、さらに惚れそうだ。明里ー、俺だー!結婚してくれーっ!!

明里の手紙3

 そうです、彼女は「懐かしくも楽しかった貴樹君との関係」がもはや二度とは戻らないということをこの時はっきりと自覚し、今後はそれに頼ることなく生きていくということを宣言しているのです。明里さんはこの手紙を貴樹君に渡すべきだったと私は思います。渡していれば、その後の彼の人生はまた違ったものになっていた可能性が高いと思うのです。貴樹君の手紙は風に飛ばされてしまったので、渡したくても渡せないものとなりましたが、明里さんは自分の意志で手紙を渡しませんでした。なぜ渡さなかったかといえば、私はやはり「雪の一夜」のせいだと思うのですが、それについては後ほどたっぷりと。

 最後に明里さんが愛の告白をしています。「好きです」と明里さんは現在形で言っています。そして将来もずっと好きだと、未来についてさえも言及しています。本当でしょうか。私は、結婚して幸せに暮らしているだろう現在においても、明里さんは貴樹君のことが大好きなんだろうと思います。好きといっても今後不倫関係に陥るかもしれないといった危険なものでは決してなく、今の自分が形成されるにあたって大きく、好ましい影響を与えてくれた、彼女にとってはほとんど全てといっていい時期があり、“I was born to be yours. You were born to be mine.”(竹内まりあ「テコのテーマ」より)と感じることができた、忘れられない瞬間をも共有した貴樹君が好きでないなんてありえないのです。それは自分自身を否定するに等しいのですから。


ハルキゲニア

「秒速5センチメートル」考察(その3):「水野理紗」の謎

花苗と貴樹

 昨日今日と初夏らしくない涼しさですね。皆さん体調管理にはくれぐれもご注意を。

それでは「秒速5センチメートル」の考察その3です。

3.「水野さん」の謎
水野さん
 第三話に突如登場し、断片的な映像とともに視聴者を混乱させる「初見殺し」の水野さん。私も一瞬「仕事モード」の明里さんなのかと思いましたよ。よく見ると全然違うことは判るのですが。彼女について読み取れるところでは、就職後に付き合いだして3年。肉体関係当然あり。優しい貴樹君が好きだけど、3年の間に心の距離が全く近づかなかったことに絶望し、別れを切り出した-というところでしょうか。仕事も彼女も失って、普通ならどん底状態ですが、貴樹君はどちらも一切頓着していないように見えます。仕事の方は、自宅で起業しているようですし(前職を生かしているのかな?)、水野さんからの電話とわかってあえて出ない描写もあるので、彼の方には未練はないようです。
水野さんその2
 ではなぜその気もないのに貴樹君は水野さんと付き合ったのでしょう。貴樹君は昔から優しい子でした。明里さんが転校を告げたさい、優しい言葉をかけられなかったことを悔やむほどの優しさは、異常なほどと言っていいのではないでしょうか。小学生なら当たり前なのに。それに、黒板に書かれた相合傘を消して明里さんの手を取って教室を出ていくシーンがありますが、あれ、普通の小学生の男の子にはできませんよね。好きな子がいて、それを周囲から囃された場合、男の子というのは馬鹿だから、「そんなんじゃねーよ!」とか言って敢えて好きじゃないような素振りを見せたりして、女の子を傷つけてしまうのが関の山でしょう。こんな優しい男の子が女の子たちにモテモテなのはむしろ必然なわけで、明里さんはもとより、中学校の先輩、花苗さんや水野さんに心を寄せらるのは不思議でもなんでもありません。リア充爆発しろ!
貴樹と水野さん
  ただ、誰にでも優しいというところがある意味「罠」で「優しさ」と「恋」は似てるから怖いのです。花苗さんは貴樹君の優しさに惹かれ、ぐんぐん好きになっていきますが、告白寸前にそれに気づいて断念しています。水野さんは、あの時告白していた場合の花苗さんの未来の姿を示唆したものといえると思います。観客が知らない「誰?」的な人を敢えて持ってきたのは、あそこに花苗さんを持ってくると第二話が成立しないからというのは当然として、花苗さん自身がとても健気でキュートに描写されているので、観てるこちらとしては彼女を嫌う要素は全くないわけで、水野さんを花苗さんに置き換えてしまうと、我々の貴樹君へのシンパシーが大きく減衰することになるからでしょう。

 花苗さんは賢明にも告白を回避しましたが、告白していたとしたらどうなったかというと、多分貴樹君は振ったりしなかったと思います。彼はとっても優しいから。付き合いだせば、互いへの想いはどんどん強まっていき、近づいていくというのが普通の恋愛でしょうが、貴樹君の場合は、自分も好きだから付き合うのではなく、傷つけたくないから「いいよ」と言っているだけなので、常に優しく接してはくれるでしょうけど、キスしようが抱かれようが、心の距離は一向に縮まらないわけです。

 5年間もの長い片想いに終止符を打った花苗さん。とても悲しかったことでしょうが、その間の思い出は決してつらいばかりのものではなかったはずです。貴樹君に触発されて勉強していい高校にも入ったわけだし。将来的にはいい思い出として回顧できるようになるのではないでしょうか。何より彼女には素敵なお姉さんもいますしね。ぜひ紹介して。

 そういうわけで、第二話のおかげで我々は花苗さんにはいろいろ感情移入してしまうし、好きになっちゃうのですが、水野さんは人となりが不明なのでどうも感情移入はできかねますね。地味子とでも名付けようか。貴樹君の「過度の優しさ」の犠牲者2号のわけだけど、おそらく大学時代に他にもの犠牲者がいることでしょう。水野地味子さんにはこれから幸せになるよと励ます余地が見いだせない。手首切るか屋上から飛び降りるか…なんとなくそういう不幸の影を背負っているような雰囲気がありますよね。「魔女の口づけ」を受けそう。
電線が分断する月
(コミック版を読んでの追記)
 コミック版ではエピソード大幅追加で、第二巻のヒロインは彼女ではないかというほど。そして水野理紗さん、ホントに可哀相。一番悲惨なのは彼女ではないか。貴樹、岩舟まで連れて行って置き去りってお前……。貴樹なんかさっさと忘れていい恋しろよとしか言いようがないなあ。再会したとき、髪を切ってましたが、コンタクトレンズにするとかして、暁美ほむら位の変貌を遂げてほしかった。貴樹に「逃がした魚は大きかった」と思わしめるためにもね。

「秒速5センチメートル」考察(その2):その後の明里

文字色桜花抄
 
 さすがにオーストラリアは強かった。引き分け残念でした。アウェーだし負けないだけ良かったというべきですかね。

 それはさておき、「秒速5センチメートル」の考察その2です。

2.「その後」の明里さん

 桜花抄以後、結婚するまでの明里さんについては、作中ほとんどといっていいほど描写がありません。が、断片的な情報から大胆不敵かつ勝手に推測してみましょう。
桜花抄2
(1) 文通はいつまで続いたか
 第二話で貴樹君はしばしば携帯でメールをうっています。これを見た花苗さんは受け取る相手が自分ならいいのにと思うわけですし、観てる我々も明里さんに送っているものと誤解するわけですが、実際には誰にも送られず、うち終わったそばから削除されていたわけです。つまり第二話の高校三年生の夏の時点で二人は既に「切れて」いるわけですが、文通自体は第一話以後も継続されていたことは、山崎まさよしの歌をバックにした切れ切れの「記憶のかけら」の中に、ポストを覗いて手紙を見つけて喜ぶ二人の様子が描かれていることからも間違いないでしょう。その後ポストを覗いて何もないのにがっかりする二人の姿を描かれていてこちらもがっかりするのですが、手紙の冒頭だけ書いて顔を伏せる明里さんの傍らには「数学ⅡA」という教科書らしき本があります。ここから察するに、文通のペースは次第に落ちつつ、高校二年生ころに途絶えてしまったもの推測されます。その理由は、二人の趣味嗜好・性向などの変化(直下で述べます)の他、明里さんが「理想の恋」の呪縛(後述)から逃れ得たためではないかと思われます。
がっかり明里
がっかり貴樹

(2) 文通はなぜ終焉を迎えたのか
 同じ本を読み、語り合っていた二人。小学校の頃は趣味嗜好もほぼ一致していた二人ですが、やはり成長するにつれ、差異が生じるのは当たり前のことです。就職先などを見るに、貴樹君は理系ですね。中学校の頃からそうだったのかも知れません。一方、明里さんは文系と思われます。理由は、前述の「数学ⅡA」にあります。

 我々の頃とは教育体系が異なる可能性もあるのですが、私は馬鹿高校で「数学ⅡB」を履修しました。当時、「数学ⅡB」は「数学ⅡA」より難しい内容とされていました。馬鹿高校だったので三年生になるまで受験シフトなどは全くとっていなかったためと思われますが、もっと早く文系理系を分ける進学校なら、文系の生徒に「数学ⅡB」は履修させないのではないかと思います。共通一次試験は確か数学ⅠBまでだったし。

 私は明里さんは聡明な女の子だと確信しているので、高校は地域で一番偏差値の高い学校に進んだと思っています。そして文系コースだったので「数学ⅡA」を履修したと。で、さらに推測すると、明里さんは数学が苦手だったのではないでしょうか。苦手克服のため勉強をしようとしたものの、身が入らずに、逃避のために「そうだ、このごろ貴樹君に手紙書いてないや。書こっと。」とか思って手紙を書き出したものの、今度は何を書いていいのか全然思い浮かばず、にっちもさっちも行かずにがっくりと顔を伏せる-あれはそういうシーンだったのではないでしょうか。
手紙が書けない明里

 ではなぜ手紙がかけないのか?それは二人の性向が変わってしまったことが大きな要因なのだと思います。文系理系という差もあると思いますが、映画とか本とか共通の話題がないと文通というのは継続が困難になると思います。文通を続ける間に、相手の手紙の内容から、二人の趣味嗜好は異なってしまったことがお互いに痛感されたのではないでしょうか。また、青春時代の貴重なこの数年間に、二人は全く逢うことができていません。種子島と栃木ではどうにもならないから責めている訳ではないですが、これは「継続」にとっては非常に痛いことでしょうね。お互いの身辺で起きたもろもろの出来事を、全く共有できていないのですから。

 私も某国赴任から帰国後してから、ある外国人女性とメールをやりとりしていたのですが、最近は本当に間隔が開いてきて、ほぼ切れかかっています。要因は、やはり逢っていないことにより、「経験を共有できていない」ということに尽きると思います。起きたことを一から説明しても理解してもらえるかわからないし(外人ならなおさら)、相手の現在の状況もよくわからないし説明されてもうまく共感できないし。まあ私の場合は恋仲とかではない(すでに結婚して一女の母)ので、喪失感は特にないのですけどね。

(コミック版を読んでの追記)
 数学については、小学校時代のエピソードですが、中学受験の話の際に「一緒がいいけど算数苦手だしなぁ」と言っている場面があります(一巻P35)。また、ほんの少しだけ文通が途絶える原因の一つか?と思えるエピソードがあります。高校生になって同じ学校の野郎から告白され、とりあえず返事は保留して帰宅、思わず手紙で貴樹に相談しようとするも「こんなこと書ける訳ないよね…」と手を止めてため息をつく明里さん(一巻P233~235)。そう、秘密というわけでもないけれども、手紙に書くことは困難な、二人共通ではないエピソードがどんどん積っていく訳です。中高生時代なんてまさに青春真っ盛りで、人の一生の中でも短時間で大きく変貌を遂げていく時代といえましょう。せめて中学校の3年間だけでも一緒に過ごしていれば、あるいは……)
桜花抄3

(3) 高校卒業後は?
 明里さんは地元の進学校を卒業、現役で東京の大学に入学したと思われます。上智か立教か青山学院あたりの英文科。卒業後、一流企業に就職し、現在の旦那(一流校卒)と出会い、素敵な恋愛関係に。以上。

 ……お前の妄想はいいんだよ、根拠を書け根拠をよといわれそうですが、あまり根拠はないです(笑)。本好きだから文学部かなという安易な発想と、高校生時代の明里さんがカポーティの「草の竪琴」を読んでいるので、英文科方面ではないかということ(く、苦しい。原書ならともかく訳書だもんな。誰でも読めるし)、数学が苦手と推測したので国立は厳しいかなということで私立大学。

 栃木には、ろくな私立大学がなさそうなので(失礼)、東京の大学へ進学ということにしました。中学生になるに当たっては許されなかった、「葛飾のおばさん」の家から通学したかも知れません。大学については全く根拠はないですが、なんとなくミッション系のおしゃれな大学が似合いそうだなという私の勝手なイメージです。慶応でもいいですね。しかし早稲田だの明治といったバンカラ大学(今はそうでもないらしいですが)はなんか勘弁して欲しい。私の明里さんが汚れる。
明里の掌

 旦那については、大学で知り合った先輩ということでもいいですが、給料のいい会社か職業であって貰いたいなあ。医師や弁護士もいいですな。明里さんを明日のご飯で悩ませるようなことがないといいな。明里さんは美人なので当然高校~大学時代に恋愛歴はあってもいいのですが、あんまり男性遍歴を重ねていないといいな。いや、重ねていないと信じたい。きっと大丈夫。ビッチは、ビッチだけは嫌あぁ!!
貴樹と明里

「秒速5センチメートル」考察(その1):明里について

秒速5センチメートル
 
 さあ公約どおり、「秒速」ウィークを始めましょう。
 できれば「秒速5センチメートル」を観てから読んでいただきたいのですが、もしこの駄文を読んで観てみる気になったということであれば望外の喜びです。

 それでは始まり始まり…

 「秒速5センチメートル」の考察その1です。

0.はじめに
踏切の2人
 見る者の心に沁みわたるアニメーション映画「秒速5センチメートル」。短編第三話で構成された、さほど長くもないこの物語に満ちている物悲しさは異様といっていいほどに我々の胸に迫ってきます。山崎まさよしの名曲「one more time,one more chance」に流れる喪失感もあいまって、巷では「鬱になる」ともっぱらの評判です。人が誰しも持つ「二度と戻らないヒト・モノの思い出」を呼び起こされるというか、古傷がうずくというか、そういった忘れかけていた感覚を蘇らせる効果をもっているようです。百聞は一見にしかず、ぜひ多くの人に観てもらいたい作品ですが、作品への感想はすでに多数の人が語っているところであり、大半は大いにうなずけるものなので、私は作品から読み取れる内容から、いくつかの考察を行ってみたいと思います。

 なお、本考察は基本的に本編というべきアニメ版を見てのものですが、2011年にコミック版が出ています。第一話、第二話についてはあまり変わりませんが、第三話については大きな変更がなされています。まあ第三話はあのままマンガにすることは困難だし、舌足らずなところがあるところも否めないので(そこに人それぞれの解釈をおこなう余地があるとも言えますが)、当然ともいえますが、このコミック版の第三話相当部分を、アニメ版を補完するものと捉えるか、あくまで一つの解釈と捉えるかは人それぞれだと思いますが、コミック版を「事実」と捉えてもアニメ版の鑑賞を損なわない部分については、(コミック版を読んでの追記)として追加記載していますのでご了承ください。

1.「篠原明里」という女の子について
中学生明里
 まぎれもない本編のヒロイン、可愛いらしい幼女から美少女を経て、今や美人妻になった明里さん(どんな姓になっているのでしょうか)ですが、貴樹君は中二になる直前のあの雪の日以来、線路で偶然めぐり会うまで、彼女に会っていません。なので、第二話「コスモナウト」の貴樹君の夢(幻想的な草原で朝日が昇るのを待つ二人)に出てくる彼女は、暗くて顔すらよくわかりません。また、第一話「桜花抄」での彼女も、貴樹君の視点で描かれているため、引っ越した後の栃木県岩船町での生活についてはほとんどわかっていません。部活で朝早い日もあるとか位。第三話「秒速5センチメートル」ではようやく第三者視点での彼女が描かれますが、今度は時間がやたらに短く、まるでエヴァンゲリオンのオープニングのように切れ切れの映像でしか彼女を捉える事ができません。
こうしたハンデを背負いつつ、私が見る限り、小~中学生のころまでの明里さんは、以下のような性格を有していたようです。

(1) 内向的で人見知り。気が弱い
(2) 本好きで知識が豊富。勉強はできる
(3) 打ち解けた相手に対してはお茶目なところも
(4) 依存心が強いが、克服しなければならないという意志を持つ
女子高生明里
 最初に(1)ですが、これは第一話を見ていただければ異論はないと思います。仲が良いのをからかわれた時(黒板に書かれた相合傘など)、彼女はどうすることもできずに立ちすくんでいますし、貴樹君以外に親しい友達がいるような描写もありません。4年生の時に転校してきて、3年間を同じ小学校で過ごしたのですから、同性の友人が何人かいても全く不思議ではないのですが、第一話は貴樹君視点で描かれているせいか、そういう描写は皆無です。まあ明里さんの交友関係を掘り下げる話ではないからいいのですが。

 次に(2)ですが、本好きなことはちらっと出てくる図書カードを見れば一目瞭然ですね。二人の名前しかない図書カードがたくさんあるようです。ゲド戦記、ナルニア国物語など、ファンタジーが好きなんでしょうか。「まだ体が小さく病気がちだった僕らは、グラウンドよりは図書館が好きで…」というモノローグがありますから、空想の世界で遊ぶ気持ちはよく判ります。また、バージェス頁岩動物群について貴樹君と語り合っているところから見て、二人とも相当に賢い小学生のようです。当時の二人の読書志向はほぼシンクロしていたようです。また桜の花びらが落ちる速度が秒速5センチだという冒頭の明里さんのセリフに対し、貴樹君は「明里、そういうことよく知ってるよね。」と感心しています。でも正確な知識なのだろうか。勉強ができるというのは私のただの推測ですが、小学校レベルなら、本をたくさん読んでいればいい成績はキープできるものと思われます。明里さんの読書好きは、成長後も変わらなかったようで、大人になっても良く本を読んでいます。好きだな~そういう人。

 さらに(3)ですが、突然坂を駆け下りて降りかけている遮断機を超えて線路を渡り、向こう側で傘を開いてターンして見せるなんて、まるで歌舞伎の大見栄みたいです。我々から見るととってもチャーミングですが、当時の貴樹君はびっくりしたことでしょう。それともちょくちょくやらかしてたのかな。可愛いかなーもう。彼女にとか言わん、娘に欲しい。リアル・プリンセス・メーカーやっちゃるぜよ。

 最後に(4)ですが、中学校に入学して半年後、明里さんは貴樹君に手紙を書くわけですが、当時の貴樹君はというと、サッカー部で汗を流し、委員会か何かの活動で上級生の女の子からも親しげに話しかけられるなど、充実した生活を送っている様子が窺われます。明里さんの中学校生活は部活をやっているということ以外は不明なのですが、貴樹君は「手紙から想像する明里はなぜか、いつも独りだった。」というモノローグを語っています。文通した手紙の内容からの推測もあるのかも知れませんが、小学校時代の明里さんをよく知っている貴樹君なので、新しい環境になじもうとしてなじめず、救いを求めるように貴樹君に手紙を出した明里…という感じに彼女の状況を把握したものと思われます。
結婚前明里
 「克服していかなければならないという意志を持つ」という部分は、物語中はっきり窺うことはできません。強いて言えば大人になった彼女を見れば、幼いころの欠点を克服しているように見えるからということになりますが、明里さんの「渡さなかった手紙」(後述)から、より明瞭にうかがい知ることができます。物語中では末尾付近の「あなたはきっと大丈夫」くらいしか読めませんが、小説版「秒速5センチメートル」には手紙の内容が描かれています(後述)。その手紙の中に、「私はこれからは、一人でもちゃんとやっていけるようにしなくてはいけません。そんなことが本当に出来るのか、私にはちょっと自信がないんですけど。でも、そうしなければならないんです。」という部分があります。私はここに、成長しつつある、小学生時代とは変わりつつある明里さんを感じるのです。
人妻明里
 少しだけ強くなった彼女の意志を。この「誓い」のとおり、彼女は強く成長してくことになったと思います。テレビのCМで「強い者などいない。強くあろうとする者。いるのはそれだけ。」と言っていますが(バガボンドですな)、まさしく明里さんは「強くあろうとする者」だったのです。ちくしょう、本当に健気で可愛いなあ。「世界名作劇場」で1年ぶっ通しで明里さんの成長を描いてくれ。あ、男キャラはいらないから。

「秒速5センチメートル」:主題歌「One more time,one more chance」

One more time, One more chance
 
 第31回目の記事です。これでブログを始めて一か月になりました。三日坊主になるかも知れないと思っていましたが、案外続くものですね。

 そこで今週はとっておきのネタ、新海誠の長編アニメーション「秒速5センチメートル」を取り上げようと思います。カテゴリ的には迷いましたが、アニメーションですが劇場公開されているので映画ということにしました。この作品を見た人の中には「野郎…タブー中のタブーに触れやがった…!」と思う人もいるかもしれませんが(笑)。

 まず今日は主題歌について。
秒速5センチメートル
 「One more time,one more chance」は山崎まさよしの1997年の作品です。元々は本人が主演した映画「月とキャベツ」の主題歌で、ロングヒットとなりました。そして10年後の2007年に公開された映画「秒速5センチメートル」の主題歌となり、リニューアルされて「One more time, One more chance 『秒速5センチメートル』 Special Edition」として発売されました。

 リニューアルといっても音源のリマスタリングはされていますが、歌詞の変更は一切ありません。だからとても明里の性格とは思えない「わがままな性格」とか、本編に一切登場しない「桜木町」なんて単語がちりばめられています。You tubeの動画を紹介しておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=e5yjSHw9mOw
踏切の2人
 それにしても、「秒速5センチメートル」は「One more time,one more chance」のPVだと言われるほど、本編に見事にはまっている曲です。そして効果はというと、過去にあった様々な事柄によって傷ついた心、時の流れの中で見かけ上は癒えて自分でも存在を忘れかけていたような、すっかり痕も消えたような心の古傷達が、一斉にぱっくりと口を開いて鮮血を迸らせるかのようです。「鬱アニメ」とも言われる本作ですが、その「鬱」になる効果を大幅に助長しているのがこの曲といえましょう。

 もう二度と戻らない恋、二度と還らない恋人、遠く遥かな想い出。理性ではわかっているのに、気付けばいつもその欠片、その面影を探し求めている哀しい心。もしも再会が叶うなら、全てを犠牲にできる覚悟があるのに、全てを投げ捨てたとしてももう時は戻らない。

 ラストの「欲しいものなど もう何もない 君のほかに大切なものなど」を聞くと、目の前を小田急線が疾走してすれ違っていくような気がします。歌詞は絶唱と呼ぶにふさわしいですね。

 山崎まさよしは淡々とした感じで歌っていますが、カラオケで歌ってみるとそれが非常に難しいです。歌詞によって気持が勝手に高揚してしまうので、本当に泣きたくなるような気がします。一人カラオケなら別にいいのですが、仲間がいる場合はドン引きされてしまうかもしれないのでご用心。みんな「秒速」を見ていれば問題ないですが。みんなで泣きながら合唱したりして。
 
 明日よりは内容の考察をいきます。といっても本当は去年書いたものなんですけどね。

みつめてナイト:シビアさが光る近世版「ときメモ」

みつめてナイト
 
 土曜日はギャルゲーの日!ということで、本日は知っている人も少ない「みつめてナイト」を取り上げます。「ときめきメモリアル」のコナミと「サクラ大戦」のレッドカンパニーが共同開発して1998年に発売しました。

登場キャラクターその1
 登場キャラその1
 
 販売数は16万本ということで、「ときめきメモリアル」にも「サクラ大戦」にも及びませんでしたが、ゲーム自体は非常に面白くできています。これで人気がでないんだからゲーム業界も大変ですね。
登場キャラクターその2
 登場キャラその2.一部その1と重複してますが。

 自分を鍛えて女の子と知り合って仲良くなろうというゲームシステムはときメモとほぼ同一です。ですが、舞台や時代設定が全然違うので、鍛える要素も異なります。

 おそらく17~18世紀あたりの南欧(イタリア・スペイン・フランスあたりが混ざったような感じ)の架空の国ドルファンに傭兵としてやってきた東洋人が主人公、普段は傭兵訓練所で剣術や馬術や礼法や学問などを学びつつ、休日には街にでかけて女の子と出会います。要するに女の子は主人公にとって全員外国人。そして、傭兵を雇い入れていることからわかるように、この国は戦役を抱えているので、時として出陣して戦わなければなりません。故に適当に休養も取らないと体調不良で不覚を取ってしまうことも(死にはしませんが)あります。逆に戦いに勝てば名声を上げて評判が高くなり、女の子の評価もウナギ上りです。

 また、近世のこととて、人の生き死には現在以上にシビアです。選択を間違うと女の子もあっさり事件や事故で死んだり、誘拐されて殺されたり、破産したり、顔に消えない傷を負ったりと救いのない展開があります。もちろん回避は可能ですが。

 また、「ときメモ」と同じく女の子とデートすると三択の選択肢が出て、選択次第で女の子の印象が代わるのですが、その選択肢に極端なものが入っていて思わず吹き出してしまいます。例を上げると、

◇ 牧場で乳搾りついて聞かれて「お前のを搾らせろ」(超セクハラ)

◇ レストランで料理について聞かれて「まさに生ゴミ……シェフを呼べ! 」(海原雄山かっ!)

◇ 女の子とデートしているのに 「あの男を兄貴と呼びたい」(きっと阿部さん。ウホッいい男!)

◇ 出会いの際に名前を聞かれ「貴様に名乗る名はない 」(その女の子との縁はなくなります)

◇ 運河近くでデートしていて「本気で運河に突き落とす」(土曜サスペンス劇場か)

◇ ゴンドラに乗っていて「酔って吐いてみせる」(まさに嫌がらせ)

◇ 輸血のため血液型を聞かれた時に「アダムスキー型」(女の子が輸血を必要としているというのに…)

 まじめにやっているととても選ぶことはできないのですが、実質三択が二択になるので楽になるという側面も(笑)。

 そして3年間傭兵を務めると、最終的に敵を一掃して平和をもたらすことになるのですが、同時に外国人排斥法が可決され、功績次第で市民権が得られるとかいう口車に乗って来たのに出国しなければならなくなります。まさに狡兎死して狗肉煮られる。主人公は剣で闘っているのですが、時代的に次第に銃砲が普及しつつあるという状況でもあり、剣の時代が終わろうとしているということも理由の一つかも知れません。

 その際に仲良くなった女の子の誰か一人に手紙を出すと、出発の日に波止場に来てくれます。手紙を出さなくても、必要な条件を満たしている女の子がいれば自発的にやって来ます(複数いる場合はときめき度の高い方)。バッドエンドだとヒロインにあっさり見送られますが(笑)、グッドエンドだと告白を受けることになります。そして全てのヒロインに対し拒否が可能。ノーと言える東洋人。手紙で呼び出しておいて拒否とか、どれだけ外道な振る舞いなんだと思いますが。

 もっとも、ヒロインの告白にイエスといったところで、今や国外追放の身です。まだ学生のヒロインも多いので、実際にハッピーエンドになるかどうかは微妙ですね。貴族の娘や王女は身分的にもついていけないでしょう。学生もほぼ無理。働いているヒロインは可能ですが、これからどうするかまだ身の振りの見当もついていない主人公と同行しても大丈夫かなあ。

 私が主人公なら…「聖騎士」の称号を受けるほどの功績を上げたのに国を追われた無念さは忘れませんよ。次にこの国が戦争をする時には、敵軍に東洋人傭兵の姿があるかも知れません。首都陥落の暁にはこのストレイツォ容赦せん!王族貴族は皆殺しでしょうな。女子供は許してあげますが、他の荒くれ傭兵さん達の行動までは関知しませんよ。くっくっく…

 では恒例、好きなキャラベスト5!

第5位 テディ・アデレード

テディ・アデレード

 20歳→23歳。ピンクの白衣(なんか矛盾しているな)が良く似合う看護婦さん。CVは長沢美樹。エヴァンゲリオンの伊吹マヤを演じてた人ですね。そのせいかどうか、非常に一途で潔癖な性格です。素晴らしいプロポーションをしてますが、セクハラはご法度です。こんなにグラマーなのに心臓に疾患を抱えています。同様の疾患を抱えるセーラが痩せぎすなのにこれは一体どういうことでしょうか。彼女は告白の際に看護婦としてではなく女としての生き方を選ぶと言い放つので、付いてきてくれるでしょう。看護婦さんだからつぶしも効いて、失業中も食べさせてくれそう。だめだぞ東洋人傭兵、ヒモになっては。

第4位 プリシラ・ドルファン

プリシラ王女

 16歳→19歳。CVは今井由香。ドルファン王国の第一王女、つまり次期女王。明るく奔放な性格で、庶民の自由な生活に憧れています。物語序盤で主人公と「ローマの休日」ごっこをすることになります。その後もしばしばお忍びで街へ出て、城の人々を困らせています。実は彼女には秘密があって、内面に深い寂しさを抱えているのですが、それを理解している人はいません。エンディングを見ると、王様だけは理解している気配がありますが。彼女に告白されてイエスといってもなあ。王位継承者が国外に出る訳にもいかないだろうし、外国人排斥の機運が高いのに東洋人を婿にする訳にもいかないでしょうし。心の絆だけかしらん。

第3位 クレア・マジョラム

クレア・マジョラム

 17歳27歳→30歳。最年長ヒロインにして未亡人。誰だ「ババァ結婚してくれー!!」とか言っているのは。主人公の上官だったヤング大尉の妻でしたが、最初の戦いで戦死してしまいます。しかも殺したのはクレアの元カレ(元カレが事件を起こして失踪し、傷心のクレアを口説き落としたのがヤングらしい)。さらに元カレは主人公が倒します。こ、この泥沼展開は一体(笑)。そして夫の上司にも求婚されています。やたら軍人受けする女というか、魔性の女(ただし悪意は全然ない)というか。CVは永遠の17歳、井上喜久子。この人は隣国からの移民でもあり、告白の際に「さらって欲しい」と言っているので、主人公に同行することは確実でしょう。カジノのディーラーとして稼いでもらえるでしょう。しかしヒモになっては(ry

第2位 ライズ・ハイマー

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 16歳→19歳。1位にするか大いに迷ったのですが…。ドルファン学園高等部の女生徒です。いわゆる「綾波レイ」タイプで、無表情・無関心・無感動な女の子。「ときめきメモリアル2」の八重花桜梨にも雰囲気が似ています。隙を見せない、常に手袋を外さないなど怪しい面もあります。対応も素っ気ないことが多いですが、後半仲が良くなると顔を赤らめて視線をそらしたりという可愛い仕草も。身分上大きな秘密を抱えており、本名ではありません。彼女を手に入れるのは結構大変で、全ての戦いに勝ち、あるイベントでも勝ち、さらに本人との戦いでも勝たなければなりません。彼女は告白後は当然同行してくれるでしょう。恐怖の夫婦傭兵として襲来し、ドルファンを震撼させるのもいいかも。

第1位 アン

アン

 ?歳。後半登場の謎の少女。CVは国府田マリ子。ロングの青髪はGS美神のおキヌちゃんみたいですね。水のある場所が好きな反面、火を非常に怖がっています。歌を歌うのが好き。極めて従順な性格で、主人公が理不尽な言動をしても決して怒りません。一昔前の出来事や神話などに詳しかったりもします。
 この人とのエンディングですが…
 
 あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
 「おれはハッピーエンドを迎えていると思ったらいつのまにかバッドエンドだった」
 な…何を言ってるのか わからねーと思うが
 おれも何をされたのかわからなかった…
 頭がどうにかなりそうだった…
 催眠術だとか幻だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

 しばらく茫然と画面をみつめてしまいましたよ。そうか、だから「みつめてナイトなのか」…って違うだろうオイ!

 彼女は人間ではなかったらしく、正体については人魚とか残留思念(つまり幽霊か)とか女神の化身だとか色々な説がありますが、要するに恋を失って時間が止まったままずいぶん長いこと彷徨っていたらしいのです。そして新しい恋をして、それが成就したとたんに止まっていた時間が動き出したらしいです。つまりこの時代は彼女がいるべき時代ではなかったということなんでしょうか。しかし「消えたくないっ!」と悲鳴を上げながら消滅するなんて。残されたのは以前に買ってあげた安物のネックレスのみ…

問題のシーンその1
問題のシーンその2

 愛ゆえに人は苦しまねばならぬ!!
 愛ゆえに人は悲しまねばならぬ!!
 愛ゆえに…
 こんなに苦しいのなら、悲しいのなら……愛などいらぬ!!

愛などいらぬ!!

 聖帝サウザーな気分になること請け合いの、ギャルゲー史上屈指の鬱エンド(しかもハッピーエンドの流れなのにいきなり)です。いいのか、こんな理不尽で。だけど理不尽だから記憶に残るんですよねえ…。ちなみにアンだけはエンディング曲も異なります。通常は「みつめて」(歌:小西寛子)ですが、アンだけは「恋をすると」(歌:国府田マリ子)です。どちらも名曲ですが、「恋をすると」はひたすら悲しい。

 百聞は一見に如かず。ご覧ください。





 さてこのゲーム、一部にカルト的人気があるのですが、続編作成あるいはリメイクの希望は完全に無視されております。せめてゲームアーカイブとしてPSPでプレイできるようにして欲しいと思うのは私だけではないはずです。

 おまけ:ある意味印象に残るキャラベスト1:スー・グラフトン

スー・グラフトン

 22歳→25歳。CVは水谷優子。ちびまる子ちゃんのお姉ちゃんです。パン屋の一人娘で結婚適齢期。見た目は結構可愛いです。それはいいのですが、とにかく結婚願望が強くて二言目には「結婚結婚」で辟易します。性格はお天気屋でワガママそのもの。おそらく「女のエゴ」を前面に出したキャラで、その言動の凄まじさは言語に絶するものがあります。告白のシーンでノーを選ぶ主人公が続出したとかしないとか。ちなみにイエスなら必ず付いてくると思われます。というより結婚するまで離れないでしょう。

 え?メインヒロインがいない?ああ、メインヒロインはソフィアっていうのですが、なんとなく美樹原愛に似ているので出会いのシーンで「貴様に名乗る名はない」を選んでしまうことが多くてですね……。まあご自身でプレイしていただければと(笑)
 

Lovely Girls Anthem:リア充さんの自分大好き賛歌

lovely girls anthem
 サッカーのアジア最終予選の対ヨルダン戦、日本爆勝でしたね。残業したのでゴールのハイライトしか見られませんでしたが。現在のチームは日本史上最強ではないでしょうか。海外で活躍する選手の数ときたらまあ。「奥寺すげえ」なんて言ってた時代が懐かしい。

 今夜は、いくら私が説得しても誰も見てくれない傑作アニメ「ミルキィホームズ第二幕」のED、「Lovely Girls Anthem」を紹介します。

 歌っているのは麻生夏子。現役の女子大生で、中央大学法学部在学中だそうです。まあ名門!
 彼女は日テレの朝の情報番組「ZIP!」の火曜日と木曜日にも出演しています。毎朝見ているのですが、気付いたのはだいぶ後。彼女がいろいろやる頃には私は出勤していたのでした。

 女優兼歌手(兼タレント?)ということで、ドラマだ映画だバラエティだとご活躍のようです。シングル曲としてはこの「Lovely Girls Anthem」は9曲目で、それまで知りませんでしたが、結構出してますね。大半がアニメとのタイアップということですが、そういうのってコネとか事務所の力なんでしょうかね。何はともあれ、メディア露出があると強いですよねえ。

 で、この曲ですが、一般には「浄化ED」と言われています。先日の紹介した「ずっとBe with you」もそうですが、内容がハチャハチャ(※)なアニメの終了後に流れるまともな曲はこう呼ばれるようです。ミルキィは本当に内容が凄まじいので、この曲が流れると正気に戻れるみたいな気がしました。

 (※)内容が(_゚∀゚)o彡°ケイオス!ケイオス!I wannnaケイオス!な順に、滅茶苦茶→無茶苦茶→ハチャメチャ→ハチャハチャとなります。ハチャハチャはケイオスの最上級形。かの横田順彌(通称ヨコジュン)が創始者と言われます。私はこの人のハチャハチャ小説が大好きでした。もっとも今では古典SF研究や明治文化研究・古本エッセイなどで知られているようですが。機会があれば今後この人のハチャハチャSFを紹介したいです。
 
 で歌の内容ですが、直訳すれば「可愛い女の子賛歌」のとおり、自他共に認める可愛い女の子の自分大好きぶりを歌いあげていまして、こちとら「リア充爆発しろッ!!」と吠えたくなるほどです。美少女・美男子ってのは、毎日がこんなに楽しいんでしょうかね。

 なにしろ「いくつになっても こんな私達でいたいね 自分を大好きでいられるように 永遠」ですからね。40歳50歳のBBAになっても若い頃のままでいたとしたら相当周囲からは不気味に見られると思うのですが、見かけも若いままでなんて思っているのでしょうか。じゃあ由美かおるかイザベル・アジャーニになるか、波紋法でも習得するしかありません。

 なんかディスってるかのような表現になってしまいましたが、好きですこの曲。悩みなんかなさそうな女の子がはしゃいでる感じで、能天気でいいですよね。その様子をずっと見守っていたいような。振付も可愛いしですしね。You tubeで見られる動画を紹介しておきます。

ショート・バージョンのPVです。
http://www.youtube.com/watch?v=OagZTUgehxA
残念ながらフルバージョンのPVはなくなっていましたので、代わりにロンドンでのライブ映像です。
http://www.youtube.com/watch?v=hM3T9MwxlOI

 リア充の人たちは明日死ぬなんて知ったらパニックなんでしょうかね。私は痛いのや苦しいのは御免ですが、テポドンかなんかで即死だったら別に明日死んでもいいなあ、なんて。あるものなら、「あなたの知らない世界」を見てみたいし。新倉いわお先生は自ら旅立たれましたね…

 全然関係ないのですが、画像検索していたら見つけました。本当に同一人物なのでしょうか。
同一人物?

麻生夏子
女は化けるとはいいますが。

次のエースは渡辺麻友:ついでにAKBも語っちゃいました

渡辺麻友
 
 昨日はオーメンの日でしたが、今日は私の誕生日です。もはやめでたくも何ともありませんが。よりによって健康診断があったのでまる一日絶食状態でした。外形上は大きな変化はなかったのですが、血圧が昨年比30も上がっていてびっくり。胡麻烏龍茶のお世話になる日が来たのでしょうか。

 昨日はAKBの総選挙があって大騒ぎでしたね。それに便乗して私もAKBネタを扱ってみようと思います。え?やるなら昨日やるべきだっただろう?うん、とてもいい疑問ですね。毎回今夜は何を扱ってみようかと、晩御飯のおかずに悩む主婦のごとく昼間から悩む日々なのですが、昨日については珍しく前の日から鈴木重子でいこうと決まってしまってたもので。AKBのことはすっかり忘れていましたよテヘペロ。

 昔のアイドルのことばかり語っていても若い人は引き付けられない。ということで無理して現代のアイドルについても言及しちゃいますよ。私も人気取りに走ろう(笑)。

 ということで既に結果が出たAKB総選挙ですが、選挙結果を反映する次の曲はともかく、個人的には今後のセンターは一位の大島優子よりも、二位の渡辺麻友が務めるべきだと思うのです。以下個人的見解を述べます。異論反論はもちろん認めますが、あくまで私見ということでよしなに。

 前田敦子が草創期からの第一期メンバーであるのに対し大島優子は第二期メンバー。そういう意味では世代交代といえないこともないですが、いかんせん年齢的に見れば前田敦子20歳に対して大島優子24歳。これは逆行ですよ。これに比べれば渡辺麻友は第三期で18歳。年齢的にも期別的にみても「世代交代」の言葉に恥じないではないですか。

 そして何よりも渡辺麻友には華があります。いや、大島優子にはないと言っているのではありません。ですが、渡辺麻友は80年代前半のアイドル黄金期にデビューしたとしても十分人気を得られただろうと思わせるだけの華やかさがあるのに対し、大島優子はおニャン子クラブでデビューという感じがします。前田敦子や大島優子は可愛いにしても、「隣の机」にいそうな、あるいはクラスとか学年に一人位いそうな庶民的ないし「普通の子」の雰囲気があるのに対し、渡辺麻友はまさに飾っておきたい「お人形」のような可愛さを持っており、これは電車通学の際にごくたまに見かける「憧れの他校の美少女」クラスの希少価値を持つ、つまりそれだけアイドル性の強い女の子なのだと思います。

シンクロときめき

 そこでソロデビュー曲の「シンクロときめき」ですが、ゼンマイ仕掛けの人形の様な衣装が、まさに彼女に「お人形」性を感じているのが私だけではないことを如実に示しているのではないかと。

シンクロときめきのコス

 秋元康の作詞ですが、遅刻しそうになって焦る少年が同じく遅刻魔の少女と教室に急ぐという形でのボーイ・ミーツ・ガールをという光景をうたっています。そして渡辺麻友はその「少女」の役回りであるにも関わらず、少年の気持ちを歌います。

 この「男の子の気持ちを女の子が歌う」というスタイル、つまり「異性の気持ちを歌う」というのは別に珍しいものでもなんでもなく、逆の「女の気持を男が歌う」だって演歌なんかではごく普通に行われています。昔のアイドルだってアルバムに一曲くらいはそういう歌は混じっていたりしました。ですが、シングルでやってヒットした曲というのはちょっと記憶に浮かんできません。坂上香織の「レースのカーディガン」とか藤谷美紀の「君の名前」とか…大ヒットではないですね(あったらごめんなさい)。

 ですが渡辺麻友のみならず、AKBは「男の子の気持ちを女の子が歌う」というスタイルを取り出してから一気にブレイクした気がします。2010年以降のシングルを見ると、「ポニーテールとシュシュ」「ヘビーローテーション」「Begginer」「桜の木になろう」「everyday、カチューシャ」「フライングゲット」「上からマリコ」「GIVE ME FIVE!」「真夏のSounds Good!」と、12曲中9曲がこれに該当しています。「チャンスの順番」はやや迷いますが、やはり男歌っぽいです。明確に女の子の気持を歌った曲は「桜の栞」と「風は吹いている」の2曲のみです。

 ということで、ファンの気持ちをアイドルが代弁してくれる、すなわち「僕の気持を憧れの彼女が歌ってくれる」というスタイルの確立は、AKB大躍進の鍵の一つではないかと思います。まさに時代のトレンドを掴んだということで、秋元センセ大勝利ということですね。

 しかし、個人的にはそんなにブレイクしていない頃の女の子の気持ちの歌の方が好きなんですがね。「スカート、ひらり」とか「会いたかった」とか。

 そうそう、「スカート、ひらり」は6年前の私の誕生日に発売されているのですが、この時にフロントで歌った7人が「スカひらセブン」と呼ばれ、その後のいわゆる「神セブン」の原型になったようですが、

スカひら7

 左から小嶋陽菜・成田梨紗・前田敦子・高橋みなみ・板野友美・中西里菜・大島麻衣。これが「スカひらセブン」です。このうち成田、中西、大島は既に卒業しています。前田も卒業を発表し、板野は連続8位と「神セブン」の地位から滑り落ちている現在、「スカひらセブン」の残党は小嶋陽菜と高橋みなみの二人だけということになりますね。
 
 しかし、AKBの草創期の苦労を知っているこの人たちを、人気確立後に加入してきた後輩達が抜いていくのは中々大変かもしれませんね。いろんな経験値が圧倒的に違いそうで。

 いやー私も頑張れば現在のアイドルも語れるんですねえ……しかし明日はきっと脳筋が筋肉痛に。

 それにしても板野友美……今と違い過ぎるぞ(笑)。

鈴木重子:昼下がりの催眠術師(笑)

With You
 
 今日はオーメンの日ですね(古くてすいません)。「這いよれ!ニャル子さん」第9話はガンダムネタが多かったですね(Zの)。ルーヒーは魔法熟女呼ばわりされるほどBBAじゃない(しかし中の人国府田マリ子は…)。そして「転校生」のパクリ。声優さんの神技を見せつけられました。なんと役を入れ替わって演じているとは。すごいなぁ。まさに「だが我が日本の声優の能力・技術は世界一ィィィ!できんことはないイイィーッ!!」といったところでしょうか。

 唐突に話は変わりますが、以前に小野リサを紹介させていただきました。今離婚報道が出ていますが、そんなことはさておき、彼女の知ったのは当時の同僚経由でしたので、彼女の歌は愛好しながらも、なんとなく「借り物」「しょせんはKさんの女…」的意識がつきまとってました。今思えばそんなこと全然気にしなくても良かったのですが(笑)。
 
 で、当時の私は「俺だけのファイナル・ブローを…」と言いながらギャラクティカ・マグナム&ファントムを開発した剣崎順のごとく(誰それ?という人は「リングにかけろ」という漫画を読もう)、「オレの…俺だけの歌手を…!」みたいな想いを抱いて、色々探してこの人に行きあたったのでした。まあだからといって「俺だけの歌手」な訳はもちろんないのですが。

 鈴木重子は私と同い年(あえて書きません。興味のある人は調べて下さい)で、何と東京大学法学部卒(orz)。1995年にニューヨークの名門ジャズ・クラブ「ブルーノート」でデビューしました。日本人ボーカリストとしては初だそうです。門外漢の私にはその意義とか価値がいまいちピンとこないので申し訳ないのですが。

 歌声は低く、しなやかで、ゆっくりと心に沁みわたって来るような感じで、心がなごみます。当初はばりばりのジャズ・シンガーという感じでしたが、自分の声質を自覚されたのか、突如癒し系にシフトしていきます。

 これはセカンドの「BRISA」のジャケットです。
BRISA.jpg
 そしてこれは4枚目の「Close Your Eyes」のもの。
Close your eyes
 都会の夜をおしゃれに演出する大人のジャズ・シンガーという感じが濃密に感じられませんか?しかし、2000年に出した5枚の「Just Beside You」からがらりと変わります。
Just Beside You
 そして6枚目の「My Best Friends」。
My Best Friends
 なんかこう、都会で颯爽と働いていたキャリア・ウーマンが田舎に引っ越してカントリー・ライフを始めたというようなイメージチェンジぶりです。「魔法少女まどか☆マギカ」まどかママがいきなり農業を始めたかのような、はたまた「秒速5センチメートル」の明里がいきなり東京から岩舟に引っ越したかのような(よくわからない例えですね)。

 そして歌う歌もジャズだけでなく、「花」(泣きなーさーいー 笑いなーさーい、のあの曲)とか「浜辺の歌」「この道」といった小学生の頃に歌った唱歌や、太極拳のようにゆるやかな自作曲などを含んでいます。

 田舎にUターン(笑)後の歌声はその安らぎ感に一層の拍車がかかり、本人も「たまには4曲目くらいから聞いてくださいね、3曲くらいで眠ってしまうといけないので」(「Just Beside You」の歌詞カードより)と言うほどの催眠音楽となっています。

 お昼休み、食事後にソファに寝転がって鈴木重子を聞くと、あっと言う間に夢路に。疲れが取れるのはいいけど、往々にして寝過してしまい、慌てて起きてオフィスに向かう…そんな悠長というか、のどかな日々がかつて私にもありましたよ。まあ時効だから許して下さい。今はもちろん、昼食に家に帰るなんて出来っこありません。

日本サンライズに見るロボットアニメのタイトルの付け方

魔法少女まどか☆マギカ

謎かけ:魔法少女まどか☆マギカとかけて宇宙空母ブルーノアと解く。
宇宙空母ブルーノア
 そのこころは?:どちらも終盤まで看板に偽りありでしょう。
 まどかはずっとただの少女のままだし、ブルーノアもただの空母でした。

 ロボットアニメの主役メカ。いわゆるリアル・ロボットでさえも、最初はとても強いです。敵を蹴散らします。しかし、敵もいつまでも黙ってやられてはいません。対抗手段を整えてきます。ついには主役メカも負けそうなほど強い敵さえ登場してきます。

 そうなった時どうするか?手法はいくつかあるみたいです。日本サンライズのアニメの場合を見てみましょう。

 その1.主役メカごり押し

 「機動戦士ガンダム」のガンダムは新兵器の試作機として登場。そのまま最終回まで戦い続けます。敵であるジオンは続々と新しいモビルスーツ・モビルアーマーを登場させますが、ガンダムは試作機故のコスト度外視の性能と、パイロットであるアムロのニュータイプとしての劇的な能力向上により、最後まであらゆる敵と互角に戦い続けました。一応終盤にマグネットコーティングという地味な改修(ブライト曰く「油を注すようなもの」)は受けてますが、外見は何ら変更ありませんでした。

 その2.後継機登場

 「戦闘メカ・ザブングル」

ザブングル

 この人たちではありません。悔しいです!その名前の元ネタとなったアニメですが、こちらをご覧ください。

ウォーカー・ギャリアとザブングル

 右が主役機のザブングルです。では左はというと、後半の主役機ウォーカー・ギャリアです。名前もデザインも全く違いますが、主人公はあっさり高性能機に乗り換えています。

 「聖戦士ダンバイン」

ビルバインとダンバイン

 右は主役機ダンバインです。左は後半の主役機ビルバインです。あんまりにも名前が違うのはいかがなものか、と反省したためか、名前は似ていますが全く別の機体です。こちらもビルバインの方が高性能なので、主人公はあっさり乗り換えます。そしてお古はガールフレンドに(笑)。

 「重戦機エルガイム」

エルガイムmkⅡとエルガイム

 右はエルガイム。左はエルガイムmkⅡです。やっぱデザインが違うといかんねえと考えたのか、カラーリングは割と似ています。コロナとコロナmkⅡ(古っ!今時の人は知らないよなあ)みたいな関係のようにも見えるネーミングですが、実はやはり全然関係ない他人メカ。やはり主人公はあっさり乗り換えてセコハンは仲間に払い下げています。ただし最終回でmkⅡを壊してしまった主人公が再び乗ってみたり。都合のいい女かエルガイム。

 3.先発機登場

 どうも中盤以降タイトルと違うロボットが活躍するのはいかん傾向であると思ったのでしょうか、「機動戦士Zガンダム」では逆の手法が取られました。

ZガンダムとガンダムmkⅡ

 右がガンダムmkⅡ、左がZガンダムです。序盤の主役機はガンダムmkⅡで、敵が強くなってくる中盤以降、新兵器としてZガンダムが登場します。やはり主人公はあっさり乗り換え、中古機は仲間のお姉さんに。中盤以降はタイトルとドンピシャとなりますが、やはり序盤は「いつZは出てくるんだ」という不満を持つことに。mkⅡが敵のを分捕ったものというのもマイナスイメージですね。色は塗り替えたけど。

 4.劇的大改造

 「機甲界ガリアン」

 あまり有名ではないアニメですが、結構面白いです。OPの歌が凄くカッコいいです。まあそれはさておき。主役機ガリアンは当初鞭のように変化する剣で戦っていましたが、中盤火力不足が顕著となります。そこで劇的大改造ビフォー・アフターが行われます。

ガリアン重装改とガリアン

 右:ガリアン。左:ガリアン重装改(アサルトガリアン)。まあ、何ということでしょう。匠(ヒムルカ)の手によって、火力も防御力も格段に向上しました。
 
 余談ですが主人公のお母さん(王妃)は「銀河鉄道999」の星野鉄郎の母のように敵に捕まって城にレリーフとして飾られていますが、最大の違いは鉄郎の母が剥製なのに対し、王妃はコールドスリープであること。なので生きて再会できます。

 5.タイトルにロボット名を使わない

 これはある意味究極の解決法です。

 「装甲騎兵ボトムズ」

スコープドッグ・レッドショルダースペシャル

 これは装甲騎兵の一種であるスコープドックです。私の趣味でレッドショルダースペシャルにしてありますが、このアニメに装甲騎兵(アーマード・トルーパー略してAT)は色々でてきますが、「ボトムズ」という機体は存在しません。「ボトムズ」とは、「最低野郎」といった意味のATのパイロットの蔑称ないし自称なのです。これなら主人公がボトムズである以上、どんな機体に乗っても大丈夫(笑)。

ペイネ~愛の世界旅行:ああ帰りたい…

ペイネ・愛の世界旅行

 
 昔私が好きだったのは松田聖子、その前は太田裕美。ではその前は、というと、なんとポール・モーリアとかレーモン・ルフェーブル、カラベリやパーシー・フェイスといったイージーリスニングでした。

 ムード音楽という言い方もありましたが、まあ我ながら「おっさんか!!」と突っ込みたくなるような嗜好ですね。

 いやーしかし本当に名曲がたくさんあるんですよ。私は中学時代に放送部に所属していたんですが、その学校は、なぜか日本語の歌を流してはいけないという規則がありました。まあピンクレディーとかキャンディーズとかを学校で流すのはけしからんという趣旨は何となくわからないでもないのですが、洋楽についてもあまりいい顔をされなかった記憶があります。

 当時の私はあんまり洋楽には興味なかったのでそれほど不自由は感じませんでしたが、必然的にかける曲は歌のないものに偏ることになり、クラシックばかりじゃ中学生には退屈だぜ、というところに現れたのがイージーリスニングでした。

 ビートルズでもカーペンターズでもビージーズでも、歌なしでメロディを奏でるイージーリスニングは、その名のごとく聞いてきて非常に気持ちのいい曲が多いです。ポール・モーリアなら「恋は水色」、レーモン・ルフェーブルなら「涙のカノン」(パッへルベルのカノンのアレンジ。私はこの曲がとても好きだったので、エヴァンゲリオンで使用された時は、昔の恋人を寝取られた位に悔しかったです)、パーシー・フェイスなら「夏の日の恋」なんか最高ですよ。

 その放送部、朝放送(生放送)、お昼の放送(録音)のほか、下校放送も流していました。朝放送のテーマはペールギュント組曲の「朝」(ベタベタですなあ)、お昼の放送のテーマはポール・モーリアの「イエスタディ・ワンス・モア」(カーペンターズの名曲)、夏季のみパーシー・フェイスの「夏の日の恋」。そして3時40分頃に流す下校放送に使用したのが、ポール・モーリアの「ペイネ~愛の世界旅行」でした。

※「涙のカノンです」聞いてみて下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=eMPpxWpcg1s

 この曲は原題が“A FLOWER IS ALL YOU NEED”で、1974年に制作された「ペイネ・愛の世界旅行」という長編アニメーションのテーマ曲です。ペイネというのはフランスのイラストレイターであるレイモン・ペイネのことで、彼の「恋人達」という原画をもとに4年かけて作られたそうです。
ペイネの恋人達

 しかし、実は私、このアニメは見ておりません。バレンチナとバレンチノという恋人たちが、天国で「愛のパスポート」をもらってAIR LOVEという妙な飛行機(冒頭のイラスト参照)で世界各国を旅して回る物語だそうですが。

 しかし、なにはともあれこの曲が素晴らしい。とにかく一度お聞きください。
http://www.youtube.com/watch?v=6DEAXtW99mw&feature=related

 なんでしょうね、この甘く切ない旋律は。どこの誰かは知りませんが、この曲を下校の音楽に選んだ人は本当に偉いと思います。郷愁に満ちたメロディは、後半一気にクライマックスに入ります。そこで「下校時刻になりました。学校に残っている人は、早くおうちに帰りましょう」といったアナウンスが聞こえてくる気がします……もちろん動画サイトには入ってませんよ。

 なお、クラブ活動している生徒は当然まだ帰らないので、後に彼らを帰らせるために5時40分頃に「夕焼け小焼け」を、5時50分頃に「マイ・ウェイ」(レーモン・ルフェーブル)を流すことになりました。マイ・ウェイもポール・モーリアとレーモン・ルフェーブルではだいぶアレンジに差があって、私は断然格調高いレーモン・ルフェーブル派でした。

 それでも、下校放送というとやはりこの曲が浮かびます。ああ、この曲を聴くと今でも帰りたくなりますね。一体どこへ帰りたいというのか、自分でもよく判りませんが。とりあえずナナ先輩、あなたの声はとても素敵でした。お幸せに暮らしていますように。

 今夜はやたらノスタルジックになってしまいました。
 

ときめきメモリアル2:シリーズ最高傑作?(その2)

 
今日はある漫画を一気読みしようと、「漫喫を満喫!」などとほざいて午前中から出撃したのですが、お目当ての作品は置いていませんでした。すごすごと他の漫画を何冊か読んで帰ってきたのですが、気を取り直してときメモ2のその2です。

 昨日メインヒロインの光の成功について語った訳ですが、ここで恒例(笑)好きなキャラ!

 第一位:八重花桜梨
八重花桜梨

 光が好きだという昨日の話はどーしたッ!!まあまあ、落ち着いて落ち着いて。話せばわかる。
 光は本当にいい娘です。光しか出てこないなら光だけでもいいです。しかし、その存在を知ってしまうともう捨て置けない人、それが八重さんです。

 また、光は人懐こい子犬のようなイメージあって、はまる人は当然はまるのですが、実は私、猫の方が好きなんです。八重さんは“一度人間に裏切られた猫”のようなイメージなので、なんとか人を信じる気持を回復させてやりたい気になります。

 最初に言っておきますが、八重さんを落とす気がない場合は、お知り合いになってはいけません。彼女は出会っても知り合いになることを回避できるという稀有なキャラなのです。そして知り合ったからには…絶対落とせ!!(笑)。

 彼女はときメモシリーズ初の影のある暗いキャラです。少しメンヘラ入っています。それは過去のある事件に起因しているのですが、出会った当初はそんなことは全く知るよしもありません。

 絶対に落とせといいましたが、実は彼女とのデートは楽しくありません。すっぽかされたり、途中で帰ったり…デートしててもほとんど笑顔を見せないし。いつも笑顔で明るい光と比べて、「なんでこんな娘とデートせにゃならんのか」と思うこともしばしば。ボランティアかっ!

 だが、男なら耐えろ、耐えるんだ。綾波レイばりの無表情でも、心のむこうでは少しずつ好意はふくらんでいるんです。そして3年生になる春、ようやく彼女は心を開いて、彼女を人間不信に変えてしまった過去の事件について語ってくれます。そしてそれを克服して新たな人間関係を築いていくことを誓うのです。
明るくなった八重さん

 それからの八重さんとのデートは実に楽しい!苦労の甲斐があったというものです。そして明るくなっても控えめな笑顔の八重さん最高に可愛いです。

 なお、八重さんは別の高校に通っていたのですが、事件のせいで自主退学して、改めてひびきの高校に入学しているので、主人公と同級ながら実は一つ年上です。彼女と知り合ってもあまり仲良くならないと、2年進級時に再び自主退学して姿を消してしまいます。その後の消息は不明。当初は「自殺」にする話もあったとか。それは酷い。酷すぎる。彼女の人生を絶望で終わらせないためにも、知りあったならぜひ仲良くしましょう。
私服の八重さん

 八重さんは身長169センチでB87 W60 H89(3年生時)とすばらしくプロポーションがいいです。運動の得意な光を負かすほどの運動神経を持ち、成績も優秀という、何気に藤崎詩織的に欠点のない人で、卒業後はモデルやバレーボールの選手になったりします。

 人気投票では堂々の第二位。

 第二位:麻生華澄
麻生華澄

 昔、「綺麗なお姉さんは好きですか?」というCMがありましたが、美しいものが嫌いな人がいるかしら。華澄さんはまさに「綺麗なお姉さん」で、藤崎詩織のポジションを継承するキャラでもあり、さらなる難攻不落ぶりを見せてくれます。主人公にとっては幼い日の憧れの「綺麗なお姉さん」で、光とも旧知の仲です。

 新任教師に3年生の担任を任されるというのは普通ありえませんが、彼女が優秀な故か、ひびきの高校の校長は男塾の江田島平八のような人(その名も爆裂山和美!)なので何も考えていないのか、ともかく主人公の担任になります。

 美人女教師との恋愛…ませた高校生なら一度は空想することかもしれませんが、それはハングオーバーな絶壁をよじ登るにも似た苦行でもあります。
華澄先生

 まず攻略期間がたったの1年。他のキャラの三分の一しかありません。通常の3倍というシャア並みのスピードが必要となります。しかも主人公に要求されるスペックは体調とストレスを除く全てが140以上、出来れば150欲しいという無茶ぶり(詩織でさえ130もあれば十分だった)で、出会ってから慌てて努力しても間に合わない可能性大です。
引っ越し前の記念写真

 先生ということもあり、爆弾を爆発させることはないのが救いですが、他の女の子が爆弾を爆発させればやはり好感度は下がってしまいます。また、主人公とだけでなく、光とも幼馴染だという点が要注意で、光の好感度が高いと、華澄さんをデートに誘っても断られやすくなって、ときめき状態に持っていくことが困難になります。妹分のために身を引いてしまうところはさすが優等生のお姉ちゃんというべきでしょうが、光がやたら主人公を好きになるという前作からの改良点が、こと華澄さん攻略の際には大きな障害となって立ちはだかってくるわけです。

 このため、華澄さん登場前に光の好意度を下げておく必要があり、一度あえて爆弾を爆発させておくという作戦もあります。「美樹原斬り」に比べ、光がなまじいい娘なだけに、「光爆破」は極めて苦痛のある処置なんですが、私は血の涙を流しながら実行しましたよ。

 一見完璧超人な華澄さんですが、朝が弱かったり(学校は企業より朝が早いだろうに…)、機械オンチだったりします。まあ食中毒を起こす詩織に比べれば可愛いものですね。プロポーションは身長164センチ、B88 W58 H86とマーヴェラス。W58って凄いですね。

 彼女の高校時代は、なにしろ藤崎詩織ばりの高嶺の花だったので、彼氏なしで過ぎたようです。大学時代には…まあ何かあったとしてもおかしくはないのですが、5歳年上の彼女と恋愛するならば、過去を気にしてはいけませんよ。

 このゲームは呼び名を変えることができ、親しくなれば呼び捨てにすることも可能です(光は最初から「光」。「陽ノ下さん」とか「光さん」とか呼ぶと逆に嫌な顔をする)。華澄さんも「華澄」と呼ぶことが可能ですが、学校でそう呼びかけると「駄目よ学校じゃ。二人きりの時に、そう呼んで」なんてたしなめられます。そこはかとない背徳感を感じますねぇ。

 人気投票では第三位。

 第三位:一文字茜
一文字茜

 一人称が「ボク」。いわゆるボクっ娘です。ただしボーイッシュなのは性格だけで、身長159センチはともかく、B92 W59 H88(3年生時)というダイナマイトボディをお持ちです。さばさばしており、気さくに付き合えそうな感じがしますが、帰宅部なので一緒の部活で好感度アップという作戦は取れません。

 彼女は両親が不在で兄が「働らたら負けかなと思っている」人なので、家事全般を引き受けながらアルバイトに精を出すという苦学生です。冬でも夏服なのは、多分経済的な事情のせいでしょう。コートは買っているけど(笑)。好きなデート場所も「お金のかからないところ」…健気さに思わず貰い泣きしてしまいそう。
一文字茜2

 誕生日のプレゼントも、香水・ネックレス・ブレスレットよりも、商品券・ハンドクリーム・花柄エプロンなどを好むという、お前は主婦か?これは母の日のプレゼントなのか?と問い詰めたくなる所帯じみぶりを発揮してくれます。いい奥さんになりそう、というよりもうなってる感が一杯。
チャイナ一文字茜

 実は茜の兄は華澄さんと同窓なのですが、20歳を過ぎてなお「総番長」をやっているという変人です。男塾の三号生でもやってるんでしょうか。その関係で、茜とつきあっていると、総番長配下の四天王(筋肉番長・火の玉番長・木枯らし番長・バイト番長)が次々と戦いを挑んでくるので、これをことごとく倒さなければなりません。そして最後には総番長戦(まあ、総番長とは茜狙いでなくても良く闘うことになりますが)。

 番長達から「姐さん」と呼ばれ、総番長を一撃で葬るほどの剛腕を持つ茜。普段は温厚ですが、絶対に怒らせたくないキャラです。
茜。背後に番長達が

 人気投票では第6位。男か女かわからん赤井ほむらやヘンテコお嬢様の伊集院メイの後塵を拝するとは…総番長が黙っていない?(両名のファンの方すいません)

 第四位:日ノ下光
陽ノ下光

 若き王者が帰ってきたッ
 どこへ行っていたンだッ メインヒロインッッ
 俺達は君を待っていたッッッ日ノ下光だ――――――――ッ

 という訳でようやく登場。こっちのランキングのせいなのでどこに行ってたもないですが(笑)
陽ノ下光

 泣き黒子がチャームポイントのショートヘアが似合う活発な女の子。しかし中学校まではロングヘアだったようです。元気で明るく、ポジティブ思考で、体を動かす事が大好きで運動能力も高く、部活動は陸上部で短距離種目を専門にしています。好きな物は夏・海・太陽。悩みなどないのか君には。

 先ほど彼女を子犬に例えましたが、7年経っても主人公への想いを持ちつづけてきたところなって忠犬そのものでしょう?やきもち焼きなところもやはり犬属性で、主人公のことを思いやった言動が多く、主人公の役に立てることを嬉しく思っているようですが、主人公が他の女の子と仲良くしていると非常に傷つきやすく、爆弾となって現れてきます。そう、光はやたら爆弾を作り出しては爆発させようとするボンバーウーマンなのです。

 光の魅力は、まあプレイしてみるのが一番なのですが、あそこまで主人公のことを一途に想ってくれているのならば、もう光一択でいいじゃないと思えるほどです。

 じゃあなんで四位なのかと突っ込まれると厳しいところなんですが、光なら判ってもらえるんじゃないという甘えの裏返しで…でへへへ。

 光の身長は157センチ。結構小柄です。スリーサイズはB83 W57 H85(3年生時)。一作目のメインヒロイン藤崎詩織と比較すると、身長で1センチ、Bで2センチ、Hで1センチ下回っています。Wは同じ。やはり詩織恐るべし。


  

ときめきメモリアル2:シリーズ最高傑作?(その1)

ときめきメモリアル2

 「ときめきメモリアル2」は1999年11月発売のPS用恋愛シミュレーションゲームです。ギャルゲーとしては空前のメガヒットを飛ばした「ときめきメモリアル」の正統続編となります。

 舞台はきらめき高校を離れ、新たにひびきの市になるひびきの高校となっています。きらめき高校には、、「卒業式の日に、校庭の外れにある伝説の樹の下での女の子からの告白で生まれたカップルは永遠に幸せになる」という伝説がありましたが、ひびきの高校には「卒業式の日に告白の時に校庭にそびえ立つ時計塔の頂上にある伝説の鐘の音に祝福されたカップルは永遠に幸せになる」という伝説があります。そりゃどこの学校にも怪談話の一つ位はあるでしょうが、「伝説」なんて大げさなものはそうそうあるもんじゃありません。どれだけ長い歴史があるのでしょうか。

 それはともかく、小学校低学年で一度ひびきの市を離れた主人公は、7年ぶりに戻ってきてひびきの高校に入学し、女の子を魅了するべく各種能力を高めつつ、色んな女の子と知りあってデート島倉千代子な日々を送りつつ、陥落させる女の子を物色するわけです。

 2作目ということで、1作目の「戦訓」を生かしたボリュームアップと各種改良が行われています。それと引き換えになんとCD5枚組!今ならDVD一枚に収まるのでしょうが、この入れ替えが面倒だったなあというのが真っ先に思い浮かぶ印象です。今ならゲーム・アーカイブからPSPにダウンロードが可能ですが、あの小さいメモリースティックに収まってしまいます。科学の進歩は地道に進んでいるんですね。

 主人公はまた幼馴染。しかし、前回のメインヒロイン藤崎詩織の後継者たる本作のメインヒロイン陽ノ下(ひのもと)光は、だいぶ傾向が変わりました。

 藤崎詩織は、一言でいえば
①幼馴染
②容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能
③自分に見合う高スペックの男しか相手にしない(ツンデレだが、大部分の男にはツンのみ)
という人でしたが、陽ノ下光は①は継承(ただし7年ぶりの再会)しているものの、②③は継承していません。
藤崎詩織

 前作のラスボス…もとい、メインヒロインの詩織さん。

 つまり、光は7年ぶりの再会にも関わらず最初から好意的で、スポーツは得意ですが勉強は必ずしも得意ではなく、可愛いけど美人とまでは…というキャラとなっています。
陽ノ下光

 昭和ムード満点のきらめき高校の制服にくらべ、ぐっと平成らしくなったひびきの高校の制服。光の着こなしもさまになってますね。

 私は勝手に「藤崎詩織三分割説」と唱えています。藤崎詩織は極めて高スペックながら、人気という点では他のキャラをぶっちぎるには至りませんでした。最初から優しくフレンドリーな虹野さんには肉薄されました。そこで、虹野沙紀要素を取り入れつつ、高スペック性とかツンデレ属性は他のキャラに振ったのではないかと思うのです。

 高スペックは、初の攻略対象教師キャラ・麻生華澄(彼女は「近所の綺麗なお姉さん」という幼馴染属性も共有しています)、ツンデレ属性は光の親友水無月琴子(ただし幼馴染ではない)が継承し、三人合わせて藤崎詩織になるという三位一体説!トリニティ!今考えたとはとても思えない!
引っ越し前の記念写真

 引っ越し前に遊園地に行ったときの記念写真。華澄おねーちゃんはすでに美人で当時から主人公の憧れ。がんばれ光!でもちょっと勝ち目ない(笑)

 まあそういう訳で、7年ぶりの再会にも関わらず光は最初から好意的で、笑顔で接してくれます。どうやら彼女はずっと主人公を想っていたらしいです。もうね、主人公はともかく、私だったら、こんな可愛い娘がこれだけ好意的なら、もうこの人でいいじゃんかと思います。実際、ファーストプレイでは光から告白されました。光は本当にいい娘です。しかーし、何度やっても光でいいやとさえ思っていたのですが、やはりいろいろ出てくる他のキャラも攻略しなきゃな…と思いなおしたとたん、惚れっぽい光は恐るべき敵に変化するのです。

 彼女は回避不能の絶対知り合ってしまうキャラでありながら、非常に好意度が高いので、他のキャラと仲良くしていると、たちまち傷心度を高めてしまい、「爆弾」を育ててしまうのです。これが爆発すると全女性キャラの好感度にダメージを与えるため、デートで彼女の心を宥めなければならないのですが、それでさらに光の好感度が上がってしまうと、卒業式の告白はやっぱり光から受けるということになってしまいます。本当に個人的には生涯光一筋でもいいんですけどね…
親友コンビ

 ま、メインヒロインながら難易度の下がった光はともかく、詩織の属性の一部を担う他の二人はどうかというと、麻生華澄は藤崎詩織以上の攻略困難な「絶壁」となっています。主人公2年生時の秋に教育実習にやって来て再会し、3年生時に新任教師として主人公の担任になるのですが、攻略期間がたった一年しかない上に、詩織ばりに高スペックを必要としてくる上、教師として生徒の彼氏を奪うことはできないと思っているのか、主人公に対して好意度の高いキャラがいると身を引いてしまうという鬼ぶりです。まあ先生と生徒は難しくて当然ですよね。得に美人女教師とだとなあ…。男子高校生の夢ともいえるシチュエーションですが、そもそも美人教師がなかなかいない(笑)。
華澄先生
 
 綺麗なお姉さんは好きですか?もちろんですとも!
 
 最後の一人、水無月琴子は、黙っていれば楚々とした美人に見えますが、とにかく主人公に対してつっけんどんに接してきます。初期の詩織なんてこれに比べれば全然ましです。そして付き合っていると時折繰り出すDV!茶道部所属で冬にはどてらを着こんでいるオヤジぶりなどのせいで、ときメモ2のキャラでも屈指の不人気キャラとなってしまいました。
ギャラクティカ・マグナム!
 
 ギャラクティカ・マグナムを放つ琴子。まるで般若(笑)な、なにをするだァーッ!許さん!

 正直私も嫌いでしたが、光と親友という関係上、主人公を好きになると、光との友情と主人公への愛情の狭間で苦しむ様子を見せるので、こころゆくまで苦悩さたいがゆえに彼女を誘惑したりして…題して「ドSプレイ」。でも苦しみぬいたあげく光を裏切って(?)主人公を選択してしまう琴子(笑)。逆に光が可哀相になってしまいます。
略奪を謝罪…

 逆に琴子を励ます光。ホントいい娘。

 その2に続きます。

強く儚い者たち:Coccoの誘惑か、忠告か

強く儚い者たち

 6月になりましたね。夏も近いということで、日本航空のハワイ・キャンペーンのCMソングになったこの歌を取り上げたいと思います。まあハワイは常夏なんですけどね。

 強く儚い者たちは、1997年11月に発売されたCoccoのメジャー2枚目のシングルです。ですが…誠に残念ながら当時私はこの歌を聞いた記憶が全然ないんです。うーむ、なんでだろう。あ、あれか。真に護身が完成すればそもそもを危険に近づけないという渋川剛気先生の……って、いやいや合気柔術は完成させていませんよ。

 そういう訳(?)で、この歌を聞いたのはわりと最近…っていうか、ずばり今年に入ってからなんですが、その癒し系のメロディーとは裏腹のダークな歌詞にマイッチングマチコ先生ですよ。

 歌は、故郷に大切な恋人を残して苦難の果てに宝島に辿り着いた船乗りを魔女だか妖精だか魔性の女だかが誘惑しているような内容です。

 繰り返し強調される「飛魚のアーチ」は何を意味しているのでしょうか。愚考するに、知らず知らずに、あるいは必然的に越えてしまった、後戻りのできない選択でしょうか。

 例えば卒業とか、入学とか、転校とか、就職とか、結婚とか。我々の人生には常に何らかの選択を迫られる場面があります。その時我々は何かを得、何かを選ぶ訳ですが、それはとりもなおさず何かを捨て、何かを諦めるということです。そうした選択と放棄の繰り返しの中で、我々の心は以前と同じままでいられるでしょうか?いいえ、好むと好まざるとに関わらず、人の心は変わっていくのです。

 特に、何度も愛を確かめ合って信頼して旅立ってきたにも関わらず、「だけど 飛魚のアーチをくぐって 宝島に着いた頃 あなたのお姫様は 誰かと腰を振ってるわ」と歌うフレーズは強烈です。NTRだNTRだ!そしてこれを「人は強いものよ とても強いものよ」と言ってしまうとは!「お姫様」の環境の変化への対応を称えているかのようです。

 さて、この歌は「昔のことなど忘れて私と暮らしましょう」という誘惑の歌なのでしょうか。それとも真実を告げて目を覚まさせようとする忠告の歌なのでしょうか。

 前者だとすると、誘惑に乗れば「宝島を目指して旅立った若者は、これまでの船乗りと同様、いくら待っても帰ってこなかった…」なんてナレーションとともに、夜の海原をじっと見つめる女の子の姿が浮かんできそうです。振り切って帰れば涙の再会と歓喜の抱擁が。

 後者だとすると、それを信じで島に残る場合と、振り切って故郷に帰る場合の二通りがありそうです。島に残れば新たな生活が、故郷に帰れば極めて残酷な真実が待ち受けていることでしょう。

 みなさんはどのような選択をしますか?

 私は…宝島の女性と故郷に残してきた恋人を比較検討してですね…。
 多分こんな外道にはこんな歌を歌ってくれる人はいないでしょうね。

 この歌詞を作った時のCoccoはなんと20歳。弱冠20歳でなんというダークな詞を書くんだこの人は。人生を知りすぎてしまったかのような。人の倍の密度で生きてきたとでもいうのでしょうか。

 そしてこの歌をキャンペーンソングにしたJALも凄い。宝島ってハワイのことですか?そしてアグネス・ラムが誘惑しに現れるのでしょうか(古い!)。少なくとも奥さんや恋人を残して旅立つことをためらわせる効果はあったので、カップル客は増えたかもしれませんが、見えないところで旅行自体をキャンセルするカップルもいたりして。
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